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【怪談】屋根裏に潜む者①/HN:忍冬

屋根裏に潜む者/HN:忍冬


これは私の友人が体験した恐怖体験です。
一部私も一緒に体験しています。
・・・・・・・・・・・・・・

あれは確か11月下旬頃、雪がチラチラと降り始めた頃だったと思います…

その日は土曜日で仕事は休み。私は朝から自宅の駐車場で車のタイヤ交換をしていました。

すると突然後ろから、「今頃タイヤ交換か?」と声をかけられたのです…
振り返って見てみると、そこには友人の哲二が立っていました。

「おはよ、本当はもっと早く交換したかったんだけど、面倒くさくてさ……
それより朝からどこ行くんだ?」

「コンビニにコーヒー買いに行くんだよ」

哲二は私が若い頃、水産加工場で一緒にアルバイトした時に知り合った友人で、家も近く、私の家から歩いて二分位の距離にあるアパートに彼女と二人で住んでいました。

「なぁ……タイヤ交換終わったらなんか用事あるか?
もし暇なら久しぶりに俺家に遊びにこいよ。飯くらい奢ってやるから」

「……じゃあ後でおじゃまするかな」

「おう、待ってるよ」

その日私はタイヤ交換を終えれば別にやる事もなかったし暇なので、彼のアパートに遊びに行く事にしたのです。

彼のアパートは私が見つけたものでした。
彼が彼女と同棲する為、安いアパートを探してる時に、たまたま私が入居者募集の張り紙を見つけ彼に伝えると、あっという間にそのアパートに決めて契約してしまったのです。

哲二の話によると、そのアパートは管理会社が、入っていないらしく大屋さんと直接契約、敷金礼金等もかからず、部屋の広さも二人で住むには十分なうえに築年数もまだそんなに経っていなかったらしいのです。
しかも家賃もそんなに高くないという好条件のアパートだったみたいで、直ぐにそのアパートに決めてしまったみたいでした。


◇◇◇◇

私はタイヤ交換を終わらすと、コンビニに行き、適当につまみ等を買ってから彼のアパートに向かいました。

彼の部屋はアパートの二階の一番左側…
玄関の前までくると呼び鈴を鳴らしそのまま玄関に入って行きました。

すると玄関に入った途端、不思議な物を見つけたのです。
玄関の隅にこんもりと盛り塩がしてありました…

「おう、いらっしゃい、とりあえず上がれよ」

「なぁ……この盛り塩はなんの意味なんだ?」

「やっぱり見られたか……実は今回来てもらったのはその盛り塩が関係あるんだよね……」

「ハッ?関係あるって何?
もしかしてこの部屋曰く付きだったとか?」

「多分違うと思うんだけど、ちょっと確かめたい事があってさ……
それで呼んだんだよ」

「どういう事?」

「とりあえず上がれよ」

そのまま居間に通されると部屋の四隅に塩が盛ってあって……
天井や壁等には御札が貼ってありました。

「ごめんなさいね、突然呼んだりして、不気味な部屋でしょ?」

声のする方を見てみると、哲二の彼女の沙織ちゃんがキッチンから顔を出し、申し訳なさそうに話かけてきました。

「何があったんだよ?」

「それが俺達にも解らなくてさ。
俺達もちょっと精神的にやられてきたんだよね、とりあえず今は何も聞かないで、ちょっと確かめる為に夜まで一緒にいてくれないか?」

「なんだよ……聞いちゃまずいの?……
そして確かめるって何を確かめるんだよ?」

「いや、言ってしまったら先入観とか出てくるかもしれないからさ、今は何も聞かないで、あまり周りも気にしないで、くつろいでてほしいんだ」

「こんな盛り塩や御札が貼ってある部屋で、何の先入観ももたずに、何も気にしないでいることは難しいと思うけど……」

その時は哲二の言ってる意味が解りませんでしたが、とりあえず言われた通り、あまり気にしないで夜までいる事にしたのです。

このアパートには引っ越しの手伝いをした時以来、来ていませんでした。
意外と近場に住んでる人の家って行かないもので、哲二と会うのはお互いの家じゃなくて、近場の居酒屋等が多かったような気がします。

そして言われた通り、私は普通に三人で話をしたり、飯を食ったり、笑いながらゲームをやったりして過ごしていました。

何時間位経った頃でしょうか……
突然どこからか『ドン、ドン、ドン』という何かを叩く音が聞こえてきたのです……

よく聞くと隣からでした……

「ありゃ……ちょっと五月蝿かったかな?
隣の人が壁叩いてるみたいだぞ……」

「やっぱりお前も聞こえるか?
空耳じゃないよな?」

「どういう事?普通に聞こえるし……
隣の人怒って壁とか叩いてるんじゃないの?」

「そうじゃないんだよ……隣は今空き部屋なんだ……」

「え……マジで?…じゃあ下の階の人の音とか?」

「真下の部屋も今空いてるんだ…」

すると今度は突然天井から、『ギシ、ギシ、』と人が歩いてるような足音が聞こえてきました……

「随分ここのアパート壁とか天井って薄いんだな……上の階の足音が聞こえるなんて……」

「それも違う……このアパートは二階建てだし、ここは二階だよ」

「え?そうだったよな……どういう事なんだ?……」

「俺も解らないんだ、上には人がいないはずなのに、毎日こうやって誰かの足音が聞こえてくるんだよ……」

「……もしかして盛り塩とかしてあるのってこれのため?」

哲二はコクリとうなずくと、少しずつ今までの経緯を話始めました。
そしてそれはとても理解できない話で、怖いというより気持ちの悪い話だったのです……

このアパートは一階に四部屋、二階に四部屋の全八部屋の二階建てのアパートです。
哲二の部屋は二階の一番左の端の部屋で、隣と二軒隣の部屋、あと真下の部屋が空いており、こんな物音が聞こえくるのは不自然でした。

そしてこの物音等は最近になってから聞こえはじめ、しかも物音だけじゃなく、何者かが部屋に入ってきて彼等の部屋の物を盗んだり、物色してるようだと言ってきたのです。

私はそれはただの空き巣とかじゃないのかな?と思ったのですが、彼等の話はちょっと普通ではありませんでした……

哲二達はちょうど一年位前にこのアパートに引っ越してきました。
引っ越しの日は粉雪が舞い、朝から凄い寒かったのを覚えています。
私以外にも数人の友人達が集まり、手分けしてほとんどの物を業者に頼まないで自分達で運んできました。

哲二達が引っ越してきた頃は隣しか空室になっておらず、その他の部屋は全て人が住んでる状態だったそうです。
哲二達は一応全ての部屋に挨拶に行ってどんな人が住んでるのか確認したようでした。

最初の頃は平和で、別に何も問題はなかったそうです。
そうして新しいアパートにも慣れはじめた頃、二軒隣に住んでるお婆さんと挨拶等をしてるうちに仲良くなっていったそうです。

そのお婆さんは一人暮らしのようで、会うたびに「困った事はないかい?、分からない事とかあったら何でも言ってきて」と言って何かと話かけてきたといいます。
良くいえば世話好き、悪くいえばお節介焼き、そんな感じのお婆さんだったようです。

そうして二ヶ月位経った時、直ぐ隣の部屋にも夫婦なのか、カップルなのか分かりませんが二十歳前後の若い男女が引っ越しして来たそうなのです。

その二人は何の仕事をしてるのか分かりませんでしたが、ほとんどアパートにはいなかったみたいで、たまに姿を見ても早朝か深夜に見かけるだけ、昼間は留守にしてる時が多く、ほとんど言葉も交わした事がなかったそうです。

そしてその二人が住み始めて3ヶ月位経った頃、最初の不思議なことが起きました。

哲二がいつものように、朝仕事に行こうとしてアパートの階段を下りていたら、前から二軒隣のお婆さんがやってきたそうです。
哲二はいつものように「おはようございます」と声をかけたそうですが、お婆さんは哲二を凄い目付きで睨むと、無言で階段を駆け上がっていったそうです……

(俺なんかしたかな?)と思いながらもあまり気にしないで哲二はそのまま仕事に向かったそうです……
それから三日位経った時。
またお婆さんに会ったので、頭を下げ「この前は何かあったのですか?」と声をかけたそうです。
するとお婆さんはまた凄い目付きで哲二を睨むと……
「しらばっくれても分かってるんだよ、この盗人が……
次やったら警察に突き出すからね」
と凄い剣幕で捨て台詞を吐くかのように言って、自分の部屋に入って行ったそうです。

哲二には何の事かサッパリ分からず、彼女に相談。
すると彼女も同じ事があったようで、そのお婆さんに会った時、突然……
「あんたらがそんな事する人達だと思わなかったわ」
と睨みながら言ってきた事があったそうです。

二人共何の事だかサッパリ分からなかったのですが……
多分お婆さんがボケたか、何か勘違いしてるか、凄い被害妄想を持った人なのかもしれないという事で、あまり気にしないようにしたそうです。

それからお婆さんに会っても無視したり、あまり関わらないようにしていたようでした……

それから数日経った頃、突然哲二の部屋に警察官が訪ねてきたそうです。
哲二達は何だろうと思いながらも、とりあえず警察官を玄関の中に入れ「何でしょう?」と聞いたといいます。

すると警察官は「変な事をお聞きいたしますが……
最近二軒隣のお婆さんに何か恨まれるような事をしませんでしたが?」
と言ってきたのです。

哲二達は全く身に覚えがなかったので「別に何もやっていませんが」と言うと……
その警察官は信じられない事を言ってきたのです。

それは二軒隣のお婆さんが最近になって、哲二達に家の中の物を盗まれたり、イタズラされたと言って警察に相談してきたという事でした。

もちろん哲二達には身に覚え等全くなく、そんな事やってないし何の事だがサッパリ解らないと警官に言ったそうです。

すると警察官も、実はそんな事は分かっているんだけど、もしかしたら哲二達がそのお婆さんになにかをして恨みを買われたんでないのか……
と思い心配になってやってきたという事でした。

哲二達は「どうゆう事ですか?」と訪ねると、警察官の考えでは、もしかするとお婆さんは、被害妄想が強く、何かのキッカケで、哲二達が嫌がらせしてると勘違いしてるんじゃないのかなと思ったそうです。

というのも、お婆さんの話もちょっと普通ではなかったみたいで……
例えば、哲二達がお婆さんの留守を見計らって、お婆さん宅に屋根裏をつたって侵入し、生活用品や食糧を盗んだり、衣類等を持ち出し、それを着たり穿いたりして、汚れたらそのままお婆さんのタンスに戻してると言ってきたそうでした。

屋根裏をつたって隣の部屋等に行ける訳がないし、お婆さんの衣類をまだ若い二人が着るわけがない。
警察官はそう思って、お婆さんをなだめながら「勘違いじゃないのかい?」と言ったそうなんですが……

お婆さんは「絶対あいつらがやったんだ、屋根裏を歩いてる足音も聞いてるし、屋根裏から男女の話声も聞いた」
と言って、全く聞く耳をもたなかったそうなんです。

哲二達は、「それならうちらじゃなくて隣の若い男女の方が怪しいじゃないんですか?」
と言ったのですが……

警察官は「隣の人は最近引っ越して、出て行ったみたいですよ……
そしてお婆さんの話では、その若い男女が出て行った後に被害にあってると言ってきたんですよね」
と言ってちょっと困った顔をしたそうです。

哲二達は隣が引っ越して行った事に全く気がつきませんでした。
最近も隣の部屋から物音等を聞いていたため、住み続けてると思っていたのです。
そしてまさかお婆さんにそんな風に思われてるなんて思いもよらなかったそうです。

警察官は一応大家さんの所にも行って話をしてきたそうで……
大家の話でも、やはり屋根裏をつたって隣には行けないつくりになっているし。
人が引っ越して出て行ったら、部屋の鍵はシリンダーごと交換してるので戸締まりをしっかりすれば、そんな簡単に部屋に侵入する事はありえないと言ってたみたいです。

そして警察官は最後に「すいませんね、お婆さんがあまりにもあなた達を疑って、注意してきてくれと五月蝿いもんだから、こうやって来たんですよ。
なるべくご近所さんとは仲良くしてくださいね」
と言ってそのまま帰って行ったそうでした。

哲二達には全く非がなかった訳で……
ハッキリ言っていい迷惑、なんか変な所に引っ越して来ちゃったかなと思ったそうです。

それからもお婆さんと顔を合わせると、凄い目付きで睨んできたり、酷い時には『盗人』と書いた紙を玄関に貼られたそうでした。

流石に我慢できなくなった哲二達は、大家さんに相談したそうです。

すると大家さんも、そのお婆さんには困ってるらしく、お婆さんが相談に来るたびに、何回も屋根裏からは人は入ってこれないと説明してるそうだが……
屋根裏から男女が入ってくる、屋根裏から話声が聞こえる、足音はいつも哲二達の部屋の方からやって来て、そして哲二達の部屋の方に帰って行くと言って、全く人の話を聞かなかったといいます。

そしてあまりにもしつこく言ってくるので、一度お婆さんの部屋の屋根裏に大家さんが上がって確かめてみたようでした。

するとやはり隣の屋根裏には繋がっておらず、しかも屋根裏ではまともに歩く事もできないくらい狭いつくりになっていて、どう考えても、屋根裏からは人は侵入等できるはずがないとお婆さんに言い聞かせたそうです。

それでもなんとかしてくれと、お婆さんが五月蝿いので、これ以上ご近所さんに迷惑かけるなら部屋を出て行ってもらうと怒ったそうです。

すると流石のお婆さんも諦めて帰ったそうでした……

ですが、まだ哲二達にそんな事をやってるとは思わなかったみたいで……
貼り紙の話をすると、大家さんはちょっとあきれ顔になり、とりあえずお婆さんの家族の人に相談してみます、それでも問題起こすようなら他に方法を考えますと言って、対応してくれたそうです。

それを聞いて安心した哲二はそのまま家に帰ったそうです。

それからお婆さんからは変な事を言われたり貼り紙等もしなくなってきたらしいです。
そしてその頃から、お婆さんの姿もあまり見かけなくなっていったといいます。

安心はできたのですが一つ気になる事もあったようでした……

それは隣の部屋、空き部屋になってるはずなのですが、たまに物音がしたり、男女の話声が聞こえてきたそうです。

多分音が反響して、どっかの話声が隣から聞こえてくるように感じるんだろうと思ってたそうですが……
あまりにも隣からリアルに聞こえてくるので不思議には思ってたそうです。

そしてしばらくは平和な日々が続いたみたいでした。



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