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【怪談】六十九体目の人形/HN:ドクロン2014

六十九体目の人形/HN:ドクロン2014


五十嵐氏は変わった人で誕生日が来るたびに和人形を一体ずつ増やす。

幼い頃から親が買い与えたものを含めると六十八体の人形がある。

人形専用の棚にはものすごい数の人形がきれいに並べられている。ガラス戸がついていて人形はガラスを通して見ると不気味な感じがするという(息子談)。

これは実際にはその五十嵐氏の息子さんから聞かせてもらった話ですので息子さん視点から語る。

五十嵐氏が生前六十九歳の誕生日に六十九体目の人形を買った。その人形は扱いがほかの人形と少し違っていて、棚には入れずにいつも五十嵐氏は肌身はなさずちょうど赤子を抱っこするように胸に抱えていた。

夜も朝もなく五十嵐氏はその人形に話しかけ、まるで一人遊びをするように

「今日はいい天気ねえ、お出かけしようか」そう言ったり

「可愛い、可愛い」そう言いながら人形をなで回したりする。そんな母親がなんだか不気味で怖かった。

息子さんは人形が好きではなくなるべくなら捨ててほしいと思っていた。

あの六十九体目の人形はほかの人形と違う。そんな気がした。違うというのはなんとなくではなく雰囲気もさることながら、息子さんが人形を見ると人形が睨んでいるような威圧感を感じる為だからだ。

人形の纏っている気というか雰囲気がなんだか邪悪な、もっといえば殺さんばかりの威圧感があるのだ。


ある日、母親が家を空ける日があった。母親が月に数回の茶会に出かけた日だった。

これはシメタと思ってその人形を思いきって捨ててしまおうと母親の部屋に入り人形を探すが、何処にもない。

「おかしい、いつもある場所にない」

そう思って部屋から出ようとした時に背後からものすごい視線を感じた。

振り返るとベッドにあの人形があってこっちをじぃーっと睨みつけている。明らかに表情がおかしい。目はつり上がりまるで般若の形相だ。

アアッと悲鳴を上げて尻餅をついた時、慌てて逃げようと思ってノブをつかんだ瞬間、頬に人形の顔があたる感触がし、

「逃げきれると思うなよ」

低い女の声がした。

瞬間、意識を失った。

どれくらい経ったか目覚めると夕方でちょうど母親が帰ってきたところだったので

「あの人形は捨てた方がいい」そう言うも母親は嫌だの一点張り。

仕方なくかわいそうだとは思ったもののあんな人形を置いておくわけにはいかない。母親にもしものことがあったら大変だと無理やり人形を奪うと

庭で燃やしてしまった。

その翌日、母親が涙に暮れているかと思って見に行くと母親があの人形を抱いている。燃やしたはずなのにあの人形は母親の胸の中で焦げ跡ひとつなく抱かれている。

「母さん…どうして…その人形は燃やしたはずなのに」

すると、母親はニコッとして

「戻ってきたのよ、この子は私と一心同体よ」

そう言って笑った。

そして歳月が流れあと数ヶ月で七十歳の誕生日を迎えようという時、少しずつ少しずつ母親は窶れていった。

普通の食事も受け付けなくなり寝たきりになった。それでもあの人形を自分の横に寝かせまるで添い寝をするかのように置いていた。

「いい加減、その人形は捨ててくれ、自分の体が参っちゃう母さんもその人形のせいだと薄々わかってるんじゃないのか」

そう言うと

「いいのこの子と一緒にいけるならさびしくない。お父さんにも先立たれて残ってるのは息子のあなたとこの人形だけ」

そう言って涙ぐんだ。

どうすればいいかわからなくなった。

ただ、あの人形の経緯を知れば何かわかるかもしれないと母親に人形の出どころを聞いた。するとある店で掘り出し物だと言われて買ったらしいことがわかった。

その店に行き店主に聞くと意外な事実がわかった。

その人形はやはり流れてきた商品で最初の出どころははっきりしないものの、聞いた話ではいろんな持ち主をたらい回しにされたとのことで、母親のように持ち主がおかしくなるのであまりに気味が悪いので人から人へ渡ってゆき、そしてこの店にいつの間にか流れてきて、そして母親の元に来たということだ。

粗末に扱われたのにも関わらず燃やそうが真っ二つにされようが傷つけられようが翌日にはきれいに戻っている。その話を聞いたとき全く同じだと思った。

燃やしてもだめ、切断してもだめ。行き詰まった息子さんは厄介払いではないが、母親に次のもらい手を探したいことを伝えた。

すると、当初はあんなに人形と離れるのを嫌がっていた母親はやっと折れて

「わかったわ、私も老い先短いしこの人形も私より大事にしてくれる人と一緒にいたほうがいいものね」

そう言って、次のもらい手を探そうといくつか人をあたってみた息子さんはあるひとりの人を見つける。

その人は力のある人で人形をもらっても問題ないと言ってくれた。その人の家に行くとたくさんの人形が置かれていた。まるで母親の家のようだと思った。

聞くとどうやらそういった人形をよく預かったり引き取ったりしているらしいこともわかった。事情を説明しても快く承諾してくれた。

そして人形を渡したその日、家を出ようと人形を抱いたその方にお辞儀をしたときに

「ありがとう。いい人に巡り会えた。母親にもおまえにもいろいろ怖い思いをさせてすまなかった。私はここで幸せにこの人と暮らす」

そう聞こえた気がした。

その後母親はみるみる元気になり、久々に人形を見に行くとあのときの怖い顔ではなくやさしい笑みを浮かべていた。

「事情を話してわかってもらえるようにしたから、この子も反省してますよ。ごらんなさい今はもうすっかり邪悪な気もぬけてやさしい心を持った人形です」

そうその人は話した。

「多分思うに、いろんな人のもとを渡るうち邪悪さとかいい加減さとか人の負の面を人形が見るうちに、人形は次第にその心を映したように邪悪な心を持ってしまった結果であなた方を苦しめたのでしょう」

そうその人は言っていた。

母親は八十を迎える間もなく亡くなったが、母親の人形たちはその人のもとで今も幸せにあの六十九体目の人形とともに暮らしていることだろう。



2014年04月26日(土) 21:26
ドクロン2014 ◆d79/amog
※天通の投稿広場より掲載
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