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【投稿広場】心霊*不思議カテゴリ総合【part3】

心霊*不思議 (総合)
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[5976] 誰も知らない物語-ダレモシラナイモノガタリ-
私が高校生だった頃のお話なのですが、
夏休みに級友のユッコから中学の友人とお泊り会をするから来ないか?と誘われました。
ユッコは入学してすぐ仲良くなった子で、今も親友として関係が続いています。
でも、人見知りの激しい私は友人以外の人とご一緒するのはとても怖くて、
残念ですがとお断りを入れたのですが、
同じクラスのアマネとユズキが行くことになったことで状況が変わりました。
三人であの手この手を使って断れない方向へ私を追い込み…
結局、うんと言わざるを得なくなった訳です。
人生初の夏●ミに行けるのは…あまりにも魅力的な…


幽霊が出る…というのはユッコの家からそう遠くない、
私鉄が敷いた線路上にある踏切で、夜中に列を作って歩く人影が目撃されるそうです。
「男子も呼んで肝試しをしよう!」
当日、夜の11時にユッコの家へ集合して件の踏切に行くことになりました。
集まったのはユッコの地元の友人が男子が3名で女子が2名、
私達4人を入れて参加者は合計9人、かなり賑やかな道行です。
もちろん男子はお泊り無しですよ。
市街から離れた田園地帯、満天に輝く星々の下、
自己紹介しあったり、虫よけスプレーをかけ合ったり、持ち寄ったお菓子を食べたりして、
明かりの無い道を馬鹿みたいにはしゃいで歩いた抱え込んだ孤独や不安に、
おーしーつーぶーさーれーなーいよーにー?
歩いて10分程、人の腰くらいまで伸びた雑草の中に埋もれて踏切はありました。
警報機も遮断機もない、黄色い注意書きの看板と木の踏板があるだけの簡素な作りです。
ユッコと地元の子達は終電も行ったからと、
踏切内へ入って懐中電灯で線路の先を照らし、幽霊が来ないか見てました。
道床へ敷かれた砕石の上に等間隔で並べらた木のマクラギ、
さらにその上へ二本平行に敷設された赤く錆び着いた高炭素鋼製のレール…
その先は懐中電灯の明かりではまったく届かない闇の中…
私とアマネとユズキはずっと踏切へは入らず、
手前の道路から南北へ真っ直ぐ伸びる線路を眺めています。
何も出なさそうですね。
しばらくして、線路内に入ってたユッコ達地元の子が足音が聞こえると言い出しました。
ユッコが私達を呼んで指を差し、南の方から砕石とマクラギを踏みながら、
線路をこっちに向かって近づいてくる足音がするというのです。
道路上にいる私達には全然、砕石がこぼれる音すら聞こえないって言うと、
ユッコ達は足音の聞こえる方へ懐中電灯を向けました。
『外道照身霊波光線!』
いくつですかあなた達…
「汝の正体みたり! 前世魔人 !!」
「ばぁれたかぁ〜」
アマネ…ユズキ…二人も絶対なんかおかしいよ!
砕石の上に並べられたマクラギと平行に走るレールがあるのみで、
まったく人影ひとつ見当たりません。
それなのに、足音はユッコ達がいる方へ確実に迫ってきているそうです。
「あ!」
線路内にいる一人が懐中電灯で照らす輪の中に黒い人影がいると叫びました。
ユッコや線路内にいる子達が揃って見えたと…それも一人ではなく、
重なるように幾人もが一列に並んでふらふらとこちらへ歩いてくるのだと言うのです。
もしかして、線路の中外ではなくて地元の子だけに見えるとかなのかも。
「あれ幽霊?」「幽霊やばくない?」「マジ幽霊かよ?」「幽霊まじやべー!?」
線路内へ留まることに我慢できなくなり、私達のいる場所へ逃げてきたユッコ達。
私とアマネとユズキは頭の上に『?』を浮かべるばかりでした。
そこへ今度は大きな声でギャー!ですよ?
女の子の一人が携帯電話を取り出して画面を見つめ…
あれ?あれ?そんなはずない…うそ?うそ?うそ?って。
周囲にいる友人たちに黒い携帯の画面を見せながら、
くぁwせdrftgyふじこlp的意味不明な言葉で喚き散らし始めます。
私の横でユッコが同じように携帯を取り出し、画面を見て顔を引き攣らせました。
「ニヤ先輩?だってもう…」「ありえない、ニヤ先輩から…」
「うそ、ニヤ先輩から…」「私もニヤ先輩から…」「わ、私もニヤ先輩から着信…」
ユッコと地元の子全員に『ニヤ先輩』という人からほぼ同時に着信があったみたいです。
「ユッコ、ニヤ先輩って誰?」
「メモリーから消したはずなのに…確かに消したはずなのに!」
話聞いてないし…しかし、気丈で男勝りなユッコですら怯えさせるとは…
なるほどなるほど、全貌が見えてきたかもです。
ニヤ先輩というユッコ達共通の知人で、
その人に全員が後ろめたい感情を抱いているということですね。
「ユッコ、その電話には絶対に出ちゃダメだからね、着信なんてないんだから!」
「え!?」
ユッコが驚いて、真っ暗な携帯画面から私に顔を向けました。
「な、なに言ってんの?
 ほら、ニヤ先輩からの表示…ず、ずっと…着信音鳴ってるんだけど?」
「絶対に無視して!その電話に出たら最後、完全な恐怖に飲まれるよ!」
足音も携帯の着信も全部、高まった恐怖と集団ヒステリーによる幻聴と幻覚です。
私とアマネとユッコは線路を歩く足音も携帯の着信音もバイブ音も聞いていません。
思った通り、地元の子達が手にする携帯の画面は全て真っ暗のままです。
我慢していれば必ずあれは去っていきます。
この世に在らざるものは安定と維持がとても難しいのです。
こちら側の誰かがそれを許さない限り…
「もしもし、ニヤ先輩ですか?わたし…ヤマダです…」
「あ、やっちゃった…」
恐怖に耐えかねたのか、女の子の一人がニヤ先輩の着信に出てしまいました。
呼びかけに応えるというのは、その存在を受け入れたという証です。
『…キ…タナ!』
途端、怨嗟の籠った複数の男女と思われる不気味な声が、
私達のすぐ傍から聞こえてきました。
彼女が…自らが生み出したまぼろしを現実と認めてしまったから…
現実に固定化されてしまったみたいです。
声だけではなく、他の現象も何の因果も持たない私達に降りかかってきます。
この恐怖はもう無差別に人へ伝染してくるのです。
耐性の無いユッコ達は絶叫を迸らせ脱兎のごとく踏切から逃げだしました。
ここから一歩でも遠ざかろうと自殺個体のレミングみたいに…
青々と育った青田中だろうと、山があろうと、川があろうと、炎の中だろうと…
動けなくなるまでどこまでも走り続けるのです。
「ユズキ、お願い!」
「すぺしゃるろーりんぐさんだー!」
一陣の風と化し、ユッコの前に回り込んだユズキが、
0.1秒の一瞬に左手のみで5発を放つ?という伝説のパンチを入れなかったら、
あの子達と同じことになっていたと思います。
お腹を押さえてその場に崩れ落ちるユッコ…
慌てて駆けつけたアマネと一緒に彼女を介抱していると、
背後に妙な気配を感じました。
誰かいます。
ゾクゾクと背筋を走る恐怖…背中に突き付けられた何者かの視線…
振り返りました。
青白い月光が降り注ぐ踏切の中に、
セーラー服を身に着けた女の子が立っていました。
ふわっとしたエアリー感のあるショートヘアに白いリボンタイ、プリーツスカートの裾を、
青い田の上を渡ってきた涼風が揺らしています。
俯いた顔の半分が前髪で隠れていますが…
もしかして、あなたがニヤ先輩ですか?
女の子は引き結ばれた唇の端を吊り上げました。
むか…(-_-メ)
「ユズキ、あれ貸してください」
「Yes、ma’am!」
敬礼したあと、ユズキがおもむろにデイバッグからキン●ョールの缶を取り出すと私に差し出します。
(これでいいんでしたっけ?)
頭の上にたくさんの『?』を浮かばせながらも受け取ると、
私は踏切内へ入って缶が冷たくなるまで女の子に吹きかけました。
周囲に広がるあの独特の香り…
でも、なんか違うような…
でも、なんか効果があったみたいで…
降り注ぐ月光の中で女の子はゆっくりと形をなくし、淡く薄れて消えてしまいました。
長い溜息…
でも、立ちこめる濃厚なキンチ●ールの匂いで余韻台無しです。
一部始終を見守っていたアマネがぷっと吹き出しました。
ユッコはお腹を押さえて蹲ってますが、肩が小刻みに震えています。
「お美事です、三佐殿!!」
きらきらと目を輝かせ、ユズキは見事な敬礼をしました。
誰が三佐ですか…



消えた五人を見つけだすことは適わず、
一度ユッコの家へ戻って大人の協力を仰ぐことにしました。
急いで見つけないと取り返しのつかないことになります。
地元の有力者であるユッコのご両親に事情を説明すると、
深夜にも関わらず、消防団に呼集をかけて彼等を探してもらうことになりました。
姿を消した5人は地元でも有名な子達らしいです。
そこへ地元の父兄会や青年団も捜索に加わりました。
朝方になって事情を知ったユッコの友人達が押しかけて捜査範囲が一気に広がります。
結果、朝日が高くなる前に全員が大小の怪我はありましたが、
命に別状の無い状態で発見されました。
まるで今まで悪夢の中にいたようです。
ユッコの中学の友人5人は全員、踏切へ向かうところからの記憶を失くしてました。
動けなくなるまで走り続ける程の恐怖を植え付けられたのだから仕方ないかもしれません。
後に、私達はユッコから二学年上のニヤ先輩にまつわる話を聞きました。
彼女の死は事故だったのか自殺だったのかは結局わからなかったと…



(おしまい)
[5953] オーナーべったり、その後
だいぶ前に、うちの球体関節人形がオカルトという話を書き込んだ者です。
ついに、写真を見ただけの方から魂が入っていると言われてしまいました。
そんな、落ちる筈のないところから落ちたり放置すると機嫌を損ねたりする、うちのオカルトドールのお話です。

先ずは知らないと話が繋がらないドール用語の解説から。
球体関節人形でありがちな現象に、追視というものがあります。
どこから見ても目が合う現象でして、ひとつの魅力とされる反面、苦手な方も多いです。
一般的には、色の淡いガラス製の瞳が追視しやすいといわれています。
うちの子でいちばんオカルト要素の強い子は、かなり追視しやすい瞳が入れてあります。
なので、写真を撮ると、ほぼ全てカメラ目線になります。

私がカメラを向けると、瞳孔が写る角度では絶対に此方をみるので、あーさすが追視アイだなーといつも思うのです、が。
1ヶ月ほど前、ドール仲間さんと一緒に某メーカーさんの施設で撮影したときの話です。
イベントでお客さんが特定の階に集中しており、貸し切り状態のブースがいくつかありました。
そんな、貸し切り状態の場所で、ドールどうしの相性を見ながら撮影した結果、2ヶ所に分かれて撮ることになりました。
一旦、24番くん(オカルトドール、仮名)がいる場所を離れて撮影していまして、戻ったときに、ドール仲間さんが言うには、

「24番くん、ずっとREN:Hさんの方見てたんですよ。全然目、合わせてくれなくて」

以前アクリルの瞳を作るキットで作ったものを入れたときに、追視しにくいと言われているアクリルの瞳で、しかも追視自体はしていないのに目が合った辺りでおかしいとは思っていたのですが、当たりでした。
最近は私に雰囲気がそっくりのようで、「こっちを見たときに親子だなって思った」とのコメントもいただいていたりします。
[5950] 恐怖!霊道が走る家 前編
田中の家がヤバいという噂が広まったのは小四の夏。

夏休みを数日後に控える俺達のテンションが正に最高潮を迎えている時期の事だった。

年中、鼻を垂らしている龍が言うには田中の家にはこの町で一番ヤバい霊道が通っており、様々な怪奇現象が起こるのだという。

好奇心が服を着て歩いている俺達がそれを見過ごす筈は無い。早速普段は根暗で漫画ばっかり読んでいる田中にアポイントを取った。

「おい田中!要件は分かってるな?」

「………」

「よし分かった!じゃあ今日の帰りに俺達がお前の家を除霊してやるから有難く思えよ!うひひひ♪♪」

田中の笑顔が引き攣っている。

「だ、誰に聞いたの?」

「そんな細けぇ事はどうでもいいんだよ田中!それよりお前の家にはどんな妖怪が出るのか言ってみろ。俺達もそれによって対処方法が変わってくるからな!うひひひ♪♪」

「…妖怪かどうかは分かんないけど、いつもいるのは首が反対に付いてるお婆ちゃん。それと真っ黒な人。あとは小さな子供達がよく壁から出て来てケラケラ笑いながら遊んでたりするかな…あとはえっと…」

「分かった!分かった!ストップ、ストーーップ!!田中もういい!ちょっと待て!!」

龍が蹲って泣き出したので、慌てて田中を制止した。

正直な所、田中の話を聞いて俺も若干帰りたかったのだが、一度言ってしまった手前今更引くのはかっこ悪い。俺達はその日の放課後に田中の団地を訪れる事にした。

メンバーは俺(ロビン)、龍(半泣き)、猛(デブ)、翔吾(イケメン)、夏美(妹)、だ。

「本当に来るの?やめた方が良いと思うよ…お母さんにバレたら絶対怒られるし」

首から下げた鍵っ子の田中が何か言っている。

「ば、バッキャロー!ここまで来といて帰るなんて真似が出来るかよ!猛!ちゃんと塩持って来たか?!」

見るとデブの猛が除霊用に買っておいた、ポテトチップス(うす塩)の袋に手を突っ込みボリボリやっている。

「あーごめんごめん、腹減ったからさー、ついつい食っちゃったよー。もう無くなっちゃったなぁ…げぷっ!!」

俺はこの日を境にデブが嫌いになった。

もう八月という事もあってまだ陽も高い。しかしグダグダしていると暗くなって怖さ倍増+アニメ(ドラえもん)の時間に間に合わない危険性がある。

かくして俺達は嫌がる田中を急かし、遂に未開の地、住みながらにしてこの街一番の心霊スポットに潜入する事に成功した。



階段だけの五階建ての団地。田中の部屋はその一階の端っこに位置している。

裏手はフェンスで囲まれた山になっており、板で出来た長い階段を上がって行くと朽ちた鳥居があるが、その先は立ち入り禁止となっている。

山のせいで日当たりが悪いのか、ここら一体は昼を過ぎると薄暗い。

カチャン…

団地特有の重たそうな鉄製のドアを開けると、ギイーーと錆びついた音が階段に響いた。その瞬間、生暖かい風がふあーっと俺達全員の顔を撫でた。

「ほんとに入るの?絶対やめた方がいいと思うんだけど…」

丸眼鏡を掛けたのび太実写版の田中が何か言っている。

「しつこいぞ田中!俺達は一度決めた事は絶対に曲げねぇんだ!ちょっと見たらすぐに帰ってやるからとっとと家にあげてくれよ!」

「そ、そそそ、そうやで田中!兄貴をナメてんのかいな!俺達はな、ぜ、全然怖あないねんで!!」

初めて知ったが、龍は恐怖を感じると関西弁になるようだ。

「…わかった…後悔しても知らないよ。僕のせいじゃないからね…」

団地の玄関は子供でも狭く感じる。六人が靴を脱ぐには一例に並び順番に脱ぐしか無かった。

夏美、翔吾に続いてデブの猛の順番だが、太りすぎていて紐履を解くのに手間取っている。

イライラしながら猛の肩越しに部屋の奥を見ると、半分程開いた襖の向こうにお婆さんが一人座っているのが見えた。

頭は白髪、柄物の紫っぽい着物を着ていてにこにこと微笑んでいる。

「あ、あれはまさか幽霊じゃないよな…」

後ろの龍にも見えているか確認しようと振り返ると龍がいない。奴はどうやら逃げたようだ。ちっ!

もう一度部屋の奥を見ると婆さんはいなかった。というよりも襖自体が無かった。そこにあるのは真っ白な洗濯機だけで、その向こうは茶色い壁になっていたのだ。

「!!!」

「なんだ兄貴にも見えてたの?」

夏美が不安そうな顔をして言った。

夏美のこんな顔は珍しい。

既に、デブの猛とイケメンの翔吾は田中と共に左手のリビングへと行ったようだ。

「兄貴、この部屋思ってたよりもヤバイかも…兄貴にも見えてるぐらいだし普通じゃないよ。田中君のお家におばあちゃんはいない筈よ。もう帰ろうよ!」

「…………」

すると夏美の後ろにある壁に白いモヤの様なものが掛かかったかと思えば、ゆっくりとまるで水面が波打つ様にぼやけ、また先程の襖が現れた。

そして半開きの襖が音も無くすーっと開き、中から先程の婆さんが出て来て夏美の背後でピタリと止まった。

近くで見ると、夏美より頭一つ分高い婆さんの目には白目の部分が無く、全てが黒だった。婆さんは夏美の肩に両手を乗せるとニンマリと笑った。口の中には歯が一本も生えていない。

夏美は目を見開き、恐怖の余り身動きも取れないようだ。

い、いきなり出るかよ!!

内心、怒りが込み上げてきたが、余りの婆さんの迫力に声も出せず全身に鳥肌が立ち後退りしてしまった。

すると婆さんはパクパクと口を動かしながらこんな事を言った。


…あ…まんさ…がな…さ…


汗が額を伝い目に入り、瞬きした瞬間に婆さんと夏美はそこから消えていた。

「どうしたの?あれ?夏美ちゃんは?」

翔吾がリビングから顔を出した。

「き、消えた…」

「消えた?」

バン!バン!バンバンバン!バンバンバン!バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!!

突然、洗濯機の後ろの壁から大勢の人間が同時に思いっきり壁を叩いた様な物凄い音がした。

気付くと俺は靴を脱ぐのも忘れて、翔吾と田中達のいるリビングへと逃げ込んでいた。



PS. また夏美が最初の犠牲者になってしまったのか?果たして次の犠牲者は?
どうやら俺達は踏み入れてはいけない場所に足を踏み入れてしまったようだ…ひ…

【続く】
[5949] 笑い声

俺は全てを失った

ゴーゴーと車とバイクが行き交う道路。薄くなった中央線をぼんやりと眺めながら俺はまたいつもの溜息をついた。

「もう…しのう….か…」

思えばこの一週間の間、毎日の様にここの歩道橋を訪れては、何時間も10m下の道路をボケーと眺め続けている気がする。

そういえば左手にはめていた時計は昨日この下に投げ捨てたんだっけな…あの時計は妻が結婚10年目にプレゼントしてくれた物だ。

文字盤にもヒビが入っちゃってたし、もう必要無いもんな。しょうがないよな。

家に帰ったところで家族も仕事も失った俺には最早待っていてくれる人などいない。

上司に噛み付いたのがそもそもの原因だった。小さい会社で影響力のある上司に嫌われればそこに居場所等ある筈がない。

会社を辞めた俺に妻は優しく…は無く、恐ろしいまでの罵声を浴びせてきた。日頃の鬱憤を晴らすべく今まで彼女の口からは聞いた事もないような言葉が飛び出し俺を苦しめた。

知り合いからの勧めで何社か面接まではこぎ着けたのだが中々本採用までには至らず、結局バイトを掛け持ちする日々が続いた。

正直あの頃の俺は毎日の妻の暴言に堪らず家に帰るのが辛かったのだろう。そして気付けば妻は娘と共に俺の前から姿を消していた。

「はぁ…俺、頑張ってたつもりだったんだけどなぁ…」

轟音と共に大型トレーラーが足下を通り過ぎた。

飛び降りちゃえよ

ふと隣りからそんな声が聞こえた。

見るとハンチング帽を目深に被った初老の痩せこけた男が俺を見つめている。

彼は手摺に手を掛けるともう一度言った。

早く飛び降りちゃえよ

「貴方は誰ですか?」

俺はおまえだ

「俺?何を言ってるのか分かりませんが」

お前はもう死んでいいんだよ

この世に不必要な人間だ

今を逃すとこうなる

そう言うと男の首は90度真横にグニャリと曲がり手摺にもたれ掛かった。そして身体を残して首だけが道路へと落下して行った。

首を追って道路を見やると、もうそこには車は走っておらず、周りを木々に囲まれた雑木林の中で黙々と穴を掘る男の姿があった。

ざくざくざくざくざく

傍にはガムテープでグルグル巻きにされ、毛布に包まれた大小二つの遺体が穴の完成を待っている。

男は手を止め、額の汗を拭うと俺の方を見た。

俺は知っていたんだ

初めから

この子が本当は俺の娘じゃ無いって事も

君の様な若くて綺麗な女性が、身寄りのないこんな三十路の俺と結婚してくれるなんて嘘のようで本当に夢のようだった

もう一度人生をやり直せると思っていた

でも現実は違った

君は俺の理想と違っていた

男は二体を埋め終わると、スコップを杖代わりにしながら疲れた様子でヨタヨタと森の中へと消えていった。

きゃはは

歩道橋の向こうから仲の良さそうな男女が歩いてくる。茶髪の男が女の肩を抱き寄せキスをした。

「ねえ、本当に私と結婚してくれるの?」

「ああ、当たり前じゃねぇか」

穴を掘っていた男だ

「ねえ、本当に見つからない所に埋めたんでしょうね、見つかったら二人共終わりよ」

「大丈夫だよ、心配すんな」

ケラケラ笑う彼女の足を娘が掴んでいる。身体中泥だらけで顔も酷い状態だ。

眼球を失った二つの眼はジッと俺を見つめている。しかし悲しい感情は微塵も沸いて来ない。不思議と怒りも憎しみも感じない。

俺の背中を刺したのはあいつか

男女が行き過ぎるのを見届けると俺は再度歩道橋の下を見た。するとハンチングの男が行き交う車の間に立ち、両手を伸ばして俺を呼んでいる。男の前にはいつの間に出来たのか直径二m程の真っ黒な穴が空いていた。

そこに飛び込めと言っているのだろうのか?

不思議と恐怖は感じない。

なぜか悲しくも無いのに涙が止まらなくなった。なぜかその時全ての苦しみから解放される気がしたのだ。

そして俺は遂に歩道橋の上から飛び降りる事が出来た。


きゃはは


穴に吸い込まれる刹那、頭上でまた妻の笑い声が聞こえた

【了】
[5932] 麗子
やあロビンミッシェルだ。

この話↓は過去に書いていた話の続きだが、知らない人も多いとおもい繋げて書いてみたよ…ひ…

しかもまだ完成してない所がお茶目だと笑ってくれ!次で完結する予定なんでまさかの驚愕のラストを楽しみにしていてくれ!…ひひ…
[5931] 憑依、麗子OF THE DEAD

今夜は月が綺麗だ。

昼間の茹だる様な暑さがまるで嘘だったかの様に、この山の高台はヒンヤリとして解放的で涼しい。

俺は自宅から車で三十分程離れたとある外人墓地にいた。海に面しているせいか、潮の香りが混じる突風が時折ザワザワと周りの木々をしならせながら、この異様な雰囲気を更に盛り上げてくれている。

「やべ、充電20%きってんな…」

パシャリ!

目下に広がる綺麗な夜景を写真に数枚収めた後、俺は心の中で軽く覚悟を決めた。

振り返るとやはり先程と同じ光景…

俺の愛車クラウンの中で怯える香織と龍。

麗子はといえば長い黒髪を振り回しながら、ロックされたドアをこじ開けようとバンバン車体を叩いたり、何語か分からない言葉で喚きながらノブをガチャガチャさせている。

怖い…正直…

突如、豹変してしまった麗子。

原因は分かっている。

外人墓地に「出る」と云う噂を聞いた俺達は、真夏の深夜にわざわざこんな所まで肝試しに来たんだ。

しかし車で周辺を軽く見て回ったものの、比較的街灯の多いこの墓地は洋式の四角い墓石がただ規則正しく並んでいるだけで、これといった異変も怪現象も起こらなかった。

すると苛ついた龍が、事もあろうにその墓石の中の一つに中指をおったてながらジョロジョロと小便を引っ掛けてしまったんだ。

慌てて止めに入った麗子だったが、突然胸を抑えながら苦しそうにしてうずくまり、一転ゲラゲラと笑い出したかと思えば、その墓石の前の土を素手で掘り始めた。

実はもうその時から麗子は何処の国の言葉か分からない、理解不能な叫び声を上げていたよ。

突然の事に呆気に取られている俺達はどうする事も出来ずに唯その光景を暫く眺めていたが、龍が麗子の名を呼んだ瞬間、土を掘る手がピタリと止まり、此方を振り返ったんだ。

誰だよお前?

俺の心の声だ。

まるで別人としか言いようがない程に麗子の顔は変形していた。

細かった筈の目はこれでもかと見開き俺達を睨みつけ、口からは涎と共に大量の泥がボタボタと滴っている。喰ってたんだよ、泥を…

次の瞬間、体に大きなバネでも入っているかの様にビヨン!と跳び上がった麗子は、あーあーと奇声を発しながら此方へと向かって走って来た。

恥ずかしながら腰を抜かしてしまった俺はその場から動けなかったが、香織と龍はあの走塁王「福本豊」顔負けのダッシュでクラウンへと逃げ込んだ。

狙いは小便を引っ掛けた龍の様だ。

何故なら麗子は座り込む俺に見向きもせず、二人の後を追ってクラウンのボディをバチバチと叩き始めたからだ。

買ったばかりの新古車、一般人の夢クラウンをバチバチと…たまに鋭い蹴りも何発か入っている。

正直、俺は麗子の変貌ぶりや龍の身の安全よりも愛車クラウンがとても心配だった。

白のボディーが泥で汚され、ミラーが飛び、車体が変形していく様をとても直視出来なくなった俺は、ブラックメンソール1ミリを吹かしながらパノラマに広がる綺麗な夜景に目を移したという事なのだ。

これは夢なのだろうか?頼む夢であってくれ!心の中の俺が叫ぶ。

正に「憑依」としか言いようがないこの事態に、俺の脳味噌がどうしてもついていかないのだ。

「…ひひ…」

何故か逆に笑いが込み上げてきた。人間とは実に不思議なものだ。



キラン

満点の夜空に何かが光った。

「 あ、流れ星!」

願い事をしようと素早くスマホを取り出したものの勿論間に合う訳も無く、俺は充電が15%まで減ってしまった電話を再度内ポケットに突っ込んだ。

話を整理してみよう。

龍がヘマをしたせいで突如豹変してしまった麗子。

別人の様に顔を変え、髪を振り乱しながら他国語の奇声を上げて俺の愛車の破壊をいまだに続けている。

今の麗子は麗子であって麗子では無い。麗子に似てはいるが麗子自身の考えで動いている訳では無く、麗子の中に憑依した何者かが麗子の体を乗っ取り、麗子のフリをして麗子の体を操っているのだ麗子。

ふぅ…

ダアアアアン!!!

「 あーあ、あいつボンネットの上に乗っちゃったよ…」

ドアロックが解除出来ないと悟ったのか、あろうことか麗子はブロックを抱えてボンネットの上に這い上がり飛び跳ね始めた。

まさかその手に持ったブロックでフロント硝子を叩き割るつもりだとでも云うのだろうか…嘘だろ?…

「 ぐす…」

突如、鼻が詰まったかと感じた途端俺の頬をさらりと涙が伝った。それは嬉し涙とも悔し涙とも違う、何か別の感情がその時俺の胸を支配していた。

庶民の夢クラウン

月四万の三年ローン

保険屋の番号をスマホでチェックする。充電は既に8%を表示している。

恐らく車の中で怯えている香織と龍には俺のこの気持ちは分かるまい。お前らの置かれている状況も中々にハードかもしれないが、今の俺に比べたらピロリ菌とシロナガスクジラ程の差があるだろうな。

「 …ひひ…」

ガアアアアアン!!!

遂に麗子がブロックを硝子に投げつけた。

しかし鈍い音をさせ跳ね返ったブロックがまともに麗子の体にブチ当たり、ドシャリと後ろへと吹っ飛んで行った。

「 ざまぁみやがれ…ひひ…」

心の中で軽く毒づいた後、俺は少し後悔した。

確かに今の麗子は洒落にならない。得体の知れない何かに支配されているのは間違いないだろう。

しかしそれを笑うという事は香織の親友を笑うという事だ。俺は一人心の中で反省した後、後ろのポッケから特殊警棒を取り出した。

俺は今まで運動部に所属した事も無ければ、武術なども習った事は無い。しかし四歳から喧嘩という実戦で戦って来た経験と知識と度胸は持ち合わせているつもりだ。

取り憑かれているとはいえ所詮は女。ここ十年程は連戦連勝のロビン様がこんな基地外に負ける理由は一つも無いのである。

「 おい!麗子!!」

返事は無い。

奴は先程の一撃でボンネットの向こうへとすっ飛んでしまってから、気を失ってしまったのかまだ姿を現さない。

「 い、今の内に逃げるか…」

俺は警棒を伸ばしたまま、いつでも殴りかかれる体制を取りジリジリと愛車クラウンの元へと近づいていった。

そこでふと妙な違和感に気付いた。

静かだ…

先程まであった潮風に煽られていた木々の音が消えている…

「 …………」

クラウンを見ると龍と香織が車の中から、俺の方を指差して大声で怒鳴っているように見える。

無論、窓が閉まっているので奴等が何を言っているのかは全く分からない。

首元に妙な冷気が走る。

後ろ…?

もしかして龍達は俺の後ろを指差しているのか?

ギャーギャー!!

振り返ろうとした時、突然左手の森から数羽の大きな鳥が飛びたった。

「 ち、ビビらせんじゃねぇよこの野郎!!!」

俺は鳥に石を投げてやろうと足元に目をやり屈み込んだ。その時左目の視界の隅にそれを捉えたのだ。

白い裸足の脚

それは俺のすぐ後ろに立っているようだ。

「 ……麗子…か…?」

俺は瞬時にそれが麗子だと見抜いた。

しかし残念な事に武器の特殊警棒は石を拾う為、先程ポッケにしまい込んでしまっている。

これは素手の肉弾戦に切り替える必要があった。

麗子は卑怯にも俺の背後を取っているものの、いつでも攻撃が出来ると気を抜いている筈だ。幸いこちらが気付いている事はまだバレてはいない。

喧嘩屋の俺が取る行動はただ一つ、ノーモーションでの上段後ろ回し蹴りだ。もうこれしか無い!!

「 うりゃーー!!!」

ドスウ!!!

決まった!

モロに首に入った!

ドシャリと倒れ込む音がして、すかさず俺は麗子に馬乗りになりトドメの拳を振り上げた。

誰だよお前…

俺の心の声だ。

月明かりが照らし出すその顔は、麗子とは似ても似つかない汚らしいオッさんだった。

いや只のオッさんでは無い。こいつは黒人だ、しかもゴリゴリのやつだ。

そいつは白目を剥き、口から血と共に黄緑色の液体をドクドクと吐き出している。

しかも糞全裸!!

「 胸毛気色悪い!!!∑(゚Д゚)」

俺は本気の一発をそいつの顔面に振り下ろした。

グシャ!っと顔が潰れ、そいつはピクリとも動かなくなった。

「 …………」


ジャリ… ジャリ… ジャリ…


俺は肩で息を整えながらも、背後から近づいて来るその足音に気付いていた。

どうやら一人では無い。


ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ…

振り向くと、街灯の下から墓石の細道をこちらに向かって歩いてくる数人の男。いや女もいる。

そいつらは何故か皆全裸で、頭を斜めに傾け、両手をこちらに向けながらのスタイルでアーアー言いながらゆっくりと歩いてくる。

「 はいはい、ゾンビゾンビ!」

俺はポッケからまた特殊警棒を取り出し、冗談の様なこの展開に本気の怒りをおぼえた。

「 てめーら!ここはジャパンだぞ!! ゾンビは他国でやれ、コンちくしょーが!!!」

完全にキレてしまった俺は、これがマジで夢であってくれと願いつつもそいつらに向かって殴りかかった。

「うおおおおお!!!」

ガス!!ドス!!バシ!!

「はい次ぃ!!」

ガス!!ドス!!バシ!!

「ヒャッハー!!」

面白い様に攻撃が決まり俺がヒャッハーするのも無理は無い。幸いこいつらは最近流行りの走るゾンビとは違い、バタリアン時代の古いタイプのゾンビのようだ。

あーあー言いながらただユラユラと歩いて来るだけなので、弱いも何もスキだらけで糞ダセえ単細胞ゾンビだった。

ガス!!ドス!!バシ!!

「へいへいへい、カモンカモン!!お代わりプリーーズ!!(´▽`) '`,、'`,、」

ガス!!ドス!!バシ!!

奴らは心臓、もしくは頭、つまり脳味噌を破壊すれば動かなくなる。奴等に噛まれさえしなければ楽勝。でも噛まれたら大変、俺もゾンビになってしまう。でも動きがノロマなのでその心配は皆無。

それは「OF THA DEAD」シリーズを大体見尽くしている俺にとっては常識なのである。

「へへ、貴様ら俺を甘く見ていたようだな!この死に損ないが!全員次こそ間違い無く地獄に送ってやるぜ!ひひゃひゃひゃ(´▽`) '`,、'`,、」

ガス!!ドス!!バシ!!

警棒を振り下ろす度にグチャリと鈍い音がしてめり込み、脳髄と思しきドロドロの液体が飛んで来る。既に俺の体は奴らの返り血で真っ赤に染まっている事だろう。気持ち悪りぃがこの際仕方ない、全員眠らせてから考える事にしよう。

ふう、もう二十体ぐらいは殴り倒しただろうか?振り返ると奴等の動かなくなった夥しい数の死体が転がっている。

そして、漸く今目の前をユラユラと歩くゾンビは残り一体となった。その格好からして生前牧師をしていた老人だと見受けられた。

「へへ、余裕余裕♪♪」

牧師は他の奴等と違ってある種異様なオーラを纏い、ボソボソと何かを呟いていた。両の目玉は抜け落ち、左手は肩からゴッソリと千切れ無くなっている。

ピカ!ゴロゴロゴロゴロ!!ピシャン!バリバリバリバリ!!!

突然、空からの雷鳴が牧師の後ろに聳え立つ巨木に降り注いだ。

バキバキと真っ二つに裂ける巨木。

それを待っていたかの様に牧師は右手を天高く突き上げ、大声で何かを叫んだ。

『〆$○+%・€#<°!!!』

ゴロゴロゴロゴロ…

また夜空が鈍い光と共に唸りだした。どうやらやはりこいつが最後のラスボスの様だ。

『〆$○+%・€#<°!!!』

ピカピカ!!ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ピカピカ!!




「…………」

雷鳴が鳴り止み、牧師は右手を挙げたまま微動だにしない。


何も起きなかった。


「へ、この見掛け倒し野郎が!(´▽`) '`,、'`,、」

少し恐怖をおぼえてしまった自分が恥ずかしくなった俺は、この基地外牧師にトドメを刺すべく腰掛けていた石碑から立ち上がろうとした。

「……ぐはっ!!」

動けない…

見ると土の中から伸びた紫色の分厚い手が俺の両足首を掴んでいる。振り払おうとも物凄い力でビクともしない。

「は、離せこんちくしょう!!」

ガシ!!

「ふ、ふひょう!!( ´བ` ) 」

直で触るのはキモいので警棒でその手を殴ろうとしたが、誤って自分の爪先を殴ってしまった。痛すぎる。爪が剥がれたかもしれない。

「…うう…いてて…」

『〆$○+%・€#<°!!!』

痛みで項垂れる俺の髪の毛をガシリと何者かに掴まれた。強引に顔をグイと引き上げられる。

目の前には顔面血だらけの歯を剥いた牧師のドアップ。

『 ユー達はとんでもない事をしでかしてしまった…ミー達のボスである「アヤトラ・サディク・ジュンダラー・サセコビッチ」の墓に小便をかけてしまったのだ…決してサセコビッチ様はユー達は許さないだろう…許さない…サセコビッチは許さない…もう一度言う、サセコビッチは許さない…』

「サセコビッチ…?」

先程まで理解不能だった牧師の言葉が突如、日本語で直接脳に流れ込んできた。妙な説得力のある牧師の言葉に俺の身体は震えが止まらない。

ゴロゴロゴロゴロ!!

またも雷鳴が。

『〆$○+%・€#<°!!!』

「や、やべ!」

牧師はまた変な呪文の様な叫びをあげた。俺を喰うつもりなのか大口を開けている。

『怒りと共にユー達が我らの封印を解いたのだ!死を持って償いたもう!サセコビッチ様へ死を持って償いたもう!ガアアアアア!!!』

「う、うわあああああ!!」

ゴロゴロゴロゴロ!!

「兄貴!!頭下げろー!!」

バコオオオオオン!!

背後からの龍の叫びが聞こえた瞬間、物凄い爆発音と共に目の前の牧師の頭が一瞬で無くなった。そして数秒後、首を失った首からは水圧の弱いシャワーの様にジュクジュクと真っ赤な血が溢れ出して来た。

ドシャリ…

牧師の身体は痙攣しながらゆっくりと地に堕ちた。

振り返ると金属バットを手にした龍が震えながら立っていた。

「良かった兄貴!間に合った!」

龍は涙と鼻水をぐしゃぐしゃにした情けない顔でへなへなと膝を着いた。多分クラウンのトランクに忍ばせておいた金本サイン入りの金属バットを持って来たのだろう。

足元を見ると先程俺の脚を掴んでいた不気味な手も消えている。

「お、おう、サンキューな!ちょっとだけヤバかったぜ…へへ…」

「 兄貴、笑ってる場合じゃないすよ!は、早く逃げないと!」

「ふっ…情けない顔しやがって、ゾンビ共は全員俺がやっちまったから大丈夫だよ、そんなあせんなよ龍wわははは!」

「あ、兄貴!あれ!」

龍が指さす方を見ると、先程金属バットで吹っ飛ばされた牧師の生首がゴロゴロとこちらに向かって転がって来ていた。

そして俺達と目が合う角度でピタリと止まった牧師は、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。

『ユー達はサセコビッチ様を甘く見ているようだな…一度復活されたサセコビッチ様を止める事はもう誰にも出来ない…その肉体が死のうと、また違う形で再生されるだろう…ユー達はサセコビッチ様から逃れる術は…ないのだ…フオッホッホッホッホッ!!ぐ、ぐはあああ!!』

そこまで言った所で牧師は動かなくなり、絶命した。

「…………」

さっきまであれ程明るかった街灯が雷の影響を受けたのかその光力を弱めボンヤリと墓場を照らし、風の音も無い完全な静寂と生温い空気が辺りを支配している。

「あ、兄貴…サセコビッチってなんすか?」

「俺に聞くなよ知るかバカ!」

イライラする。夢ならもう醒めてもいい頃だ。しかしリアル過ぎるこの現状。震えの止まらないこの両脚。牧師が死んだ今もまだ緩む事の無い緊張感。そして何か忘れている…

何か…

龍が俺の現状を察し肩を貸してくれた。墓場を見てももうゾンビの姿は見えない。やはりもう終わったのか?…

強烈な臭気が鼻を突いた。

足元の牧師の頭から水蒸気の様な煙があがっている。

「あ、兄貴あれ!」

見ると先程のゾンビ共も同様、酷いアンモニア臭を漂わせながらモクモクと煙を上げ溶け出していた。

ジュン…ジュワアアアア…アア…


そしてゾンビ共は跡形も無く消えた。


夜空を見上げると雨雲も消え去り、ここへ来た時と同じ満点の星空が瞬いている。綺麗だ。

「宇宙にいるみたい」

隣りで龍がボソリと気持ち悪い言葉を発した。でも何か忘れている気がする…

何か…

返り血を浴びた上着を脱ぎ捨て、タンクトップ一枚になった俺は車に戻るのを躊躇った。あれ程麗子にボコボコにされた愛車クラウンを直視出来る自信が無かったのだ。んっ?

麗子…?

麗子…麗子…

麗子!!

その時、クラウンのボンネットの向こうで白い人影が動いた。完全にさっきまでの死闘で麗子の存在を忘れてしまっていた。

麗子はどうなったのか?豹変した理由があいつらであるとするならば、あいつらが死んだ事により麗子はあいつらの呪縛、憑依から解放されて元の自分を取り戻したのだろうか?

俺はクラウンの心配よりも麗子の心配の方が先だという事に気付き、龍を囮に使う事にした。

「り、龍…麗子…麗子の様子見て来い!俺はクラウンのエンジンかけて香織と待ってっから」

「ちょ、ちょっと何いってんすか兄貴!!無理ですよさっきの麗子さん兄貴も見たでしょ?完全にヤバイっすよあれ!兄貴が見て来て下さいよ!」

龍は金本サイン入りの金属バットを俺に押し付けると、ジェリー並みのスピードでクラウンへと乗り込んでしまった。

「あいつ足だけは速ええよな、ちぇっ!!」

先程の動く白い人影はまだ動かずに突っ立っている。背後の森の影の影響でボンヤリとしか確認は出来ないが多分麗子で間違いないだろう。

まあ、たとえ麗子があのままの状態で襲いかかって来たとしても勝てる自信はある。こいつで頭を吹き飛ばしてやるだけだ。

余裕だ。

俺はクラウンの後ろからボンネットの前に立っているであろう麗子に向かって叫んだ。

「おい麗子!お前は麗子なのか?!」

我ながらよく分からない質問を投げかけてしまった。しかしその人影はその声に反応する事も無く依然突っ立ったままで動く気配がない。

サセコビッチ…

突然、牧師の声が脳裏を掠めた。

サセコビッチ…サセコビッチ…サセコビッチ…サセコビッチ…

「おい、サセコ!!」

つい間違えて麗子を「サセコ」と呼んでしまった。その瞬間人影がゆらりと動いた。

そして…

『ブギャアアアアアアア!!!』

麗子はまるで猫の声を拡声機を通して聞いたかの様な物凄い音量の奇声を発し、またもやドン!とクラウンのボンネットに飛び乗ってしまった。

『ブギャア!!ブギャア!!ブギャアアアアアアアアアアア!!!』

サセコと呼ばれたのが勘に触ったのかは分からないが、麗子はメチャクチャに怒っている様だ。

ドン!ドン!と闇雲にボンネットを踏み鳴らしながら、終いには四つん這い状態になり両手両足でボンネットを叩き始めてしまった。

「くっ!クラウンが!俺のクラウンが!ち、畜生!!」

俺の中で何かが弾けた。

それは怒りが恐怖と痛みに打ち勝った瞬間でもあった。実は相手が香織の親友「麗子」だという事もあり、なるべく暴力では解決しない方向で考えていた。

*しかし相手が麗子の様で麗子ではない存在(多分サセコビッチ)

*龍と香織を安全に帰さねばならないという使命感の崩壊。

*そして何より俺の分身とも言える愛車クラウンへの許す事の出来ない酷い仕打ち。破壊。

以上、この三点が俺の当初の誓いを打ち破ってしまったのだからもう止められない。

「うりゃあああ!サセコビッチこの野郎!てめぇもう許さねえ!絶対許さねえ!脳みそブチまけて口から手ぇ突っ込んで背骨カランコロン♪いわしたろかボケえええ!!」

俺はバットを振り上げてボンネットに飛び乗り、躊躇する事無く麗子の脳天に渾身の一発を振り下ろした。

【続く】
[5930] サンクス
やあロビンミッシェルだ。

コメントありがとう!犬も好きだが動物は全て好きだ。最近はシマフクロウにハマっているよ…ひひ…
[5929]
ゴンくんつぶれちゃったの?すっごく切ないんだけど…。ロビンさん犬大好きですよね?文章から伝わってきます、私も犬大好きです。特に柴犬♪
[5928] 勇者ゴン
動物の話は切ないなあ…。
[5925] 勇者ゴン、俺達はお前を忘れない
やあロビンミッシェルだ。

俺の話に幾度となく登場する犬、マモル。だが今回はマモルの話では無く己の指名を全うした知られざる名犬「ゴン」の話をさせて貰う。

時は十年も前に遡る。

当時、10tダンプを生業としていた俺は毎日の様にとある採石場へと出入りしていた。

そこは過去に雨による地滑りで社員二十名が生き埋めになったり、これは噂だがヤク○が山の上に死体を埋めに来ているという話など、まぁどこの山にでもある様な曰く付き?の山だった。



その日俺は線路に引く栗石を運ぶ為夜勤に出ていた。全ての石を線路に引き終わったのは午前二時。次の日も朝六時から出勤だった為、そのまま採石場に戻りダンプで仮眠を取る事にした。

入り口の太いチェーンを解除し、二十四時間照明のついた比較的明るい詰所の横にダンプを着けて、エンジンを切った。

国道から離れた山の中にあるこの場所は耳がキーンとなるほど静かで、この広い採石場に自分一人しかいないという不安な気持ちと、先程も述べた曰くなどもあってか妙に心細くなる。いつもの事だから慣れてはいるがな。

一月中旬とあって瞬く間にヒーターの熱も冷め吐く息も白くなり、俺はキャビンの後ろに用意しておいた寝袋に潜り込んだ。



「 ちぇ、ビールでも買ってくりゃ良かったかな…」

いつもなら直ぐに夢の中へと行けるのだが、なぜかその日に限って中々寝付けなかった。

時折山から吹き下ろしてくる突風でキャビンがグラリと揺れる。

昨晩よく寝たからなのか一向に睡魔が襲って来る気配が無いので、仕方なく気分転換にスマホで音楽を聴きながら一服する事にした。

煙草を取りに運転席へ戻り、窓を開けて火をつける。

外気が一気に車内へと押し寄せ身震いする。キンと冷え切った空気。煙りを吐き出しながらすぐそばに聳え立っている高さ五十mは有るであろう岩壁を見上げた。

これがもし地滑りして来たら本当に一溜まりもないだろうな、と改めて実際に過去にあった惨劇が頭を過った。

そう言えば亡くなった人の中に同級生の父親もいた。休憩中、小屋で麻雀をしていた最中に小屋ごと土砂に流され生き埋めになったそうだ。そして数年経った今でも身体はまだ発見されていない。

無念だったろうな…

クゥん…

干渉に耽っていると車の足元から鳴き声がした。見るとこの採石場で飼われている元野良犬の「ゴン」がちょこんとお座りして俺を見上げていた。

「今日は何も持ってねぇんだ、すまんな」

クゥん…

いつもダンプを見ると寄ってきて弁当のオカズをねだるゴン。可愛い///

元は野良だが真っ白な紀州犬で、生還な顔立ちをしており、顔馴染みの無い部外者を見るとドスの効いた唸り声をあげる。深夜の採石泥棒から山を守る立派な番犬として皆に可愛がられているのだ。

ゴンは赤い舌をベロンと出しながら暫く俺を見上げていたが、何も貰えないと悟ったのか突然足早に奥の暗闇へと姿を消した。



あれから三十分くらい経っただろうか、寝袋の中で漸くうつらうつらし出した時に微かに窓の外からゴンの唸り声がした。

またかよと思い無視して寝ようとしたが、いつまで経ってもしつこく唸り続けるので渋々窓を開けて下を覗くと、さっきと同じ位置にゴンがお座りして此方を見上げていた。

「どうした?飯なら無いっつっただろ…が?!」

俺はゴンの横に転がっているその白い塊を見て言葉を呑んでしまった。

それはまだ所々に肉と髪の毛が付着している頭蓋骨だった。

言葉に詰まる俺を見て、ゴンは嬉しそうに尻尾を振りながらそれをカプリと咥え、また先程の暗闇へと走り去って行った。



何者かにキャビンのドアをドンドンと叩かれ目を醒ました俺は慌てて腕時計で時間を確認した。七時。起きる予定を三十分もオーバーしている。

慌てて車を降りて詰所に駆け込み、待ってくれている配車係に詫びを入れた。いつもは硝子越しに「おはよう!」と元気な笑顔で迎えてくれる配車係だが、今日は妙に沈んだ顔で挨拶もなく俺をジッと見つめてくる。

やっぱ怒ってる?俺はもう一度詫びを入れようと彼に声を掛けた。すると彼は首を振りながらこう言った。

「今朝、ゴンがプールの所でペッシャンコになって浮かんでいたんス。ロビンさん心当たりありませんか?」

そう言って彼に付いて行くと、詰所の裏手に変わり果てたゴンの姿があった。

俺は目の前が真っ暗になった。入り口のチェーンを開けて採石場に入ると自動的にまずその足洗いのプールを通らなければらならない。しかし昨晩そこを通った車は俺のダンプだけだ。

俺がゴンを轢いた?

マジかよ…

嘘だろ… 昨日と言ってもまだ数時間前の記憶が鮮明に蘇って来た。

俺が詰所の横でエンジンを切った後もゴンはまだ生きていた。はっきりと見た。二回も…そしてハッと俺は何故か今まで完全に忘れていた頭蓋骨の事を思い出した。

気付くと俺は配車係の彼を連れて、昨晩ゴンが消えて行った方向の林へと二人で分け入っていた。

ゴンが付けたのであろう狭く歩きにくい獣道をどんどん進むと、今は掘削のされていない裏手の開けた場所へ出た。

足元に白い物が落ちている。手に取ると何かの動物の骨のようだ。

配車係の彼は歩きながら言った。

「数年前にここで土砂崩れがあって沢山の人が生き埋めになったんです…」

知ってるよ (小声)

下には大きな池がありそこへ大量の土砂が流れ込んで半分程を埋めた状態で固まっていた。数年経っているとはいえ当時の事故のその凄まじさが伝わって来た。

数十m先でまた白い物が転がっている。俺達はまるで何かに誘導されるかの様にその骨を辿って行った。

すると高く盛り上がった山の上から微かだが風に乗って低い唸り声の様なものが聞こえた。見上げるとなんと死んだ筈のゴンがお座りして此方を見下ろしていた。

配車係の彼には聞こえていないのか見向きもせずに池の方へと向かって歩いている。俺は配車係の彼を呼び止めもせずにゴンがいる山の頂上を目指して走り出していた。

すると後ろから配車係の彼が追いかけて来て俺の作業着の襟を掴んで来た。声になってない掠れ声で「いっちゃ駄目です!あれ見て下さい!ロビンさんあれ見えてないんですか?!」

見ると先程ゴンが座っていた場所に俺と同じ採石場指定の作業着を来た人間が立っていた。

一、二、三…いや、十人以上いる。皆服は泥だらけで紫色の無表情な顔だ。ジッと俺達を見ている。

今までビュービュー吹いていた風の音が止み、俺の嫌いなカラスの群れがそいつらの上を旋回している。

何故かこれだけ距離があるにも拘らずはっきりと表情までもが見てとれる。無表情なのに物悲しいその表情…

それは生きてる人間の顔では無かった。



一度詰所に戻り上の人間に事情を話した所、半信半疑ではあったが山の作業員数人を連れて件の場所を調べに行ってくれた。情けないが俺達二人はそこへ怖くて行けなかったのが正直な所だ。

結果、ゴンが座っていた土砂の山の上辺りには大量の人骨が掘り起こされた状態だったそうだ。警察が言うには数人では効かない骨の量だったという。それは恐らく不明者の物で間違いないだろうという事だった。





ゴン…

お前は命尽きるその時まで山の為に働いていたんだな。人知れず毎日掘り起こしていたのだろう…お前はそれを俺に伝えたかったんだな?

俺は涙を堪えて手を合わせた。

ゴンを埋めた所に皆が買ってきた大量のドッグフードや、生前好物だった骨付き肉が添えられている。

「さようなら」

残念ながら俺に轢かれて星になってしまったゴンだがˉ̞̭ ( ›◡ु‹ ) ˄̻ ̊ 彼の偉業はこれからも後世へと語り継がれて行く事だろう。


ゴン、ありがとう。

そして、グッジョブ、ゴン!!


【了】
[5527] 異形、お持ち帰りしました!

修学旅行先の長崎で麗子は何度も気を失った。

後日、現像された写真には麗子の顔を覆い隠す様に纏わり付く無数の赤黒い骨の見えた手が写っていた。

夏美は一週間学校を休んでいる麗子を心配し家に行った。すると麗子はげっそりと痩せ細り号泣しながら抱きついてきたらしい。

家の中に入った瞬間焦げた臭いと右肩に鈍痛を覚えた為、玄関、風呂、月明かりの入る窓が有る部屋二箇所に盛り塩をし、何か良からぬ者を連れて来たみたいだと話した。

麗子は喉の渇きが止まらないらしく絶えずペットボトルの水を飲み続けている。

リビングで話している時も誰も居ない筈の二階から大勢の人が歩き回る足音や、ドアの開閉する音が何度となく続いていた。

帰り際、麗子の後ろ手の廊下の暗がりに二メートルはある黒い塊に手と足が生えただけの歪な者が立っているのが見えた為、夏美の強い提案でその日から麗子は近所の親戚の家に泊まる事になった。

因みに麗子の両親には全く見えないし、危害もない。

家に憑いていると思った夏美は、何度も麗子を通して彼女の両親に引っ越しを促したが全く相手にして貰えなかった。

結局、三ヶ月程してから夏美と共に麗子の実家を訪れてみると前の様な臭いも、嫌な感じも、異形の姿も綺麗さっぱり消えていた為、麗子はまたその家へと戻る事になった。

その頃には身体の異変も治まり、体重も元に戻って元気を取り戻していたそうだ。

夏美曰く、以来彼女の中に眠っていた何かが目醒めてしまったのか?大人しく口数の少なかった筈の性格が激変し、麗子は夏美以上のオラオラ系に変身してしまったと云う。

∑(゚Д゚)

そしてその後、頻繁に彼女の周りで不思議な出来事が起こり始めたのはまた別の話…

【了】
[5517] 120R
とても良かったと思います。個人的には、『何で忘れていた。あの地獄のような、天国のような時間を』の部分、地獄のようなはいらないと思います。暗黒の世界よりも漆黒の闇に走った閃光に比重を置いてる筈だから。当時はみんなが耀いてたんですもんね。
[5509] 120R
霧がやけに濃い…車で仕事場へ向かう途中、
俺は渋滞にはまり、
死亡事故でもあったか…根元に花が生けられている電柱の真横で停まった。
いつもは遅刻ギリギリで、この前をすっ飛ばして行くから気付きもしなかった。
花の萎れ具合から見てそれほど、生けられて日は経っていないようだ。
駅前からつづく坂…上り終える手前で右へ折れる120R…
その僅か先、左からの道と交わるT字路がある。
混み具合から見て、そこが原因とは思えない…
更に数百メートル先にある片側3車線の国道で何かあった…と、考えるのが妥当か。
道を変えるにしてもT字路まで出ないとなんともならん…
頑として動かない車列…サイドは引かず、フットブレーキを踏みつけて待つことにする。
こんな市街地の中心にまで…
北関東の一地方都市と言えども、駅前通りまで濃い霧が覆うなんて珍しい事だ。
生まれも育ちもずっと地元な俺でも、こんなことは今までの記憶にない。
視界は十メートル程度…ナビシート越し…
道路脇に立ち並ぶシャッターの閉じた店先も退色している…
水墨画というより、和紙そのものの白さだな。

煙る視界の中に人影が立った。
後姿…黒の短髪を立て、でかいフードが付いた黒いダウンのコートを着た男。
件の電柱、生けられた花の前。
疲れたように落ちた肩。
あの後姿、突然…現れたように思えたのだが…事故の関係者か。

コーナー途中にある電柱…ここは昔から死亡事故が多い。
今の若い奴は知っているかどうか…
人食い電柱…
昔から、ここで多くの街乗り…暴走族が命を散らしている。

今では四輪など転がしてはいるが、
俺も高校の時分は中古で買ったVFR400Rを大事に乗っていた。
NC30ではなくNC24。
それを駆って休日は山へ出掛けては
九十九に折れるコーナーで膝を削りながらガンガン攻めまくっていた。
反対に、活動時間は深夜帯、寝静まった街中を爆音鳴らして疾駆する街乗りの連中…
暴走族…そいつらの間で流行っていた度胸試し…
いや、そんな甘いもんじゃないな…
狂気に駆られたバイク二台で競い合うレースがあった。

『ガンラン』もしかすると『ランガン』だったか…

銃口から撃ち出された弾丸のようにゴールを目指し、ノンストップで突っ走るだけの遊び。
この坂を上りきり、T字路を直進して1kmほど行ったところに女子高がある。
その校門前押しボタン式信号の横断歩道をスタートラインに見立て、
駅前ロータリー内にある横断歩道をゴールとする。
途中にある片側3車線の国道から…数箇所ある交差点の信号を
全て『青』であると想定し…同ベクトルでスピードを競い争われるチキンレース。
そのクライマックスが坂上の交差点とこの下り120Rだ。
コーナー手前の交差点が青ならいいが、
赤なら横合いから車が顔を出す可能性は深夜だろうとゼロではない。
対向車だってもちろん来る。
それでもハイスピードで120Rを抜けるなら、
度胸一発、事故るのを覚悟で一度、対向車線…アウト側へ車体を振り出し
そこからインへ絞りに行かねば、とても曲がれたものではない。
死線を越えた先に存在するライン…
魂が凍りつくギリギリのブレーキング、
深く切り込み弧を描く、息を飲むほど美しいコーナーリング、
余韻を残す優雅な立ち上がり、
ロケットのような加速をみせ、小気味良くコーナーを脱出していく…
最高のパフォーマンスをギャラリーに魅せつけてこそ、
走り屋の醍醐味だ。

掘り返される記憶…
俺は一度だけ、若気の至りで…
俺はそのレースをやった。

深夜…ヘッドライトが灯す前方…色が付いた僅かな世界…
ハイスピード故…更に狭まる視界…
寒さと命をベッドにした重みで左手が…クラッチの繋ぎが甘くなる。
凍えた右手がスロットルを絞ることを拒否したように動かない。
なのに全身の細胞は狂喜している。魂が加速せよと命じてくる。
脳内麻薬が意識を冒して恐怖心を奪い、
集中力が凍てついた下界を遮断する。
瞬間、車体がロケットにでもなったかのように加速しだした。
スタートダッシュでの遅れを取り戻す。
横並びで飛び込む片側三車線…信号は青…僥倖!
人車一体となって直線を駆け抜ける。
前方で輝く赤信号への恐怖心が嘘のように退いていく。
対向車はない。歩道を走る新聞配達のバイク…
僅かに途切れた集中力…
五本目の交差点を渡りきる寸前、
横道から猛スピードで出てきた車にケツを引っ掛けられ…暴れる車体…
視界が急速で横へ流れていく。
衝撃、ガードレールの袖で膝を砕かれた。
だが、転倒だけは免れる。
暴れる相棒を押さえ込みにかかった。
奇跡のような操作…神域へ到達したバランス感覚…
氷の粒が撒かれたように輝く路上…立て直した。
バイクは動く、俺も大丈夫だ。
まだ、走れる。
離されたあいつのテールランプを無我夢中で追いかける。
最後の120R…コンマ数秒遅れで飛び込む…
外へ振ったが殺されている俺のライン…
絶対的優位に立つあいつとのラインが交錯…行くな!
妖霊星(よれぼし)の如き、赤いテールランプが眼前を横滑りしていく。
生きて踏んだゴールライン。
駅のトイレで便器と相撲を取りゲェゲェ吐いた。
吐く物もなくなり胃液を搾り出す
現実に立ち戻り…自分が如何に馬鹿な事をしたか…
何を代償に何を得ようとしていたのか…
手足の力が抜けて身動きすら侭ならぬ…
割れ鐘を叩くような頭痛が幾度も襲う…
そこに達成感はなく地獄があった。
俺の相手は…あの絶対的優位に立っていたあいつは…
最後の最後で…バランスを崩し…バイクと共に…
あの電柱へ磔となって死んだ。

そうだ…あの電柱…墓標(grave marker)とも呼ばれていた。
コーナーを曲がりきれなかった奴が行き着く場所…
骨砕き…肉挽き器…
仏壇、祭壇、卒塔婆…

目立ちたかった。
ただ、それだけだった。
あいつらが高校前をスタート地点に選んだのは…女子校生の注目を惹きたかったから…
伝説だとか事実を過大に飾り、ただ…ナンパの手管に加えたかったから…
族なんかよりも俺達の方が格好良い…
族なんかより俺達の方が圧倒的に速い…
街乗りの外見だけで粋がってる奴等との違いを見せつけてやると…
お前らとはスピードレンジが違う…
ガードレールの外は切立った崖…安全マージンのないギリギリの場所で磨いた技術…
ブラインドのコーナーへ飛び込める度胸と覚悟…
コースを理解し、攻略法を見つける洞察力…
全て俺等が勝っている…
口だけで何も出来ない奴等の正体を暴き出してやる。
見てろよ…

そして、レースが始まった。
族と峠の走り屋による一発勝負の対抗戦…
時間も場所も全てあちらの条件を飲んで…
結果は族の完敗…
俺は生き残って…あいつは死んだ。
ギャラリーがそれを煽った。
族の面子は完全に潰され…熱くなった奴等は再戦を望み…
ギャラリーは熱狂した。
以来、俺は街を流すことはやめた。
直したバイクと共に山へ戻った。
族の間で始まったレースは走り屋との対抗戦へ移行し、
このレースを因とした大事故が幾度も起きた。
関係の無い一般からも死傷者が出た。
規制が入り、監視が強くなっても隠れてレースは続けられた。
路面に速度抑制を図る処理がなされるまで…
この電柱は幾人もの命を奪ってきた。

渋滞はまだ続いている。
思い出に浸っていたから気が付かなかった。
電柱の前に立つ人間が五人に増えている。
全員が電柱を見ていた。
上半身裸で…腹にさらしを巻いている古風な奴もいる。
デッキブラシみたいに金色の髪を立てているのもいる。
純白の特攻服…大昔の族が好んで着ていた纏姿の奴もいる。
おかしい…まだまだ…数が増えていく。
目の前で…たなびく霧が人の形を取っていくみたいに…

花の生けられた電柱…
地面から1メートル50センチの位置…
そこには13人の名前が刻まれている。
正しくは黒の油性ペンでだが…
あのレースで生きてゴールラインを駆け抜けた人間の名前…
電柱は折れて何度か付け替えられているが…その度に、何者かの手によって書き込まれた。
何度消されても、次の日には元通りとなっている。
松葉杖をつき…電柱に俺の名を見つけたあの日…
名前しか知らない…死んだ相手へ捧げた花束…愛飲していた煙草の銘柄…
背に族の名がプリントされたB-3のフライトジャケット…
ファイアパターンのCBX400F…

ああ、そうか…
彼等は…俺に背を向けて立つ男達は…全員…
ここで散った名も残らぬ…
あの電柱は勝者の物ではなかったのか…
プライドが高くて命知らず
刹那的に生きて
刹那の中で輝いて死んだ
族達の黙示録…


前の車が動き出した。
霧も薄れていっているみたいだ。
俺は彼等を見ず走り出す。
思い出した。
レース直前…気つけに…二人で飲んだバーボンの味…
ジャックダニエルのシングルバレル…
生死を賭けた一戦が始まるというのに…
ショットグラスの中味を一息で煽り…美味いと無邪気な笑顔をしてみせた。
フライトジャケットを着込んだ後姿…
男伊達…
乾したグラスを凍えたアスファルトへ叩きつけ、割り砕く。

何故、今まで忘れていた。
安穏な生活に埋もれ…あの天国のような地獄のような時間を…
何事にも変え難い…光輝いた時間を…
今更…彼の死を悼むなど、
俺に許されることじゃない。
資格がない。

会社へ着いた俺はトイレへ直行して個室へ篭り
少し泣いた。



おわり
[5452] 旅行
友人とロスに行った時の事です。

旅行自体は、楽しかったけどごく平凡なものでした。
友人がとても慎重な子だったので、危なそうな場所にも行きませんでしたし。

アナハイムのホテルはすごく可愛かったけれど、本場のネズミの国は、意外に乗物がチャチに見え、

「こんな事なら、フロリダのネズミーワールドにすれば良かったね」

なんて言い合った程…

帰国の一日前の朝、ホテルのロビーに行くと、ソファの上に新聞が置いてありました。
勿論英字新聞なので読めませんが、見出しに

“TOKYO,GAS”

とあり、思わず手に取りました。

「…何だろう…東京ガスがなんか不祥事でもあったのかね?」

などと言い合っていると、

「May I help you?」

近づいてきた黒人男性が、親切に記事を読んでくれました。

「………」

英語で読まれてもさっぱりわからなかった私たちは、引きつった笑いを浮かべてお礼を言いました。

「あの…良かったらこれ、召し上がってください」

友人が日本語で言い、何故か“海苔巻きあられ”を袋ごと手渡しました。

「……」

彼は受け取り、怪訝そうな顔をしながら立ち去っていきました。

「…なんであられなんかあげるのよ」
「だって、お礼しなきゃいけないと思って…」


翌日…帰国した私たちは、日本中を震撼とさせるある事件のニュースに、腰を抜かすほど驚きました。

…あの新聞の見出しは、その事だったのです。

記事を読んでくれた彼は、きっと私たちを馬鹿な日本人だと思った事でしょう。


1995年3月2*日の苦い思い出です。
[5437] 黒い因縁

これは俺が毎日の様にナンパに明け暮れていた十代の頃の話だ。

その夜、いつもの様に舎弟の龍と共に神戸は三○宮の街まで繰り出していた。とっておきのギャグで見事酔っ払いの美女二人をゲットした俺達は、彼女達の提案で明○市にある心霊スポットまでドライブがてら向かう事にした。

しかし最初はウザいぐらいテンションも高くノリの良かった彼女達だったが、車を走らせて二十分程すると口数が減り出し、終いには後部座席で寝息を立て始めた。

困った事に俺も龍も心霊スポットの詳しい場所を知らない。

もう面倒くせぇからこのままひと気のない場所まで連れてってヤッちまうかと悪巧みをしていると、後ろからか細い声がした。

「 次の信号を右… 」

なんだ起きてやがったのかと思いながら(内心ガッカリ) 、言われた通りに次の信号を右折した。

緩い傾斜が続き、車は新興住宅地を抜けた。

なんか雰囲気が出て来た。

街灯も疎らになり、両サイドを山に囲まれた暗い道路が延々と続いている。後部座席からはやはり二人のスースーとした寝息が聞こえてくる。

「 フェンスを越えたら最初の角を左に曲がって…」

また背後から声がした。

言われた通りに左折する。

「 あ、兄貴!」

助手席の龍が後ろを見ながら震える声で肩を揺すってきた。なんだよとルームミラーを覗くと後部座席には誰も乗っていない。

車を急停止させ、改めて後ろを確認するがやはり誰も乗っていない。更に異様なのは車内は真っ暗な筈なのに空気がやたら濁っているのが分かる。まるで中で何かを焚いたかのようだ。

恐怖の余り俺達は声も出さずに手話とゼスチャーでこれからどうするかを話し合った。そしてとりあえず逃げるかと意見が合った時龍が俺の背後を指さした。

ゴン!ゴン!

運転席の窓をノックされ振り向くとあの二人が外に立っていた。二人とも顔を硝子に近付けて降りて来いと合図をしている。血色のない真っ白な顔だ。今思えばもうこの時から俺達も正常では無かったと思う。

言われるがままに車を降りるとまたもや二人がいない。消えた。

周りは深い闇と濃霧に包まれており数m先も見えない。しかし随分先の方に二人の歩く後ろ姿が見えた。何故か彼女達の周りだけがボンヤリと鈍く光っている。

俺達は彼女達の後を追った。

フェンスが破れた穴を抜け、獣道に近い藪漕ぎだらけの歩きにくい道を進むと大きな沼に出た。元々は大きな沼なのか?今は減水しているようだが既にこの時俺達は膝まで泥水に浸かってしまっていた。

沼の真ん中辺りにボォっと揺らめく人魂が二つ、青みを帯びた炎と共に浮いている。

勿論、頭の中ではこれ以上行ってはならないという危険信号が出ているが、足は俺達の思いを他所に一歩また一歩と沼の中へと進もうとする。

暫くすると目が慣れて来たのか人魂の中に彼女達の笑っている顔が見えた。目を釣り上げ爆笑している。なんか狐みたいな顔だ。

腰まで泥に浸かった所で急に足が前に進まなくなった。足元に何かが引っ掛かっているようだ。

右手を水の中に突っ込みそれを引き上げてみると、分厚い布の様な物が出て来た。泥に塗れていてそれが何なのかよく分からないが兎に角めちゃくちゃ重たい。

龍と二人掛かりでバサバサと泥を振り落とすように振っていると中から白く丸い塊がボロリと転がり落ちてきた。龍が横から慌ててそれを両手で掴む。

白骨。それは誰がどう見ても人骨の頭部だった。

この状況。

俺の脳が人格崩壊の危機を察知したのか頭の中で小田和正氏の「言葉に出来ない」をデジタルリマスター版で再生させた。龍は恐怖で気が触れたのか手の平の頭蓋骨に頬擦りをしている。見た事のないとても優しい顔でほっほ、ほっほ言っている…

「 あなた〜にあえ〜て♪ ほんと〜によかぁあった♪ 嬉しくて〜嬉しくて〜言葉にできな〜ぁい♪♪ 」この後の「ラーラーラ♪」は龍と肩を組みながらのコーラスで三十分程リピートで熱唱した。お陰で足がブヨブヨにふやけ、喉をやったのは言うまでもないだろう。

宙に浮かぶ人魂はこれを見て引いているのか飛び方に僅かな乱れが見えた。ここがチャンスとばかりに最後のダメ押し「びっくりする程ユートピア!」を二人掛かりで繰り出した。

ペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシペシ

ぽわん♥︎

咄嗟の判断、恐れずに機転を効かせた事が功を奏したのか二つの人魂は一つに合わさり跡形も無く消し飛んだ。

すると今まで操られていた身体は嘘の様に軽くなり、俺達は正気を取り戻した。龍は手の上に乗っている頭蓋骨を見てショックの余り顎がシャくれている。

兎にも角にも大声での熱唱と最終奥義によって死人の妖術を見事解いた俺達は、隙を見て猛ダッシュで愛車(クラウン)へと逃げ帰る事に成功した。龍とハイタッチを交わした後、後部座席を見ると美女が二人アイプチと下品なツケマにより閉じない瞼をヒクヒクと痙攣させながら気持ち良さそうに爆睡していた。

翌朝、迷ったが龍の握っていた骨を袋に詰めて警察署に持っていった。匿名にしようかとも考えたがガラケーが水没してしまった為と、直ぐに首を突っ込みたがる悲しい性格の所為である。

捜索の結果、骨の正体はある事件に関わり逃亡中だった某○○組織の構成員である事が分かった。両手両足を縛られていたらしいので多分そういう事だろう。

偶然では済まされないこの事件発覚に、俺達は死ぬ程警察に疑われ四ぱちでは済まない程の取り調べと追及と脅しを受けた。関わるんじゃなかったと後悔したが後の祭りだった。

因みに龍は取り調べ中逆ギレして警官を殴り、拳銃を奪って逃げようとして捕まり逮捕された。理由は一度本物を撃って見たかったらしい。馬鹿だ。

容疑が晴れた俺は風呂に浸かりながら考えていた。

俺達はこの世成らざる者、あの死体にあの場所に呼ばれた?では何故関係のない俺達を現場に呼び寄せたのか?何故俺達が選ばれたのか?何か理由がある筈だ。

ぴちゃん

天井から雫が一つ鼻の上に落ちてきた。

するとその瞬間、俺の頭の中に見た事もない映像が次々と流れ出した。

だだっ広い駐車場でボコボコにリンチされている男。裸にされ大勢の人間にひたすら殴る蹴るを繰り返されている。後ろ手に縛られながら苦しみもがいている。

やがて男は動かなくなり、毛布の様な物で簀巻きにされて車のトランクに押し込められた。

んっ?この車は見た事あるな…もしやクラウン?なんか色も型も俺の車に酷似しているんだけど。車番も同じだ。あれ?

車は山道をひた走り、見覚えのある破れたフェンスの横で停車した。

「 ………… 」

後はご想像通り、数人で運び出し沼に沈めてはい終了!…ふぅ…

風呂から上がると、直ぐに車(クラウン)を売ってくれた先輩に連絡を入れた。

『 お掛けになった電話番号は、現在お客様のご都合によりお繋ぎ出来ません… お掛けになった電話番号は、現在お客様のご都合… 』

ピッ…

ふ、成る程な…

【了】
[5436] 不思議な知人の話

卒論、それは大学生を悩ませる難敵である。
もちろん私も例に漏れずその難敵と戦わねばならなかったのだが、いかんせん文学部の中では浮いてしまう誰も選ばないような私の卒論テーマは、物の怪であった。

卒論に行き詰まった私に、高校からの友人が紹介してくれたのは陰気な青年でどうやら同い年らしい。彼はそういうのに詳しいんだとかなんだとか。

スマホに目を向けたまま、私に彼は確かこう聞いたのだったと思う。

「幽霊とか、物の怪とかってなんでいるんだと思う?」

そりゃ無念の想いとか凝り固まってるから、じゃねえの。と答えた私に彼は立ち上がって手招きをした。出会ってそう時間が経っていない私をどこへ連れて行くのかと、当時は不安に思ったが卒論と向き合いたくなかった私はなんとなく彼の後に続いた。

その日は午後から小雨が降っていて、あちこちに水たまりを作っていた。
大学近くの河川敷の土手を歩く彼に追いつくと、彼は私の傘に入り込んできた。
野郎と相合傘などしたくはなかったが、仕方ないと諦めることにした。

「ほら、あそこ」

彼が指差す方向には小さな水たまりがある。

「今からそこの上を赤いハイヒールを履いた足首が通るよ」

期待してその赤いハイヒールを待ったのだが、一向にこない。
なんちゃって心霊系か、と落胆する。

「無念だとかそういう感情が残ってるとか、事件が起きたとか。そういうの関係なしにいるもんだ」

こちらを少し見上げながら言う彼にはいはいと、適当に返事をして時間を無駄にした、こんなことなら卒論と向き合えばよかったと後悔する私の目の前で、雨にしては不自然に水たまりに大きな波紋が広がった。

「いただろ」

彼の声と傘を叩く雨音に混じって、

こつり、こつり

とハイヒールが地面を歩く音が聞こえた気がして、私は思わず彼の手を引いて一目散に大学へ逃げ帰った。


[5418] 白昼夢

イチパチを打っている俺の三台隣りの席で、スキンヘッドにサングラスというスジ者丸出しの出で立ちをした厳つい親父が、台を蹴ったりゴンゴンと小突いたりしている。

「 畜生、出ねえなこの台は!!」

ガン!ガン!ガン!

周りの客は巻き込まれるのを恐れてか、ソソクサと違うレーンへと移動を始めた。

しかし妙な事に席を立つ内の何人かは、俺の方を見ながら怪訝な表情を浮かべている。…気の所為か…?

ガシャ嗚呼アアアン!!!

言ってる間に、遂にハゲが調子に乗って台の硝子を割っちまった!

慌てて集まってくる従業員達。

「 なんじゃこの台は?!二万も突っ込んで一回も出ねえイチパチが何処にあんだよクソッタレ!!!」

身長二mをゆうに越える凶暴なハゲが従業員達に喰ってかかる。

ガシャアアン! ガシャアアン!

正にゴリラだ。

両腕にしがみ付いた従業員達を軽々と振り回しながらウッホ、ウッホとレーンを練り歩き、力尽きた従業員を一人ずつ振り飛ばして行く。

ガシャアアン! ガシャアアン!

「 こっち来んじゃねぇよ!」

ゴリラは一頻り店内を練り歩いた後此方に向かって戻ってきたのだ。両腕にはまだ三人の従業員がぶら下がっている。

だがしかし俺の台は確変中だ。絶対に今邪魔をさせる訳にはいかない!

俺は後ろポッケに忍ばせている特殊警棒に手をやり、何時でも攻撃が出来る体制を整えた。

ウッホ! ウッホ!

ガシャアアン! ガシャアアン!

更に二人が飛ばされて、ぶら下がっている従業員は遂に一人となった。

店長だろうか?

必死の形相でゴリラに振り飛ばされまいと懸命にしがみ付いているが、ズレた眼鏡とバーコード禿げに刺さった硝子片が妙に痛々しい。

彼方此方から上がる悲鳴や怒声にも耳を貸さず、既に野生の猛獣と化した男(ゴリラ)に最早言語は通用しない。はだけたアロハシャツの前から覗くジャングルの様なモジャモジャ胸毛を隠す事もなく雄叫びを上げた。

うおおおオオっホオおお!!!

「 あっ!!」

カシャアアアアアン!

店長の丸眼鏡がゆっくりと空中で三回転した後、地面にぶつかり粉々に割れた。と、その時だった。

ぎゃああああ嗚呼ああ!!!

突如、店長は断末魔の様な雄叫びをあげ一瞬で上着が消し飛んだ。

髪は逆立ち、赤く紅潮した顔、首、胸、腹、しかも頭からは沸騰したかの様にモクモクと湯気が上がっている。

「 おまえはボクを怒らせた!許さない!!絶対に許さない!!いいいいい!!!」

まるでカメハメ派前の「亀仙人」かの如く、ゴリゴリに隆起した筋肉をペシペシと両手で叩きながら一歩ずつゴリラとの距離を縮めて行く。

その手にはいつの間に用意したのか鋭いタガーナイフが握られていた。

左右の目はギョロギョロと生き物の様に動き、ほくそ笑みながらそれは正に秋葉原通り魔事件の「加○」を思い出させる程に完全に逝っている。

「 負け組は生まれながらにして負け組なのです、まずそれに気付きましょう。そして受け入れましょう!」

店長が意味不明な言葉を口にした瞬間、ゴリラの強烈な平手が店長の顎全体を捉えた。

バチコン!!!

グルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグル

ブチッ!!

ガシャアアン!!!

店長の首はもの凄い速さで回転した後、骨が耐え切れずに千切れてカウンターの商品棚までライナーですっ飛んで激突した。

ウッホ♪ ウッホ♪

ゴリラは嬉しそうにバナナを喰いながら勝利のダンスに興じている。

しかし妙な事に首を飛ばされた店長がフラフラとしながらもまだ倒れない。千鳥足とでも言おうか?タガーナイフを手にゆっくりと此方へと近づいて来る。

ヒヤリと背中に冷たい物が走った。

この店全員の眼が俺に集中しているのだ。

騒いでいた常連客、従業員、ゴリラまでもが無言で俺を見つめている。

「 若者が希望を持てる社会などと言われたりしているようですが意味不明です。何故そうやって社会のせいにするのか全く理解できません。あくまでも私の状況です。社会の環境ではありません。勝手に置き換えないでください!!」

店長は首の無い事を完全に無視してそう叫んだ。

「 僕にも友達はいる!でも孤独だった!生身の女に興味が無いワケでは無い!でも孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!孤独だった!」

店長は首が無いのを無視して涙を流している。

「 孤独だった!!!!」

耳元でその叫びを聞いた次の瞬間、ヌラリと光るタガーナイフが俺の頭上へと振り下ろされた。







「 おい!出ねえぞこの台!」

ガン! ガン!

その声と音に反応して俺は目を開けた。

隣りではスキンヘッドにサングラスという出で立ちの男が、煙たそうに煙草を咥えながら怒鳴っている。

夢だったのか?

確変を知らせるランプが点いた。

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…

「 よしよし、そういえば最近寝てなかったからな!寝不足の時の俺は調子がいいんだ♪♪ 」

隣りで此方を睨むゴリラを横目に、玉を空箱に滑らせる。

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ…

箱が一杯になり従業員が新しい箱を俺に差し出す。その中には血のついたタガーナイフが。

「 僕は、孤独だったんだよ… 」

目の前の硝子窓には首の無い男が俺をジッと見降ろしていた。

【了】
[5380] す、すまん!
やあロビンミッシェルだ。

また会話文主体の駄作を書いてしまった俺を許してくれ!…うぅ…

読みにくさ満点、怖さ零点の猥談だが良かったら一読してみてくれ!…ひひ…
[5377] 二代目 マモル

カラン…

カラン…

カランカラン…

カラン…カラン、カラン、カランカランカランカランカランカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ… ポテン…

『 あーだめだ!やっぱりうまく回れないなぁ(´Д` )/ よし!もう一回だ!』

カランカランカランカランカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ… ポテン…

『 くそ!ダメだ!どうしてもこのスピードに足がついていかない!もっと練習が必要だな…んっ?うわ!!』

ポテン…

『 び、びっくりさせんじゃねぇよロビン!!∑(゚Д゚)/ハァハァ… いきなりドアップの顔近付けやがってよ!』

カサカサカサカサ

『 あー落ち着く…やっぱ穴ん中が一番落ち着くわ!ふぅ…しかしロビンの野郎だらしない顔してやがったなぁw 僕を見る時の顔!ププw』








『 ふぁー良く寝たムニャムニャ…(*_*)/ 腹へったな飯、飯、』

カサカサカサカサ

『 あ!!くそ!ロビンの野郎ヒマワリの種入れてくれてねぇじゃんかバッキャロー!!Σ(゚д゚lll)んっ?あいつスマホ片手にニヤニヤしやがって何する気だ?えっ?嘘!パンツ脱いで何してんだあいつ!!!変なモン見せんじゃねぇよ馬鹿ちん!!』

カサカサカサカサ

ピンポーーン♪♪

『 ん、誰か来たのかな?』

カサカサカサカサ

『 ふぅ、あいつ今絶対エロいやつ見てたよな?ロビンの野郎チャイムが鳴った瞬間、邪魔されたのがそんなに悔しかったのか ( *`ω´)/ こんな顔してやがったw!』

ガチャリ…

『 あっ♪♪ 夏ちゃんだ!久しぶりに見たひゃっほー♪♪ 』

カサカサカサ、カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…

「 あらあらマモルは相変わらずコレ回るの下手なんだね♪♪うふふ…」

「 あらあらじゃねぇよ夏美!来るんだったら電話ぐらいしてこいよな!俺も色々用事があって忙しいんだからよ!ブツブツ…」

「 何怒ってんのよ兄貴?全然忙しそうに見えないけど何してたの?」

「 うっ!てかマモルって呼ぶんじゃねぇよ。こいつには「太陽」って名前があんだからよ!」

「 は?何言ってんのよ?マモルが亡くなってからずっと寂しそうにしてたからマモルに似たハムちゃん探してきてあげたんじゃない!ほら、黒い毛並みに右脚だけ白い所とか、ポッチャリしてる所とかほんとマモルそっくり♡可愛いよね♡」

『 それはそうだよ夏ちゃん、僕マモルの生まれ変わりだから…』

「 べ、別に頼んでねーしな!俺は別にこんなネズミに何の興味もねーんだよ、お前が飼えばいいじゃねーかよ!こいつの家の藁のせいでアレルギー出て咳がとまんねーんだよ!うっ、ゴホゴホ!!!」

「 ワザとらしいわね、じゃ新聞紙にでも替えたらいいじゃない!てかネズミとか言わないでよ可哀想じゃない!ほらマモルも怒ってこっち睨んでるよ!」

(*`へ´*)

「 ………… 」

「 よしよし可愛いわねマモル♡じゃこの煮干しとチーズお土産ね!」

カラン

『 あ、ありがとう夏ちゃん!!』

カリカリカリカリ、カリカリカリカリカリカリ、カリカリカリカリ…パクパクパクパクパク

「 す、凄い食欲ね!兄貴ちゃんとご飯あげてるの?こないだよりちょっと痩せたんじゃないマモル?」

「 うるせーな!ちゃんとやってるよ飯ぐらい!てかお前何しに来たんだよ俺には土産無しでよ!」

「 あぁちょっと近くまで来たから寄っただけ、下に彼氏待たせてるからもう行くね♪♪ じゃあね〜マモルまた今度ね♡ 」

『 えっ?モグ、フガ…もう行っちゃうの?モグモグ、フガ…(*_*)/ 』

「 えっ?お前いつの間に彼氏なんか出来たんだよ?なんだリア充かよ糞ウゼぇ!!帰れ帰れ、彼氏に宜しくな!シッシッ!」

「 何よ!言われなくても帰るわよ、てか兄貴、この部屋… なんか湿っぽいし嫌な匂いがするよ、また家賃安いからって借りたんじゃないの?方角も悪いしあの台所の辺が特に気持ち悪いわ… 」

『 さすがは夏ちゃん、鋭いね!』

「 お、お前!人んち来て帰り際に何言ってくれてんだよ!大丈夫だよこの部屋は。今まで金縛りにも遭った事ねぇし家鳴りも無え、ちょっと掃除しても消えねー匂いがあるぐらいじゃねぇか!お前、失礼な事ばっかいいやがって、妹じゃなきゃブッ飛ばしてるとこだぞ!!」

「 ………、兄貴、私に勝てると思ってんの?( ´Д`)y━」

「 ………… 」

「 まあ、今日は帰るけど早く引っ越した方がいいわよ!マモルもいるんだし、ここにずっと居たら絶対に体調崩すの間違いないから… 咳が出るのも多分藁のせいじゃないと思うよ。じゃあまたね♪♪ 」

ガチャン…

「 …………、ふぅ夏美の野郎、適当な事言いやがって!さぁ続き続き♥︎」

『 うわ!ロビンの野郎またパンツ下げやがってヤメろ!こっちは食事中だぞこの野郎!!!モグ、フガ…(*_*)/ 』

カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…

「 あらあら、太陽ちゃんどうちたんでちゅか〜? ちょっと集中したいから静かにちててくだちゃいね〜♥︎ 」

『 ヤメろやキメぇ!その赤ちゃん言葉どうにかなんねーのかよ?!!んっ?…なんだ?…何か嫌な匂いがして来たな…ロビンは気付いてねぇのか?』

…かちゃ

かちゃ…かちゃ…かちゃ…

『 なんだこの音は?台所の方からだな… 』

かちゃ…かちゃ…かちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃかちゃ…

カチャン…

『 やべー!おいロビン!!後ろのドア開いてんぞ!おい!気付け!今お前しか家にいねー筈だろ?!後ろ!後ろ!!』

カランカランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…

「 ち、うるせーな太陽は(♯`∧´) 全然集中出来ねーよ!ほら早く飯食って巣穴に入っちまえ!ほら!」

『 て、テメー!!!何呑気な事言ってんだよ馬鹿が!!後ろ!後ろだよ!!なんだアイツは女か?うわっこいつ包丁持ってるΣ(゚д゚lll)やべー!早くきづけよ糞ロビン!!』

カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…

「 しつけー野郎だなこいつは… ふぅ、もういいよ!ビール買ってくっからそれまでには食い終わっててくれよ太陽!チッ!』

ガチャリ…

『 やっぱロビンにはこの女が見えてねーのか。女の体普通に擦り抜けやがった… って事はこいつは生きた人間じゃねーんだな。まぁこの酷い匂いと、顔だけボヤけてる所なんか見ると当たり前か…うわっ!な、なんだこの女!こっち来んなよ気持ち悪りぃ!!』

カサカサカサカサ…



ガチャリ…

『 んっ?ロビン帰って来たんかな?』

カサカサ…

『 うわ!!!』

ぎゃはははははは!!!

『 ひ、ひぃ!!』

カサカサ…

『 や、やべー!あの女やべー!硝子一杯に顔押し付けて大笑いしやがって!!それになんだよあの目は?!デカくなったり小ちゃくなったり気持ち悪い!あんな目長く見たら気が狂っちまうな!…ひ… 』





ガチャリ…

「 うわ!!何だコレ!!」

『 あ、ロビンの声!』

カサカサ…

「 なんでテーブルの上に置いてた携帯の画面が割れてんだよコレ?誰かいんのかこの野郎!!!」

『 あの女だろ…(*_*)/ 』

「 あれうわ太陽!おい大丈夫か?硝子ベトベトじゃねぇかよ!何だよコレ?!」

『 僕は大丈夫だよ!』

「 あ、起動しねぇ!電話壊れた!最悪じゃねぇか畜生!!!」

『 だからそれ所じゃネェんだよ馬鹿が!気付けよほら!本当に見えてねーのか?あの鏡ん中!笑ってんじゃネェかよあの女が!!』

「 くそ!電話がこれじゃシ○れねーじゃねえかよ!くそ!くそ!くそ!!」

『 あーあ、とうとう言っちゃったよコイツ!また女性読者に嫌われたな…確実に…フガ… 』

パリーーン!!!

「 うわ!!Σ(゚д゚lll)」

『 フガ!!Σ(゚д゚lll)』

「ビビった!!なんで鏡が割れたんだ?!」

『 おいロビン!この女はマズイ!本気でお前を潰しにかかってるぞ!逃げろ!ほら早く!逃げて夏ちゃん連れてこい!早くしねーと割れた硝子ん中から頭が出てきてるぞ!ヤバイヤバイヤバイ!いい加減気付けよこの馬鹿が!!』

「 うっ、ゴホゴホ!!!また咳がゴホゴホ!苦しい!おェ〜ゴホゴホ!!!」

『 うわ、別の破片から手も出てきてる!やべえよやべえよ!どうすりゃいいんだ?今回は前(前世パグ犬)みたいな力も無ぇーし僕じゃ助けらんねーよ!!』

カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…(*_*)/

ピンポーーン♪♪

ピンポン、ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!

ガチャ!ガチャ!ガチャ!

「 兄貴ーーー!!!居るのー?!いるんだったら早くここを開けて!!早く開けなさい!!」

ガチャ!ガチャ!ガチャ!

「 うっゴホゴホ!な、夏美か?ゴホゴホ、ゴホゴホ!!」

『 な、夏ちゃん!!∑(゚Д゚)』

「 うっ、ゴホゴホ!なんだ?足が、足が動かねー!!ゴホゴホ!!」

『 掴まれてんだよお前は!女に!早くその手振りほどいてドア開けんだよ馬鹿!!!』

ぎゃはははははははははははははははははははははははは!!!

『 ほら!早くしねぇか!刺されるぞ!ほらあの包丁で足刺されっぞ馬鹿!!早くしろ!早く!早くーーー!!!…フガ…(*_*)/』

「 ゴホゴホ、だ、駄目だ力が出ねぇ!!!ゴホゴホ!!」

『 バッキャローーー!!!』

カランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…

ぎゃはははははははははははははははははははははははは!!!

バターーーーン!!

「 色に引き寄せられた色情霊よ!!兄貴から離れ、この部屋からも退散せよ!!観自在菩薩〜行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識。亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中。無色無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色声香味触法。無眼界乃至無意識界。無無明。亦無無明尽。乃至無老死。亦無老死尽。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。ふー、ちょっと休憩… 」

ぐ、ぎぎぎぎ!!!

「 菩提薩垂。依般若波羅蜜多故。心無罫礙。無罫礙故。無有恐怖。遠離一切顛倒夢想。究竟涅槃。三世諸仏。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。故知般若波羅蜜多。是大神呪。是大明呪是無上呪。是無等等呪。能除一切苦真実不虚。故説般若波羅蜜多呪。即説呪 羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦 菩提薩婆訶。般若心経…えっと、続きはと…カサカサ…あ、終わりだ(*_*)/ 」

ぎ、ぎぎぎぎいいい!!!

『 夏ちゃん、それ般若心経?そんなもんが効くの?でもコイツ苦しんでるね♪♪ もっとがんばれー!!』

「 こ、この後は分からないけど!これ以上兄貴に付きまとうんだったらコッチにも考えがあるわよ!さぁマモル!コッチに来なさい!」

『 …えっ?ぼ、僕?』

ガサリ!

『 うわ!何すんだよ夏ちゃん!!!』

「 見て!この犬…ごほん!このハムちゃんは前世で夏目住職から法術をかけられた魔犬…妖犬…いや、神犬…違う…神ハムよ!!この子の力は生まれ変わった今でも衰えていない筈、貴方にも分かるでしょ?!」

『 え、マジなのそれ?∑(゚Д゚)』

ぐ、ぎぎぎぎ!!!ああうう!!

「 この子は夏目住職と同じ力を持ってる!その気になれば貴方を永遠に封印する事も可能よ!それが嫌なら直ぐにこの変態兄貴から手を引きなさい!分かったわね?!!」

ぐう、ぐぎぎぎ!!で…これで…スムとはぐぐ…おもウなよ!!!

『 な、夏ちゃん…?』

「 さあ!消えてしまいなさい!このズベ公が!!!」

『 う、うわ!近づけないで!気持ち悪いんだよこの女!!!』

ぐぐ、ぐぎぎ、ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

あああああ!!

…ああ…







「 兄貴!兄貴!」

「 …んっ?何だぁ?」

「 ほら早く起きないよ馬鹿兄貴!」

「 ん、あれ?夏美か?はっ!!助けてくれたんか夏美!さっき誰かに足引っ張られて散々だったんだよ!!本当お前が言う通りこの部屋マジでやべえな!ひ、引っ越すよやっぱ!!」

「 もう引っ越さなくても大丈夫だよ。マモルと一緒にいればね♪♪」

「 …は、マモル?えっ?また助けに来てくれたんかマモルが?!アイツ背中に羽根はえてただろ?!畜生!俺も会いたかったぜ!!…ひひ…」

「 は?何言ってんのよ…会ってんじゃん今も…はい、この子♪♪」

「 はいこの子って、お前これはネズ…いや太陽じゃねぇかよ!何言ってんだよ頭大丈夫か?(=゚ω゚)ノ…ひ…」

「 …………」

『 夏ちゃん…今の話本当なの?』

「 えっ?何マモル?前と違って声が小さいわね!体がチビだからかしら…(^^;; 」

『 …夏ちゃんには僕の声また聞こえてるの?』

「 うん、微かにね… でも耳で聞いてるんじゃないのよ!私にはペットショップに行った時から聞こえていたのよアナタの声が…最初はまさかと思ったわ、またマモルに出会えるなんて奇跡としか言いようがないものね…(^^;; でも抱き上げた時に確信したわ!…マモルだって… 」

『 …う、グスン…夏ちゃん…僕嬉しいよ…有難う見つけてくれて!』

「 いいのよマモル…また家族になれたわね♪♪ ハムちゃんの寿命は短いって言うけど、アナタなら二十年は生きれるでしょw?これからもよろしくねマモル!」

『 …うん、頑張って長生きするよ!』

「 …………おい夏美…お、お前どっかで頭でも打ったんか?…(´・Д・)」何さっきから一人言ブツブツかましてんだよ?一緒に病院いくか?(^^;;」

「 う、うるさいわね!助けて貰っといて何よ!人を○○○扱いして!」

『 こいつには何言っても無駄だよ夏ちゃん… 』

「 そ、そうね…てか兄貴!一人で変な事ばっかするのはいいけど、ちょっとは控えなさいよね!また変なのが寄ってくるよ!分かった?!」

「 …へ、変な事?」

『 お○○○だよ!馬鹿!』

「 今回は引いてくれたけど、独身の一人暮らしはあんなのに憑かれやすいからさ!分かった?!」

「 いや、分かるも何も…全然分かんねぇよ…俺が何したってんだよ!」

「 ○○○○よ!!」

「 はぅわ!!Σ(゚д゚lll)」

『 はぅわ!!Σ(゚д゚lll)』

「お、お前、やっぱ病院に…」

「 だから違うって言ってんでしょ!馬鹿!兄貴最近部屋で変な事とか無かった?」

「 えっ?んー…あ、そういえば出した筈のないビールが炬燵の上に置いてあったり、風呂がピカピカに磨いてあったり、超エロい夢みて朝起きたら八年振りにち○ち○がデカくなってたな!いや、あれには流石に驚いたよ!はっはっはっ!!」

ドグッ!!!

「 か、かは!!!」

「 と、とにかくそういう霊は悪霊に変わりやすいし、直ぐに連れて行こうとするから気をつけて!って言ってんのよもう!」

「 …ぐぅ…な、なかなかいい肘持ってんな…更に腕上げたんじゃねぇのか夏美…ぐぅ… 」

「 もう私帰るからマモルの事ちゃんと世話しててよ!また時々見に来るからね!」

『 え、もう帰っちゃうの夏ちゃん…嫌だ!僕も連れて帰ってよ!』

「 うん、私もそうしたいんだけどマモルには兄貴のそばにいて欲しいの…また兄貴がピンチになったり、何か良くない物が憑いた時には私を思って念じて。どんなに離れていても微かにマモルの気持ちは伝わるからさ♪♪ 今回もマモルの声が聞こえたから助けに来れたのよ♪♪ 分かったでしょう?これからも兄貴にはマモルが必要なの…お願いねマモル♡ 」

『 そ、そんな〜 (´Д` )/ 』

「 な、夏美…やっぱ病…」

ドグッ!!!

「 ぐはぁ!!!」








カラン…カラン…

カランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカランカラン…ポテン…

カサカサ、カリカリカリカリ…

『 んっ?はっ!!∑(゚Д゚) またロビンの野郎おっぱじめやがったな!凝りねぇやつだよアイツは!』

「 …ひひ… 今日のオカズはどうすっかな〜♪♪ たまにはイレギュラー的に洋物なんかもいいかもな…ひひ…おっ!!こ、これは…まじか!!」

『 チッ!ニタニタしやがってドスケベ野郎が!あんな事ばっかしてるからまた呼んじまってるじゃんか…昨日からずっと窓の外から覗きこんでる女…ここって確か四階だから、あれは宙に浮いてるって事だよな?うん、間違いなく幽霊だな!』

「 …ひひ… まさかコイツがAVに職替えするとはな!…くくく…流石のロビン様でも読めなかったぜよ!…ひひ…」

『 さあ、またロビンが足を引っ張られる前に送信だ!…うう、夏ちゃん、夏ちゃん、夏ちゃん、夏ちゃん、ピンチだよーーー!!!』

パリーーーン!!!

「 うわ!な、何だお前!や、やめろ!近寄るな!お、おい足引っ張るんじゃねぇよ!ち、違う!それは足じゃ無え!!うぎゃああああ嗚呼ああああああ!!!」




【了】
[5317] 冬コ●とお泊りと困った人達
年も押し詰まった某日、
早朝から『ビッ●サイト』で行われる冬季同人誌即売会…
通称『冬●ミ』へ友人三人と出掛けました。
なぜ『冬●ミ』へ?
と、尋ねられましたら…
業(ごう)…と、言えば良いのでしょうか
性(さが)と申しましょうか…
私達四人が共通して持つ、
特殊で公には言葉に出来ない趣味…
二次元三次元老若…ナマモノ可否問わず、
男性同士の恋愛を記録した書籍、映像、ゲーム等を蒐集すること…
極寒の中…この日を待ち焦がれ渇望し逸る猛る気持ちを押し殺し、
早朝から入場する為に並び、
入場が適えば主攻戦闘区画である大手へ並び、返す刀で企業ブースに並び、
搦め手のトイレでまた並び…また列に並ぶ…並んで並んで買い漁る!!
己の願望を満たすため…
わずか五尺の体躯に闘志を燃やし
馬手にお財布、弓手にスケッチブック…
遠からん物には幟旗を眺め、近かくばサンプルを手に取り目にも見よ!

「………」

ええと、
欲しい『ブツ』は午後二時には全て手に入れまして…ええと
素晴らしいお宝を手に入れたらその日の内に、
誰にも邪魔されず、その作品世界へどっぷりと浸りたいじゃないですか。
それで、親友ユズキのアパートへみんなでお泊りなのです。
年末で忙しい時でしたが、半年前から母に外泊の許可を戴いておりまして、
本日目出度く、家事や雑務から解放されて、
一日を趣味だけの為に費やせるのでありました♪

ああ、なんと禁忌と倒錯と退廃と恍惚に満ちた至福の時間…
声に出して読みたい衝動に何度駆られたことでしょう。

今回のコレ!これすごい!BLだけに掘り出し物!!
薄い本なのに中身の濃いこと!
待ってました!ガー●ズ&パン●ァーの男体化ですよ!?
それゆけ!ぼくらの男色道!!ですよ♪
『BL&パンツァー!!』
主人公みほ(♂)の転校先で紡がれる友情と愛!そして、実の兄弟が繰り広げる愛憎…
コレ描いた人、天才ですよ!!
男体化されたキャラクターの下半身にそそり立つ戦車砲!
弟君(みほ)が兄君(まほ)を下克上…ああ!詳しく書くと大変なので抽象的に…しますね…
タイガー戦車の弱点であります後部装甲を背後から4号戦車F2の75mm Kw.K.40砲で
ガンガン貫きながら88mm Kwk36L/56砲をごしごし扱いちゃってますよ!!
きゃああああああああああ!
目とかいろんなところが潤みっぱなしです!
もっと深く…深く腐海へ潜らねば…だって、801ダイバーですから私達!!

「ぐきゅぅぅううううううううう」

これは…お腹の虫が鳴った音…デス…
残念、現世へ戻る時間がきてしまいました。
薄い本を閉じて…起き上がりますと

「おなかすいたー!」

「めし!めし!めし!!」

「本当だねー♪お腹すいたねー♪」

「何か作ろっか?」

皆も同じでーす♪
では、キッチンをお借りして~手早く、
冷蔵庫に残ってたお野菜とベーコンで適当かつ簡単に、
ナポリタン風スパゲティとサラダを作ってみんなで食べました♪

その後、近所の銭湯へ行きま~す。
でもでも私達の入浴場面を事細かく書いても面白くないでしょうから
割愛させていただいて、お風呂屋さんの帰り道まで話を進めますね。



銭湯の暖簾を潜って外へ出ますと、
あまりの寒さに皆、一様に肩を竦めて身体をブルブル震わせました。
雪でも降ってくるんじゃないかと思うくらいの寒さです。

「湯冷めして風邪引いたら大変だから、近道通ろう!」

ユズキが往路では迂回した、お寺の敷地を横切って行こうと提案しました。
湯上りに四人で350mlの缶ビール一本を回し飲みして
ちょっとご機嫌になってたからでしょうか…
黒い壁のように密生してそそり立つ樹々を薄気味悪いね…
とか言って眉を顰めてたのに…

「早くお部屋に戻って温まりたい!」

「行こう!行こう!」

「近道!近道!」

まるで躊躇無く…山門を並んで潜りました。

「虚刀流七代目当主『鑢 七花(やすり しちか)』!大手を振って罷り通る!!」

「またひとりの男が門を潜った…その門の名は『修羅の門』…」

寒い寒いと言ってたのに…なぜか全員、威風堂々といいますか…
万夫不当な丈夫が如く肩で風を切って石段を登っていきます。
まぁ、コ●ケ帰りな上に、ちょっとだけアルコール入ってますので…
ユッコとユズキは元気良く、私はアマネと並んでゆっくりと。
照明は所々に配されているのですが、圧倒的に光量が足りてませんね。
晴れ渡った夜空に、星や月が光を放っているはずなのですが…
両脇を樹齢が数百年は超えていそうな大木が並んで、
張出した常緑の枝葉が頭上を遮ってしまっているから余計に暗いんですね。
周囲に濃い闇が落ちています。

昼間は木漏れ日の下を行く快適な参道なのでしょうけど…
夜はこんなにも陰気で暗くて寒くて…
私もだんだん夜の暗さに目が慣れてきたみたいです。
石灯篭や離れたところにある一際大きい建物が本堂でしょうか…
お寺…幽世に一番近い場所…
俗世と隔した幾重にも張られた結界の中…
敷地内には墓地もありますね…当たり前ですけど…
今は火葬だから納骨で…人の死体は埋まってないですけど…

『Ob's stürmt oder schneit Ob die Sonne uns lacht♪
 Der Tag glühend heißOder eiskalt die Nacht♪』
 (風吹きすさぶ雪の夜も、太陽輝く炎天も)

先頭を行くユッコとユズキが歌いだしましたよ?ドイツ語!?
おお、パンツァーリートです!
ドイツ第三帝国時代の行進歌でして…ドイツ連邦軍では歌わなくなりましたが、
自衛隊では親しまれ演奏され歌われている曲だったりします。
右腕をガシガシ振りながら…夜なのにお寺なのに…

『Bestaubt sind die Gesichter,Doch froh ist unser Sinn♪
 Ist unser Sinn;Es braust unser PanzerIm Sturmwind dahin♪』
(埃みまみれるとも我らいが士気は天を衝く、暴風の中を戦車は轟然と邁進す)

「ふふ
 ここはかつて我が軍勢が駆け抜けた大地!
 余と苦楽を共にした勇者達が等しく心に焼き付けた景色だ!
 この世界、この景観を形に出来るのは
 これが我等全員の心象であるからだ」

私以外の三人は、さして気にした様子も無いみたいです。
アマネまでもがバスタオルをいきなりマントみたいに首に縛り付けて
腕組みしたかと思うと朗々と語りだしましたよ。
大塚明夫さんみたいに!

「見よ!わが無双の軍勢を!肉体は滅び、その魂は英霊として世界に召し上げられて
 それでも余に勃●する伝説の勇者!
 時空を超えて我が召喚に応じる永遠の念友達!
 彼らとの絆こそが我が至宝!我が衆道!ギリシアが誇る最強宝具!
 ヒエロス・ロコス(ホ●の軍隊)なりぃ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」(ユッコ)

「うあああああああああああああああああああああ!!」(ユズキ)

どこからか箒を持ってきたユッコとユズキが槍に見立てて右手へ持ち、
アマネに向けて歓呼の声をあげてます。
まったくもって三名様益々意気軒昂…
蛇足を承知で書かせていただきますが…ヒエロス・ロコス(神聖隊)は紀元前378年に
将軍ゴルキダスが結成した古代ギリシア・テーバイの最強と謳われた精鋭歩兵部隊です。
愛する相手に惨めな姿を見せようとせず、かつ恋人を守って戦うだろうとの想定の下、
設立されたという兵士300名全員がホ●!
150組のカップルで構成されたドリームチームなんです♪

「ホ●とは!
 誰よりも鮮烈に生き、乙女を魅せる姿を指す言葉!」

『然り!然り!然り!!』(ユッコとユズキ)

「全ての乙女の羨望を束ね!
 その道標として立つ者こそがホ●!
 故に…ホ●は孤高にあらず!
 その偉志は全てのホ●の志の総算たるが故に!!」

『然り!然り!然り!!』(ユッコとユズキ)

三人の魂はますます熱く燃え上がっちゃってます!
すっごく周囲には迷惑なくらいに!
でも…なんで私だけ…こんなに醒めているんでしょ?
酔いもどっかいっちゃってるし…

「ん?」

上から…何か…人の溜息みたいなものが聞こえた…ような…

「さぁて…では、始めるかノン気のリア充共よ…
 見ての通り、我等が具象化した戦場は味噌蔵よ!
 生憎だが数で勝るこちらに地の利はあるぞ、蹂躙せよ!!」

「うわああああああああああああああああああ!!」(ユッコ)

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」(ユズキ)

勝手に蹂躙しててください…
聖杯戦争?してる人は無視するとして…
ええと、気になってました…
溜息…
もしくは
自宅で飼ってる猫のメイプルのおならみたいな…
『スー』とか『フゥー』って音…
私、見上げてしまいました。
冬とて葉を落とさない常緑樹が頭上を覆ってます。
真っ暗闇…ですね…
どれが葉だか枝かも分からないくらい真っ暗闇…

「どうかした?」

具現化された心象の固有結界から現実世界へ立ち戻ったユッコが
上を見ている私に気がついて訊いてきました。

「上から溜息みたいな音が…」

「溜息?」

「う~ん、もしくは猫のおならみたいな?」

実家で飼ってる猫たんが一緒に寝てると音のしないおならをたまにします。
何食べてるのか心配になるくらい、すっごく臭いやつ!
カリカリが主食のはずなんですけど…

「お・な・ら?」

「うん、おなら」

私に倣って上を眺めるユッコ…
そこにまた…すぅって…

「聞こえたよね?」

「聞こえた……ね」

なんだろうね?って二人で首を傾げたら

「梯子が掛けられたままになってるな」

ユズキが一本の杉の樹の太い幹に梯子が立て掛けられているのを見つけました。
植木職人さんが使ってるようなプロ仕様って感じの
八の字に足場の横棒がいっぱい付いてる…ものすごく長いの…
こんな時間でもまだ…お仕事中?
人の姿を視認しようと再び、目を凝らして頭上を見直しますと…
またまた…すぅ…

「確かに誰かいるみたいだ…よ…ね?」

アマネとユズキにも聞こえたみたい…

「人の気配はしないよね…なんか…気味悪いね…」

「こんな時間に木に登ってるなんてあるのかな…」

植木屋さんが明かりも点けずに作業なんてあり得ないですよね…
だんだん嫌な…なんか、とっても嫌な予感…
両肩…妙な不快感を伴う重さが圧し掛かってきます。

「ほら!いつまでもこんな所に立ってたら確実に風邪引いちゃうぞ!」

ユッコが私の背中をパシン!って叩いて

「早く部屋に戻って温まろう!」

もう興味無くした!って感じで私の手を引いて歩き出しました。
アマネとユズキが後に続きます。
危なかったかも…です。
芽生えた恐怖が恐怖を生み出し、
増大した恐怖に飲まれて金縛りに陥ってたかも…
霊…とか、そこまで強く嫌な気配を感じた訳ではありません。
でも、頭上に誰か…何か…が確かにいた…いる…ような…
溜息みたいな音だって…
うん、私が怖がらなければ良いだけ…

私はお寺の敷地を出てアパートへ着くまで
ずっと背後へ気を配り
誰か…得体の知れない何かが追いかけてこないか用心して歩くことにしました。
あ、申し遅れましたが、
私、実はネットで知り合った方達と…幽霊が出ると噂される場所へ立ち入り
現場の雰囲気や、起こる怪異を楽しむ心霊スポット探検という趣味を持っているんです。
探検を終えて帰るとき…敷地を出た私達の背後をついてくる足音を聞いたり、
気配を感じたことが幾度もありました。
強烈なものになりますと、生前の姿を露わにして家まで憑いてきて
とっても迷惑なことをする…俗に憑依とかお持ち帰りという現象に
苛まれることもありますが
大抵は足音や気配だけで…いつの間にかいなくなっている…というものです。
頭上から感じたのは
いつものの気配とはまた違う…なんというか生活感のあると言いますか
生きてる感じといいますか…危険はそんなに無いかなと…
まぁ、それでも気をつけないと…

ちゃんとした霊感持ちがおかしいと思ったことはだいたいが当たりだからと
心霊スポット探検リーダーの天之津君が申しておりましたし…

幸い、何も起こらず
アパートへ帰る事ができました。
お部屋へ戻って、テーブルを片付けお布団敷いて寝る準備を整えましたら
私達、眠くなるまで読書を再開します。
この為にお泊りしに来たんですもの♪
夜も遅いのでお菓子は無しの紅茶セットだけ用意して
あとはもう言葉を交わすことなく…
熱い吐息…深い溜息が時々漏れるくらいで…
本当に静か…全員が本の世界に…のめり込み…
思う存分、愉悦と愉楽を貪らせていただきました。


午前0時を過ぎて…
はしたない大あくびが出て…
訪れた睡魔…
本日の読書タイムはこれにて終了ということで、
布団に入って休むことにしました。
家主ユズキとアマネはベッドで、私とユッコがお客用の布団で。

「明かり消す?」

「そだね」

私が立ち上がって明かりを消しました。
布団に入るとユッコがぎゅーって抱きついてきて私もぎゅーっ♪

「おやすみ♪」「おやすみ」「おやすみ~」「おやすみなさぁい」

こうして眠りにつきました。


目を覚ましたのは
何か重いものがぶつかる音…
そして、一緒に寝てるユッコが私の名前を呼ぶ声が聞こえたから…

「起きろ!起きろってば!」

目を開けますと…ユッコの顔が目の前に…なんか、すっごく強張っています。

「今の聞いた?」

玄関の方…何かを叩く大きな音…
何か…というより…ドアを殴りつけてるみたいな…
殴りつけると言うより…体当たりしている…みたいな…

「何が起きてるって…いう…の?」

アマネもユズキもすでに起きていました。
ベットから落ちそうなくらいに身を乗り出し、
玄関のある方向を見つめています。

ドン…………ドン…………ドン………

寝室のドアの向こうの短い廊下の向こう…
玄関の上がり框から80cm向こう…
チェーンロックとディンブルキーを採用したダブルロックのドアを
外側から叩いているみたいです。
まだ聞こえてきます。
止める気配なさそう…間を置いて何度も…何度も…

ゴン…ゴン…ゴン…

「な、なんなの?」

音がだんだん重く強くなってる気が…
酔っ払いが暴れているようには思えませんが…
そこへ、まるでドアが破壊されたような、今までで一番大きな音が…
続けて家の中で…ドアの内側で何かが崩れたような…
誰かが倒れこんできたような…床を叩く激しい音が…
もしかして…ドアを突き破って…入ってきちゃった…の…です…か?

「家主!緊急事態発生!威力偵察状況開始!!」

アマネが隣のユズキに要請しました。
高校時代からスカートが激しく翻った事が一度も無い
リリアン女学院の模範的な生徒みたいなアマネですもん自ら動かず他人を動かす名人…
その異名はフェザーンの黒狐!アドリアン・ルビンスキー!!

「いやいや、高校以来の荒事担当のユッコこそ、この任に一番相応しい」

しかし、ユズキもさるもの引っかくもの…ユッコへ丸投げしました。
その時、玄関から 湿った…柔らかいモノが床に叩きつけられた…みたいな
不快な…びたん…びたん…びたん…誰かが…誰かが…廊下を…廊下を…

『ひぃぃいいいい!』×4

二足歩行じゃ…ないです!四つん這い!這ってくるですよこの音!!
絶対…人じゃ…ない…の…決定ですよ!?
まさか…さっきのお寺で…
お寺から…ついて…憑いて…こられた!?
頭の中では…顔は人で身体がコモドオオトカゲなのが廊下を這って来るイメージ…

「ちょ、超常現象担当!確認よろしく!!」

わー!私にお鉢が廻って来てしまいました!
超常現象…担当…って言われてしまいました!
確かにこの手のモノは…ずっと…女子高時代から…私が…

「餅は餅屋!超常現象は霊感持ち屋!!」

「ねえユッコ?今上手い事言ったと思ってる?今、上手い事言ったと思ってる!?」

慣れていても怖いものは怖いんです!
いやなものは嫌なんです!!

「アマネ!この前の飲み会で何でも私のお願いきくから
 私にイケメンシェフのヨシキさん呼べ!!って言ったよね?
 私、ヨシキさん呼んだよね?約束守ったよね?てことでアマネ宜しく!」

「ここで今、それ持ち出す!?
 くぅううう!ユッコ!お金貸したのチャラにするから私の名代で行ってきて!」

「コ●ケん時のジュース代じゃんか!?
 そんなはした金と引き替えに行ってたまるか!?」

み、醜い…あまりに醜いです!誰が確認に行くかのなすり合い…
一人は皆の為に、皆は一人の為にと友情を結んだはずなのに私達…

べたん…べたんべたんべたんべたん…

ああ、寝室のドアの前まで来られてしまいました。
薄い板のすぐ向こうですよ…
もう…予断を許さない状況ですよ…
三人が私を見つめました。
縋るような目つきで…両手を摺りあわせてます…

「本年中の業務は全て終了しました。来年もまた変らぬ御愛顧を宜しくお願いします。
 では、良いお年を」

「布団に潜り込んで逃げようなんて甘いんだよ!」

「だってもう、冬眠しないと…」

「春まで寝る気か!?」

お布団の中深く潜り込もうとする私にユッコは手を伸ばして、むんずと…
ど、どこ掴んでるんですか!?

「痛い!ユッコ痛いって!おっぱい掴まないで!ちぎれちゃうよ!!」

「ふっふっふ!掴んでしまえばあとは腕力でどうとでもなる!
 そのでかい乳が徒となったな!!」

「いたいいたい!爪痛い!思いっきりお肉に食い込んでるから!
もう、本当のお母さんだったら子供の身を案じて手を離すんだよ!?」

「大岡越前かお前は!?」

腕力筋力体格全てがユッコに劣る私です。
抵抗虚しく…お布団から引き摺りだされてしまいました。
さらにユッコが私の上に乗ってきて組み敷かれてしまいます。

「あ、あのあの…パジャマ破けちゃう…」

「あ、なんか…こんな状況なのに…ムラムラしてきた…」

「し、しないでください!!」

「なんてエロい身体…か、可愛いよ…それに、すごく綺麗だ…」

「ちょ、ちょっとユッコ!?」

「ああもう!なんかもう百合でいいや私!」

「うわぁあああ、首…舐め…やめてぇえええええ!!」

ドアの向こうの恐怖…そっちのけ
私の貞操が大ピンチです…逃れようともがく私に覆い被さろうと追うユッコ…
組んず解れつやってるところで
ついに!
バーン!とドアが勢い良く開け放たれてしまいました!

「き、きたぁああああああああ!?」

ミリ単位で寝技の攻防してた私とユッコでしたが…
息ぴったり、抱き合ったまま跳ね起きて…脱兎のごとく、
国営カジノからお金盗んで逃げ出すルパン(緑)と次元様みたいに、
ドアから一番遠い位置にありますベッドの上へと駆け上がり…

「ぐあ!」「げぼは!」

途中でアマネとユズキを踏んでしまったみたいですが
そんなことは気にしてる余裕はないです。
逃げなくちゃ…ドアから一番遠いところ…
ドアから一番遠いところへ!!
壁に背を押し付けユッコと逃げ込みました。
アマネとユズキを盾代わりにして…おそるおそる…確認すれば…
開いたドアの向こう…
廊下から青白い光が差し込んで…

「うわぁ、入ってきた!」

ぺたり…ぺたりと…湿った音を響かせ…
ゆっくりと…手足を交互に動かし…
四つん這い…部屋の中へ入ってきたのは…一体の、異形でした。

つるりと毛髪一本も生えていない禿頭…
大きく見開かれ毀れそうなくらいに迫り出した眼球…高い鼻…
裂けそうなくらい…極限まで開けられた口からは
巨大ななめくじみたいな舌が顎に付きそうなほど伸び…垂れています。
凶相で狂気に冒された姿でありながら…
清廉な雰囲気をも醸す…一体の化け物…
いえ、妖怪じみたと言いましょうか…

「なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?なにあれ?」

私にしがみつくユッコ…見ちゃったんだアレ…
こういうモノを見慣れている私でも…これは…

「こ、これは!?」

以前に一度だけ遭遇したことがあります。
異形の纏う…この雰囲気…間違いなく…あれは聖職者…いえ、聖職者だった…

「お坊さんの霊…」

お経も祝詞も御札も塩も護摩壇も何もかもが無効な…
最強にして最悪…異形中の異形…

「アレは私じゃ扱えない…」

異形は這い進み…ついに全身が部屋の中に入りました。
そして、そのまま止まらず…私達の方へと向かってきます。
アマネとユズキが私にしがみついてきました。

「二人共、あれ…見ちゃった?」

「見てない」「私も見てないよ?」

私は二人を抱きしめます。
ごめん…それくらいしかしてあげられなくて…
あれは…絶対的な存在…

「見ない方がいいよ…悲しくて憐れで…恐ろしく強い…
 見ただけでどんな精神汚染を受けるか分からないから…」

「うん」「うん…」

聖職者の霊と、二度目の邂逅だからでしょうか
私…あの時ほど取り乱すことはなく…冷静に思考できてます。
確か…あの時のお坊さんは夜のお散歩中で…その行く手を私達が遮っていた為に
進むことができずにいて…
避けたら何もしないで去って行ってしまいました。
私達に敵意を持っていたら…人間の霊としては最強の部類間違いなしの存在ですから…
すでに瞬殺されていてもおかしくない筈…です。
でも…私達、いまだ何もされていません…
何もされないまま…お坊さんの霊はベッドのすぐ前まで来てしまいました。
ものすごい形相です。
開かれた目からは透明な液体がとめどなく溢れ…頬を伝って…床へ零れ落ちていきます。
そして、その瞳…視線は確実に私を捉えてます。
何か私に…私達に用がある…の?
聞いて欲しいことがあるの?
極限まで開かれた両のまなこは私をみつめるばかり…
縋るような…願うような…

「ええと、私ってそんな何を求めてるかとか察するの無理ですから、
 はっきり言ってくださると助かります。」

お坊さんの霊は首を縦横に振ったりして何かを私に伝えようと…
分かって欲しい気づいて欲しいと訴えてるみたいですけど
直視できないくらい凄い形相なさってますので…ちょっとそれを汲み取るのは…無理…

突然、私が寝ていたお布団の辺りから
切り裂くようなスピード感のある激しいメロディが…このイントロって…
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『リライト』です!
冬●ミから帰った次の日の朝は、素敵なハガレン神曲で目覚めたいと
朝7:00に合わせていたアラームでした。
もう、そんな時間だったんだ…
ということは!?

「ユッコ!窓と雨戸を開けて朝日を部屋に入れて!!」

元聖職者とは云え
現在は闇に落ちた存在…念仏や祝詞など宗教関連が無効だとしても
最も強いエネルギーを持つ太陽…朝日を浴びせれば…
膝立ちになったユッコが施錠を外し、
窓を…続いて雨戸を力いっぱい押し広げました。
冷たい空気と共に…朝焼け染まる…東の空に顔を出したお日様が…
黄金色の光条が部屋の中へ入ってきます。

「おい、アレ見てみろよ!」

ユッコに促されてお坊さんの幽霊を見てみますと…
あれほど陶器のような硬質的な存在感をもって実体化されていた姿が…
密度を無くし…背後の壁が透けて見えるようになってます。
数秒後には…手の指…足の指と…身体の末端から…
形をなくして消え始めました。
それから一分もしない内に
朝の空気へ混ざるように溶け…お坊さんの霊は完全に見えなくなりました。

「二人共?…いなくなったよ…助かったよ」

私にしがみついてるアマネとユズキの背中を軽く叩いて知らせます。
緊張が解け…全身が弛緩して…力が入らなくて…
冷たい空気が部屋の中へ入ってくるのもそのままに…
私達は四人…しばらく、抱き合ったままでいました。



異形を目撃したショックから立ち直り朝ごはんの準備をしていると
外が騒がしくなりました。
赤い回転灯…アパートの脇をパトカーや救急車が走り抜けていきます。
何事かと…外へ出ていきますと…もう野次馬が出ていて…
お寺の敷地内で住職の息子さんが
首を吊ってお亡くなりになっているのが発見されたと…
では、さっきまで私達が対峙していたのは…




異形が家の中まで乗り込んでくるという体験をしてしまったユズキは、
このアパートに、このまま住むなんてできないと
引っ越しをすることを決めました。


年が明けて、業者さんを頼むより、
私達の誰か知り合いの男子に引越しの手伝いをして貰おうとなりまして…
私の心霊スポット探検隊のリーダー天之津君にお願いすることにしました。
幽霊とかそっち系で知識も経験も豊富な天之津君ですから。
連絡を取ると天之津君は快く承知してくださり、
二月に入って最初の日曜日に引っ越しをすることに決めました。
それまでユズキはアマネのマンションにいました。
引越し当日、武道の達人で腕力も人並み以上の天之津君は
あっという間に…私達の力など必要とせず、
洗濯機や冷蔵庫など大きな荷物を軽々と持ち出してしまいました。
借りてきたトラックへ積み込み、予定よりもかなりはやく終わりそうです。
天之津君…もう、やることなくなっちゃった。
衣類や書籍、食器類の荷造りしている私達に彼は、
その時間を使って近所でお坊さんの情報集めてくると言って部屋を出ていきました。
男子の目に止まって欲しくないブツがありましたからラッキー♪
あ、もしかして気を使ってくれたのかな天之津君?


そして、お昼…
アパートの近くにある喫茶店でご飯を食べることにしました。
昼間は喫茶店で夜は洋風の居酒屋さんをされてるログハウス風の建物…
気難しそうな顔をした小柄の老主人がアルバイトを数人雇って経営されてます。
落ち着いた静かな空間…
夜は賑やかで雰囲気がまるで違うんだけどねと、ユズキは笑いました。
映画『ディアハンター』みたいなんだとか…
お店の中…お客さんは昼時で半分ほど席が埋まっていまして
私達はカウンター近くのなんかすごく頑丈そうな…
西部劇とかのバーに出てきそうな円卓の席へ座りました。
注文をして…それから、天之津君が仕入れてきた話を聞くことにします。
亡くなった住職の息子さんについて…

「お嬢さん達から聞いた幽霊の目鼻立ちだが…当たりだ。
 化けて出たのは間違いなく住職の息子さんだ。」

「やっぱり!」

「それで…どうして自殺なんかしたのか…理由とか分かりました?」

天之津君は水を一口飲んで腕組みし…私達の顔をひとりひとり見た後…

「恋愛のもつれ…失恋だな
 どうも付き合ってた相手が心変わりして他のに乗り換えられたらしい」

「お坊さんの恋愛…今はそういうのアリなんだね」

「昔とは違って色々と許されるようになったからね」

「ま、そういうことだ」

後はお寺の縁起に関わる話とか、いろいろ話が行ったり来たりして会話が弾んだのですが…
どうも…引っ掛かることがあります。
妙に…天之津君が住職の息子さんの死に関わることから
話を逸らそうとしているみたいに感じるのです。

「ね、天之津君…私達にまだ隠してることってない?」

「あ?全部言ったぞ。失恋したショックでと」

「それがどうにも引っ掛かるんですよ…
 その失恋にもっと何か重大な裏があるような気がして」

天之津君の表情がサッと変わりました。

「やっぱり…何かあるんだ!」

「な、ない!仮にも聖職に就く者の恋愛沙汰だ…事がことだから
 根掘り葉掘り調べるのはなにかと…」

ユッコにアマネ、ユズキがもういいじゃんと天之津君に助け舟を出しますが
私にはどうしても…どうしても…納得がいきません!

「言わないなら天之津君はホ●って噂流します!」

「な、なんだと!?」

「言わないと…天之津君は真性ホ●って言いふらします」

天之津君の顔が土気色になりました。

「く…くそぉ…悪魔め!!」

「吐いて楽になった方が良いデスよ♪」

「………………だ」 

『え、なんですか?』(女子一同)

「男だ!!」

「何がです?」

「住職の息子を振った相手は男だ…元恋人は男ったんだよ!!」

「そ……それって…それって…住職の息子さん…ホ●?」

「そうだ!!」

天之津君…苦虫を噛み潰したような表情…
な、なんでそんな素敵なことを隠していたんですか!?

「いやああああああああああああああああああああ!!」(ユッコ)

「きゃああああああああああああああああああああ!!」(アマネ)

「素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵素敵ですぅう!!」(私)

「やばいやばいやばいやばいやばい!目の前真っ白になっちゃう!!」(ユズキ)

もう、両の拳を天に突き上げ叫んでしまいましたよ私達!

「そうなるから言いたくなかったんだよ!」

ああ、何て素敵な…愛する殿方の心変わりに、自ら命を絶つなんて…
そうです!そうです!恋に破れたらもう次の恋なんて考えられませんよね?
なんて壮絶で儚く悲しく美しい恋をされたのでしょう!
ああもうダメです!
興奮しすぎておかしくなりそうです!!
いえ、なりました!
私達、今…完全にジュン!って身体の中心が蕩けて熱暴走しましたとも!!

「落ち着けお前等!そして自重しろ!!
 それでな、住職の倅が命を絶った時刻辺りに…お前等が真下を通った訳だろ?
 一般人なら頭を疑う腐れ話を聞いて…自分の話も理解してくれるのではないかと…
 お前等に話を聞いて欲しかったんじゃないかと俺は思った次第だ」

「え?」「え?」「え?」「え?」

「お前等って腐ってる故、あいつらにとって一番の理解者だろ?」

もしかして…あの時はまだ生きておられました?
溜息みたいな猫のおならみたいなって…
もしかして…啜り泣きとか…嗚咽を漏らして…とか?
私達…なんか気味が悪くて急いでお寺から出て行って…その後、お亡くなりに?

「死んでも死に切れず…死して後…アパートに話を聞いて欲しくて
 化けて出たのだと…」

「ぐ…ぐきゅぅううううう…」

せ、千載一遇のチャンス…都市伝説でもなく…本物の…生きた●モ様を…
リアルホ●様から瑞々しいBLネタを…御本人様から聞かせて戴けるチャンスを…
ああ、私達は取り返しの付かないことをしてしまいました!
自分で自分が許せませんよ!
私達は…恋に破れた素敵なホ●様を…命を救えず…
死して頼ってくれたホ●幽霊さんを…
恐怖心から無碍に追い返してしまったのです…
朝日まで浴びせて…
なんてことを…なんて非道いことをしてしまったのですか!?
私達…円卓に突っ伏して
しばらく泣きました。





(おしまい)
[5302] 類は友を呼ぶ
私の周りで不思議としか形容できないことが起きるのはほぼ人形が絡んでいますので、(また)人形のお話。
某メーカーの直営店のスタッフさんから聞いたことですが、私も巻き込まれたひとりです。

そのメーカーの人形は、お迎えの形式に関係なく、大きな箱に入った状態で会計、引き渡されます。
その際、ほとんどのケースでは会計の前に顔を確認できるのですが、イベント等、事前にレジが混雑するとわかっている場合、箱を開ける前に会計を終わらせて、ようやく対面になります。
一体一体エアブラシでメイク(塗装)するので、個体差があり、ある意味かなりリスクの高い方式だと思われます。

が。

顔を見て決めた訳でもないのに、会計後対面した人形は、「うちの子」のイメージに近いことが多いそうです。

人形がオーナーを選んでいるのかもしれない、というのが、大方の結論。
私も、お迎えした人形は軒並みおっとりになるらしいのですが、オフィシャルのイメージが「わんぱく盛り」の子をお迎えしたところ初日からおっとり全開でした。
入っていた服やウィッグを全部装着してみたのに、同じ格好の筈のオフィシャルとは「同じ顔だけど、何か雰囲気が違う」という状態になってしまったのは良い思い出です。
[5300] オバケの世界をのぞこう
どこから来たのかはわからない。
ある日クマのぬいぐるみに宿ったふしぎな命、オバケちゃん。

まず気づいたのは普段お世話になっているTさんだった。
「…このぬいぐるみ、隠れてるけどなにかの霊が入っているね」
大事にしているものには宿るというけれど。
ふと思い返せば身の回りでラップ音や不可思議な現象が増えていた。
一体なんの霊?
ぬいぐるみを抱き寄せて顔をのぞき見る。
クマはとっても優しい顔をしています。
不思議と怖くない…そんなことを考えました。
私がこの霊の姿を目撃するのは、もうすこしあとのできごと――。

はじめは、家族と生活を共にするよう、ぬいぐるみに接していました。
おはようって話しかけたり、旅行先へ連れて行ったり。
数週間のうちに、外出しても家の中でも、スマホのカメラを向けたり気配を察して声をかければ、ぬいぐるみが無くても優しい光や音で反応してくることが多くなりました。

なんだかよく分からないが、なにか透明な生き物がいるぞ!

楽しいことが大好きといった印象。純粋無垢だけど、本当はどういう性格なのかな。
すると、思いがけずこの霊の気質を知る機会がやってきます。
知人が我が家へ訪ねて来たときでした。
いつにも増してラップ音が大きく回数も多い。何度も生木を裂くような激しい軋み。
知人も「家鳴りすごいね。乾燥してるのかな」と言ってくるほど。
帰ってもらったあとでどうしたの?と聞くと、あんなに騒がしかった気配が嘘のように落ち着いています。
イヤイヤ説明してくれよ…と言ってもこのころはまだ、互いに言葉で意思疎通ができなかったため、私のほうから歩み寄ります。
注意深く観察を繰り返す。凝視すると隠れるので、それとなく。
どうも、嫌いなタイプの人間が家に入ったので嫌がって逃げ回っていたらしい…。
このときに、無垢だけど弱くて子どもっぽい性格なんだなと思いました。
なるべく労わって暮らすことにして、この子が安心できる環境を作るようにしていたある日。
朝起きると私の足元、布団の上で白くて太いしっぽを抱えて丸まっている子狐がいました。
アレッ?と思って二度見したときにはなにもいませんでした。
また別の日には、おかっぱ頭な稚児姿の少女がそばに立っていました。

クマのぬいぐるみに入ったこのオバケが来てから、霊との交流が開き、我が家のいたる所へ新たなオバケが訪れたりしています。
お風呂場のちいさいオッサン。
大国主系の蛇の霊でした。
ワンコのオバケ。と思ったら狼の霊。
天井で翼の音がする。よく見ると鴉。天狗の一種だそう。
面倒なので「オバケ」と呼んでいますが、実は彼らは人間のそばで暮らし、人間とともに成長する生命。
陰陽道で言うところの、式神なんです。


おしまい
[5290]
やあロビンミッシェルだ。

「憑依、麗子OF THE DEAD」の続きを書こうとしたんだが、後輩の圭太がこんな実話怪談を吹きこんできたんでついつい書いてしまったよ…ひ…

珍しくおふざけ無しで書いてみたんで、良かったら一読してみてくれ!…ひひ…
[5289] 軍服の男

この話を聞いたのはもう何年も前になる。

付き合いたての二人が深夜のドライブデートを楽しんでいた。

とにかく早くキスを決めたい彼は夜景が見える高台へ行こうと提案した。

彼女も了解し、暫く山道を登っていたが、どこでどう道を間違えたのか辺りは見知らぬ景色に変わっていた。

免許を取得して間もない彼は軽くパニックになり、とにかく車をUターンさせようと方向転換している時に操作を誤り後ろタイヤを脱輪させてしまった。

仕方なくJAFに連絡を入れ待つことにした。

折角のデートが台無しだと彼は凹んだが、幸い彼女の機嫌は損なわれておらず、まあこれも思い出の一つになるかと二人で笑いあっていた。

ザック、ザック、ザック、

二人が座る歩道の裏手から足音が聞こえた。

見ると、暗くて気づかなかったが裏の林には奥へと続く舗装されていない道があり、目を凝らすと誰かが歩いて行くのが見える。

ザック、ザック、ザック、

「 何があるんだろ?」

彼女がそう言いながら立ち上がり歩き出した。

彼は慌てて後を追い、彼女に引き返すように説得するが彼女は気になると言ってきかない。

仕様がなく彼は彼女の後ろに続く事にした。学生時代に柔道でならした経験がある彼は、もし何かあっても彼女を連れて逃げきるぐらいの自信はあったのだ。



数百m程歩いたところで道が開け、小さな廃寺が姿を現した。

そこは周りを高い木々で囲まれ、狭い空間に隔離されているかの様にひっそりと建っていた。

朽ちた瓦屋根、砕けた門柱、腰の辺りまで伸びた雑草等が、その長年の不在を物語っていた。

「 さっきの人だ…」

彼女の視線の先を見ると、門柱の横手にある小さな沼地の中に、下半身を水に浸からせた男が立っていた。

大きな男だ。

背を向けているが、カーキ色の軍服を身につけている様に見える。

彼は身動ぎもせず、ただジッとそこに立っている。

彼は必死に彼女の手を引き、帰ろうと諭したが、彼女は何故か帰るのを拒んだ。

暫くすると、林の向こうから微かなエンジン音が聞こえた。どうやらJAFが到着したようだ。

沼地を見ると先程の男は忽然と消えていた。



一週間後、連絡の取れなくなっていた彼女から電話があった。

酷く怯えている。

あの日以来、毎晩のように夜中に上下カーキ色の軍服を着た大男が枕元に立ち、自分に話しかけて来るという。

電波状況が悪いのかプツプツと妙な雑音が邪魔をする。

憔悴しきっているのか彼女の声も掠れており、途切れ途切れで何を言っているのかよく分からない。

心配になった彼氏は翌日に彼女のマンションを訪れたのだが、既に不在でその日から行方が分からなくなった。

そして捜索願いも虚しく、一週間後彼女は変わり果てた姿で発見された。

第一発見者は彼だ。

心当たりのある最後の場所に彼女はいた。

あの廃寺の沼に沈んでいたのだ。

水を含みブヨブヨに膨れ上がった顔の目玉は抜き取られており、何を見たのか…彼女は恐怖で引き攣った状態のままで固まっていた。



… く…ぞ…

深夜、何者かに髪の毛を引っ張られる感覚があり彼は目を覚ました。

キーンと耳鳴りがし、体が思うように動かない。

… く…ぞ…

暗闇の中、彼の顔をあの大男が見降ろしていた。

遮光カーテンで全く光が無い筈の部屋に、ハッキリと浮かび上がる軍服姿の男。

… く…ぞ…

あの時と違っていたのは軍服がカーキ色ではなく、赤色だった。

そしてまた口元が僅かに動く。

… くぞ…

男の目玉は半分飛び出た状態で、ギョロギョロとまるで生き物の様に蠢いている。

ポタポタと上着から滴る血の様な物が彼の顔に落ちてくる。

また口元が動いた。

…いくぞ…

…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…いくぞ…



その話を俺にした数日後、彼は行方不明になった。

【了】
[5254] 憑依、麗子OF THE DEAD


今夜は月が綺麗だ。

昼間の茹だる様な暑さがまるで嘘だったかの様に、この山の高台はヒンヤリとして解放的で涼しい。

俺は自宅から車で三十分程離れたとある外人墓地にいた。海に面しているせいか、潮の香りが混じる突風が時折ザワザワと周りの木々をしならせながら、この異様な雰囲気を更に盛り上げてくれている。

「やべ、充電20%きってんな…」

パシャリ!

目下に広がる綺麗な夜景を写真に数枚収めた後、俺は心の中で軽く覚悟を決めた。

振り返るとやはり先程と同じ光景…

俺の愛車クラウンの中で怯える香織と龍。

麗子はといえば長い黒髪を振り回しながら、ロックされたドアをこじ開けようとバンバン車体を叩いたり、何語か分からない言葉で喚きながらノブをガチャガチャさせている。

怖い…正直…

突如、豹変してしまった麗子。

原因は分かっている。

外人墓地に「出る」と云う噂を聞いた俺達は、真夏の深夜にわざわざこんな所まで肝試しに来たんだ。

しかし車で周辺を軽く見て回ったものの、比較的街灯の多いこの墓地は洋式の四角い墓石がただ規則正しく並んでいるだけで、これといった異変も怪現象も起こらなかった。

すると苛ついた龍が、事もあろうにその墓石の中の一つに中指をおったてながらジョロジョロと小便を引っ掛けてしまったんだ。

慌てて止めに入った麗子だったが、突然胸を抑えながら苦しそうにしてうずくまり、一転ゲラゲラと笑い出したかと思えば、その墓石の前の土を素手で掘り始めた。

実はもうその時から麗子は何処の国の言葉か分からない、理解不能な叫び声を上げていたよ。

突然の事に呆気に取られている俺達はどうする事も出来ずに唯その光景を暫く眺めていたが、龍が麗子の名を呼んだ瞬間、土を掘る手がピタリと止まり、此方を振り返ったんだ。

誰だよお前?

俺の心の声だ。

まるで別人としか言いようがない程に麗子の顔は変形していた。

細かった筈の目はこれでもかと見開き俺達を睨みつけ、口からは涎と共に大量の泥がボタボタと滴っている。喰ってたんだよ、泥を…

次の瞬間、体に大きなバネでも入っているかの様にビヨン!と跳び上がった麗子は、あーあーと奇声を発しながら此方へと向かって走って来た。

恥ずかしながら腰を抜かしてしまった俺はその場から動けなかったが、香織と龍はあの走塁王「福本豊」顔負けのダッシュでクラウンへと逃げ込んだ。

狙いは小便を引っ掛けた龍の様だ。

何故なら麗子は座り込む俺に見向きもせず、二人の後を追ってクラウンのボディをバチバチと叩き始めたからだ。

買ったばかりの新古車、一般人の夢クラウンをバチバチと…たまに鋭い蹴りも何発か入っている。

正直、俺は麗子の変貌ぶりや龍の身の安全よりも愛車クラウンがとても心配だった。白のボディーが泥で汚され、ミラーが飛び、車体が変形していく様をとても直視出来なくなった俺は、ブラックメンソール1ミリを吹かしながらパノラマに広がる綺麗な夜景に目を移したといった所だ。

すまん、前置きが長くなってしまったな!! しかし、この続きを書くのはまた後日、暇が出来てからにしようと思う。

何故なら酒が回って少し眠たくなってしまったからだ!明日も早いので次回を楽しみにしていてくれ!

【続く】
[5253] す、すまん!
前回を読んでない君にはなんのこっちゃ分からないよな?やあロビンミッシェルだ。

いらぬお世話かもしれないが、前回の話もついでにあげておくよ…ひひ…

焦らすだけ焦らせてこのクオリティですまない!この話はまだまだ続いてしまいそうだ。次回は落とした信用を取り戻す様に頑張るんで皆期待してくれ!…ひ…
[5252] 憑依、麗子OF THE DEAD 続編

「 あ、流れ星!」

願い事をしようと素早くスマホを取り出したものの勿論間に合う訳も無く、俺は充電が15%まで減ってしまった電話を再度内ポケットに突っ込んだ。

龍がヘマをしたせいで突如豹変してしまった麗子。

別人の様に顔を変え、髪を振り乱しながら他国語の奇声を上げて俺の愛車の破壊をいまだに続けている。

「 あーあ、ボンネットの上に乗っちゃったよ…」

ドアロックが解除出来ないと悟ったのか、あろうことか麗子はブロックを抱えてボンネットの上に這い上がり飛び跳ね始めた。

まさかその手に持ったブロックでフロント硝子を叩き割るつもりだとでも云うのか…

「 ぐす…」

突如、鼻が詰まったかと感じた途端俺の頬を涙が伝った。嬉し涙とも悔し涙とも違う、何か別の感情がその時俺の胸を支配していた。

庶民の夢クラウン

月四万の三年ローン

保険屋の番号をスマホでチェックする。充電は既に8%を表示している。

恐らく車の中で怯えている香織と龍には俺のこの気持ちは分かるまい。お前らの置かれている状況も中々にハードかもしれないが、今の俺に比べたら大腸菌とビッグフット程の差があるだろう。

「 …ひひ…」

遂に麗子がブロックを硝子に投げつけた。

しかし鈍い音をさせ跳ね返ったブロックがまともに麗子の体にブチ当たり、ドシャリと後ろへと吹っ飛んで行った。

「 ざまぁみやがれ…ひひ…」

心の中で軽く毒づいた後、俺は少し後悔した。

確かに今の麗子は洒落にならない。得体の知れない何かに支配されているのは間違いないだろう。

しかしそれを笑うという事は香織の親友を笑うという事だ。俺は一人心の中で反省した後、後ろのポッケから特殊警棒を取り出した。

俺はいままで運動部に所属した事も無ければ、武術なども習った事は無い。しかし四歳から喧嘩という実戦で戦って来た経験と知識と度胸は持ち合わせているつもりだ。

取り憑かれているとはいえ所詮は女。ここ十年程は連戦連勝のロビン様がこんな基地外に負ける理由は一つも無いのである。

「 おい!麗子!!」

返事は無い。

奴は先程の一撃でボンネットの向こうへとすっ飛んでしまってから、気を失ってしまったのかまだ姿を現さない。

「 い、今の内に逃げるか…」

俺は警棒を伸ばしたまま、いつでも殴りかかれる体制を取りジリジリと愛車クラウンの元へと近づいていった。

そこでふと妙な違和感に気付いた。

静かだ…

先程まであった潮風に煽られていた木々の音が消えている…

「 …………」

クラウンを見ると龍と香織が車の中から、俺の方を指差して大声で怒鳴っているように見える。

無論、窓が閉まっているので奴等が何を言っているのかは全く分からない。

首元に妙な冷気が走る。

後ろ…?

もしかして龍達は俺の後ろを指差しているのか?

ギャーギャー!!

振り返ろうとした時、突然左手の森から数羽の大きな鳥が飛びたった。

「 ち、ビビらせんじゃねぇよこの野郎!!!」

俺は鳥に石を投げてやろうと足元に目をやり屈み込んだ。その時左目の視界の隅にそれを捉えたのだ。

白い裸足の脚

それは俺のすぐ後ろに立っているようだ。

「 ……麗子…か…?」

俺は瞬時にそれが麗子だと見抜いた。

しかし残念な事に武器の特殊警棒は石を拾う為、先程ポッケにしまい込んでしまっている。

これは素手の肉弾戦に切り替える必要があった。

麗子は卑怯にも俺の背後を取っているものの、いつでも攻撃が出来ると気を抜いている筈だ。幸いこちらが気付いている事はまだバレてはいない。

喧嘩屋の俺が取る行動はただ一つ、ノーモーションでの上段後ろ回し蹴りだ。もうこれしか無い!!

「 うりゃーー!!!」

ドスウ!!!

決まった!

モロに首に入った!

ドシャリと倒れ込む音がして、すかさず俺は麗子に馬乗りになりトドメの拳を振り上げた。

誰だよお前…

俺の心の声だ。

月明かりが照らし出すその顔は、麗子とは似ても似つかない汚らしいオッさんだった。

いや只のオッさんでは無い。こいつは黒人だ、しかもゴリゴリのやつだ。

そいつは白目を剥き、口から血と共に黄緑色の液体をドクドクと吐き出している。

しかも糞全裸!!

「 胸毛気色悪い!!!∑(゚Д゚)」

俺は本気の一発をそいつの顔面に振り下ろした。

グシャ!っと顔が潰れ、そいつはピクリとも動かなくなった。

「 …………」


ジャリ… ジャリ… ジャリ…


俺は肩で息を整えながらも、背後から近づいて来るその足音に気付いていた。

どうやら一人では無い。


ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ… ジャリ…

振り向くと、街灯の下から墓石の細道をこちらに向かって歩いてくる数人の男。いや女もいる。

そいつらは何故か皆全裸で、頭を斜めに傾け、両手をこちらに向けながらのスタイルでアーアー言いながらゆっくりと歩いてくる。

「 はいはい、ゾンビゾンビ!」

俺はポッケからまた特殊警棒を取り出し、冗談の様なこの展開に本気の怒りをおぼえた。

「 てめーら!ここはジャパンだぞ!! ゾンビは他国でやれ、コンちくしょーが!!!」

完全にキレてしまった俺は、これが夢であってくれと願いつつもそいつらに向かって殴りかかるのだった…


【続く】
[5229] 増似語り-ゾウニガタリ-
社員旅行で北海道へ行った時のお話です。
最近では珍しくなってますが…私の勤める会社の社員旅行って、
会長さん、社長さんの経営者から派遣社員の方まで、
社員全員で行くことになっているのです。
それは、会社創立からの慣習…なのだそうで…


第一日目の宿泊地は札幌です。
ホテルは歌舞伎町、中州と並ぶ北海道最大の歓楽街、
すすきのを眼前に望む位置にあり、
幹事さんをはじめ男性社員が何を言わんとしているか…
何がしたいのか…語らずとも一目瞭然でした。
そんなものですから、一次会である全社員による宴会は適当に済ませ、
旅行前から綿密に練られていたであろう各々のドリームプランへ…
終わって五分、ホテルに残っているウチの男性社員は…皆無だったとか…
どんだけエッチなんですか皆さん…


エントランスから駐車場へ抜ける通路を歩いていると、
背後から声を掛けられました。
急いでるのに…お部屋に戻って着替えてたから、
二次会へは、課の皆に先へ行ってもらってるから急がないと、
早く追いつかないといけないのに…
しかし、ルイス・キャロルの児童小説に登場する
ウサギさん並のスルー技能なんて持ってないから
仕方なく振り向いてみますと、
我が上司…設計部門の統括責任者様であらせられました。
入社当時、私が配属された部署の課長さんで、それはもうお世話になりまして…

「今から出動か?」

今でもお世話になりっぱなしなのですが…正直、今はほっといて下さいです。
あーもう!なんでこのタイミングに、こんなところで!?
会長に引き連れられて今頃、
高級なお店に入って高級なお酒を飲んで綺麗なおねーさんが隣について…

「土曜ワイド劇場の21時から21時20分くらいまでのようなことをして
 楽しんでいるんじゃなかったんですか?」

高●悦史さん的な…峰●徹さん的な…

「なんの事だ一体!?」

追いついてきた部長さんは私と肩を並べ、駐車場へ向かって歩いていきます。
まさか、私を待っていたなんてことは無いですし…

「会長についていったんじゃないんですか?」

あれれ?普段と違ってすごくお洒落してますよ部長…
それもゴッドファーザーPARTⅡのアル・パチーノみたいな…

「行ってみたいBarがあってな…全員が出払うのを
 フッ…非常口の向こうに隠れて待ってた」

行きたくないからって…子供ですかあなたは?

「こういう時こそ会長に媚びて
 ご機嫌をとっておかないと上へ行けませんよ?」

「行きたくねーよ!まったく…
 実際、一課でお前らとわいわいやってた頃に戻りたいよ」

「えー!?部長にはもっと上まで行って、
 会社の風通しを良くして貰いたいと皆、思ってるんだけどな」

営業畑育ちや現場育ちと違って、仕事をよく見て分かってますからね、
ウチの部長様は下の人望は厚いんですけど、
頂点に近い位置にいる方達には絶賛嫌われてます…切れすぎて。

「他人の為に苦労なんざしたくねーよ!それよりお前…二次会にあぶれたのか?
 李徴レベルのコミュ力不足だからなぁ仕方ないか。
 俺に付き合って飲みに行くか?帰りにラーメン奢るぞ」 

「誰が山月記のトラですか!?コミュ力不足って…ちゃんと友達いるもん!
 き、着替えに手間取るから先に行ってもらっただけだもん!」

一次会の余興でガールズバンドなんてやったものですから…
私だけ…白ブラウスにチェックのプリーツスカートという女子高生の格好をさせれて…
それにいます!いますよ友達くらい!

「着替え…ああ、宴会のあれか、会長賞おめでとう!
 あの格好は萌えた!カミさんに画像送ったら鼻血たら…って返ってきたぞ」

「そ、そんな画像を送らないで下さい!!」

なに考えてるんですか!?現在進行形で私の黒歴史が紡がれていく様を…なんてこと…
ギターでリードボーカルな先輩の命令で私だけ女子高生のコスプレさせられたんです。
部長…何、両手で胸前を下から持ち上げるようにして…
うう、胸は小学生の頃からずっと…気にしてるんですから…

『会長は巨乳で眼鏡の女子高生に眼がないと言う情報が入った!
 胸と言ったら悔しいけどあんただ!
 会長賞を確実にする為!10万円奪取の為!
 ブレザー!それも夏服バージョンで谷間にネクタイを垂らす…ネクパイ!
 ネクパイで…その下品な胸で審査員共を篭絡するのよ!!』

と…それはもう厳命されまして泣く泣く…ぢ、ぢょ女子高生の…コスプレしました…
パートはボーカル、それからギター…私は演奏なんて無理なので…
弾いてる真似だけのエアギターで…

「なあ、やっぱり女子高生のコスって事は…下は縞パンだったのか?」

「普通のですよ!普通の!!」

「そうか…違うのか…」

なんでそこで肩を落とすんですか部長…
この歳で…それも私なんかが縞パン穿いたら魔物扱いされて狩られますよ!!

「それより部長…会長って大きなおっぱいが好きって本当なんですか?」

「好きなんてもんじゃないぞ!?
 俺とタメ張る巨乳フリークだ!お前は当初、秘書課へ配属される予定だったが、
 お前の学歴と持ってる資格を理由に正論並べて俺が横から奪ってやった。
 そしたら、出世をチラつかせて卑屈に食い下がるんで、奴に言ってやったよ。
 だが、断る!と。
 この俺様の最も好きなことのひとつは、自分が一番偉いと思っている奴に
 『NO!』と断ってやることだ!!と。
 それ以降、奴と俺は不倶戴天の間柄よ!」

し、知らなかったです。私の配属を巡って会長と部長…当時は課長が争ったなんて…
そして、何気に自分も巨乳大好きをカミングアウトしてるじゃないですか部長…
部長の視線から守るよう、反射的に腕で前を隠してしまいます。

「なんで岸辺露伴ネタを…」

「YES!IAM!」

「いや、ジョジョはいいですから…」

ゴッドファーザーPARTⅡのイメージが…アル・パチーノが…台無しです。
スケアクロウ好きだったのに…スカーフェイス好きだったのに…
HEATはカップリングし放題で大好きだったのに…
特にトム・サ●ズモア様攻めで…ヴァル・キ●マーが受けで…芳忠さんがアハーンて!
あとあとロバート・●・ニーロの正種ボイスもすっごく萌えました!

「ん、誰か来たな」

「ほえ?」

ちょっとトリップしてたみたいです。
現実世界へ立ち戻ると、エントランスから人の話し声…
壁に反響する足音が聞こえてきました。
男女の睦まじい…イチャイチャしてる艶っぽい声…
聞いたことあります、この声…これは間違いなく会社の人です!
私達、足を止めて待ってみると…
現れたのは…営業部のA係長と…
一次会でガールズバンドのリーダーをした…ギター&リードボーカル先輩!!
私に屈辱の女子高生コスを命じた張本人!
A係長の腕にしがみつくようにして歩く…周囲の目など憚らぬイチャつきっぷりです!!

「はわわわわ、あの二人…お付き合いしてたんだ…」

「俺の大切な部下が糞営業部の糞野郎の毒牙にかかっていたとは…」

今まで浮いた話などひとつもなかった先輩が…
製造や設計を泣かせて美味しいところだけを頂く悪鬼羅刹…
三階でエレベータを降りた先にあると噂される修羅の国(営業部)の男子とお付き合い…
部長が怒るのも仕方ありません!
ズルいです先輩!ズルすぎます!!
ロミオとジュリエット並な恋を満喫してるなんて…
私なんて男性とお付き合いなんてしたことないのに!
あ…こともあろうに…
キ、キスしてますよ!?小鳥が啄ばむみたいにチュッチュ!チュッチュ!と…
イチャイチャするにも程がある熱愛ぶりを見せつけられ…
立ち尽くしてますと…

「え!?」

「な、なんだと!?」

部長と私…思わず顔を見合わせてしまいました。
だって…二人は私達がいることに全然気付いてなくて…
イチャイチャしたまま通り過ぎて…駐車場へ向かって行ってしまいました。

「上司と後輩の存在に全然気が付かないなんて…どんだけラブラブ…」

あれが噂に名高い都市伝説…『恋は盲目』…
宴会でハルヒの顔真似付きで『God knows』を熱唱してた先輩とは思えません。
盛りのついた雌って感じがムンムンでした。
宿敵の営業部の男子と恋愛してあんなに充実してるなんて
先輩…許すまぢ…二次会へ行ったら全部、皆に言いつけてやるんです!

「俺、部屋に戻って風呂入って寝る…」

可愛い魔女ジニーのベロウズ大佐みたいなことを曰い、
部長は…こめかみを指で押さえながら今来た通路を戻って行ってしまいました。
通路に一人残された私…

「ハァ………」

ため息をひとつ…
同じ課で一番仲良しの子に携帯で連絡を取って、製造と設計の女子だけで飲んでるという
居酒屋さんへ向かいました。
十月末ともなれば普通に雪が降る北海道の夜はとっても寒いです。
真冬用の格好で出てきて正解でした♪
お店に入って従業員の方に案内されて個室へ通されますと…

「な、なななななな何でいるんですか!?」

上座に近いほうの席に…ギター&リードボーカル先輩がいらっしゃいました。
Aさんと大人の夜の過ごし方を実践しに行ったのでは無かったのですか?
それとも…これは何か陽動作戦的な…
しかしまぁ、あれを目撃してしまったのですから、からかう以外ありません。
皆に遅れましたと挨拶しながら、先輩の隣まで行きますと

「いや、もう見せつけられちゃいましたよ先輩♪
 A係長と私達の目の前であんなにイチャイチャしてくれちゃって
 あの後、どこへ行ったんですか?
 にっひひひひひ♪」

先輩…グラスを手に持ったまま怪訝そうな顔を私に向け、

「あんた…何言ってんの?」

真顔でとぼけられてしまいましたよ、芸が細かいですね先輩♪
もしかしたら、ここへはちょっとだけ顔を出して…
あとはAさんと…という魂胆なんですか?
そう易々と肉欲の世界へは行かせませんよ!

「ホテルの通路をAさんと歩いていたじゃないですか!
 そりゃもうリア充一区画ごと巻き添えにして爆死しろ的な、
 Aさんとくっつき過ぎてサードインパクトが起こりそうなくらいイチャイチャで~」

「シー!バカ、声が大きい!!」

先輩、慌てて私の口を塞ごうと…
あ、なんか空気が重く…それで周囲を見渡してみると…
全員がおしゃべりを止めて、こちらに注目していました。

「Aさん?営業の?
 あんた…Aさんと付き合ってたの?」

沈黙の後、ギター&リードボーカル先輩へ、
製造部門の主任さんが代表して訊ねました。
我が社には社内恋愛をする場合、
女子社員は女子全員に申告しなければならないという、
忍の道に生きる者より厳しい掟があります。
それは無駄な鞘当てや、横恋慕を未然に防ぐと共に、
女子社員が作る派閥間抗争へ発展しない為に…

私が入社するずっと以前…
一人の男性を巡って製造部門と間接部門の女性二人による諍いが生じ…
全女子社員をまっ二つに分ける凄惨な抗争へ発展したそうです。
その事があってから製造部門と間接部門には根深き遺恨が残り…
今も冷戦的状況が続いています。
それで、あの惨劇を二度と繰り返してはならないと言うことで、
『社内恋愛に関する十一カ条』が制定され
新入社員研修で、研修施設2階の視聴覚室へ女子だけ集められ、
先輩社員による講義が行われるようになったのでした。

「いつかは報告しなければ…って思っていたんだけど…ゴメン!」

ギター&リードボーカル先輩は顔を真っ青にして頭を下げました。
私もごめんなさいと…隣に倣って…深々と…

「いや、あんたが失言してくれたから、今ならまだなんとかなりそう…
 ちょっとあっちへ連絡入れるから」

女子会の幹事である製造部門の主任さんが携帯を取り出して電話をかけました。
相手は間接部門の女子社員代表である秘書課の課長さんです。
頭同士、ホットラインは確保しておくのが近代戦争のお約束です。
主任は眉間に皺を寄せ…時には相槌を打ったりして…
固唾を呑んで見守る私達…酔いなんて吹っ飛んでしまってます。

「それでお願いします。ええ…では」

耳から携帯を離し、皆の方へ向きなおりました。
そしてギター&リードボーカル先輩と私を見て、

「あんたら会長賞を全部諦めてくれない?
 あっちに半分譲渡することでこの件はチャラにするって
 二人のことも例外で認めるからって」

会長賞の賞金は最初から二次会の足しにと考えてましたし、
了解の返事をしたら、この件はこれでおしまいって事になりました。
意外と軽く済んだことにびっくりです。
楽しい社員旅行の晩でお酒も入っていたからってことかな?
主任が気分を変えて飲みなおしだ!と提案、お店も変えてしまおうってことになり、
近くの新しいお店へ場を移して二次会?三次会?を再開
ギター&リードボーカル先輩も、なんだか胸の痞えが取れたみたいで
時間が経つにつれ、顔色がだんだん良くなっていきました。

「ねえ、あんたさっきさぁ?」

焼酎がほとんど生のままで入ったグラスをぐびぐびぷはぁって空けて
主任が私の隣に千鳥足でやってきました。
左腕でガッと私の肩を抱き、お皿のボタンエビをお箸で摘んでパクって…
私のボタンエビが…うわ、顔近いです!かお!!

「さっき、この子が彼氏と二人で歩いてたって言ってたけど…」

「はい、部長と一緒に目撃しましたよ?」

主任…胸は揉まないでいいですから…ガシッってしてモミモミが…
かかる息がもうすごいアルコールたっぷり含んでて…うぷって…

「この子、ホテルを出て最初の店からずっと私達と一緒だったけど?」

「え!?」

「そうそう!最初から私達と一緒だったよ?」

主任の言葉に同じテーブルの子達が相槌を打ちました。
そう言えば…あ、そうですよ!
最初のお店へ入った時、先輩が居たから不思議に思っていたんです。

「確かにこの子だったの?もし違う女とA係長が一緒だったら…
 また、とんでもない事になるわよ!?」

「間違う訳ないじゃないですか!
 絶対にギター&リードボーカル先輩でしたよ!
 一緒に見てた部長に確認取ってもいいですよ!」

「部長と一緒だったところにツッコミ入れたいところだけど…
 でも…じゃあ、それって…どういうこと?」

ギター&リードボーカル先輩が凄く昏くて怖い目をしてます。
俗に言うレ●プ目です…ですよねー
ここに先輩がいるのに…誰だって私の見間違えで…
Aさんが別の女性とイチャイチャしてたってなりますよね…

「でも、ほんとに…本当に先輩だったんです…」

私が嘘とか冗談が苦手なのは、ここにいる女子社員は全員が知ってます。
でも実際に先輩はここにいて…やっぱり私の…見間違えって…

「あ!」

先輩が小さく声をあげました。携帯のバイブが振動する音が聞こえます。
おもむろに携帯を取り出して相手を確認すると彼だ…A係長だと…
皆で話をしろと促し、先輩が携帯を操作して耳にあてると、
スピーカーから漏れ聞こえるほどの大きな声…
電話の向うでAさんはかなり慌てて…取り乱しているみたいで、
それをなんとか先輩は落ち着かせ…
そして、Aさんに詳しく経緯を教えて欲しいと訊ねました。

「え?ずっと皆と一緒だけど!?
 え、ええええええええええええええええ!?」

もう周囲に憚りない大声でギター&リードボーカル先輩…
全員、先輩の携帯へ目が釘付けです。
食器を下げに来た店員さんも先輩を何事かと見てます。

「うん…うん…と、とりあえず切るから…うん…うん…じゃ」

パタンと耳から話した携帯を折りたたんでバッグに戻した先輩…
呆然としたような…さっきまでの怖い顔じゃなくて…
困惑…目が泳いでるみたいな…ギター&リードボーカル先輩…

「ねえ?あんたが見た私って…確かに私だった…みたい…」

「………どゆことですか?」

生き別れた双子の妹でも分裂酵母でもプラナリアでも青沼静馬なく…
ここに先輩はいながら…Aさんとも一緒だった?

「でも、あんたはずっと私達と一緒だったでしょ?」

「ええ、そうなんですよ!でも…その…」

先輩が言葉を必死になって探してるみたいな顔…

「か、彼から…今の電話の内容なんですけど…」

『うん!!』×私を含め女子全員

「私と一緒にラブホテルに入ったそうなんですけど…
 私が先にシャワーを浴びに行って…彼がベッドの上で寝転んで待っていたら
 いつまで経っても私が戻ってこないから
 心配になって浴室へ向かったら…
 私…消えちゃってた…んだって」

「え?」

「着ていた服は全て無くなっていて、
 浴槽にはつい今まで使ってた痕跡を残し…
 私がいなくなってた…って」

『え、えええええええええええええええ!?』×女子全員

「彼、今からこっちへ来るってなったんだけど…」

それで、Aさんが来るのを待っていたんですけど
来なくて…先輩がまた連絡を取ったところ…
すぐ、繋がって…今夜はずっと…今も営業課全員で飲んでるって…
先輩には一度も連絡なんてしてないって…
じゃあ、履歴を確認してみようって、先輩が通話記録を見たところ…
Aさんからの着信が…無いって…無くなってるって…
私達…先輩の電話でのやりとりを聞いてるのに…記録が無いって…
さらに店員さんが襖を開け…
待ち合わせをしている男性のお客様がお着きになられ
案内してきたのですが…いつの間にかいなくなってるって…
容姿を尋ねてみるとAさんに間違いなし…
この場にいる女子全員がパニック…
ヒステリック状態になって泣き出す子まで出て、
ギター&リードボーカル先輩も泣き出して…主任でさえ、取り乱しちゃって…
収拾つかなくなって…

ホテルまで怖くて戻れないって事になって…
部屋で独り寝してた部長を携帯で呼び出して
お迎えに来て貰いました。






(おしまい)


北海道旅行から戻って数日後、
ギター&リードボーカル先輩とAさんは別れてしまいました。
Aさん…他に付き合ってる女性が幾人もいたことがわかったそうで…
[5054] 後継者?
オカルトな球体関節人形の話を書き込んだ者です。
ようやく容量オーバーでないコメ欄に飛ぶ方法に行き着けました、ご指摘感謝。
最近、既製品(長袖のブラウス+ワンピースのセット)を買う様子をやけにウキウキ眺めているなと思っていたら、夏に作ったノースリーブのワンピースを寒くなってからも着るためだったようです。

相変わらずのオカルトぶりを発揮してくれている「彼」ですが、今回はあまり関係ありません。

今回は、私の祖母の話。

「彼」を含む球体関節人形たちの他に、私のもとには、祖母から譲り受けた市松人形がいます。
大正~昭和一桁の、所謂戦前生まれの祖母と同い年だとか。
祖父が他界した直後、一度家の中のものを整理しようということになりまして、そのときに、オーナーは私で祖母宅にて預かるという形で落ち着きました。

後に、ふと気になって、祖母に、何故私に市松人形を譲り渡すことにしたのか聞いたことがあります。
答えは、「あんたならあの子を大事にしてくれると思った」。

まぁ、人形好きですし、当たっていますよ。
問題は、譲り受けた時期です。

譲り受けた当時、私は、人形関連はブランクに当たる期間だった筈なのです。
両親と兄弟は私の人形趣味を知っていましたが、祖母には教えていませんでした。
オーナー交代は母から祖母に持ちかけたのですが、「RENが欲しい言うてんねんけど」という文脈で。

おそらく直感的なものだと思います。
人に話すと、同じ空気みたいなのを感じ取ったんじゃないの?と返ってきます。
普段そこまで勘の良い訳ではない、むしろ鈍い部類に入るであろう祖母の行動だけに、不思議な感じがしました。


余談。
市松さんを譲り受けて以来、今の自宅(祖母宅、同居)を離れては
呼び戻されています。
当時北陸勤務→リストラで祖母宅に身を寄せる→どうにか再就職→メンタル病んで強制送還、今に至ります。
母は家の神様に気に入られたかもと言っていましたが、私はむしろ市松さんが犯人のようなきがします。
こっちの方がオカルトっぽいですね……。
[5014] 盆の湖畔
十年以上も昔の話となる。
会社の先輩であるAさんと中学以来の友人Bと俺の三人で盆休みを使って
北海道旅行へと出かけた。
車一台、バイク一台…むさ苦しい野郎だけでの貧乏旅行…
それでも、素晴らしいものになるだろうと
胸をはずませてた訳だったのだが…
上陸以来、立て続けに起こる怪異に戦慄した俺達は
畏怖の意味を込めて『北海道』を『北怪道』と呼ぶようになっていた。





美幌峠の展望台にてAさんと再会を果たし、
今夜の宿営地となる屈斜路湖畔へ向かった。
しかし、残念なことに予定していた
スコップで地面を掘ると温泉が湧き出るという砂湯キャンプ場が…
俺達が到着した頃には、家族でアウトドアを満喫しにきた道民達によって…
テントで埋め尽くされていた。
時間は午後3時を過ぎている。
湖周辺にあるキャンプ場も全て満員状態…
俺達に残されていたのは…道路を挟んだボート乗り場の反対側…
林を切り開いたような空き地だけだった。

立地的に見て、冬場にボートを陸揚げする為に、確保された土地だろうか…
三方を木立に囲まれているから風に強いし、テントを十張は楽に設営できる広さもある。
地面も平坦で、ペグを打ち込むに最適な固さだ。
さっそく、車から荷物を下ろして野営の準備に取り掛かる。
Aさんは一人用のテントをせっかく持ってきたのだから
今夜はそっちで寝たいと言い出す。
別に良いとは思うのだが…
問題は…俺達だけでこんな場所に野営となれば…熊が一番怖い。
華奢な人間など前脚の一振りで全てが終わってしまう。
そこで、林へ5mほど入った辺りにロープを張り巡らせて鳴子を仕掛けることにした。
テントに近づくものが触れたら大きな音を出して知らせるものだ。
また、車とバイクでテントの二方向にバリケードを築く。
それから錆びたマチェット(山刀)をテントの四方…地面に突き刺した。
動物は金属臭を嫌うので熊除けに使える。
火薬の臭いも熊は嫌がるからと花火(ドラゴン)もテントに持ち込む。
夜は二時間交代で歩哨を立てて周囲を警戒した方が良いかもしれないな。
三毛別羆事件の二の舞だけは御免だ。
念の為に、廃墟で手に入れたアイヌ刀もテントに入れておく。

などと、俺達がテント要塞化計画を着々と進めていると…
キャンプ場に入れなかった人々がここへ集まりはじめた。
俺達に野営する許可を求めてきて…地主じゃないから俺達…なので、どうぞどうぞ♪
あっという間に家族連れを含め20人がここで夜営することになった。
これだけの大所帯となれば熊も流石に来れないだろう。
俺達はこっそりマチェットを地面から引き抜き、パジェロへ隠しておく。
人間相手で心理的影響力…有りすぎるからな…
錆びているとは言え…錆びている故か…刃渡り60cmオーバーの山刀は…
ついでに鳴子も回収した。

夜営の支度が一段落した頃、俺達は風呂に誘われた。
五人でバイク旅をしている中の一人が、近くにあるレジャーランドに温泉があるとか、
それも源泉掛け流しで入浴料がかなり安いと。
今夜は風呂なしと諦めていたところに入った朗報。
速攻でジャージとTシャツに着替えてサンダルを履いて、
洗面道具をMyケロリン(洗面器)に入れて小脇に抱えて準備完了。
いざ行かん!レジャーランドへ!!
右手に持ったタオルを振り回し、全員が上機嫌で
織田哲郎の『いつまでも変わらぬ愛を』を熱唱して出発。

「一色紗英可愛いよな!?」

「のんきな国は頭の中までカラカラです。私の命の水、ポ●リスエット」

「まったく…●乳は最高だぜ!」

風呂…源泉掛け流しでお湯も熱く最高だったが…
なぜか南国の植物が生い茂る
ジャングル風呂だった。
北海道で…それも屈斜路湖畔で…
なんで、ジャングル…
道民…ジャングル好きなのか?


風呂から出ると、夕日が原野の向こうに落ちて行くところだった。
テントへ戻ったら飯の支度をしないとな。
いくらかでも明るいうちに済ませるのが鉄則だ。
湧別で買ったラム肉と野菜があるから、炭を熾して今夜はジンギスカンにしよう。
インスタントの味噌汁…
飯は…以前、友人から貰った自衛隊謹製戦闘糧食I型…
暗緑色をした禍々しい缶に二合の飯が詰まった通称『缶飯(カンメシ)』
酒の肴には自衛隊が生んだ最高傑作『たくあん漬け』を出そう。
普通のたくあんとちょっと違うが、中毒性を覚えるほど妙に美味い。
DEENの『瞳そらさないで』を口ずさみながら俺は野営地へ戻る。


テントで飯の仕度をしていると、見るに見かねてか…
家族連れで来た方々が場所を提供してくれた礼に、俺達を夕食へ誘ってくれた。
俺達…というのはバイク旅をしている連中を含めての意味だ。
テーブルに並べられた料理の素晴らしさを目の当たりにすれば、
断わるなど…できる筈もない。
ジンギスカンと戦闘糧食の出番は後日へ持ち越し。
それにしても、道民はこういったアウトドアは慣れているのだろうか…
調理器具など、家と違ってろくに揃っていない状態で…
煮込みから焼き物…蒸し物、サラダにスープ…一体、何品目あるんだ…
震えるほど豪華!燃え尽きるほど豪勢!刻むぞ食欲のビート!
並べられた料理に目も意識も魂までもが釘付けだ。
手土産にと持参した本土の銘酒三本を旦那さんに渡し、
俺達は遠慮しないで貪り喰らった。
天空の城ラピュタでシータの作った飯を夢中で喰う空賊一家の如く…
あんまり美味すぎてやめられない止まらない。
毎晩、怪異に悩まされてはいたが、旅を途中で投げ出さなかった理由のひとつに
北海道民がくれる無償の優しさ…温かさがあった。
上陸した初日、民宿の婆さんは一度落とした風呂を温めなおして俺達を迎えてくれた。
夕張で、へとへとになって林道を抜けてきた俺達に、農家の爺さんが
これを喰えと手渡してくれた…惜しげもなく本場の夕張メロンを…
車を停めて地図を眺めていれば、道を教えようと話掛けに来てくれた。
サロマ湖でも2000円で山ほどの魚介類を売ってくれた。
飯屋に入ればどこでも山盛りにしてもてなしてくれたな…
今夜も…見ず知らずというのに
素晴らしい晩餐へ招待してくれた家族…
遅くまで酒を飲み語らい
満天の星の下で最高の夜を過ごし、
それから各々のテントへ戻って眠りについた。




時間は分からない…
いきなり、眠りの一番深いところから無理矢理に目覚めさせられたのだ。
薄く目を開くと、消灯したカンテラの尻が見える。
周囲を確認しようと…首を動かそうと…おかしい…
どれだけ力を込めようとも動かない。
手足も同様に…指一本、間接ひとつ…駄目だ、動いてくれない。
全身がカチカチに固められた。
頬に触れる空気が恐ろしく冷たく乾いている。
口の中…喉もカラカラで…鼻の奥がつんと痛い…
隣で寝ているBを試しに呼ぼうとしたが声も出ない…
これは、完全な金縛り状態だな。
毎晩の習慣となってしまったテントの四隅に盛塩は済ませてある。
慣れている…金縛りの解き方は分かる…焦る必要は…ない…
放って置いても自然に解けるものだし…
かなり離れた場所で…
魚が水面から勢いよく跳ねたような音がした。
全身が動けない分…聴覚が異常に研ぎ澄まされている…のだろうか…
本来なら絶対に聞こえない音…聞こえるはずのない距離…
道路を挟んで向かい側、
ボート乗り場…料金所…長い桟橋…いや、その先…
落ちてこないな…
魚が飛び跳ねたのであれば水面を叩く…遅れて落ちる音もしなければ…
しかし、それがない。
単に聞こえなかったのか…跳ねた物体がまだ空中に浮いてるか…
ポタリ…ポタポタと
板張りの床に滴り落ちる水音…心の奥へ沁み入るような…
水から出た何かは…桟橋へ上がった…聞こえようもない音をたて…
今夜も来たんだな…怪異…
ゆっくりと…水を滴らせながら…桟橋をこちらへ向かってやってくる。
自らの位置を示す様に…濡れた身体から水を滴らせ…

単なる金縛りならば、焦る必要もないのだが…
想像してしまった。
あれが…首長竜の末裔とされるクッシーだとしたら…
金縛りなんか仕掛けてくるということは…首長竜の末裔の幽霊だとしたならば…
水から上がって落ちてこないのは…説明がつく。
身体は湖にあり…首だけが…こちらへ…

俺の金縛りを解く方法…
頭部から足のつま先に向かって、僅かでも自分の意思で動かせる場所を探し、
そこを中心に力を込め、引き剥がすように無理矢理動かして、
全身のコントロールを取り戻す…力技。
小指の間接ひとつだった事もあれば…眼球や舌の時もある。
これをやると物凄く痛いし、
精も根も尽きるので半日は、まともに動けなくなるのが難点だ。
背に腹はかえられない…この状況…
僅かでも動かすことが出来れば…
と、いつもの手順踏んでみたのだが…おかしなことに…一箇所も見つからない。
完全…いや、完璧な金縛りか?
今まで体験したことのない金縛り状態。
焦りが出てきた。
水を滴らせ…クッシーかもしれない何かは、桟橋の中ほどまで来ている。
もう一度、最初からチェックのやり直しだ。
絶対に動かせるところが…金縛りを破る突破口がどこかに用意されているんだ。
二度目も確認作業は空振った。
これは本気でヤバいかもしれない。
水が床に垂れる音はとうとう…木の板からコンクリートへ変わる。
料金所までやって来たのか…
何度も何度も…頭の天辺からつま先まで…試す。
まだ見つからない。
くそ!また最初から…
道路を渡る…あと数メートルでテントまで来る。
動け…動け…動け…動け…
左手の親指…人差し指…
テント生地が大きく外から押されているように…たわむ。
入ってくる気だ…
直径20cmくらいか…球体に…
黒い藻の塊のようなものを纏わりつかせた…
テント生地をすり抜け…ふわりふわりと入ってきた。
クッシーじゃない…首長竜の末裔の幽霊なんかじゃない。
それは顔の真上までやってきて…
俺の口に鼻に…ポタポタと生臭い水を降らせてくる…湖水か…腐ったような…
左手の薬指!第一間接がピクリと動いた。

宙に浮いた謎の黒い物体はゆっくりと回転を始める。
あれが…何なのかが…分かった…
俺に正面を向けようと…している…
白蝋のような肌に幾筋もの線が走る…黥(げい)…入れ墨…
闇を湛えた…虚となった眼窩…
削げ落ちた鼻…唇は失われ剥き出しになった歯列…
首だ…アイヌの女性と思われる。
ずぶ濡れの長い黒髪を纏わりつかせた生首だった。

動いた左手の薬指を力いっぱい握り込む。
鋭い痛みが走った…だが、動いた!
小指…中指…人差し指…親指も動く。
肘も肩も…左手の自由を俺は完全に取り戻した。
待ってましたと枕元に置いたアイヌ刀の柄を握り…鞘をつけたまま
当たるを幸いに横殴りに振り切った。
頭上の生首が爆ぜる。
転瞬、
耳をつんざく…聴覚が馬鹿になる程の大轟音!!
闇を切り裂く閃光に目が眩んだ。
その力…天候すら操る…
まさか、アイヌ神話に登場する悪神…
ウェン・カムイか!?




視力を取り戻したとき
不気味な生首はもう…いなかった。
異臭がテントの中に立ち込め…
それが夢でも幻でもなかったという証が残されていた。
再び轟音…今度は少し遠い…正体は雷だった。
テントの生地が大きくはためき、
鬼哭のような音をたて突風が吹きつけてきた。
未明の急激な天候変化…
みるみる外は大荒れになる。
屈斜路湖の水を全てぶち撒けたような大雨…
ひっきりなしに聞こえる雷鳴…
天駆ける雷光…
金縛りを自力で解き、
一刀に残る全てを込めて振った疲れの為か…
異形が消えた安堵からか…
身体からみるみる力が抜け…
俺の意識が遠のいていった…






目覚めると朝…
テント生地を透かして朝日が俺の顔を照らしている。
身体に…力がまるで入らない。
ふらふらとテントの外へ這い出してみれば、
ひんやりと水気を纏った空気…
風で引きちぎられた落ち葉が迷彩塗装の様にテントへ貼りつき
外には大きな水溜りがいくつも出来ていた。
嵐の名残がしっかり残っている…夢ではなかったか…あの生首も…

隣の個人用テントからAさんが起きだしてきた。
おはようございますと挨拶すると
Aさんが意味ありげな妙な笑みをしてみせる。
なんだあの呆れたような…蔑むような…今まで見たことの無い表情…
他のテントからも続々と人が這い出てくる。
挨拶をすると…
やはり、Aさんと似た…変な笑みを向けられた。
なんなんだ一体?
一番最後にBが大あくびをしながら起きてきた。

朝飯も家族連れの方のご好意で頂くこととなった。
テーブルに並べられたサラダとハムエッグに味噌汁、
奥さんが寝る前に作って煮込んでおいたカレーという布陣。
美味い美味いとカレーをパクついていると
Aさんがにやにや笑いしながら…俺に…

「お前等、昨夜はお楽しみだったみたいだな♪
 これまで俺が一緒にテントで寝ていたから遠慮してたのか?」

と、訳の分からんことを振ってきた。
遠慮?遠慮なんかしてたのか俺…お前等というと俺とBが?

「なんですか、それ!?」

その気持ち悪い笑み…止めてくれないだろうか…
他のライダー達もにやにやしてるし…

「いやもう、あんな激しい声出してなぁ、困った困った」

「え!?あれってやっぱりアノ声だったんですか!?」

女性ライダーの一人が我が意を得たり的な事を言い出した。
なにを…確信してしまったんだあんた?
家族連れの奥様とその隣の女性ライダーが顔をしかめながら…嬉しさ四分の一位で…

「男同士でしょ?」

「いえ、男同士だからこそなのです!」

「でも、なんで…ここで…」

「きっと抑え切れなかったんです!」

とか口許を隠してひそひそと始めたじゃないか

「なんなんですか!?
 Aさん!分かるように言ってくださいよ!」

「お前等…夜中…嵐がくる前辺りまで…
 男同士でヤッてたんだろ?
 やばいくらいの喘ぎ声がな聞こえてきてなぁ
 そうかぁ~お前等そういう関係だったのか…
 他人の恋愛だから何も口出しできんが…
 あの声はもうちょっと抑えた方がいいぞ」

「いや…あの…何言ってんだあんた?
 俺とBが●モな筈がねーだろ!!」

ライダー達はリアルホ●かよ…たまんねーなと…ぼそぼそ…
女性達はおぞましいものを見るようにしながら…
嫌な光を爛々と目に湛え…薄気味悪い半月形の笑みが口に刻まれてる…
そして、容赦なしの追求が…

「では、なんだったんですか?あのテントの中で奏でられた妖しき嬌声は!?」

「ホ●は悪くないんです!●モは生き様であり性癖であり個性です!
 私は絶対に差別なんかしません!むしろご馳走です!至高のメニューです!」

「あのやすりで擦ったような荒い息遣いは尋常のものではありませんでしたよ?
 絶対に挿ってるとしか!!」

「どっちが攻めで受けなんですか!?」

「人生意気に感ず!」

荒い息遣いか…嵐が来る前…ふわりと浮く生首…
あ、あの事か…あれをホ●と…くそ!

「あれはホ●なんかじゃない!
 金縛りにあって必死にもがいてたんだ」

「またまたぁ、金縛りとか苦し過ぎる言い訳!認めなさい●モだって!!」

「いや、マジで金縛りになって大変な目に遭ってた…あの嵐もその影響かもしれん」

『え!?』×俺とB以外…

真剣さが伝わったのかAさんを含め…全員の顔色が変わった。
俺は昨夜の…自分の身に起きた怪異について一部始終を彼らに語って聞かせる。

「あれ…見て…」

立ち上がったままになってた女性ライダーがおもむろに…
ある場所を指差した。
木立に隠れるように…石碑が立って…る…
背筋がゾッとした。
そこから一同の動きは迅速を極める。
あっという間に朝食の片付けを済ませ、
荷物をまとめて車やバイクへ積み込み、
慌しく別れの挨拶を交わすと
それぞれの目的地へ向かって、
この場をいそいそと立ち去っていった。
何の為に建てられた石碑か、
誰も確かめることなく…


俺達も…
次の宿泊地である知床…羅臼を目指す…
今夜こそは怪異など起きず、ホ●にも間違われませんように…
●モ疑惑をかけられて一言も反論しなかった…
オリーブの首飾りを口ずさみ運転するBの隣で
俺は太陽へ向って真剣に手を合わせるのだった。



(了)
[5010]
何であちこちのサイトに書き込むんだ…
[5009] あ~
うんこにふりまわされちゃったんだね(´・ω・`)
[5008] カーナビの罠
友達と車で出掛けてる時な、ハンドル握る 友達がうんこしたくなったって言い出した。
道路脇は枯れたススキの原がずっと続いていて、適当な所で車を停めて野糞すれば?と言おうとした矢先、いきなりカーナビが動き出してな、目的地まで50mとか音声案内をはじめたんだ。
なんだ?と不思議がってたら、緑色のバックネットやナイター様の照明が前方に見えてきた。
なんか寂れた野球場があって広い駐車場が あってな、公衆トイレがあった。
友達はカーナビ誉めまくって、駐車場に車停めてトイレに走っていった。
そしたら、1分位で友達が女子トイレで首吊り死体見つけたって血相変えて戻ってきた。
なんで女子トイレなんかに行ったんだよ!? って責めたら、
男子トイレの個室が全部塞がってて、
野糞だけは嫌だと、背に腹は替えられないと変 質者でいいからうんこさせてくれと女子トイレに向かったら、
首吊った女性が個室でお待ちしてたらしい。
それで、警察呼んだんだけど 待ってる間、
男子トイレから誰も出てこなかった。
死体見つけて一度は引っ込んだ便意が再び戻ってきた友達は仕方なく、草むらで野糞することになった。
恥ずかしいやら、悔しいやらで半泣きになってたな。
おっとり刀で駆けつけてきた警官が、なんで女子トイレになんかへ入った んだ?と尋ねたら友達はカーナビが全部悪いって物凄い剣幕で逆ギレしてた。
現在、友達の車にカーナビは付いていない。
[4952] 盆の原野
十年以上も昔の話となる。
会社の先輩であるAさんと中学以来の友人Bと俺の三人で
盆休みを利用し、北海道旅行へと出掛けた。
車一台、バイク一台
たとえ、苦しい野郎だけであろうとも
たとえ、貧乏であろうとも
素晴らしい旅になると
胸をはずませていた訳だったのだが…
上陸以来、立て続けに起こる怪異に戦慄した俺達は
畏怖の意味を込めて『北海道』を『北怪道』と呼ぶようになっていた。




屈斜路湖目指してサロマ湖畔を出発した俺達、
サロマ湖の南岸沿いに網走へ向かっていたはずだったのだが…
気が付けば昨日、湧別へ向かう途中に通った遠軽にいた。
そして、後ろからバイクでついてきてる筈のAさんがいない。
Bに運転を任せて俺は助手席で寝てたから気付かなかった。

「美幌峠の展望台を待ち合わせ場所に設定してるから、まぁ大丈夫だろう」

「このまま南下して安国で国道333号線に乗れば美幌町へ行けるぞ」

「網走経由とそれほど距離も変わらないか…こっちは山道だが、それで行こう」

燃料も補給したばかりだから余裕もあった。
それから、北海道へ来て…俺達の距離感覚はおかしくなっていた。
2、30kmならほんのちょっと…
本州であれば100Kmなんて地平線の彼方なのだが、
北海道は1時間もかからずに行けてしまう。
道幅も広く本州の二車線分くらいあり、
急カーブ注意の標識があってもほとんど減速する必要がない。
最初は本土の峠道と同じ感覚でコーナーを進入する手前で減速し、
ヘアピンに備えたのだが…ゆるいゆるい。
進入で速度オーバーのミスを犯しても、路肩も広く確保されているので
難なくコーナーを脱出する事ができた。
逆に、信号が少なく長い直線の道を走っている方が疲れるし、眠くなってヤバい。
思ってた以上にBと運転の交代は頻繁に行う。
緑濃い原野が広がる中を貫く遠軽国道…
ハンドルを握るのは俺…時速120km/hでパジェロをすっ飛ばす。
狭まる視界…国道333号線を走る目の端におかしなものが見え始めた。
左右の道路脇…木立の間に…人がいる…
猛スピードで通り過ぎていく木々の間に…ずっと…人が…
毛髪は薄いのか剃っているのか…見えない…坊主頭…
服は着ていない…下半身に下着だろうか…頼りない一枚のみ…
紙の様に白い肌…背丈はバラバラだが…全員がガリガリに痩せ細っている。

「B…道路の両脇な…木と木の間に上半身裸の男がずっといるのだが…見えるか?」

寝てたのか…膝の上に開いていた地図をたたみ、
欠伸ひとつして右手で目を擦り、助手席側の窓から原生林へ目をやる。
おや?返事がない…

「闇黒舞踏みたいな連中が道路脇にずらっと並んでるだろ?」

「…木…人…木…人…木…休む…休みたい…休ませてくれ?」

「B…どうした?」

「いる…ずっとこっちを睨んでる…なんでこんな山の中に…人がいるんだ?
 そいつらの顔が…なんかそう言ってるような…」

生きている人間で無い事は確かだ。
正面から近づいてくるまでは見えない…のだが…ほぼ、真横になると…いる…
俺には一人一人の表情までは確認できない…
以前、第二次世界大戦でナチスがユダヤ人に行った虐殺…
ダッハウ強制収容所の写真を見たことがある…
堆く積まれた…何の罪もなく殺されたユダヤ人の死体…
収容棟の中で食事も水も殆ど与えられず、蔓延するチフスと餓えによって迎えた死…
壮絶…
あの感じにとても似ている…

「まるで…古事記にある…人が死んだら行くって言う…
 根の堅州国の途中にある…黄泉比良坂の有様だ…」

「俺の目には全員…男…男しかいないと思うのだが…」

「確かに男だけだ…女は一人もいないみたいだ。
 酷い怪我をしているのもいれば…なんだ?身体が腫れあがってるのもいるし
 肩から上が無い奴もいる…銃創を負ったみたいなのもいるな…」

「顔からしてアイヌとはとても思えない…シサム…どうみても本土の人間だな…」

「戊辰戦争で賊軍になった藩の人間が開拓団として送り込まれた話は
 聞いたことがあるけど…一体…なんなんだこいつら?」

奴等は美幌町へ行く間…
ずっと木の間から俺達を睨み続けていた。





美幌峠の展望台でAさんと再開することが出来た。
予定通り、網走経由で来たらしい。
それで、俺たちが遠軽国道で見た怪異のことを言うと…

「俺も途中の踏み切りで変なの見たぞ。
 遮断機が下りて電車が通り過ぎるのを待っていたのだが…
 線路の中にな目鼻立ちも分からん真っ黒な人影みたいなのが立ってたんだ。
 藤城清治の影絵を知ってるか?
 警報機が鳴る中…
 ざんばらの長い黒髪で赤黒い振袖みたいなのを着てて…女だって…
 でもな、それがよく見たらだらんと垂れ下がった皮膚で…
 電車が来て、そいつを躊躇無く轢いてった。
 通り過ぎた後には何にも残ってなかったな」

どのルートを使っても怪異から逃げられないんだ…
俺達…





(了)
[4917] 盆のオホーツク海
十年以上も昔の話となる。
会社の先輩であるAさんと中学以来の友人Bと俺の三人で盆休みを使って
北海道旅行へと出かけた。
車一台、バイク一台…むさ苦しい野郎だけの貧乏旅行…
それでも、素晴らしいものになるだろうと
胸をはずませてた訳だったのだが…
上陸以来、立て続けに起こる怪異に戦慄した俺達は
畏怖の意味を込めて『北海道』を『北怪道』と呼ぶようになっていた。




俺達は予定の一日遅れでオホーツク海にやって来た。
前日、美瑛町にある幻と言われる青い湖を見に行き、
その帰り…道に迷ってどこぞと知れぬ廃墟で一夜を過す事となった。
朝、なんとか美瑛町中心部まで戻れて旅を再開。
まず、旭川市へ向った。
それから国道39号線と333号線で石狩川、湧別川に沿って東へ走り、
Bと運転を交代しながら大雪山とチトカニウシ山の間を抜け、
遠軽から国道242号線で北上…
そしてついに、湧別町にあるサロマ湖西岸、砂嘴にあるキャンプ場へ辿り着いた。
長かった。
本来ならば旭川ラーメンを食し、層雲峡に立ち寄り温泉に浸かる筈だったが
廃墟を出て美瑛まで戻るまでに時間を浪費した為、そんな余裕は無かった。
今は風呂入って飯食って酒飲んで寝たい…それだけだ。
疲れた。

昨夜、青い湖からの帰り道…
俺達はパーフェクトと言うかエクセレントと言うか完全に迷ってしまった。
日が落ちて、周囲は真っ暗闇…
目印などない原野な上に、自分のいる場所すら分からず地図も頼れない。
うかつに動くこともできず、
どこかで朝になるのを待つしかないと泊まる場所を探した訳だが…
見つけたのは農場らしき廃屋…
熊に怯えて道端にテントよりは数倍マシと諦め、
そこで一夜を過した。
さすが廃墟だ。
そこでまた、怪異に見舞われた。
ただし、俺のみ…
納屋を借りて中にテントを張って寝たのだが…
夜中、尿意で目が覚めた。
納屋を出て庭の隅で用を足した俺の前へ、
この家に暮らしていた家族と思われる6体の異形が現れた。
夫婦らしい中年の男女…老爺と老婆はどれも首にロープが巻きつけられ…
どれもこれも生者では敵わぬ凄まじい形相をしていた。
眼球は飛び出し、舌が顎に付きそうなほど伸びた婆さんは特にヤバかった。
残り二人は子供で首の骨が折れているらしく終始…俯いたままで…
一家心中でもしたのだろうか…
憐れんでる暇も無く、
奴等は無言で俺に追い縋ってきた。
生きている者が憎くて仕方無いのだろうか?
俺は納屋へ逃げ込み、AさんとBに助けを求めたが
起きる気配がまるで無し。
戦うしかないと…
ゲートオブバビロンみたいにわんさか壁へ掛けられた鍬や草刈鎌などの農機具を
掴んでは投げ、掴んでは投げ…
半狂乱で人外相手に大立回りを演じたのだったが…
気が付けば朝で…彼等が命を絶った痕跡が残る母屋の広間で
大の字になって寝ていた。
手には何故かアイヌの民が使っていた刀(エムシ)が握られており、
壁や柱に立て掛けられていた畳がズタズタに切り刻まれていた。






「ションベンしてくる」

ほろ酔い加減のAさんがテントを出て行った。
夏とは言え北海道の夜は冷える。
ここはオホーツク海が目の前にズドーンだから、寒くて当たり前だ。
温まるには酒が欠かせない。
ならば、酒を飲まなくてはならない。
ということで
今夜も例のごとく三人でささやかな酒宴が始まった。
廃墟で一夜を過ごした昨夜でさえも酒盛りは欠かさなかったのだ。
ストーブに火を入れ、ケトルで湯を沸かす。

「今夜はお湯割りパーティだな」

AさんとBは焼酎、俺はウイスキーをお湯割りにした。
つまみは晩飯の残り…ホッケの塩焼きにホタテの網焼き、茹でたホッキ貝…
明日の行動予定を冗談を交えながらゆるゆると決めていく。
まるで、秋の夜長の風情だな…
波の音を聞き、過ぎていく時間を楽しみながら…静かに酒を飲む。

俺は廃墟で手に入れた刀(エムシ)を膝に乗せ、鞘から刀身を抜き出した。
鞘や柄などの拵はアイヌ民族独特の文様が施されているが、刀身は日本刀そのものだ。
アイヌ民族は製鉄技術を持たなかった為、
刀身と鍔を日本本土から輸入して拵えのみを製作していた。
また、拵から刀身まで1セットの完成品で輸入されたものはイコロ(宝物)と呼び、
エムシもイコロも神事の際に用いられた。
魔除けとして扱われていたりしたんだよな。
日本刀にはそれほど詳しくはない俺だが…
磨きぬかれた刀身の美しさに思わず見惚れてしまう。
刃長は定寸の二尺三寸五分よりはかなり短い。
二尺あるかどうか…脇差…大脇差の部類に入るだろう…
それにしても、なんという貫禄…
風格というのか…
棟の重ねが薄く鎬筋高く、平肉が付かない造り込み
地は板目肌が流れ肌立ち鎬地柾目となり白け映りが鮮明に立つ。
互の目尖り刃を交え、柔らか味のある匂口…

「良いものなのでありますか?」

「関刀だよ……詳しくは知らんけど」

飲むのを止めて美しい刀身に見入っていると
Bがウラガン的な台詞で訊いてきた。
俺はマ様的台詞で受ける。
そこへ、出入り口のファスナーが外から押し上げられ、
怪訝そうな顔をしてAさんが戻ってきた。

「なぁ、堤防の向こう側から
 たくさん人がこっちに向かって歩いてくるんだけど
 お盆だし、あっちでなんか祭りでもあったのか?」

「堤防の向こうってなんですか?」

トイレからの帰りに酔い覚ましだと堤防へ登ったAさんは
真っ暗なオホーツク海を眺めたそうだ。

「それがな、真っ暗な中…かなり遠くに
 街の明かりみたいにキラキラと赤や黄色の光が灯っていて…何市なんだあれ?
 そこからずらっと…青白く光る人間が列を作って、
 こっちへ向かって歩いてくるんだよ。
 だから、あっちでやってる祭りから帰ってきた連中だろうと思ってな」

明らかにおかしな事を言ってるぞAさん。
酔っていて頭が回ってないのだろうか

「堤防の向こうって何もないですよ?ある訳ないじゃないですか」

「あ?あるだろうよ、あっちだって、あっち!!」

「あっちは北ですよ?」

「なんか分からんが、ぞろぞろとこっちに向かって人が来るんだよ!」

マグカップに焼酎を入れてお湯割りを作るAさん。
俺が家から持ってきた梅干を落とし、マドラー代わりの割り箸でかき混ぜる。
だめだこりゃ…俺とBはげんなりして顔を見合わせた。
Aさん全然分かってない。

「Aさん」

「なんだ?」

マグカップを手に持ち口へ運ぶAさん…
俺はもうすっかり酔いから醒めちまってる。

「堤防の向こう…あっちはオホーツク海だから…人…歩けないから…」

「ブッ!!」

「うわ!きたねぇ!!」

口に含んだ焼酎をグレートカブキみたいに俺へ吹きかけやがった。
やっとおかしなことに気が付いてくれたか…

「なんだと!?
 今夜もか?また今夜もなのか!?
 おい、塩!塩はどこだ!?」

俺の調味料箱を開けて中を引っ掻き回しはじめるAさん。
晩飯のおかずを買出しへ行った時に買い足しておいたのだ。
こんなこともあろうかと思うのではなく…きっと今夜も出るだろうと…
テントの出入り口と四隅、天井部に吊るされたカンテラの笠へ、
三人で手分けして塩を円錐状に盛る。
だんだん手馴れてきたな。
その効果があったのか…は、分からないのだが…
俺とBには何事も起こらず朝までぐっすりと眠ることができた。

ただ、Aさんが一人だけ
人生初めてとなる金縛りを体験することとなった。
指ひとつ身体を動かすことが適わず、声も出せない…呼吸するのもやっとで、
視覚と意識だけは、はっきりしている。
天井に吊るしたカンテラの底が見えた。
テントの外…気配を感じる…すぐ近くに誰かいる。
取り囲まれている…な…
もちろん一人や二人ではなく…十人から数十人…それ以上も…
何十人分もの顔をテント生地に押し付けてきた。
生地を突き破ってやろうかという勢いで、
金縛りで動けないAさんへ向けて、ぐいぐい迫ってくる。
布地越しでも目鼻立ちから表情までもがはっきり分かった。
頭蓋骨みたいなものもいれば、
顔の半分を欠損しているようなもの、下顎が無いものや、
鼻が削られて平らになってるものもいた。
どれも断末魔の凄まじい形相…
顔…顔…顔…
デスマスクの群れが眼前にまで迫った時、
Aさんの意識は視界ごと暗転した…

朝飯に一切手をつけず、
Aさんは憔悴しきった顔で
昨夜起きた恐怖体験の一部始終を語ってくれた。





本日は網走から国道243号線に乗り美幌峠越えて屈斜路湖を目指す。
屈斜路湖にはスコップで穴を掘ると温泉が湧き出すと言う砂湯があるそうだ。
そして、屈斜路湖と言えばクッシー!!

「クッシーを見ずして何が北海道旅行か!!」

ここまで毎日、異形と遭遇してきたのだ…
屈斜路湖で遭遇する異形は
絶対、クッシーであるに違いない。
『キン肉マンGo Fight』を口ずさみながらハンドルを握るBの脇で
俺は握りこぶしを固め武者震いするのであった。






(了)
[4898]
餌はジョーク!!血苺さんの話好きだよ。心にしみる名作も書ける人。最近褒めないと削除される傾向にあるんで試してみただけ。
叩かれるのって結構勉強になるんだけどな…。アラシは結構見る目持ってて貶すのはやっぱ欠陥があるから。言われてみて成る程と思う事が多いんだ。投稿者にとっては無視が最悪。投稿サイトは叩かれてナンボ。そこで奮起せず自分擁護に走る碓氷さんが異常なだけ。師匠シリーズだってかなり叩かれてんだから。
今のままじゃここで第二のウニさんは生まれないよ。
[4895]
↓↓餌と言う単語のみで言及されておられるが、そもそも雀に言語を理解し発声する器官は持ち合わせているのだろうか。
ブローカ野とウェルニック野だっけか。
餌以前に雀は言葉を発することができないのに、それを成し遂げている異常がすでに起きている。
ならば、夢か幻聴と超常現象を否定する者は捉えるだろう。
そこで、0.血苺氏の作品に置ける傾向が重要になってくる。氏の作品は異常を異常と捉えるよりも勘違いや、考えてみれば説明がつく話へ落ち着かせようとするものがいくつもある。
日常の嫌なものなど、地面に足がついている話を好んで書いていると思われる。
対極にあるのは、こげ氏とやまっち妻氏だろうか。こげ氏は神や鬼、悪霊等をあるものとして登場させ、やまっち妻氏はすでに狂ってしまった日常、作者すら狂気に取り憑かれているような書き方をする。
餌と言う単語も0.血苺氏からすれば雀が言葉をしゃべるのであれば、すでに非日常であり、人間の感覚を通して語られたものであると判断したとも読み取ることができる。
などと偉そうに書いてしまった。

指摘や感想であるなら我々でも可能だが、批評となると作者の書いた全作品を調べ尽くし、専門的知識と豊富な経験に裏打ちされた客観的な見地から作品の評価を行わなければならない。

これと異にするのは夢路幻燈斎氏、河上龍泉氏、ドクロン氏、碓氷凍魚氏、サド氏の名義で同一人物が書いた話だな。
プロットや下書き程度を作品として推敲もせずに投稿してくるのだから批評してくれる人間がまず、存在するわけがない。指摘で十分足りる。素人なのだから大目にみろ、訳の分からない稚拙な文章も素人なのだから仕方がない、読者がそこを配慮して内容を理解しろと言う始末だからな。読み手に伝わらない文章を書いてる内は素人ですら無いと思う。チラシの裏に落書きしている幼児やそのレベルの人間を素人とは呼ばないだろ?
[4894] ありがとうございます!
七不思議さま

はい。読んでいただけたなら、私はどんな感想でも嬉しいですよ!
私も同僚の体験は、夢だったと思っていますが(あまりにも出来すぎだから)…餌を差別用語とするのは人間のモラル(?)の話で、すずめからしたら、単に人間がくれるありがたい食べ物…とゆう認識かもしれませんよ。
口が悪い私は娘にもしょっちゅう
「早く餌食っちゃえよ!」
と怒鳴っておりますが^^;


くるみちゃんさま

やっぱりへの字なんですか〜…本当、ズルムケ状態の時はともかく、ぽやぽやの産毛に覆われたヒナは可愛いですよね!
人間大はともかく、すずめが鶏くらいの大きさでも気持ち悪いかも…
[4893]
すずめの嘴、への字口でした(>_<)
鳥のひなとかあんなにフワフワしてかわいいのに´`
すずめが人間と同じサイズだったらスゲー怖いなっておもった。。。
[4892] すずめ
「餌くれ餌」のひそひそ声は夢。
すずめの口から餌という単語は出ない。餌は人間の上から目線による差別的言語だからな。

褒めるばかりが批評じゃないよ管理人さん

読んでくれた上にコメントまで、、、例え酷評でも投稿者にとっちゃ結構嬉しいもんさ

ね、血苺さん♪え?違うの?
[4891] すずめ
投稿途中で送信してしまいました…(-。-;


ある時母親に見つかって、大目玉を食らって断念しました。

数日程経って気付いたそうです。
窓の外からびっしり並んだすずめたちが、彼女をじーっと見ている事に。

ああ、私がご飯をまくのを待っているんだ…彼女は申し訳無く思いました。
翌日も、その翌日もすずめは並んでいます。
段々、彼女はそれが苦痛になってきました。

よく見ると、すずめの顔は厳めしくて怖いのだそうです。

すずめの嘴は正面から見ると“へ”の字だと聞いた事がありますが…後ろめたい気持ちでいる彼女には、怒った顔に見えたのでしょう。

そうして、ある朝。
目覚めた彼女は、複数のヒソヒソ声を聞きました。
「餌、くれよ…おい、餌、くれよ」
「目、つついてやろうか」

「!!!」

びっくりして飛び起きると、窓の外のすずめたちが一斉に飛び去るのが見えました。


以来、彼女はすずめが苦手なのだそうです。

「ん〜…夢だったんじゃないの?」

私は苦笑しました。だって、まるで『日本むかし話』みたいでしたから。

「とにかく、今度良く見て見なよ。ホント憎ったらしい顔してるから」

…まあ、うちのボタンインコも結構ふてぶてしい顔してますけどね。


その数日後…
お昼休み、公園でお弁当を食べていた時の事。
私が落としたご飯を狙って、すずめが近づいて来ました。
すずめは警戒心が強いので、私はなるべく動かないように注意していたのです。
その時、数羽の鳩がやって来ました。
ああ、可哀想に。横取りされるな…私がそう思った時、

「!!」

すずめは自分の頭より大きなご飯の固まりを加えると、一直線に飛び去って行きました。

「………」

勿論、すずめも鳩も無言です。が、私には

「おととい来やがれ!」

誇らしげなすずめの声が確かに聞こえました。
[4890] すずめ
ご近所のお婆さんが家の前に餌台を置き、すずめに餌をやっています。
わらわらと集まり、ついばむ様子が可愛くて、私もつい、足を止めて見ていました。

ある日から、その餌台が犬用のケージで覆われるようになりました。
お婆さんに訊ねると、鳩除けだそうです。

「憎ったらしい鳩が横取りするからね」

渋い顔をして言っていました。
成る程。ケージの目が荒いからすずめは入れるけど、鳩は入れないのです。
考えたな…と思ったけど、鳩は差別されて僻んでいるでしょうね^^;

職場の同僚にその話をしたら、彼女は顔をしかめました。

「…すずめって、そんなに可愛がってやるようなモノじゃないよ」


彼女が小学生の頃…
食が細かった彼女は、茶碗一膳のご飯を食べきるのも苦痛だったそうです。でも残すと叱られるので、こっそりティッシュに包んで食べたふりをしていました。
捨てるのは気が引けたので、毎朝窓の外にばら撒き、すずめにやる事にしたんです。

しばらく続けていましたが、ある時母親に見つかり、
[4868] 語りきました♪
[4863]天通の七不思議様
投稿を再開させていただきました♪
縁起の良い神様だったらいいですね~本当はすっごい怖くて悪い神様だったら…
あれから何も無いみたいなのでD君は引っ越さずに普通に住んでるみたいですw
気付かないだけで…だったりして
私の拙いお話にコメントいただきましてありがとうございます♪m(_ _)m
[4863] トシコシガタリ
「語り」きたー
怖いけど縁起の良い○首ですね!
[4862] 年越し語り-トシコシガタリ-
私は心霊スポットと呼ばれる
各地で幽霊が出ると言われている場所を
休日などを利用して訪ねて廻ることを趣味としています。
ネットで知り合ったA君に
心霊スポット探検を数人の仲間とやってるから一緒にどう?
と誘われたのがきっかけです。
それから現在まで探検に同行して
数々の怪異と遭遇、恐怖に心臓を鷲掴みされ、
すくみ上がって満足に身体が動かない状態で
闇の中を半泣きになって逃げ回り
這々の体で車に辿り着いたこと数度…
遊園地などのアトラクションでは味わうことができない
保障も保険も安全装置もまるでない
全ては自己責任でギリギリのスリルを楽しむ
心霊スポット探検…
私は完全にはまっていましたが…

今夜は大晦日…心霊スポット探検はお休みで
二年参りに行くために私はD君のアパートにお邪魔していました。
あ、私だけじゃないですよ
もちろん、A君をはじめとする心霊スポット探検の主要メンバーの5人でです。
あの『二次元三次元の区別無く私の×××は許しはしない』と豪語する
変態と二人っきりなんてあるはずないじゃないですか。
貞操の危機どころか二度と戻れない境地へ堕とされてしまいますよ!


出掛けるにはまだ時間がありますしで
A君達はテレビを見ながら麻雀をしています。
うーん、麻雀といいますか…
麻雀が出てくる漫画やアニメ、映画の名シーン?迷シーンの再現ごっこ?

「おじさん、震えているよ」

「あんた、背中が煤けてるぜ」

「明日、晴れるかなぁ」

「全部ゴッ倒す!」

私はご近所で頂いたお蕎麦を皆に食べてもらおうとキッチンを借りて仕度してます。
天婦羅は自宅で揚げてきちゃってますし
お汁を作って、蕎麦を茹でるだけです♪
ちなみにD君の部屋はアパートの二階で階段から一番奥まった角部屋で

ああ、なんてことでしょう…

大掃除を行った痕跡皆無なきちゃない室内になってます。

「リーチせずにはいられないな!」

「裏はめくらないでおいてやるっ!!」

「死ねば助かるのに」

2DKの和室にコタツを置いて
ジャラジャラと馬鹿なことを叫んでますよあの人たち。
独身男子の部屋ですからね、鰹節も昆布も出汁をとる物などあろう筈がございません。

全て自宅から持ってきて正解です♪

調味料があるだけ褒めてあげます。

でも、味塩は塩じゃないですから…
そこでここに取り出しましたる、
このボリビアはウユニ塩原で採れたお塩!!
アンデス山脈から流れ出た自然塩でミネラルが豊富!
イオン交換膜製塩法などとは一味も二味も違うのです♪
お塩だけではありません!このお醤油だって…
あ、調味料自慢とかは置いておいて…

まずは使った痕跡が見られない埃が被った流し台とコンロを掃除し…
自炊しようよD君…

綺麗になったら、
やっぱり家から持ってきた鍋にお水を入れて沸騰するのを待ちます。
待っている間にそばつゆを作って…
あの池波正太郎先生も通った東京神田の藪風も良いですが…
今回はご近所から鴨をいただいたのでそれを出汁に使います♪
野趣あふれる鴨の脂が出て堪らないのです。

キッチンペーパーを敷いたお皿に
海老に烏賊に人参、しいたけ、さつまいも等の天婦羅を盛り付けて
茹で上がった蕎麦を冷水で揉み
蒸篭に盛り付けて完成♪
お盆の上に乗せて皆が待つ和室へ運びます。

これからお出掛けするのですからお銚子は無し!

「はい!年越し蕎麦ができましたよぉ♪」

「おおおおおお」×4

えへへ、今回は大して腕を揮ってないんですけどね
皆、手を叩いて大喜びしてますよ。
卓を裏返してテーブルにします。
皆がお皿とか並べるのを手伝ってくれました。

「お、おれ…今、リア充気分を味わってる…こ、こんなに嬉しいことはない!」

「泣くなD!お前の気持ちはよぉく分かる!さぁ、泣くのは止めて食うとしよう!」

D君の肩を叩きながら鼻水をきちゃなく啜るC君…

「だ、だって!腐ってるとは言え女の子の手料理を大晦日に食える日が来るなんて…」

「それもこれもAが女性メンバー募集をしてくれたお陰だ!腐ってるとは言え!」

「腐ってるは余計!」

男の人の食べっぷりっていいですね♪
見ていて気持ちいいです。
見る見るお皿の上から蒸篭の上から綺麗になっていきますよ。
ぞぞぞっ!ぞぞぞっ!!って啜る音が気持ちいです♪
足りないと大変だから御節も一応持ってきました。

男子って伊達巻とか昆布巻きとか田作りとか苦手でしょうと、
今回はオードブルっぽい物にしてみました♪
酢豚とかローストビーフとか鶏肉とカシューナッツの炒め物とか。
それも綺麗に跡形もなく…新年を迎える前に…
男の子って凄い…です。
そうですよね…いつも心霊スポット探検前に定食屋さんとかで
チャーハンにラーメンをスープ代わりに頼んだりしてますし。


さて、食後のお茶でも入れましょうかと席を立とうとした時です。
玄関ドアの向こう…
ちょっと遠くでガンガンと金属を叩くような…
というか…すごい勢いで金属の階段を乱暴に駆け上ってくるみたいな音…
それから、激しく床を踏みつけるドタドタという音
壁を叩くようなバンバンという音…
あの…
こっちへ近づいて…

確実に…D君の…私達がいる二階の一番奥まった部屋を目指して…
向かってくる足音…

「この大晦日に騒がしいな」

「二階にあんな大騒ぎするDQNは住んでいない筈だが…」

怖い感じが…
嫌なというより…怖い…畏れ?畏怖?
それで…私、席を立とうとしましたけど…こたつへ戻っちゃいました。
ぬくぬくが怖さを緩和してくれる筈です。
A君はこの5人以外、今夜は誰も誘っていないからって言ってましたし…

「D君の友達…かな?」

「いや、友人達には今夜は用事があると断わってあるから、それはないと思う」

床を踏み鳴らす音と壁を叩く音が部屋の前まで…
こたつに入って私達全員が固唾を呑んで玄関を見ていますと
バン!
激しい音をたててドアが開きました!
全開になったそこから…目が眩む黄金色の光が…

「おい!鍵かけてたはずだよな!?」

「あ、ああ!」

顔を手で覆い…強烈な光から目を守ります。
何が起きているんですか!?
恐ろしく冷たい風が玄関から中に吹き込んできます。
それは私の髪が翻弄され宙を舞うほど…

「な、なに?なんなの!?」

「な…何かが部屋に入ろうとしてる!」

「何かって!?」

「分からん!!」

あまりにも眩しくて焼きつき現象が起きてます。
家というのは壁で囲まれて中が見えないというだけで結界の役目を果たします。
それが何者かの侵入を阻んでいるのだと…
変態でもD君が住んでいる部屋です。
こういうモノへの対策は施してあるのかもしれません。

「ゆっくりと中へ入ってきてる…」

「ああ、すごいな…あれ」

A君とB君…見えてるの?
私なんて全然、まだ目が眩んでいるのに…
でも、なんでしょう…脳裏に…イメージが…
金色と言うよりも白に近い発光体…直径にして60cmくらいでしょうか…
アメリカの警察や軍が使っているような強力な懐中電灯とは違いますね。
ふわふわと浮遊しているような…
それは
じわりじわりと室内へ侵入し…
キッチンを抜けて私達がいる和室…
光る物体の力が部屋の中へ影響を及ぼし始めたみたいです。
光がこちらへやってくるほど光度を増し、熱…まで感じる様になりました。
手で目隠しをしている上に瞼を閉じていても
眩しいのと熱いのが…だんだん

「きた!」

A君の声……声が震えています。
同時に甲高い男性の笑い声!
和室の壁に反響してエコーのような響きが耳朶を震わせます。
呵呵大笑とか哄笑って言うのでしょうか…
全身が恐怖で痙攣の様に震えてます。
これ、霊とかじゃ絶対に無いですよ!
圧倒的な気配が私のすぐそばまでやってきました。
それは止まらずドカドカという足音を立てて
卓を中心にして…私達の背後をぐるぐると廻りだします。
突風が部屋の中を荒れ狂いました。

激しく畳を踏み鳴らす足音…
笑い声をあげながら、
足音はするのですが…気配は…
それが、1分…いえ、2分は続いたでしょうか…
笑い声と足音は回転を止めて玄関へ向かい…
来たときと同じく、廊下や壁や階段をガンガンバンバン鳴らしながら
何処へかと去っていきました。
部屋に静けさが戻り…
外で犬がワンワン何かに向って激しく吼えてますけど…

疾風のように現れて疾風のように去っていった月●仮面みたいな怪異…
茫然自失と言った感じになってる私…たぶん、A君達も…

「パタン」

ドアが閉まる音でしょうか…それを合図に

『ふぅううううううう』×5

全員の口から同時に長い溜息が漏れました。
脱力…助かったという安堵と言いますか…なんて表現して良いやら…

「なんだったんだ…一体…」

A君が皆の気持ちを代弁してくれました。

それで…
全員で何を見たかと意見を…
あ!私を除く全員がいつの間にかサングラスしてましたよ!?

「太陽拳対策は武人としての嗜みだ」

『当然だな!!』×3

そ、そうなんですか?
男子達…平然と…言い放ちましたよ。
太陽拳対策って…ドラ●ンボール?
MIB(メン・イン・ブラック)じゃあるまいし、
サングラスなんて普段持ち歩いたりしませんよ、私。

四人が見たのは
金色に発光する…長髪をなびかせて飛ぶ…
怖ろしく鼻の高い…ギョロ目の…鬼みたいな顔したおっさんの生首だったそうです。
それが、バターになっちゃうくらいの勢いで私達の後をぐるぐる回ってたと…

私にはただ、イメージ?というか…幻視したものですが…
尾を長く伸ばした彗星みたいな発光体としか見えてませんでした。

それで、D君の部屋にいるのが怖くなりまして
時間は早いけど二年参りへ出かけることにしました。
神社でご祈祷を受け、露店をひやかしている間は良かったのですが
D君は帰るのが怖いから私の家に泊めてと手を合わせました。
もちろん、絶対にイヤです!と断りました。
A君達に、今夜泊まってくれと…土下座も辞さない勢いで頼んでましたが、
誰もがあんな凄いのが出たらたまらんと…取り付く島もありません。
結局、D君は…ドナドナになって一人、アパートへ帰っていきました。

大晦日以降、光る生首はD君の部屋には現れていないそうです。
本当になんだったのでしょう?

「あれって、もしかしたら年神様じゃないのか?
 新年になった早々やってくるって…あれ。
 ちょっとフライング気味でDの家へやってきたのかもな…理由は分からんが…」

と、後になってA君が言いました。
年神様とは毎年正月に各家にやってくる来方神です。
地方によってはお歳徳(とんど)さん、正月様、恵方神、大年神(大歳神)、年殿、
トシドン、年爺さん、若年さんなどとも呼ばれてたりします。
お正月の飾り物は、元々年神を迎える為のもので、
門松は年神が来訪するための依代、鏡餅は年神への供え物でした。



(おしまい)
[4852] お久しぶりです♪
>>天草様
お返事が遅くなってしまってごめんなさい。
待っていてくださいましてありがとうございます♪
戻って参りました♪
これからも宜しくお願いします♪m(_ _)m
拙い話ばかりで申し訳ございません、また投稿させていただきます。
[4851]
そうだったのですか。
内容的に当然のことだと納得しました。
カイジさん、ありがとうございました。

被害に遭われた方々のご冥福をお祈りします。
[4850] 食事中のニュース
話の概要が救助活動継続中の自然災害、しかも遺体搬送にまつわる内容でしたから、被害に遭われた方々やそのご家族並びに関係者の感情に配慮して管理人さんにより削除されたものと思われます。
[4848]
心霊の「食事中のニュース」って話は消されたんですか?
まだ読んでなかったんですけど、なんか内容が不味かったんですか?気になるんですが。
[4820] お帰りなさい、こげさん
待ちわびてました。
お帰りなさい(^-^)

[4819] おひさしぶりです
こんばんは♪投稿する場所を間違えてしまいました。
もう不思議の投稿板はpart3なのですね♪
2の方に投稿しちゃいましたこっちへ移動しました。

しばらく怖くて来れませんでした(x_x;)2ヶ月ぶりでしょうか
また投稿させてください、宜しくお願いします。
[4818] 盆の幻湖
十年以上も昔の話となる。
会社の先輩であるAさんと中学以来の友人Bと俺の三人で盆休みを使って
北海道旅行へと出かけた。
車一台、バイク一台…むさ苦しい野郎だけの貧乏旅行…
それでも、素晴らしいものになるだろうと
胸をはずませてた訳だったのだが…
上陸以来、立て続けに起こる怪異に戦慄した俺達は
畏怖の意味を込めて『北海道』を『北怪道』と呼ぶようになっていた。



富良野を後にした俺達一行…
美瑛町内に入って間もなく一軒の飯屋へ飛び込んだ。
怪異に遭遇し、その為に寝坊して…まだ、朝飯を食ってない。
田舎の道路脇でよく見かける果物の即売所に毛が生えた程度の粗末な木造建築。
店先には『名物天然舞茸』『新鮮山菜』なんて幟が立っている。
店主からお勧めだよと言われて舞茸丼と山菜うどんを注文したが…
天然の舞茸って今が旬なのか?北海道にしたって…なんか早すぎでは!?
栽培物だ…絶対に栽培だ!ホ●トとかそんな奴だ!
絶対!騙されてるぞ俺達!!
しかし、すでに頼んでしまった…もう、後の祭り…
茸を焼く匂いが漂ってきてるし…
そこへ小柄な老婆が一人、椅子をえっちらおっちら抱えてやって来て
俺達のいるテーブルの横、お誕生日席に着いた。
この店を営む老夫婦の片割れ。
退屈だったんだろうな、恰好の話し相手を見つけたとにこにこ顔だ。
飯が来るまでこの老婆の話を聞くことにした。
いや、カウンターの向こうから…調理中の爺さんまでが話しに加わった。
夫婦して喋ること喋ること。
それで、なにかこの町に面白い場所はないかと訊ねてみたところ、
白樺の森の中に青い水を湛える幻の湖があると教えてくれた。

『日本本土から海峡を隔てて広がる北海道の奥地には
 未だ人が足を踏み入れたことのない原野が広がっている!
 その、北海道のほぼ中央!
 石狩国上川郡にある
 近隣の富良野と共に北海道観光地の代表とされる
 風光明媚な美瑛町の山奥に幻の青き湖は実在した!!』

田中信夫の名調子が幻聴となってAさんの頭蓋骨を直撃する。
幼い頃に観たあの『水曜スペシャル 川口浩探検隊シリーズ』…
1975年アメリカ製作のTVドラマ
『特別狙撃隊S.W.A.T』の緊張感溢れるオープニングテーマ…
猿人バーゴンが!魔獣バラナーグが!竜魚ガーギラスが!白いカンガルーが!
世代直撃!Aさんの三つ子の魂が呼び覚まされた。

「これは…川口隊長と泉●送製作さんのお導き…行くしかあるまい!!」

予定とか規則とかに結構拘るAさんが率先して行こうと言ってくれたお陰で
懐柔の手間が省けた。
俺もBも話を聞いた瞬間に行く気満々だ。
だって幻の青い湖だぜ!?
今日はオホーツク海まで出てサロマ湖畔で一泊する予定だったが、
美瑛で一日を費やすのも仕方なし!

「行こう」

「行こう!」「行こう!」

そういうことになった。






白樺の立ち枯れが青い水面から生えている幻想的な光景…
俺達が飯を食っている間に、爺さん…店主が湖までの地図を描いてくれた。
舞茸丼と山菜うどんで腹を満たした俺たちは一路、
幻の青い湖を目指す。

『1988年の12月に噴火した十勝岳の堆積物による火山泥流災害を防ぐため、
 美瑛川本流に複数建設された堰堤のひとつに水が溜まった偶発的な人造池』

『美瑛川の水と水酸化アルミニウムなど白色系の微粒子が含まれた湧き水が
 混ざって分散し生成された一種のコロイドと水中に差し込んだ太陽光が
 衝突散乱して水の吸収による青色の透過光が加わり青い色に見える…
 と、言われている』

今、ネットで『美瑛』『青い池』と検索すれば神秘的な画像と共に
そんな記事も見つけられるだがろうが、
当時の俺達にとっては地図には載っていない神秘の青い水を湛える幻の湖…
描いてもらった地図を頼りに車を走らせる。
手書きの地図ではいまいち距離感が掴めず、
ホクレンのガソリンスタンドで貰った地図との整合性も…
それに原野だ…目印らしい目印もない。
Aさんの乗るバイクが俺の運転するパジェロの後ろをついてくる。
やっと、湖へ向かう道を見つけたのは午後3時を過ぎてからのことだった。
森の中へ続く未舗装路…
工事中により立ち入り禁止の立て札と進入禁止のチェーンが張られた先…
ここで車を下り、徒歩で向かうしかない。
盆休み中だから関係者はいないだろうが、熊は年中無休で稼動中だ。
熊除けの鈴を鳴らし、必要以上に大声で会話しながら
身ひとつで北の原野を歩く。
でかい図体のくせして忍者みたいなやつだからな熊…
鬱蒼とした白樺の森、奥へ奥へと続く道…
おっかなびっくり進む。
あった…
木立と木立の間、
自然界ではありえない色彩…
北海道の空よりも…濃く澄んだ青…
写真で見た…漆黒の宇宙に浮かび上がる地球の青…
言葉が出ない…
もっと近くで…湖の畔で
いい年した男三人が魅入られたように、歩いていく。
幻の青い湖。
俺達はついに来た。



奥に聳える濃緑の山々、
日が傾き、陰が存在感を増していく。
波ひとつ立たない完全な静水面…
太古に大地を闊歩した竜が骸となって横たわっている様な…
水中から天に向かって伸びる立ち枯れの樹木…
もう、これは人界の景色ではない。
まるで…
これは
彼岸…

「あ、なあ…見てみろよ…あれ…」

水際にいたBが水面を指差す。

「すごいよな…この世のものとは思えないよな」

「いや、そうじゃなくって…水の中…」

「あ?」

言われて足元を見る。
土…じゃ、ない…垂直に落ち込んで・・どこまでも…深い…
底がまるで見えない…

「なにかいるぞ…」

俺の横…Aさんの声が震えている…
人…人、人がいる…一人や二人ではない。
しゃがんで水中を覗き込む。
頭に鉢巻、顔には刺青…前を打ち合わせる長衣…細い帯…手甲に脚絆…
鞘のある山刀を差している…典型的なアイヌ民族衣装
女もいる…マタンプシ(鉢巻)ニンカリ(耳輪)レクトゥンペ(チョーカー)
タマサイ(首飾り)、テクンカニ(腕輪)…
モウル(肌着)の上にチヂリ(刺繍を施した木綿衣)を纏った・・・
儀式や祭事で着るアイヌ民族の正装じゃないか…
他にもアットゥシやルウンペといった長衣…マンタリ(前掛け)をした男女もいる。
アイヌだけではない…
フランス式の軍服を着て大小を差し、背中に小銃を担いだ…蝦夷共和国の兵士か?
新政府軍の兵士もいる…松前藩士だろうか…侍もいる…
旧日本軍兵士もいる…現代人もいる…

「熊…鹿…狐…鳥とかも…人間だけじゃなく動物もいるぞ」

「全部、死体なの…か?」

「生きているようには見えないな」

「湖に落ちた連中が溺れ死んだあと
 水温が低くて死蝋化した…という訳でもないな」

「アシカかオットセイみたいなのもいるぜ?」

「なんて言うか…まるで標本として綺麗に陳列されている…ような…」

グリットを三次元に切って立体的に配置しているとか…だとしたら…

「誰が、何のためにしているのか…」

青い水を湛える底知れぬ深い湖の中に…この北の大地…
この島に棲む全ての生き物が集められているのではないか…
嫌な予感がする…
北海道…
アイヌ民族はこの地をアイヌモシリ(人間の住む土地の意)と呼び、
古代から近代までの本州に住む人は蝦夷地、北州、十州島と呼んだ…
明治政府からは五畿七道の呼称に倣い北海道と名付け今に至る…
沖縄と同じで本土とはまるで違う文化を持ち…
アイヌという先住民が築いてきた神話体系もある…

「なあ、変なのもいるな…あそこに脚が五本のオオカミみたいなのがいる」

「双頭の狐や、三つ目のヒグマもいるな…なんだあれ?
 奇形種とか突然変異か?」

「ウェン・カムイかも知れない…簡単に言うとアイヌの悪神だな」

カムイ…八百万の神と同じく全てのものに神性が宿るという考え…
しかし、それとは根本がまるで違う…
出発点が違う…似て非なる…
悪神とウェン・カムイもまた…

「どんだけいるんだ水の中に…」

夥しい人や動物が湖の対岸までずっと続いている。
これらを標本として収集した奴がいるなら…
ここを維持し管理する奴がいてもおかしくない。
背中をゾクッと悪寒が走った。
立ち上がって深呼吸を数度繰り返す。

「そろそろ車へ戻ろうぜ」

俺はAさんとBに声をかけたが、聞こえてないみたいだ。
肩を叩くと、びくりと身体を震わせ、二人は我に返る。
湖に魅入られていたようだ。
長く深い溜息がご両人の口から吐き出される。

「おかしいな、今まで太陽は傾いていてもしっかり空にあったよな?
 なのに、もうすぐ日没だぜ?一気に時間が進んだみたいだ」

周囲の景色も湖水も闇色に染まっていた。
外灯なんてない…本当の闇が間近に迫っている。
急いで車に戻らないと…
Aさんを先頭に早足で湖を離れることにした。

「この周辺で宿営地を決めなくてはならなくなったな。
 車を停めたところでテントを張るのだけは勘弁だ」

「できればキャンプ場があればいいですね…熊が怖いし」

「この辺りの農家に頼み込んで
 納屋か軒先でも借りるくらいしかないでしょう」

「じゃあ、早足で車まで戻るぞ、転ぶなよ!」

最後に、闇の中の湖をもう一度見ようと…振り返ってみた。
湖岸から5mも離れただろうか…
湛えた水がぼうっと青く光っていた。
燐光のように…仄かな…動いている…風も無いのに…何が…

「Aさん!全速力で走れ!車まで絶対に止まるな!!」

「!?」

「奴らが浮き上がってきた!!」

俺が見たのは
水の中に並んでいた…夥しい数の人や動物…それらが…
一斉に水面へ顔を出したところだった。

「だめだ!絶対に振り返るな!恐怖で足が竦まされるぞ!!」

俺達の旅は…始まってまだ二日だが
ずっと…怪異に見舞われていた。
出なかったのは苫小牧市内にある民宿へ泊まった…
上陸した晩のみ…
フェリーに乗り込む前…下船した港で…
苫小牧から富良野へ向かう踏み切り…
それから昨夜泊まった富良野のキャンプ場…

「また…今日も怪異と遭遇…なの…か…」

Aさんの息が荒い。恐怖の成分がたっぷり含まれてる。
Bは口を開く余裕もないらしい。
日が沈んで完全な闇が周囲に満ちた。
Aさんがキーホルダーとして付けている豆懐中電灯を点けた。
無いよりはマシだ!
その光が指し示す先へ
俺達は無我夢中で走った。
足場の悪い未舗装の道を何度も転びそうになりながら必死で逃げる。
行く手を阻む張り出した樹木の枝が露出した肌…顔や腕を引っ掻いてくる。
懐中電灯の明りが
行く時に跨いだ車止めのチェーンを捉えた。

「あと少しだ!B頑張れ!!」

ラストスパート!
三人一斉に横並びの状態でチェーンを飛び越える。
その向うには俺のパジェロが…
リモコンでロックを外してドアを開けるとAさんまでも乗り込み

「バイクは朝になったら取りにくるからこのまま車を出せ!」

湖から這い出した奴らが追ってくるのではという恐怖…
もし、標本自身が収集者で管理者まで兼任しているとしたら…
ドアを閉め…施錠!
運転席に乗り込みキーを廻してエンジン始動!
AさんとBが助手席…
息を整える時間も無い!
二の腕から脹脛から悲鳴をあげている。
フロントガラスの向うは月も出てるし見事な星空だ。
おかしい…
逃げてるとき、質量すら感じるのではないかと思う程、
濃い闇の中を走った…月明かりなどなかったはずだ。
まるで…別の世界から、こちらへ帰還を果たしたみたいに…
砂利を跳ね飛ばし、俺は少しでもあの場所から離れようと
思いっきりアクセルを踏み込む。
2800ccインタークーラーターボディーゼルが唸りをあげた。
パジェロは弾丸のように真っ暗闇の道を疾走する。
民家が見えるまでスピードを緩めることなく…






後年、彼の地が立ち入り禁止区域を解かれ、
人気の観光スポットとなったことをネットで知って
動画や画像を検索して確認したのだが…
あの時と様相が…かなり違っていた…
というか…俺達が行ったあの青い湖と
まるで別の場所だった。
確かに、ネットで見た白金の青い池も
この世のものとは思えない…絶景と呼べる場所だったが・・・
俺達が見た…あの彼岸そのものの…青い湖は…

それから
湖の中に並ぶ人や動物達…
あれを写真に納める事が出来なかったことが
悔やまれてならない。







(了)
[4767] コメントありがとうございます。
4759さん、コメントありがとうございます。
本当に不気味で気持ち悪い話でした。


4760さん、コメントありがとうございます。
確かにお婆さんも可哀想ですね、本当に病気ではなかったのかもしれません。
被害妄想が強い方が近所にいるんですか…
もしかしたら可能性があるかもしれません。
実は私達が知らないだけで身近にいっぱいいるかもしれませんよ。


怪談も書けないヘタレでつさん、コメントありがとうございます。
カップラーメンに毒ですか……
考えもしませんでした(笑)
でも幽霊かどうかは分かりませんし、もし幽霊でも一度死んでいるのですから、死体はでてこないと思いますよ(笑)
毒に苦しむ幽霊を見てみたいですけどね(笑)
[4761]
カップラーメンに毒入れたらどうなるんだ…

世界初、幽霊の死体誕生か!?
[4760] 屋根裏
友人カップルも気の毒だけど、お婆さんもなんかかわいそう…

うちの近所にも、被害妄想が酷くて顰蹙買ってた婆さんが居たけど、まさかあの人のところにも…(゚д゚lll)
[4759] 屋根裏に
不気味な話だな…。
[4758] 屋根裏に潜む者
これは私の友人が体験した恐怖体験です。
一部私も一緒に体験しています。
・・・・・・・・・・・・・・

あれは確か11月下旬頃、雪がチラチラと降り始めた頃だったと思います…

その日は土曜日で仕事は休み。私は朝から自宅の駐車場で車のタイヤ交換をしていました。

すると突然後ろから、「今頃タイヤ交換か?」と声をかけられたのです…
振り返って見てみると、そこには友人の哲二が立っていました。

「おはよ、本当はもっと早く交換したかったんだけど、面倒くさくてさ……
それより朝からどこ行くんだ?」

「コンビニにコーヒー買いに行くんだよ」

哲二は私が若い頃、水産加工場で一緒にアルバイトした時に知り合った友人で、家も近く、私の家から歩いて二分位の距離にあるアパートに彼女と二人で住んでいました。

「なぁ……タイヤ交換終わったらなんか用事あるか?
もし暇なら久しぶりに俺家に遊びにこいよ。飯くらい奢ってやるから」

「……じゃあ後でおじゃまするかな」

「おう、待ってるよ」

その日私はタイヤ交換を終えれば別にやる事もなかったし暇なので、彼のアパートに遊びに行く事にしたのです。

彼のアパートは私が見つけたものでした。
彼が彼女と同棲する為、安いアパートを探してる時に、たまたま私が入居者募集の張り紙を見つけ彼に伝えると、あっという間にそのアパートに決めて契約してしまったのです。

哲二の話によると、そのアパートは管理会社が、入っていないらしく大屋さんと直接契約、敷金礼金等もかからず、部屋の広さも二人で住むには十分なうえに築年数もまだそんなに経っていなかったらしいのです。
しかも家賃もそんなに高くないという好条件のアパートだったみたいで、直ぐにそのアパートに決めてしまったみたいでした。

◇◇◇◇

私はタイヤ交換を終わらすと、コンビニに行き、適当につまみ等を買ってから彼のアパートに向かいました。

彼の部屋はアパートの二階の一番左側…
玄関の前までくると呼び鈴を鳴らしそのまま玄関に入って行きました。

すると玄関に入った途端、不思議な物を見つけたのです。
玄関の隅にこんもりと盛り塩がしてありました…

「おう、いらっしゃい、とりあえず上がれよ」

「なぁ……この盛り塩はなんの意味なんだ?」

「やっぱり見られたか……実は今回来てもらったのはその盛り塩が関係あるんだよね……」

「ハッ?関係あるって何?
もしかしてこの部屋曰く付きだったとか?」

「多分違うと思うんだけど、ちょっと確かめたい事があってさ……
それで呼んだんだよ」

「どういう事?」

「とりあえず上がれよ」

そのまま居間に通されると部屋の四隅に塩が盛ってあって……
天井や壁等には御札が貼ってありました。

「ごめんなさいね、突然呼んだりして、不気味な部屋でしょ?」

声のする方を見てみると、哲二の彼女の沙織ちゃんがキッチンから顔を出し、申し訳なさそうに話かけてきました。

「何があったんだよ?」

「それが俺達にも解らなくてさ。
俺達もちょっと精神的にやられてきたんだよね、とりあえず今は何も聞かないで、ちょっと確かめる為に夜まで一緒にいてくれないか?」

「なんだよ……聞いちゃまずいの?……
そして確かめるって何を確かめるんだよ?」

「いや、言ってしまったら先入観とか出てくるかもしれないからさ、今は何も聞かないで、あまり周りも気にしないで、くつろいでてほしいんだ」

「こんな盛り塩や御札が貼ってある部屋で、何の先入観ももたずに、何も気にしないでいることは難しいと思うけど……」

その時は哲二の言ってる意味が解りませんでしたが、とりあえず言われた通り、あまり気にしないで夜までいる事にしたのです。

このアパートには引っ越しの手伝いをした時以来、来ていませんでした。
意外と近場に住んでる人の家って行かないもので、哲二と会うのはお互いの家じゃなくて、近場の居酒屋等が多かったような気がします。

そして言われた通り、私は普通に三人で話をしたり、飯を食ったり、笑いながらゲームをやったりして過ごしていました。

何時間位経った頃でしょうか……
突然どこからか『ドン、ドン、ドン』という何かを叩く音が聞こえてきたのです……

よく聞くと隣からでした……

「ありゃ……ちょっと五月蝿かったかな?
隣の人が壁叩いてるみたいだぞ……」

「やっぱりお前も聞こえるか?
空耳じゃないよな?」

「どういう事?普通に聞こえるし……
隣の人怒って壁とか叩いてるんじゃないの?」

「そうじゃないんだよ……隣は今空き部屋なんだ……」

「え……マジで?…じゃあ下の階の人の音とか?」

「真下の部屋も今空いてるんだ…」

すると今度は突然天井から、『ギシ、ギシ、』と人が歩いてるような足音が聞こえてきました……

「随分ここのアパート壁とか天井って薄いんだな……上の階の足音が聞こえるなんて……」

「それも違う……このアパートは二階建てだし、ここは二階だよ」

「え?そうだったよな……どういう事なんだ?……」

「俺も解らないんだ、上には人がいないはずなのに、毎日こうやって誰かの足音が聞こえてくるんだよ……」

「……もしかして盛り塩とかしてあるのってこれのため?」

哲二はコクリとうなずくと、少しずつ今までの経緯を話始めました。
そしてそれはとても理解できない話で、怖いというより気持ちの悪い話だったのです……

このアパートは一階に四部屋、二階に四部屋の全八部屋の二階建てのアパートです。
哲二の部屋は二階の一番左の端の部屋で、隣と二軒隣の部屋、あと真下の部屋が空いており、こんな物音が聞こえくるのは不自然でした。

そしてこの物音等は最近になってから聞こえはじめ、しかも物音だけじゃなく、何者かが部屋に入ってきて彼等の部屋の物を盗んだり、物色してるようだと言ってきたのです。

私はそれはただの空き巣とかじゃないのかな?と思ったのですが、彼等の話はちょっと普通ではありませんでした……

哲二達はちょうど一年位前にこのアパートに引っ越してきました。
引っ越しの日は粉雪が舞い、朝から凄い寒かったのを覚えています。
私以外にも数人の友人達が集まり、手分けしてほとんどの物を業者に頼まないで自分達で運んできました。

哲二達が引っ越してきた頃は隣しか空室になっておらず、その他の部屋は全て人が住んでる状態だったそうです。
哲二達は一応全ての部屋に挨拶に行ってどんな人が住んでるのか確認したようでした。

最初の頃は平和で、別に何も問題はなかったそうです。
そうして新しいアパートにも慣れはじめた頃、二軒隣に住んでるお婆さんと挨拶等をしてるうちに仲良くなっていったそうです。

そのお婆さんは一人暮らしのようで、会うたびに「困った事はないかい?、分からない事とかあったら何でも言ってきて」と言って何かと話かけてきたといいます。
良くいえば世話好き、悪くいえばお節介焼き、そんな感じのお婆さんだったようです。

そうして二ヶ月位経った時、直ぐ隣の部屋にも夫婦なのか、カップルなのか分かりませんが二十歳前後の若い男女が引っ越しして来たそうなのです。

その二人は何の仕事をしてるのか分かりませんでしたが、ほとんどアパートにはいなかったみたいで、たまに姿を見ても早朝か深夜に見かけるだけ、昼間は留守にしてる時が多く、ほとんど言葉も交わした事がなかったそうです。

そしてその二人が住み始めて3ヶ月位経った頃、最初の不思議なことが起きました。

哲二がいつものように、朝仕事に行こうとしてアパートの階段を下りていたら、前から二軒隣のお婆さんがやってきたそうです。
哲二はいつものように「おはようございます」と声をかけたそうですが、お婆さんは哲二を凄い目付きで睨むと、無言で階段を駆け上がっていったそうです……

(俺なんかしたかな?)と思いながらもあまり気にしないで哲二はそのまま仕事に向かったそうです……
それから三日位経った時。
またお婆さんに会ったので、頭を下げ「この前は何かあったのですか?」と声をかけたそうです。
するとお婆さんはまた凄い目付きで哲二を睨むと……
「しらばっくれても分かってるんだよ、この盗人が……
次やったら警察に突き出すからね」
と凄い剣幕で捨て台詞を吐くかのように言って、自分の部屋に入って行ったそうです。

哲二には何の事かサッパリ分からず、彼女に相談。
すると彼女も同じ事があったようで、そのお婆さんに会った時、突然……
「あんたらがそんな事する人達だと思わなかったわ」
と睨みながら言ってきた事があったそうです。

二人共何の事だかサッパリ分からなかったのですが……
多分お婆さんがボケたか、何か勘違いしてるか、凄い被害妄想を持った人なのかもしれないという事で、あまり気にしないようにしたそうです。

それからお婆さんに会っても無視したり、あまり関わらないようにしていたようでした……

それから数日経った頃、突然哲二の部屋に警察官が訪ねてきたそうです。
哲二達は何だろうと思いながらも、とりあえず警察官を玄関の中に入れ「何でしょう?」と聞いたといいます。

すると警察官は「変な事をお聞きいたしますが……
最近二軒隣のお婆さんに何か恨まれるような事をしませんでしたが?」
と言ってきたのです。

哲二達は全く身に覚えがなかったので「別に何もやっていませんが」と言うと……
その警察官は信じられない事を言ってきたのです。

それは二軒隣のお婆さんが最近になって、哲二達に家の中の物を盗まれたり、イタズラされたと言って警察に相談してきたという事でした。

もちろん哲二達には身に覚え等全くなく、そんな事やってないし何の事だがサッパリ解らないと警官に言ったそうです。

すると警察官も、実はそんな事は分かっているんだけど、もしかしたら哲二達がそのお婆さんになにかをして恨みを買われたんでないのか……
と思い心配になってやってきたという事でした。

哲二達は「どうゆう事ですか?」と訪ねると、警察官の考えでは、もしかするとお婆さんは、被害妄想が強く、何かのキッカケで、哲二達が嫌がらせしてると勘違いしてるんじゃないのかなと思ったそうです。

というのも、お婆さんの話もちょっと普通ではなかったみたいで……
例えば、哲二達がお婆さんの留守を見計らって、お婆さん宅に屋根裏をつたって侵入し、生活用品や食糧を盗んだり、衣類等を持ち出し、それを着たり穿いたりして、汚れたらそのままお婆さんのタンスに戻してると言ってきたそうでした。

屋根裏をつたって隣の部屋等に行ける訳がないし、お婆さんの衣類をまだ若い二人が着るわけがない。
警察官はそう思って、お婆さんをなだめながら「勘違いじゃないのかい?」と言ったそうなんですが……

お婆さんは「絶対あいつらがやったんだ、屋根裏を歩いてる足音も聞いてるし、屋根裏から男女の話声も聞いた」
と言って、全く聞く耳をもたなかったそうなんです。

哲二達は、「それならうちらじゃなくて隣の若い男女の方が怪しいじゃないんですか?」
と言ったのですが……

警察官は「隣の人は最近引っ越して、出て行ったみたいですよ……
そしてお婆さんの話では、その若い男女が出て行った後に被害にあってると言ってきたんですよね」
と言ってちょっと困った顔をしたそうです。

哲二達は隣が引っ越して行った事に全く気がつきませんでした。
最近も隣の部屋から物音等を聞いていたため、住み続けてると思っていたのです。
そしてまさかお婆さんにそんな風に思われてるなんて思いもよらなかったそうです。

警察官は一応大家さんの所にも行って話をしてきたそうで……
大家の話でも、やはり屋根裏をつたって隣には行けないつくりになっているし。
人が引っ越して出て行ったら、部屋の鍵はシリンダーごと交換してるので戸締まりをしっかりすれば、そんな簡単に部屋に侵入する事はありえないと言ってたみたいです。

そして警察官は最後に「すいませんね、お婆さんがあまりにもあなた達を疑って、注意してきてくれと五月蝿いもんだから、こうやって来たんですよ。
なるべくご近所さんとは仲良くしてくださいね」
と言ってそのまま帰って行ったそうでした。

哲二達には全く非がなかった訳で……
ハッキリ言っていい迷惑、なんか変な所に引っ越して来ちゃったかなと思ったそうです。

それからもお婆さんと顔を合わせると、凄い目付きで睨んできたり、酷い時には『盗人』と書いた紙を玄関に貼られたそうでした。

流石に我慢できなくなった哲二達は、大家さんに相談したそうです。

すると大家さんも、そのお婆さんには困ってるらしく、お婆さんが相談に来るたびに、何回も屋根裏からは人は入ってこれないと説明してるそうだが……
屋根裏から男女が入ってくる、屋根裏から話声が聞こえる、足音はいつも哲二達の部屋の方からやって来て、そして哲二達の部屋の方に帰って行くと言って、全く人の話を聞かなかったといいます。

そしてあまりにもしつこく言ってくるので、一度お婆さんの部屋の屋根裏に大家さんが上がって確かめてみたようでした。

するとやはり隣の屋根裏には繋がっておらず、しかも屋根裏ではまともに歩く事もできないくらい狭いつくりになっていて、どう考えても、屋根裏からは人は侵入等できるはずがないとお婆さんに言い聞かせたそうです。

それでもなんとかしてくれと、お婆さんが五月蝿いので、これ以上ご近所さんに迷惑かけるなら部屋を出て行ってもらうと怒ったそうです。

すると流石のお婆さんも諦めて帰ったそうでした……

ですが、まだ哲二達にそんな事をやってるとは思わなかったみたいで……
貼り紙の話をすると、大家さんはちょっとあきれ顔になり、とりあえずお婆さんの家族の人に相談してみます、それでも問題起こすようなら他に方法を考えますと言って、対応してくれたそうです。

それを聞いて安心した哲二はそのまま家に帰ったそうです。

それからお婆さんからは変な事を言われたり貼り紙等もしなくなってきたらしいです。
そしてその頃から、お婆さんの姿もあまり見かけなくなっていったといいます。

安心はできたのですが一つ気になる事もあったようでした……

それは隣の部屋、空き部屋になってるはずなのですが、たまに物音がしたり、男女の話声が聞こえてきたそうです。

多分音が反響して、どっかの話声が隣から聞こえてくるように感じるんだろうと思ってたそうですが……
あまりにも隣からリアルに聞こえてくるので不思議には思ってたそうです。

そしてしばらくは平和な日々が続いたみたいでした。

そんなある日、哲二達の部屋に一組の夫婦が訪ねて来たのです。
その夫婦はお婆さんの娘夫婦だったみたいで…
母が迷惑をかけたと言って菓子折りを持って謝りにきたそうです。

哲二達も遠慮せずにそれを受け取り、お婆さんは大丈夫ですか?と様子を訪ねたといいます……
すると娘さんは…「私達が母の部屋を訊ねた時、母はおかしくなっていました。
言ってる事もおかしな事ばかりで…
それで心配になって一度病院に連れて行ったんです。
そして色々検査した結果、母は統合失調症と診断されました。
それで幻覚や幻聴等の症状が表れ、被害妄想にとらわれていたようです。
本当申し訳ありませんでした。
今は心配なので私達と一緒に暮らしています。
こっちの部屋も近いうちに片付けて引き払おうと思っています。
本当にご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」
と言って何度も謝り帰って行ったそうです。

哲二達もこれで何も心配なく暮らせるようになったなと思ったのですが……
これが恐怖のはじまりでした。

しばらくは何もなかったのですが……
ある日大量に買っておいたカップラーメンが全部なくなってる事に気が付きました。
一個位なら食べてしまった事を忘れるというのはあるかもしれませんが、普通に10個以上はあったそうです。
部屋中探したそうですが、結局見つからなかったようでした。

そしてそれからもおかしな事が続いたそうです。
食糧がなくなるのはしょっちゅうで、他にも衣類がなくなったり、部屋の物が知らないうちに壊されてたり、酷い時には部屋中が泥だらけになってた事もあったそうです。

もちろん出掛ける時には窓や玄関はしっかり施錠してたし、誰かが入ってくるって事は考えられなかったそうです。

そしてそんな日が続くようになってから、更におかしな事が起こったそうです。

頻繁に屋根裏を誰かが歩いてる
音や、何を言ってるかハッキリは聞こえないのですが、ボソボソと男女の話声等が聞こえるようになってきたらしいのです。

はじめは屋根裏に誰か侵入したのかなと思って、押し入れから天井板を外し、屋根裏に上がって屋根裏を確認したそうですが、人影は全くなく、しかも普通に人が立って歩けるような場所ではなかったそうです。

もちろん隣の部屋の屋根裏にも全く行く事はできなくなっていて、足音や話声の正体は解らなかったそうです。

その後も頻繁に話声や足音、部屋の中を物色されたりしたそうですが、どうする事も出来なくストレスだけが溜まっていく一方だったそうです。

そんな日々が続き、流石に気持ち悪く我慢できなくなって大家さんに相談したのですが……
「あんた達もお婆さんみたいな事を言うのかい?」
と言ってほとんど何もしてくれなかったそうです。

そして足音や話声をよく聞いてみると、それは隣の部屋から屋根裏をつたってやって来るのがわかったそうでした。

来るのはわかったのですが、問題はどうやってやって来るのかでした。
屋根裏は普通の人間では通れません。
という事は人間ではないのではないかと考えたそうです。

そこで哲二は自分の親に相談したそうでした。
するとあるお寺を紹介されたそうです。

藁にもすがる思いでそのお寺に行き、相談してみたところ、そこの住職さんが一度部屋の様子を見に来てくれることになったのです。

そして部屋にきた住職さんが、お経をあげて御札を天井や壁に貼り、「部屋の四隅と玄関に盛り塩をしなさい」と言って帰って行ったそうです。

そして言われた通りやったのですが、相変わらず被害はおさまらず……
どんどん精神的に追い詰められていったそうです。

もしかすると自分達もお婆さんみたいに病気になってしまったのではないかと悩むようになってしまい、一度病院で診てもらおうとまで思い詰めたそうです……

ですがその前に一度本当に病気かどうか確かめようと思い、それで私を部屋に連れてきたというのです。

「なるほど、それで何も知らない俺に、その足音とか聞こえるかどうか確かめてほしかったという訳か?」

「そういう事だ」

「じゃあ俺じゃなくてもいいぢゃん」

「うん、誰でもよかったんだ。
朝コーヒー買いに行ったらたまたまお前がいたからさ、それで頼んでみたんだよ」

「頼んでないぢゃん、飯で釣って連れてきただけだろ」

「細かい事は気にしないでくれ、それより今日泊まっていかないか?」

「話がいきなりで意味が分からないんだけど……
何でこんなお化け屋敷みたいな所に泊めようとしているのですか?」

「頼むよ、夜中が一番凄いんだ」

「……余計嫌なんですけど……」

それから何故か泊まる事になってしまい、夜中まで寝ないでずっと三人で話をしたり、テレビを見たりしました。

そして夜12時を過ぎた頃、屋根裏からまた『ギシ、ギシ』と足音のような物音が聞こえ始めたのです。

そして更に何を言ってるか分かりませんが屋根裏の方からボソボソと男女の話声が聞こえてきました。

「ヤバイ……本当に聞こえる……」

「やっぱり聞こえるよな……」

そしてしばらくすると、また『ギシ、ギシ』と聞こえ始め隣の部屋の方に足音は消えていきました。

「なぁ、これなんなんだ?」

「分からない……分からないけど何者かが屋根裏に潜んでるみたいなんだよ」

「でも人間じゃないよな……」

「多分そうだな……」

「多分お婆さんもこれに悩んでたんじゃないのか?」

「多分そうだな、もしかするとお婆さんは統合失調症じゃなかったのかもしれないなぁ……」

「哲二達はこれからどうするんだ?」

「お前のお蔭で自分達が病気じゃないって事が分かったからな、新しい部屋でも探して引っ越しでもするよ」

「なんか変な部屋見つけちまったな、ごめんな……」

「お前は悪くないよ、この部屋に決めたのは俺達なんだから……」

それから茶の間に布団を敷いてもらって私は寝る事にしたのです。
哲二達も寝室に行って寝てしまいました。

私は気持ち悪くて寝れないかなと思ったのですが……
不思議と簡単に眠ってしまったようでした。

何時間位寝ていたのでしょうか……
私は何かの物音で目がさめました……

ふと窓の方を見ると、カーテンの隙間から日の光が入っています。
11月下旬頃でしたから、朝6時を過ぎてるのが外の明るさで分かりました。

物音の方に意識を集中すると、どうやらキッチンの方から音は聞こえきていました。
朝からガッチャン、ガッチャン音をたてて誰かが何かをやっているようでした。

五月蝿いなぁと思いながらも、沙織ちゃんが朝飯でも作ってくれてんのかな?と思って、起き上がりキッチンの方に歩いて行きました。

するとキッチンに近づいた途端、音がピタッとやんだのです。
キッチンを覗くとそこには人影がなく、置いてある物等がグッチャグチャに荒らされていました。
私はビックリして、急いで哲二達を起こしに行ったのです。

寝室のドアを何回も叩いて声をかけました。
すると直ぐに二人は起きてきて、キッチンの荒らされようを見ると、固まってしまいました

キッチンの中は凄い状況で、天ぷら粉や片栗粉、何粉だか分からない物が撒き散らしてあって、食器等も散乱しており、その状況を見た沙織ちゃんはその場にペタンと座り込むと、「もう嫌」と言って泣き出す始末。
哲二もプルプルと体を震わせていました。

私は何て声をかけていいのか判らず、とりあえずキッチンを片付けていきました……
すると哲二達も一緒に片付けはじめ、これからどうするか話し合いをしたのです。

いつも足音は隣の部屋の屋根裏からやってきて隣に戻って行きます。
それで一度大家さんに言って隣の部屋を見せてもらう事になりました。

そして時間を見計らって大家さんに電話をかけたのです。

すると大家さんは午前中は用事があるので、昼からにしてくれと言って、昼から一緒に部屋を見てくれることになりました。

本当は私も行きたかったのですが…
その日は昼から嫁と買い物に行く予定があったので、哲二に部屋を見に行ったら、様子とか後から教えてくれと言って、私は自分の家に帰って行きました。

◇◇◇◇

そしてその日の夕方哲二が私の家を訪ねてきました。

「いらっしゃい、隣の部屋どうだった?」

「あそこはヤバイよ……直ぐに部屋を見つけて引っ越しする事にしたわ……」

「どうやばかったんだよ?」

哲二はソファに腰を下ろすと少しずつ話始めました……

「昼過ぎに大家さんが来てくれてさ、二人で隣の部屋の鍵を開けて入って行ったんだよ」

「それで?」

「うちらが茶の間に入った途端、屋根裏から『ギシ、ギシ』って歩く音がしてさ……」

「屋根裏に何かいたのか?」

「大家さんはその音にビックリしてたみたいだけど、とりあえず部屋の中を見てまわった。
そしたら部屋の中は別に何もなかったよ」

「それで?」

「それで音のした屋根裏を見る事にしたんだ…
押し入れに上がって天井板をずらして懐中電灯を持って屋根裏に上がってみた」

「なんかあったのか?」

「屋根裏の一ヶ所に何かこんもりと何かがまとまって置いてあるのが見えたんだ。
それで普通に歩ける場所じゃなかったから、四つん這いになって柱をつたって近づいて行ったんだ…」

「んでなんだったんだ?」

「それは俺や沙織、あと多分お婆さんとかあと誰のだか分からんけど、衣類とか布団とか、あとダンボールやチラシ等で、巣のようなものが作ってあった」

「巣?」

「そう、柱等をうまく利用して一ヶ所に山積みにされた衣類や布団、ダンボール等でそれなりの大きさの何かの巣がうまく作られてあった。
そしてそのまま食ったカップラーメンや無くなったお菓子、あと何だかわからん物までその中にグチャグチャになって置いてあった……」

「動物か何かいたのかな?」

「俺も最初はそう思ったんだ。
でも動物がいるなら動物の糞とか毛とかあると思って探したんだよ、でも出てくるのは食糧の食い散らかしたあとだけだった」

「じゃあなんだろな?」

「分からん、分からんけど屋根裏から聞こえる足音や話声は動物のものじゃないし、動物なら一度くらいその姿を見ててもおかしくないだろ……」

「確かに……」

「しかもお婆さんは盗まれた衣類を汚されてタンスに戻されてたんだぞ……」

「動物の仕業ではないよな……」

「多分あれは人の想像を超える存在なのかもな」

「もしかして妖怪とかか?」

「解らん……」

そして哲二は大家さんに、その巣のような物を見てもらったらしいです……
すると大家さんは「どうなってるんだ?何だこれは……
ありえないし信じられない、こんな事は初めてだ」
と言ってちょっとパニック状態になっていたそうです。

そして哲二は大家さんに「この部屋どうするの?」と聞いてみたところ、とりあえず屋根裏を掃除して、お祓いをしてもらうと言ってたそうです。

しかし哲二は、多分お祓いとか無駄だと思ったみたいで、直ぐに引っ越しする事を決めたそうです。

それから一週間位で哲二は引っ越し先を決め、引っ越しをしました。

哲二の話では、引っ越しする二日前に隣の部屋はお祓いしたらしいのですが…
多分効果は無かったのでしょう。
引っ越しした日にも屋根裏からから男女の話声は聞こえてました。
引っ越しの手伝いに行ってる私が聞いたのですから、間違いないと思います。

結局あれは何だったのかは分かりません。
哲二はあの隣の部屋に越してきた若い男女が何か関係あるんじゃないのかな?と言っていました……
それか、もしかしたらあの男女も被害者だったのかもしれないとも……
もし被害者ならあの屋根裏の者達はいつからあそこにいたのでしょう……

わずか二三ヶ月で引っ越して行った若い男女、引っ越しした後にお婆さんがおかしくなっています……
関係あるかどうか分からないですがちょっと不気味に感じると言っていました。

あと関係ないとは思いますが、哲二の部屋の真下の住人もいつの間にか引っ越ししていなくなっていたそうです。

ちなみに今でもそのアパートはあります……
今でも屋根裏に巣のようなものを作り、潜んでいるのでしょうか?

私が知ってる中で、結構不気味で気持ち悪い話だったので書いてみました。

[4700] 麗子の奇行

数年前、香織に連れられ初めて俺のマンションに遊びに来た時の麗子の話をしよう。

初対面の挨拶を交わした後、リビングでピザを食いながら龍を含む四人で暫く談笑していたのだが、麗子の様子が何処かおかしかった。

落ち着きがなく、明らかにソワソワしているし、キョロキョロ辺りを見回している。

心配した香織が訳を聞くと、「隣りの部屋に女の子がいるでしょ?」と変な事を言い出した。

当時俺は一人暮らしだったので、勿論そんな女の子などいる筈がない。

麗子のいう部屋は寝室だった。

部屋に入った麗子は、ベッドの横にあるテレビの方をジッと眺めている。

そして、ふぅ…と溜息をついた後テレビの前で正座をし、改めてそちらをジッと見つめ、時折頷いたりもしている。

目線を辿るとテレビの裏手。

誰もいない空間に向かって麗子は言った。

「 もう大丈夫、泣かなくていいよ…」

「 …………」

「 香織ゴメン!私先帰るね。ロビンさんも龍君もまた遊ぼうね、お邪魔しました…」

キィ、ガチャン…

「 …………」

麗子が帰った後、俺達はとりあえず残りのピザを完食した。

【了】
[4684] サンクス
↓氏、有難う!
[4633] 天使に
感動した!!
[4632] すまん!
やあロビンミッシェルだ。

全国二、三人の俺の怪談を心待ちにしてくれている心の友達よ!すまん!

前回の「憑依、麗子OF THE DEAD」の続編を完成させる事なく、またつまらない愚談を投稿してしまった俺を許してくれ!!…ひ…
[4631] 天使に助けられた件


…ああ…



俺は暗闇の中で一人もがいていた。

額から流れる汗が目に染みるが払う事が出来ない。かろうじて目だけは動くが、それ以外は全くといっていい程動かせないし声も出ない。いや感覚すらない。

初めての経験に「これが金縛りか〜♪」と感動すら覚えていたのだが、キンと響く耳鳴りの底から何か一定のリズムを刻む低い声がしている事に気付き、俺は全神経をそれに集中した。

「 …ふむ… お経か… 」

ポク、ポク、ポク、チーーーン…
ポク、ポク、ポク、チーーーン…

成る程、微かに木魚を叩く音も聞こえる。意識しているからかその声と音は少しずつではあるが大きくなっているような気がする。

「 こ、怖ぇえじゃねぇか… 」

クーラーは付けないで寝た筈なのに、室温は夏とは思えないほどに低く感じる。

昔、夏美に聞いた金縛りの解き方。指先に意識を集中!!

「 うおおおおお!!」

…ダメだ!感覚すら無いのに指先に力を入れる事など不可能。

ポク、ポク、ポク、チーーーン…
ポク、ポク、ポク、チーーーン…

「うるせー!!こんにゃろー!!」

未だ続いている低い唸り声のようなお経は益々音量を増していき、遂に温厚で気が長くて有名な俺を怒らせてしまった。

しかし幾らキレた所で動ける筈もなく、お経はもう既に俺の耳のすぐ側で鳴っている。

寒気が増す。

人の吐息程の生暖かい緩い風邪が、俺の顔を撫で回し始めた。

いる。俺のすぐ隣りに誰かが。

ハァ、ハァ… ハァ、ハァ…

生臭い息。

歯ぁ磨いてんのかよ!と言いたくなるぐらいドブ臭い口臭。もう勘弁してくれ…息が出来ない、苦しい…

必死に目を見開きそちら側を見ようとするが、闇よりも更に黒い影の輪郭がチラチラと見えるだけで肝心の顔がギリギリ見えない。

再度、指先に集中!!

「 う、うおおおおお!!」

『 …ふふふ…そんなこと…してもむだ…だよ…ふふ…』

どこかで聞いた事のあるような展開だが、確かにそいつは臭い息を俺の顔に吹き掛けながら弱々しくそう囁いた。

『…いけ…でていけ…でていけ…でていけ…でていけ…でていけ…』

この部屋に越して来て三ヶ月、今思えば最初から不可思議な事が何度も起こっていた。

四階の窓の外を黒い影が横切ったり、夜中にクローゼットの内側から爪で引っ掻くような音がしたり、テレビのボリュームが勝手に上がったり、YouTubeの無料エロ動画が急に固まったり…ひ…

一番迷惑なのは、このマンションの裏手が墓地な事もあり、気持ち悪りぃのでそちら側の雨戸は昼夜閉めたままの状態にしているのだが、いつも決まった時間、夜中の三時頃にガタガタと激しい音が数分間続き、翌朝には必ず雨戸が五センチ程開いていると云う現象が起きていたのだ。

『…でていけ…でていけ…でていけ…でていけ…でていけ…』

ふむ、「でていけ」と繰り返すこの黒い影は元々この部屋に住み着いていた地縛霊かもしれん。いやもしかすると裏手の墓地から流れてきた浮遊霊がただちょっかいを出しに来たのかも…分からん!…明日夏美に来て貰おう…

『…でていけ…でて…!!』

突然、声がピタリと止み、読経の声も消えた。同時に耳鳴りも止まり、部屋の中は真夜中の静寂が訪れた…

奴の気配も消えた。

「…た、助かったのか…?」

俺は更に吹き出してきた汗に目をヤられながらも全く動く事が出来ず、ジッと部屋の天井を見つめていた。

ふと気づいた。

何故か視界の隅で吊り下げ式の電気がグラングランと左右に揺れている。良く見ると暗闇に不釣り合いな天井から伸びた二つの白い手が、電気の傘を揺すっていた。

「 …………!!』

指先集中!!

「 う、うおおおおお!!」

やはりまだ金縛りは解けない。しかしそうしている間にも天井から伸びた白い手が此方に向かってゆっくりと伸びてきている。

「 うおおおおおおお!!」

『 …そんな…ことしても…むだだよ…ふふふ…』

遂に白い手は俺の首を掴みギリギリと絞め始めた。

華奢な女性の手と思しきその手からはとても想像出来ない強い力。首に食い込むその指がどんどん俺の意識を奪っていく。

薄れゆく意識の中、突然目の前に現れた女の顔はとても死人や幽霊とは思えない程の美貌で、「まあこいつにだったら殺されてもいいかな〜♪♪」と思わせる程に素敵な笑顔をしていた。

「 …………!!」

ドスン!!

突如、腹に激痛が走った。まるでボーリングの玉をまともに落とされたような強い衝撃。

わん!!わん!!わん!!…フガ…
わん!!わん!!わん!!…フガ…

「…んっ?犬?!」

腹の方からけたたましく吠える犬の声が、俺の薄れかけていた意識を再度覚醒させてくれた。

わん!!わん!!わん!!…フガ…
わん!!わん!!わん!!…フガ…

すると、目の前の美人はあからさまに嫌そうな表情を浮かべたかと思うと、スルスルと天井に吸い込まれて消えた。

金縛りは解け、何が起こったのか理解出来ない俺は必死で頭を持ち上げて腹で吠え続ける何者かを凝視した。

「 お、お前 …ま、マモルか?」

そこには紫色に発光しながら高速回転しているマモルがいた。

「…おいロビン!今回が最後だぞ!もう助けてあげらんねーからな!わかったな?…フガ…」

懐かしい声。クシャっとした顔に潰れた鼻。そしてクリクリした愛らしい二つの目。

「…おいロビン!直ぐにこの部屋は出ろ!曰く付きまくりもいいとこだぞここは!どうせ家賃に釣られて借りたんだろバカ!相変わらずバカだなお前は!…フガ…」

マモルの背中には二つの白い羽根が生えていた。

「…ま、マモル!またお前は俺を助けてくれたんだな!…有難うマモル!!」

パタパタと左右の羽根が上下し、マモルは徐々に浮上していった。

たるんだ腹が重いのかそのスピードはかなり遅い。そして「ハッハ、ハッハ」言いながら舌をベロンと出しているマモルの顔はまるで笑っているようにも見えた。

マモルが放つ紫色の光が白に変わり、無数のキラキラとした小さな粒が部屋中の壁から現れ、彼の身体中を隙間なく包んでいく。

それはまるで名作「ゴースト、ニューヨークの幻」を思わせる程綺麗なものだった。そういえばさっきの霊もあの名女優「デミムーア」にどことなく似ていたかもしれない…

マモルの体を完全に光の粒が覆った瞬間、再度高速回転を始めて上昇し天井へと消えていった。

「…………」

大量の汗と共に俺の目からも涙が溢れた。彼には何度助けられたろう…今の俺があるのは彼のお陰だといっても過言ではない。感謝してもし切れない…お前は俺の最高の親友だ!!

「…ありがとうマモル、そしてさらばだマモル!!」

洗面所で顔を洗い、朝を待って不動産屋へ怒鳴り込んだ。解約書にサインをした後、俺はマモルの最後の言葉を思い出していた。

「…二度とボクの話を「天通」に出すなよバカ!わかったか!!…フガ…」



すまんマモル!俺はまたお前との約束を破っちまったよ…

【了】
[4592] サンクス
やあ、最近仕事が忙しすぎて7キロ痩せてしまったものの、それが功を奏したのか17才の激カワ女子高生の彼女が出来たロビンミッシェルだ。

↓氏、↓↓氏、コメント有難う!!だがすまん!まだ続きをこれっぽっちも書けてないんだ…うう…

できるだけ早い内にお披露目するんでもう暫くムラムラしていてくれ!…ひひ…
[4563]  
ロビさんきたー
続き楽しみです。
[4562]
ロビンさん久しぶり

続きまってるよ♪
[4549] 憑依、麗子OF THE DEAD

今夜は月が綺麗だ。

昼間の茹だる様な暑さがまるで嘘だったかの様に、この山の高台はヒンヤリとして解放的で涼しい。

俺は自宅から車で三十分程離れたとある外人墓地にいた。海に面しているせいか、潮の香りが混じる突風が時折ザワザワと周りの木々をしならせながら、この異様な雰囲気を更に盛り上げてくれている。

「やべ、充電20%きってんな…」

パシャリ!

目下に広がる綺麗な夜景を写真に数枚収めた後、俺は心の中で軽く覚悟を決めた。

振り返るとやはり先程と同じ光景…

俺の愛車クラウンの中で怯える香織と龍。

麗子はといえば長い黒髪を振り回しながら、ロックされたドアをこじ開けようとバンバン車体を叩いたり、何語か分からない言葉で喚きながらノブをガチャガチャさせている。

怖い…正直…

突如、豹変してしまった麗子。

原因は分かっている。

外人墓地に「出る」と云う噂を聞いた俺達は、真夏の深夜にわざわざこんな所まで肝試しに来たんだ。

しかし車で周辺を軽く見て回ったものの、比較的街灯の多いこの墓地は洋式の四角い墓石がただ規則正しく並んでいるだけで、これといった異変も怪現象も起こらなかった。

すると苛ついた龍が、事もあろうにその墓石の中の一つに中指をおったてながらジョロジョロと小便を引っ掛けてしまったんだ。

慌てて止めに入った麗子だったが、突然胸を抑えながら苦しそうにしてうずくまり、一転ゲラゲラと笑い出したかと思えば、その墓石の前の土を素手で掘り始めた。

実はもうその時から麗子は何処の国の言葉か分からない、理解不能な叫び声を上げていたよ。

突然の事に呆気に取られている俺達はどうする事も出来ずに唯その光景を暫く眺めていたが、龍が麗子の名を呼んだ瞬間、土を掘る手がピタリと止まり、此方を振り返ったんだ。

誰だよお前?

俺の心の声だ。

まるで別人としか言いようがない程に麗子の顔は変形していた。

細かった筈の目はこれでもかと見開き俺達を睨みつけ、口からは涎と共に大量の泥がボタボタと滴っている。喰ってたんだよ、泥を…

次の瞬間、体に大きなバネでも入っているかの様にビヨン!と跳び上がった麗子は、あーあーと奇声を発しながら此方へと向かって走って来た。

恥ずかしながら腰を抜かしてしまった俺はその場から動けなかったが、香織と龍はあの走塁王「福本豊」顔負けのダッシュでクラウンへと逃げ込んだ。

狙いは小便を引っ掛けた龍の様だ。

何故なら麗子は座り込む俺に見向きもせず、二人の後を追ってクラウンのボディをバチバチと叩き始めたからだ。

買ったばかりの新古車、一般人の夢クラウンをバチバチと…たまに鋭い蹴りも何発か入っている。

正直、俺は麗子の変貌ぶりや龍の身の安全よりも愛車クラウンがとても心配だった。白のボディーが泥で汚され、ミラーが飛び、車体が変形していく様をとても直視出来なくなった俺は、ブラックメンソール1ミリを吹かしながらパノラマに広がる綺麗な夜景に目を移したといった所だ。

すまん、前置きが長くなってしまったな!! しかし、この続きを書くのはまた後日、暇が出来てからにしようと思う。

何故なら酒が回って少し眠たくなってしまったからだ!明日も早いので次回を楽しみにしていてくれ!

【続く】
[4516] さんきゅ
そっか、そうだよね。「使う」と「遣う」迷って失敗しちまったか…。こりゃお恥ずかしい。でも、どっちなのか迷う文字ってあるよね。雑談の紛らわシリーズ面白いんだけど、ウザいって思ってる人もいるんだね。

ま、兎も角、碓氷は人に利口に思われたい馬鹿ってフレーズが気に入った。

確かにそうだね。

[4515]
ああ、愚弄という言葉を使えない根拠となるものは、碓氷が馬鹿だということからか。
しかし、碓氷は人に利口と思われたい馬鹿だから、普段の作文にも山ほど使ってるぞ。
例えば、鬼の旧字、吐き気がして嗚咽する
絵を描いてる割に、鳥瞰図を知らない。それから、碓氷は常に画用紙なんだよな絵を描くの。
まだまだあるな。

それから、遣うだが、この字は使うの旧字じゃないからな。遣うは普段使われない。
言葉遣いや小遣いなど、だいたいが特殊用例として使われるものだ。間違ってるぞ。
奇妙の雑談スレは物を書く人間にためになるはずなのだが、鬱陶しく思えるのは何かおかしいぞ。
[4511] 根拠
碓氷は、言葉をあまり知らないから熟語はあまり遣わない。

遣うとしても、口語で日常的に誰もが普通に口から出てくるような言葉しか遣わない(遣えない)。

だから、碓氷なら「愚弄する」ではなく「馬鹿にする」だ。

その方が碓氷らしい。

[4509]
過去のコメントで碓氷は愚弄という言葉を何度も使っているけどな。
碓氷が使いそうにないと言う根拠があるなら教えて欲しい。

愚弄だが、これまでのやりとりを読めば、碓氷を叩いている人間は、碓氷を見下して馬鹿にしているのだから、好意的な感情を持った第三者であるなら侮辱という言葉を用いると思うぞ。
碓氷が作文に用いる言葉の傾向として、意味はよくわからないが難しそうと本人が思う方を選んでいる。
火が燃える様を轟々ではなく囂々を用い、管理人さんへ連絡ではなく通達を使う。
碓氷を擁護するコメントの中にも、そういうの多いな。
[4502] 愚弄
そぉ?
寧ろ碓氷の方が遣いそうにないけどね。
[4501]
↓こういう時に愚弄などという言葉を使うのは碓氷凍魚ただ一人。
[4500] おにさん
どうして,そんなに執拗に碓氷さんを愚弄するんですか?ファンなんですか?
[4499] 闇中鬼譚
私の友人にUと言う四十過ぎの男がいる。
独身で自宅に年老いた両親と暮らし、中小企業へ勤める、どこにでもいそうな人間だ。
彼は自分が書いた詩や怪談をネットで発表することを数少ない趣味としている。
それは自分が運営するブログであったり、素人の書いた体験談などを募集し、掲載するサイトであったり、Uは自らが生み出す作品に少なからず…いや、過大に自信を持っていた。
自作を批評されようものなら、烈火の如く怒り狂いコメントした者に対して罵声を浴びせ、
他者が運営するサイトであろうとも、感想を読者達が書く掲示板へ気が違ったように
自分のプライドを傷つけた者に向けて憎しみの言葉を延々と書き連ねた。
それから、自分では及びもつかない優れた作品を書く人間へ向ける嫉妬深さも異常といえた。
相手が女子供であろうとも、容赦なく言葉の針で刺し、投稿を断念するまで叩いた。
あまりに酷い内容の書き込みにサイト管理人の手で削除されることもしばしばあった。
自制することも、自省することもできなくなってしまうのだ。
怒りや嫉妬に駆られて掲示板を荒らす。
諌める者、自省を促す言葉に耳を貸さず、言葉の暴力を浴びせ続けた。
批評した者が運営するサイトへ乗り込み暴言を浴びせたこともある。
その性格により、自作の投稿禁止処分サイトへの出入り禁止勧告を受けたり、サイトへのアクセスを強制的禁止させられることが何度も起きた。

前置きが長くなった。
仕事から帰り、就寝するまでの数時間、彼は創作に没頭する。
その夜も布団の上に寝そべり数編の詩を生み出した。
自分の運営するブログへ載せ終え、携帯で時間を確認すれば午前3時。
もう寝ないと明日の仕事に障る。携帯を枕元U
はトイレへ向かった。
築三十年の日本家屋。40ワットの電球ひとつ…薄暗い廊下。
トイレ手前、襖の向こうは両親が眠る八畳の和室だ。
用を済ませて廊下へ戻ると様相は一変し、そこは真っ暗な闇に満たされていた。
トイレの明かりを灯してみたが足下の床すら視認できない。40ワットの電球はそこそこ役に立っていたのだ。
仕方なくUは壁に手を当て…手探りで自室へ戻ることにした。
トイレから出て直ぐは両親が眠る部屋、慣れ親しんだ襖の手触りがあるはずだった。
ひんやりとした、きめ細やかな濡れたような感触。
まるで漆喰壁を触った時の…
廊下の反対側に壁などない。そちらは庭に面してガラスが嵌ったサッシ戸だ。
間違える筈がない。
トイレから出たら、自宅ではない別の場所だった。
怪談や心霊体験談など書いているが、自分では
そんな異常と遭遇することなど生まれてこの方、一度もない。
トイレに戻り、怪異が去るのを待つか…この見知らぬ闇の中を進むか。
その場に留まり、暫く逡巡していると廊下の先…と思われる方が仄かに明るくなる。
するすると足袋を履いたような足音がする。
誰かが来た。
ここが自宅であるなら、両親とUの三人以外の者…つまりは家族以外の誰かとなる。
ここが自宅でないなら…
Uは竦み上がった。
良くて家宅侵入…悪ければ…
人がこちらへ向かってくるのが見えた。
廊下は先で左に曲がる角になっていたのか。
明るくなったことで壁や床、天井…はっきりと…
最悪だった。自宅ではなかった。
ここは人が住む、人がいて良い場所ではなかった。
左右は垂直に立つ白い漆喰の壁、床は幅二メートル程、継ぎ目の無い木目が続く、果てが見えない一枚板…天井はあまりの高さで闇の中へ消えている。
そんな異界の中を自分に向かってやってくる存在とは。
自分だった。
顔、今着ている服はもちろん、背丈も体型も同じ
歩き方までそっくり…U本人そのものだった。
違うのはその表情。憤怒に歪めた恐ろしい顔。
闇の中、白く発光しながらUの許へやってきたそれは
いきなり彼の右手首を掴み捻りあげ、額をぶつけるように近づけると
「全部、知っているんだよ。評価されたいのに評価されない自分を認めようとしない奴らへの憎しみをな!
 わざわざ別のIDを取得して別人になりすまし、自分を絶賛する感想を入れたり、
 自分より優れた作品を誹謗中傷するコメントを入れたりしていることをな!」
血を吐くような魂から絞り出すような憎しみが籠もった声だった。
Uは自分と瓜二つの人間が鬼の形相で自分を糾弾する迫力にただ黙るしかない。
「批評を受け付けず、言い訳ばかりして逃げ口上を繰り返し、大した努力もせずに自らの才能に疑いを持たず、自信だけは人一倍で努力は二の次にして、自分の意思にそぐわない批評には当たり散らして醜態を晒す。
 評価などいらない?魂を込めて書いてるだけ?
 推敲などしないのが自分の流儀?
 素人なのだから大目に見ろ?
 全部言い訳の逃げなだけだろ!?」
自分とそっくりな目の前にいる人間は赤い血の涙を流していた。
頬を伝い顎に溜まると糸を引くように床へ落ちていく。
自分を穢すなと何度も繰り返し言った。
諦めろとも。
そして、Uは鬼の形相をした自分に頭から喰われた。
汚い自分を浄化すると…
左目のまぶたを指で無理矢理開かされると目玉を押し付けた唇で吸われた。
ぶちぶちと束になった神経やらが引きちぎられる音と痛みで頭が灼熱する。
両手を掴まれている為に逃げることすらできない。悲鳴をあげるのが精一杯の抵抗だ。
残った目が眼球を旨そうにしゃぶる自分そっくりの姿をした鬼を映像を脳に伝える。
それはまさしく鬼…人肉を喰らう鬼だ。
角を持たない食人鬼。
頬肉を噛み千切られた。噴き出す血潮…次は左の耳を喰われた。
時間をかけ、Uは生きながら自分そっくりの鬼に喰われ、意識を無くすその時まで残された右目がそれを脳に伝え続けた。


けたたましい音によってUは飛び起きた。
自分そっくりの鬼に喰われた筈がなぜ…
見慣れた壁、テレビとゲーム機…山と積まれた漫画雑誌
間違いなく自分の部屋。
布団を跳ね除けて上半身を起き上がらせている自分。
夢…夢だったのか。
どこか変わった点はないか?見渡すがどこにもおかしなことはない。
母の声がした。ドアをノックする音。
なかなか起きてこないUを心配して部屋まで来たのだと言う。
朝食の準備ができているとも。
時間を確認すれば、起きてからすでに三十分も経っていた。
母にすぐいくと告げ、布団から出る。
足の裏に受ける違和感。
見下ろせば裂けたシーツは人の形に赤黒く染まり、布団綿が臓物の如くはみ出ていた。


身体に傷はひとつもなかった。
夢だったのか…
では、布団に遺された痕はどう説明する。
元のUは自分そっくりの鬼に喰われ、鬼はUの記憶を引き継ぎUとして生きることにしたのか。
この話をUから聞いた時、私はUの顔を見直してしまった。
Uは笑う。
真に受けていつものUとは違うところを探してしまったからだ。
そういう怪談を考えたとUは言う。
今度、それを作品にして投稿しようと思うと続ける。
彼に面と向かって言ったことはないが、Uが書いた話はことごとく面白くない。
文章が稚拙すぎて読めたものではないのだ。
使う言葉の吟味も用法もおかしく、表現力も…ボキャブラリも貧困で読者に伝えたいこともままならない。
それから、どこかで聞いた事がある話ばかりだった。
書き出しも既存作家の真似であることも丸分かりだ。
だから、下手の横好き、好きこそものの哀れ憐れなりと気の毒に思っている。
そうか、もし…Uとそっくりの存在が彼と入れ替わったのであれば
作品に変化があるかもしれない。
U程、文章が下手な人間は見たことがない。
間違いなく分かるはずだ。
『おに』であるなら



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