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コメント

[5979]
最近、おかしな夢を見る。
[5947] な…なんだなんだ⁈
本家の奇妙がすっげえリニューアルしてる!

感想やら雑談のコーナーも消えてるし…


天通に直接リンクしなくなってるし


あんまりびっくりしたから場違い米しちまったZE
[5946] 決着
「いてて、ミシシッピワニに噛まれた傷が疼くわ!」
突然、こう発した徳井の一言で周りの空気はガラリと一変した。
みると徳井は顔を通常の二倍程に膨らましたまま胡座をかいて空中浮遊している。
森は万年床の煎餅布団から脱出する為、徳井の喧嘩を素直に買う事にした。
「アーモンドクッキー、アーモンドクッキー」
徳井は既に紫色の光を放ちながら高速回転を始めている。森も負けじと特保のコーラを頭からかぶり高速回転を始めた。
目の前の信号が青に変わり、約二万人のリーマン達がもわもわと恐ろしいまでの煙りを焚き上げながら歩き煙草で物凄い勢いで此方へと向かって来る。
「ケセランパサラン、ケセランパサラン、ビッグバンの端はトップガン!!!」
「歩き煙草だめ!げせぬ!!」
徳井と森は通常の六倍以上に腫れ上がった顔に空気をパンパンに溜め込み向日葵ハム状態。既にいつでも発射OKの状態にあった。

しかし意外にも先に動きを見せたのは森だった。「ボンボヤージュ、工藤静香は勝ち組だ!松本伊代は負け組だ!浪漫飛行、浪漫飛行!!」
周りの大気を揺るがす超真空状態を作り込み、超重量にまで収縮した森が一気に爆発した。そして0、8秒後には二万人のリーマンの内の半分が一瞬で消し飛んでいた。
「前世は金熊、来世は脳リミッター鯨!!年貢と書いてクソと読む!ツッタララー、ツッタララー」
森は自分の成功を祝って自ら優雅な「舞」を踊り始めた。
徳井はスタートに躓き、事務所から出てきたヤクザにボコられている。
森は徳井を鼻で笑いながらも一緒に消し飛ばした足場解体中の鳶工の冥福を、落ちていたシケモクを吸いながらただ静かに祈るのだった。 終わり
[5944]
みんな元気してる~?

今年は夏場にかけて国内でもテロが頻発するから気を付けてね。

原爆ネタで調子に乗ってるラッスンゴレライみたいな奴らがしばらくテレビ賑わせるだろうがそれも秋までだ。

放火、通り魔、強盗、誘拐、具体的に何が起きるか判らないが確実に多発する。

マスゴミを日本人の手に取り戻す為の生みの苦しみってヤツだから身辺警備怠らないようにね。

じゃ奇妙の管理人さん、みんな、さようなら。
[5940] 先生の仕事
本掲載用に投稿してみましたが、更新がありませんので掲示板の方に投稿させていただきます。

今回のお話は「ゆめちゃん」のお話と同じく秋頃の出来事だったと思います。

その日、私は職場の教育係の黒川先輩について、取引先を訪問していました。

そして、前回のお話でも出てきた馴染みの取引先の高遠さんのところを訪れた時のことです。

打ち合わせを終え、帰ろうとしていると事務員の絵梨花さんが近づいてきて、お茶でも飲んでいきませんかと勧めてくれました。

黒川さんは声をかけられてから、腕時計をチラっと見て残念そうに答えました。

「ありがとう、でも次に行くところもあるから、今回は遠慮しておくわ」

「・・・そうですか、残念です」

「そのかわりまた今度一緒にご飯でも食べに行きましょう、ね」

落ち込んだ表情をした絵梨花さんはその言葉を聞いてまた明るくなりました。

「はい、楽しみにしています」

その仲良さげな様子を私は横で見ていました。

「絵梨花さんは本当に黒川さんにベタ惚れですね」

以前、自身が関わる心霊事件をいわゆる霊感のある黒川さんに解決してもらってから、彼女はずっと黒川さんにべったりでした。

「ふふ、ファンなんですよ」

「だから、そんな言い方されるとむずがゆいわよ」

照れたような仕草をしながら、あらためて帰ろうとしていると、入口から高そうなスーツを着た体格のいい老人が入ってきました。

その老人は事務所に居る黒川さんの姿を確認すると満面の笑みを浮かべて近づいてきました。

「おお、黒川さん久しぶりやね、元気にしてるか」

黒川さんもその近づいてきた老人に挨拶をしました。

「はい、お久しぶりです、先生」

黒川さんにつられて私もお辞儀をしました。

「今日はちょっと息子に用事があってな、長話はできないけど、黒川さんはゆっくりしていってよ」

そういうと黒川さんに先生と呼ばれた老人は事務所の奥に入って行きました。

「黒川さん、今の方は誰ですか?」

この事務所の関係者に間違いはなさそうですし、どこかで見たような気もしていたのですが詳しくは思い出せなかったので黒川さんに尋ねました。

「ここの社長の高遠さんのお父さん、先代の社長さんなんだけど、今は息子に社長職を譲って地元の議員さんをしているの・・・あんた自分の地元の議員さんの顔ぐらい覚えておきなさいよ」

「い、いや議員さんなんてほとんど興味を持ったこともありませんし、というかやけに親しそうでしたけど、どういう関係なんですか」

そう尋ねると、彼女はどう説明しようかと考えているようでした。

「・・・一年前ぐらい前だったかな? ここの社長の紹介で交通事故の多い小学校の通学路のことで相談を受けてね、その時からの付き合いよ」

なんだかとても興味深い話でしたが、機会があればまた話してあげるというので、その時はそれ以上聞きませんでした。

「でも、親子で議員と社長ではややこしいですね」

「・・・一応私は高遠先生と呼ぶことでここの社長とは区別してるけど、あんたはもっと注意しなさい」

「・・・あの瑞季さん」

不意に絵梨花さんが黒川さんに話しかけました。

「ん、なに?」

「今、おじいちゃんの後ろの方に変な感じがしませんでしたか?瑞季さんも微妙にお祖父ちゃんの後ろの方を見てましたよね」

絵梨花さんにとっては自分の旦那さんの祖父にあたるので、おじいちゃんです。

そういわれてみれば、地元の議員さんというよりも絵梨花さんの結婚式で見ていたような気がしました。

私は絵梨花さんの言っていることの意味が全くわかりませんでしたが、黒川さんはニンマリ笑いました。

「ああ、えっちゃんも悪念の霧を感じたんだ、ゆめちゃんのこともあって、そういうことに鋭敏になってるのかな」

悪念の霧、今度こそ全く意味のわからない単語が出てきました。

「え、なんですか悪念の霧って、なんだかワクワクするフレーズです」

絵梨花さんの反応を見て、しまったという表情を黒川さんは浮かべました。

「いや、さっきのは忘れて、つい言葉が出ちゃっただけだから」

「ええ、なんでですか教えてくださいよ」

しつこく絵梨花さんが食い下がるので、黒川さんは諦めて説明してくれました。

絵梨花さんと黒川さんが感じたのは他人の嫉妬や恨みの念の集合体で、生霊のように個人だけのものではなく、意識的、無意識的合わせて発生したものだそうです。

黒川さんは政治家や芸能人なんかに付いているのをよく見るらしいのですが、その形象は黒いもやのようなものが集まっているように見え、それを見た時に頭に悪念の霧というフレーズが浮かんだということでした。

「浮かんだ?」

「まあ、嫉妬や怨念の染み出してきた悪い念の集まり・・・なんて後付けで理屈は付けられるわけだけど、たまにあるのよ、ぽんと単語が出てくることが」

黒川さん曰くそういう感じで出てきた単語は後から考えてちょっと恥ずかしいような表現でもそのまま使っているそうです。

「じゃあ、私がおじいちゃんの後ろから感じたのは悪い念の集まりっていうことですか」

「そうね、今はちょっと大きくなっているみたいだけど、あんまり気にすることないわよ」

「え、どうしてですか?」

「普通の人ならともかく高遠先生はいわゆる人間力が強いから、ちょっとやそっとの悪い念では全然影響を受けないわよ」

黒川さんが詳しく解説してくれましたが、今まで数々の修羅場をくぐり抜けてきたせいか、高遠先生はいわゆる持っている気の力が強くて、少々の悪念は寄せ付けないそうです。

「どうしても政治家や芸能人はいろんな人の念が集まりやすいからね」

「じゃあ、大体のそういう人たちはみんないわゆる人間力が強いんですか?」

「う~ん、テレビとか見てたら、神仏的な守護が強い人もいるわね、特に宗教色の強い人は」

宗教と聞いて、そこはなんだか変な話になりそうでしたので、それ以上は突っ込みませんでした。



事件が起こったのはそれから一週間後の夕方でした。

もうすぐ職場の終業時間という時に黒川さんの携帯電話に着信がありました。

彼女が電話に出ると看護師をしている妹の美弥さんからのようでした。

彼女は美弥さんからの話を聞いて顔色を変えていました。

電話を終えて私が尋ねると、先日話しをした議員の高遠先生が交通事故を起こして、救急で搬送されたということでした。

最初、私は妹の美弥さんが救急搬送された患者が自分の姉の知り合いということで気をきかせて知らせてくれたのかなと思ったのですが、違いました。

美弥さんもいわゆる霊感があるのですが、姉の知り合いの患者にとんでもないものが憑いてきているという連絡でした。

連絡を受け、上司に事情を説明してから、黒川さんと私は高遠さんの搬送された病院へ向かいました。

病院について携帯に連絡すると、美弥さんがロビーまで降りてきてくれました。

「もお、お姉ちゃんびっくりしたわよ、あんなヤバイの私じゃ追い払えないよ」

以前お会いしたときは通勤用の普段着でしたが、今回は当然白いナース服姿でした。

細身で小柄な体型の可愛いナース姿はまさしく白衣の天使という表現がぴったりと不謹慎ながら感じてしまいました。

姉の瑞季さんは対照的に黒のスーツでしたので、黒衣の・・・そこまで考えて、怒ったときはちびりそうになるぐらい怖いですが悪魔ではないなと思い、考えるのをやめました。

高遠さんの病室に案内されたのですが、その間に美弥さんは詳しい話をしてくれました。

その日、午前中に美弥さんが病院の廊下を歩いていると、前方から搬送ストレッチャーが動かされてきて彼女の横を通っていったのですが、そのとき廊下の奥から吹き上がるように黒く染まった霧が現れました。

そして、その黒い霧の中からちぎれた泥の塊のようなものがぼたぼたと廊下に落ちて重なっていき、背広を着た男性が形作られ、ストレッチャーの後をゆっくりと追い始めたのでした。

美弥さんはその男性を強い怨念を持った何かとは感じましたが、現実にそこにいる人間ではもちろんありませんでした。

彼女はあわててそのストレッチャーの後を追いました。

ナースステーションで調べてみると、軽い処置の後入院のため個室に入るようでしたので、先回りしてとりあえず病室に簡易的な結界を張りました。

そして、その怨念の男性が部屋に入ってくることは抑えたのですが、入院患者の名前を見て姉の知り合いであることに気づいたということでした。

私達は高遠先生の病室の前に着きました。

ほとんど何も霊的なものは見えない私でしたが、その病室の周りだけなにか雰囲気が違うことはわかりました。

廊下の照明が壊れているわけでもないのに、その個室の周りだけ妙に暗い感じがするのです。

「部屋の壁に向かって、いるわね」

瑞季さんが呟きました。彼女には背広の男性が病室の壁に向かって立っている姿が見えるそようでした。

男性がいるであろう横を通って、私たちは病室に入りました。

中では頭に包帯を巻いた高遠先生がベッドに座っていました。

「おお黒川さん、どうしたんだ、見舞いに来てくれたのか」

突然の来訪でしたが、高遠さんは快く迎えてくれます。

「ああ、災難だったよ、息子は帰ったばっかりで、今は私一人だよ」

事故の状況を尋ねると、息子さんの高遠社長が運転する車に載っていた時に、突然車が滑るようにスリップして、ガードレールにぶつかったということでした。

運転していた社長も左腕に怪我をしたのですが、検査と処置が終わると、仕事があるからということで事務所に戻り、高遠先生は頭を打っていたので、とりあえず一日入院するということでした。

「一人でよかったです、ちょっとお話したいことが」

黒川さんの様子を見て、高遠さんは察したようでした。

「・・・何か変なのがついてきているのかな?」

「はい、たまたまこの病院で看護師をしている妹が機転を利かせて病室に結界を張ってくれているので、病室までは入ってきていませんが」

「生きている奴かな?」

「ええ、生霊ですね、ただしもうこれは念の力が強すぎて呪いに近いです、なにか特別なことをしているのかもしれません。そしてこれは全くの想定外だったのですが、先生の周りの他の悪念も取り込んで力が増幅されています、先生も気づいていたのですか?」

「うん、何か来ているとは思っていたよ、息子の怪我した左腕に掴まれたみたいな傷ができていたからね」

左手に怪我をした高遠社長は手首付近に赤い手形の痣がついていたそうです。そうして左手を何者かに掴まれたから事故を起こしたようでした。

高遠さんは表情をほとんど変えずに瑞季さんに訪ねました。

「顔はわかるかな?」

「はい、年は五十代ぐらいで、眼鏡をかけて髪はオールバック、右頬の所に並んでほくろが二つあります、思い当たる人はいますか?」

「・・・ああ、わかるよ、知ってる奴だ」

高遠さんはそれを聞いて納得した様子でした。

「・・・それで先生、この生霊は本人に返しますか?」

「黒川さんにお願いすればできるのかな?」

「そうですね、ちょっと時間はかかると思いますが、先生さえよろしければ」

瑞季さんは持ってきた荷物の中から呪い返しの用意を始めようとしました。しかし、高遠さんが制止します。

「黒川さんはさっき呪いといったが、その呪いを本人に返すとどうなるのかな?」

「・・・そうですね、周りの悪念も一緒に乗っかっていますから、精神がおかしくなるか、身体を壊すか」

「・・・人を呪わば穴二つか」

高遠さんは私でも知っている有名なことわざを口にしました。

「そうです、この男は先生を呪った時点で自分の墓穴をまず掘っているんです」

そこまで話を聞いて、高遠さんは少し考えていましたが、すぐに口を開きました。

「うん、黒川さん、今回のことは私に任せてもらえるかな、生霊の力は本人の恨みが解消されたら弱まるんだろう」

「え、ええ、それは、そうですが・・・」

「黒川さんの気持ちはよくわかっているよ、でも、これは私が蒔いた種でもあるんだ。政治の仕事だからね、皆にいい思いをさせることはできないし」

そこまで言ってばつが悪そうに続けました。

「それが仕事はいえ、悪いこともしているんだよ」

そう微笑むと高遠さんはお見舞いのお礼を言って、もう帰るように促しました。

そこまで言われて帰らないわけにもいかないので、帰ることにしましたが黒川さんは何かあったらまた連絡をくれるようお願いをし、高遠さんは了解しました。

私たちが病室から出て行くとき、高遠さんは携帯電話を取り出して早速どこかに連絡しているようでした。


帰りの車の中、私は黒川さんに先ほどのことを話しかけました。

「びっくりしました、いきなり悪いこともしているって告白されて、すごく誠実そうな方なのに」

私の感想を聞いた黒川さんは特に表情を変えずに外の景色を眺めていました。

「そりゃ、私にもよくわからないけどいろいろあるんでしょう」

確かに政治の世界のことなんて、地元の議員の顔も知らない私がとやかく言う事でもないのかもしれませんでした。

「まあ、でも、悪いことをしているとしても、それを認識してやっている分だけ、先生は大事なことを分かっているわよね」

「・・・? どういうことですか?」

「だって、悪いことをやっていてもそれを悪いとも思わないとか、自分は選ばれたものだから何をやっても許されるって考えている政治家の方がよっぽどタチが悪い気がしない?」

笑いながら話す彼女の言う政治家像を思い浮かべて、私は寒い気持ちになりました。

その後、生霊の送り主との交渉がうまくいったのかどうかはわかりませんが、高遠先生は何事もなく無事退院しました。
[5939] 祖母のおまじない
地方住みなんですが、祖母はいつもへんなおまじないを唱えます。
いやなことがあると、
「フユカワコロベ、フユカワコロベ!」
他人に悪意を抱きそうになったら、
「フユカワコロベ、フユカワコロベ!」
何かいやなことがあったら、必ずこういいます。
フユカワはこの土地の化け物の名前で、すべての悪や呪いを引き受けて
代わりに不幸になってくれる、そういう不思議な存在なのだそうです。
もっともいやなことがあったら、
「フトノウヤ、クロシテユロクブ、フユカワフユカワ!」と
本当にわけの分からないおまじないを祖母は言います。
効果があるかどうかわからないけど、「フユカワ」」が一身に不幸を引き受ける
そうで、祖母はもう90を越えていますが健康です。
ちなみに、一毛の尻と呼ばれるこの土地には流行の名前の「フユカ」は一人もいません。なぜか早死にするから。
[5896] 地獄逝き
新大阪田久死ー
41ー47
地獄へ堕ちる
[5856] 半裸の女
相変わらず、ロビンさんの作品には魅せられます。文章に無駄がなく惹き付けられます。終わり方が文学的でいいですね。怖面白かったです。

一つ言わせていただくと、あまりブスブス言われると、ちょっと…。……と、顔はブスでも心は超美人な私が通りますよっと。
[5855] 半裸の女
いかれてんじゃん…ブス以前の問題ワラワラ
[5854] 半裸の女

やあロビンミッシェルだ。

この世で本当に怖いのは、幽霊では無く人間だとよく聞く昨今、龍が実際に体験した恐ろしい実話をここに綴ろう。

時は先週の深夜二時頃、コンビニで煙草を買った帰り道にそいつはいた。

ハリセン○ンの痩せてる方に激似な女が一人、下着姿で神社の駐車場に突っ立っていた。手にはアイスピックのような光る物を掴み、足元には白く小さな塊が幾つか転がっているのが見えた。

龍は馬鹿なので話のネタになるかと思い遠目から写メを撮ったり、「バーカ♪ブース♪」などと言いながらからかっていたら、当然ながらそいつは奇声をあげて猛然と追いかけて来たと云う。

真っ暗闇から物凄い勢いで走り寄ってくる真っ白な半裸の女は正に異様度と共に危険度MAX。

ビビビと全身に鳥肌が立った。

全速力で逃げる龍。

女「うわおああああわあはああおわああああおあああ!!」

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた!!

逃げ足なら関西で五本の指に入ると言われた龍が本気の走りを見せても、背後から聞こえるそいつの奇声と足音は一定の距離を保ちながら一向に離れる気配がない。

女「まあてえええあああわおわああああおあああ!!」

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた!!

涙と涎、鼻水と糞尿を垂れ流しながら必死で逃げるも、普段の素行の悪さに神が味方してくれる筈も無く、国道を走っているにも拘らずすれ違う車は愚か、走れども走れども通行人とさえ出会わない。

やむなく龍は雲をも掴む気持ちで振り返らずに後ろを走る女にこう叫んだ。

「 さっきのは嘘!嘘!君は可愛い!び、美人だ!色っぽい!スリムで知性を感じる体をしている!(意味不) 君に何があったのかは知らないがこんな事は今すぐやめてモデルにでもなった方がいい!そ、そうだそれがいい!君は… 」

ズザアアア!!!

ここまで言った所で遂に龍は足をくの字に捻りすっ転んでしまった。

「 痛えええ!折れた!!!」

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた…ぺた!

受け身が取れずに見事顔からアスファルトにダイブした龍だったが、すぐ隣りに立っているアイスピック女への恐怖心の方が強く、意識はそちらに向けたまま最終手段「死んだふり」を決め込む事にした。

「 ………… 」

「 ねぇ…ほんと?」

女が話し掛けて来た。

「 ………… 」

「 ねぇ… さっき言ってた事って…ほ、ほんとなの?モデルがどうとか…本心なの…?」

「 ………… 」

龍は死んだふりをしている事を忘れて目を瞑ったままうんうんと頷いた。

「 こんな…私が…美人…?それほ、本気で言ってる…の… 」

龍は死んだふりをしている事を忘れて下を向いたまま寝言っぽくこう言った。

「 ま、間違いない!き、君は間違いなく美人だ!言うなれば原石。君はまだ自分の魅力に気がついていないだけで世界は君のような次世代の美人を待っているんだ。大丈夫!君は可愛い!もっと自信を持って!」

「 ほ…ほんと…?私が…美人…ひ…美人、美人、美人… 」

女は信じ始めているようだ。

龍はここがチャンスとばかりに畳み込む事にした。

「 あ、当たり前じゃないか!俺は嘘は言わない!君は絶世の美女だ!君に比べればオードリーなんて糞だ!いや生ゴミ以下だよ!あの石原さとみでさえも君には勝てない!す、少なくとも俺は君の様な女性は好きだ!」

龍は意を決して顔を上げた。

「 ………… 」

しかしそこには龍の顔を覗き込む絶世の糞ブスがいた。

近くで見ると見るに耐えない顔だった。ハリセンボ○の細い方が天使に見えるぐらいの糞ブスだ。

前歯は神経が死んでいるのか真っ黒になっており、その口から発せられた次の言葉に龍の脳は完全に停止してしまった。

「 じゃ、じゃあ…あたしと…付き合ってくれるの…あたしと… 」

「 ………… 」

「 あ、あなた言ったじゃない…あたしの事…すきだって…」

ブルブルと震える手で鼻先に尽きたてられたアイスピックの先端を見ながら、龍は死を覚悟して顔を横に振った。



肩を揺すられて目を醒ますと警察官が立っていた。周りを見渡すもあの糞ブスの姿は見当たらない。

「 た、たた、助かったのか?」

とりあえず事情を説明した後、警察官と共に先程の神社の駐車場に戻ってみると、最初あの女が立っていた場所には白い子猫の死骸が幾つも転がっていた。

龍はえづきながらもその亡骸を一つ一つ丁寧に埋めてやったと云う。





龍はグラスのビールを一気に飲み干し深く溜息をついた後、遠い目をしてこう語った。

「 喚きながら追いかけて来るアイツはマジで半端なく怖かったすよ!一歩間違えていたら俺絶対に殺されてましたからね!あんなとんでもねぇブス見たの生まれて初めてだったんすけどなんでか微妙に顔が思い出せないんすよね… 俺夢でも見てたんすかね?でもまぁアイツに比べれば幽霊なんて可愛いもんすよ!」

「 はは、お前ちょっと言い過ぎだろ?幾ら精神逝ってる女だからって糞ブス呼ばわりはちょっと酷すぎんぞ、だからお前はモテねぇんだよw 」

「 いや、兄貴マジなんですって!」

カラン♪

鈴の音と共に焼き鳥屋の自動ドアが開いた。

「 いらっしゃいませーー!お一人様ですか?カウンターへどうぞ!」

威勢のいい店主の声が狭い店内に響く。

龍と共に無意識にそちらへと目をやると、サイズの合っていないブカブカのトレンチコートを来た女が一人、入り口付近に突っ立って此方を見つめている。

前髪パッツンの腰まで伸ばした黒髪。頬は痩け焦点が合っていない。肩が微妙に上下している。震えているのか?なんか笑っている様にも見える。

そして何故かその女は店主の誘導を無視してゆっくりと此方へと近づいてきた。

「 …あ、兄貴…」

龍が女を見ながら震えている。

ぺた…ぺた…ぺた…

よく見ると女は靴を履いていない。鉛色の血色の無いその顔は喜怒哀楽を無くしたかの様に完全な無表情で、真っ直ぐに龍だけを見つめている。

しかし何よりも一番の驚きは、今までの人生で出会った事が無い程の宇宙規模の糞ブスだと云う事だった。

ぺた…ぺた…ぺた…

女は固まる龍の両肩にそっと手を置き、耳元に顔を近付けてこう囁いた。

「 …ねぇ… 」

「 あたし…本当に…綺麗? 」


俺は足元に置いてある空になったビール瓶をそっと掴んだ。


【了】
[5743] 満員電車
千葉県U市から東京都N区迄走る、東京メトロT西線を、私はベストオブ満員電車だと思います(K場町から西はそうでも無いけど)。

朝の通勤ラッシュの凄まじさは、本当に筆舌に尽くし難いです。
高校時代、T西線で通学していた子とお弁当を食べていた時、彼女が煎餅を食べているのかと思ったら、ラッシュ時に潰されたおにぎりだったと知って大笑いしたものでした。

私も一時期、通勤に利用していた事がありましたが、とにかく一瞬でも躊躇したら乗れないのです。毎日が戦争でした。

本当に、人と人との間に隙間が全く無い…老若男女がぎゅうぎゅうと、おしくらまんじゅう状態です。
最近は“女性専用車両”が出来たそうですが、果たして効果はあるのでしょうか。


あれは、まだ前世紀の今頃の時期だったでしょうか…
私は、乗り換え駅の関係で一番混む、最後尾の車両に乗っていました。
真後ろにいる男性が呼吸する度に収縮する、お腹の動きがモロに背中に伝わってきます。
いえ、別に痴漢ではありません。それくらい密着せざるを得ない状態なのです。

あれだけの混み方では、却って痴漢もできないと思います。それでも知人の男性は、誤解されないように、常に両手を頭上に差し上げて乗車すると言っていました。男は辛いですね。

その時…
ドア側に立ったサラリーマンが、突然

「…お〝ぇ…」

小さく声を挙げました。

え?…エヅいてる⁉︎

「…おぅぇ…うう…」
「………」

次の駅迄はまだ間があります。幸い私はドアからはちょっと離れていましたが、彼の近くに立つ人々は、きっと生きた心地がしないでしょう…
静かな、パニック…ふと見ると、エヅいているサラリーマンの周りに、30cmくらいの隙間が出来ていました。

これほどの混みようでも、まだ隙間が出来る余地がある事に、私はひどく感心しました。


それから暫くしたある日。
T西線は、混雑する上に出口が左右頻発に替わるので、利用者が少ない駅で降りる時は苦労します。
何しろ、降りる人の為に一旦ホームに出たら、再び乗れなくなってしまうかもしれません。
それでなくても、通勤時間の人々の人情なんて、オブラートの様に薄いもの…
“降りれないなら、次の駅から折り返しな”的な、暗黙の了解があるのです。

その時、

「通してくれ!…吐きそうなんだ!!」

切羽詰まった男性の声が響きました。

乗客たちはワタワタと飛び退き、その男を車内から押し出しました。

と…ドアが閉まった時、降りた男性が勝ち誇ったような顔で笑い、悠々と歩いて行くではありませんか。

私の隣に、いかにも柄の悪い若者が二人(当時の言葉で言えば、チーマー風)、立っていたのですが、彼らが舌打ちして呟きました。

「…あいつの面…覚えたか」
「ああ」

その言葉を聞いた人は、きっと皆

“あの男、狩られるな”

…と思った事でしょう。


まあ、私も先程のパニックの際に、下ろしたばかりのストッキングを蹴られて破られたので、心密かに

“…やっちまえよ”

と思った事は否定しません。はい。

[5512] 昔のテレビ番組
未だ地デジ対応していない為、テレビを見なくなって久しい。
以前は別に見なくても、取り敢えずスイッチは入れていた生活だったから
変われば変わるものだ。

だから最近はどうか知らないが、私がまだテレビを見ていた頃には、放送規制だとかであんまり際どい映像は流されていなかったと思うんだけど…昔はかなりエグい内容のものを、ゴールデンタイムで流していた。

もう、四十余年前。多分『ウィークエンダー』的なワイドショーだった。
当時私はまだ幼児だったが、かなりショッキングな事件を取り上げていた。
酒乱の父親が暴れて、三人の我が子を死傷させたのだ。

それだけなら、今でも良くある猟奇事件だけど、番組では騒ぎを聞いて駆けつけた人が撮った写真を、モザイク無しで映したのだ。

…中央に、興奮して腕を振り上げている父親。その足で踏みつけられている、ぐったりした12〜3歳の長女。
片側に立っている10歳くらいの坊主頭の長男は、何と頭に深々と裁ち鋏が突き刺さり、顔面が血で真っ黒(白黒写真だった)。
もう片側には3歳くらいの次女が、半裸の姿で泣きながら手を差し伸べている…

しかも番組は、その四人の表情を、一人一人アップで映した。

確か、長女が死亡。長男重症。次女軽傷…と報告されていた。


やはりビジュアル的に、亡くなった長女よりも、鋏が突き刺さった長男の姿がショックで、暫く母の裁縫箱に入っている裁ち鋏を見るのが怖かった。
でも今は、軽傷と報告された次女の精神的外傷の方が気掛かりだ。
生きていれば私とほぼ同年代…幸せになってくれていると良いが。


この他にも、コンクリートで固められた屍体とか、首吊り自殺の後だとか…その頃の番組で見てしまった記憶がある。それくらい普通に、お茶の間に流れていたのだ。

今は童話の結末なんかも、子供達への悪影響を考えてより柔らかい表現に改ざんされているらしいけれど…

あんな番組を目の当たりにし、残酷な結末のままの童話を読んでいた私は、やはり危ない人間なのだろうか…別に選んで見ていたわけじゃないんだけど。


新年早々、不快な話をすみません。
[5373] 久しぶりに書きました。
苦狂日記 叫びの詩の続きになります。
今回もなるべく、実体験や本当にあった出来事や事件等を参考に書かせてもらいました。
上手くまとめられず、グダグダになってしまった感じがありますが、読んでくれたら嬉しいです。
そして今回で完結と言ってましたが…
終わらせる事ができずに続いてしまいました。
スイマセン
[5372] 苦狂日記 滅びの詩2
平成23年11月14日(月)

また処分した陽子の日記が戻ってきた
シュレッダーで細かく切り刻んで、念入りに燃やしたというのに…
また綺麗な形になって玄関先に置いてあった
私頭おかしくなったのかしら?
薬なんてやってないのに…
それとも本当に陽子の呪いだというの?
処分しても戻ってくるなら、押入れの奥にでも隠しとくわ
私は念で人を殺せるのよ
こんな呪いなんかに負けないわ


・・・・・・・・・・・・・・

人間って恐ろしい生き物ですね。
自分の欲望を満たす為なら何だってできるのでしょうか?
しかも人前では平気な顔で生活してる。
バレなければ罪にはならない。
本当にそう思ってる人は沢山いるんでしょうね。

でも日記を処分しても戻ってくるというのは、なんなのでしょうか?
本当に陽子さんの呪いなのでしょうか?
人を呪わば穴二つ…
結果二人とも亡くなってる訳ですから、これが呪いだとしたら成功したのでしょう。
でも本当に強い念や呪いで人を殺すことなど可能なのでしょうか?

昔から五寸釘を藁人形に打ち付ける呪いの方法が有名ですが…
あれはどういう意味で藁人形になったのでしょうか?
そして何故五寸釘なのでしょうか?
私はよくわかりませんが、いずれにしろ強い恨みの念が呪いには必用なのでしょう…
呪いって人の念そのものかもしれませんね。

そして呪いってやる方も苦しいからやるんだろうし、その姿はもう狂人そのものなのでしょう…
呪いって苦しくて、狂しいものなんでしょうね…

陽子さんの念は凄い強いものだったのかもしれません。
時折、朱美の日記に呪いのように書かれた詩がありました。
そして、朱美はこれが原因か判りませんが、苦しみ狂っていったのです…


―村瀬朱美の日記―

『哀れな心…
時の流れは早く簡単に忘れ去られる
もがきあがいてもとどかない…
歪んだ時間は黒い灰に紛れ人々を盲目に誘う
誇りを被った人々の心
払っても直ぐに汚れてしまう愚かな常識
どれだけ血が流れれば…
どれだけ涙を流せば
振り向いてくれますか?
望むなら夢を棄てましょうか?
それとも太陽でも掴んでみせましょうか?
人々は自分を暗号化し
時代に浸透させ生きていく
そのまま消えて無くなるというのに…
敷かれたレールの上で洗脳され
叫び声も聞こえなくなる
そんな時代は楽しいですか?
本当の自分でいられますか?
それでも時は暗号化を望んでいるというのですか?
何も変わらない
心を失っても…
自分を失っても…』


平成23年12月17日(土)

また勝手に詩のようなものが書かれていた
しかも今回は意味がわからない
これが陽子の詩だとするなら、世間への訴え?
アホらしい…
陽子は時代の流れについていけなかったのよ
ただの世間知らずの敗者
どんなに泣こうが、叫ぼうがあなたの声はもう届かないわ…


平成24年2月10日(金)

最近先生の様子がおかしい…
私を避けてる?
まさかね…


平成24年3月20日(火)

最近本当に源教の様子がおかしい…
先生もあまり会ってくれなくなった
気のせい?かな…
多分気のせい
私は先生の切り札
源教の隠し球


・・・・・・・・・・・・・・

人を殺しておいて、平然と生活を送ることって可能なのでしょうか?
日記や、一緒に過ごした時間から朱美の人生の全ては知ることはできませんが、育ってきた環境、不思議な力、そしてその力を利用しようとした人達のせいで、彼女は変わっていったのではないでしょうか?
もし一つでも欠けていたなら別の人生があったのかもしれません。

これが彼女の運命だったのでしょうか?
日記には彼女が利用され、恐れられ、最後には誰からも救いの手が差し伸べられなくなる姿が綴られていました。
それはとても悲しく、辛く、寂しいものだったと思います。
自業自得だったのかもしれません。

彼女の日記には、誰にも相談などできない辛さが書き記されていました。


―村瀬朱美の日記―

『私は今十字架にかけられ裁きの時を待っている
ねぇ……私は何か悪いことをしたかしら?
貴女は虚構と偽りの仮面を被り
人に寄生する
もう戻れないと解っていながらも…
でもそれは貴女が望んだこと
見て今の自分を…
醜悪なその素顔は満足感に満たされ
足元には骸が転がっているの
まだ楽しむつもり?
仮面を脱いでみなさいよ
脱げないなら私が脱がせてあげる
素顔で見る世界は素敵で残酷なもの
遠慮なんていらないわ
思いっきり苦しみの時間を楽しみなさい』


平成24年6月3日(日)

また不気味な詩が…
今度は私を呪うつもり?
冗談じゃないわ
あなたが世間知らずだから、あなたがバカだから騙されたんじゃない…
呪うなら自分のバカさ加減を呪いなさいよ


平成24年6月21日(木)

最近、陽子の存在を感じる
突然アーちゃんと呼ぶ声が聞こえたり、日記を書いていると日記帳の上に、黒い長い髪が落ちてくる
払ってもまた落ちてくる

私の髪は茶色く染めてあるし、長さも違う…
しかもアーちゃんなんて呼ぶのは、あの親子以外いなかった…
近くに陽子達がいるとでもいうの?


平成24年7月3日(火)

今日、先生からある老人夫婦を紹介された
今度はこの夫婦から金を取るつもりらしい…
いつも実行するのは私
先生は源教の顔、手を汚すのは私達裏方の人間
最近、先生の傍らに女がいる
あれは誰?
最近よそよそしいのはその為?
私には飽きたってこと?
いいわ…
誰であろうと私の幸せを邪魔するなら、潰してあげる


平成24年7月30日(月)

最近疲れてる?
たまに幻覚を見る
これは陽子の呪い?
どっちにしろ最近ハードな毎日だったから、どこかで少し休暇をとろうかな…


平成24年8月14日(火)

久しぶりに日記を書く
入院してた
私が倒れて入院なんてね…
結局、過労と診断されたけど、医者もハッキリした原因はわからないみたい
確かに色々あって疲れてた
入院中、お母さんがお見舞いに来てくれたのは嬉しかった
考えたら、私のことを本気で心配してくれたのは、お母さんと絵理子くらいしかいなかったような気がする…
しばらく仕事は休もうと思う


平成24年9月20日(木)

考えたらもう、後戻りできないところまで来てしまってるのね…
陽子達を死に追いやり、沢山の人を騙し、幸せを奪ってきた
神になったつもりだったのかしら?
どちらかと言えば悪魔の方かもね…
でももう後戻りはできない
私の幸せの為
もう誰にも相談なんてできない


・・・・・・・・・・・・・・

彼女の幸せとは何だったのでしょうか?
お金でしょうか?
それとも別のものでしょうか?
誰にも相談できないことを抱えて、いつも何かに怯えて生きる。
これが彼女の求めた幸せなのでしょうか?

私には理解できませんが、彼女には彼女の考えがあったのでしょう。

私は普通の生活で充分幸せだと思います。
特に主人が難病に侵され、ほとんど寝たきりの状態になってしまった今、本当にそう思います。
普通って幸せなんです。
普通に生きられることが…

朱美も学生の時はそう思ってたかもしれません。
よく、普通っていいなぁ……
普通の家庭に産まれたかった、と言っていましたから……

普通って難しいものなのかもしれませんね。
普通を保つ大変さ……
私には解るような気がします。

人は欲望の塊…
弱い生き物です。
普通を簡単に壊してしまう…
そして後悔する。
戻らない普通に…
戻らない時間に…

平凡な生活を求めていた朱美は、どこにいってしまったのでしょうか?
日記の中の彼女は、普通とはかけ離れた生活を送っています。


―村瀬朱美の日記―

『その目 その顔 その心 その存在
全てが憎い
涙を流して喜ぶでしょうね…
丁寧にじっくりと汚した私は憐れでしょう
平凡という名の小さな夢が、叶うと勘違いしてた私は無様でしょう
今直ぐその心臓を喰い千切って私を浄化したいわ

貴女の心から生まれた私の意志は
餓鬼そのもの
恐怖を喰らっても喰らっても
満足できないの
どこから殺してやろうかしら?

不快な痛みを奏でる様を
心ゆくまで味わってあげる
狂気の深い海に落ちていく様を
心ゆくまで味わってあげる
それでも満足できないわ
貴女の心が餓鬼そのものだから……』


平成24年10月20日(土)

また詩…いい加減にして
あなたが死んでもう一年くらい経つのよ
もう諦めて、あなたが敗者で、私が勝者
弱肉強食って言うでしょ
あなたは人生の敗者なのよ

最近本当に幻覚と幻聴がする
疲れてる訳じゃないのに…
しかも先生はあの女にべったり
私はどうでもいいの?
イライラする…
私は先生の為、源教に尽くしてきたじゃない


平成24年11月30日(金)

ついに陽子達の遺体が発見されてしまった
自殺で処理されたから良かったけど、さすがにドキドキした
自分が殺した人達の葬儀に出席するって不思議な気分
葬儀の最中、陽子達を何度も見たような気がする


平成24年12月3日(月)

先生に遺体が発見されたことを報告したら、興味がない返事をされた
その件は全部お前に任せたはずだ、だって…
金さえ手に入れば後は人任せ?
あの女は今日も先生の近くにいた…
でもあの女…
何処かで見たことがある…
誰だっけ?思い出せない…


平成24年12月31日(月)

今年ももう終わり
色々あった一年、結構大変だった

最近、幻覚と幻聴に加え、頭痛と目眩がしてきた…
人がいないのに、家の中に人の気配を感じる
悪夢に魘されることも多くなった
首を絞められる夢、自分の体が腐っていく夢、八つ裂きにされる夢
どれも怖くて不気味
陽子達の呪いが私を侵食してきたのかしら?


平成25年2月1日(金)

老人夫婦から、かなりのお金を奪った
また殺せと言ってきた…
口で言うのは簡単
殺す方の身にもなってほしいわ


平成25年2月10日(日)

先生が薬をくれた
栄養剤みたいな物だと言っていた
最近の私を見て、心配してくれたみたい
やっぱり私のことを思ってくれていたんだ
少し元気がでた
やっぱり先生の薬は効く
今なら何でもできそうな気がする…
幻覚も幻聴もない
頭痛も目眩もなくなった
久しぶりに体調が良好だ


平成25年3月1日(木)

家を建てることにした
私のマイホーム…
お金はある、豪邸を建ててやる
新しい家で優雅な暮らし
信治に保険をかけて殺し、家の支払いに回そうかな(笑)


平成25年3月19日(火)

押入れの中にあった、陽子の日記の位置がずれていた
信治に聞くと、息子の信昭じゃないのか?と言っていた
どうやら、新築の家を建てる前に、家に残ってる信昭の私物を自分のアパートに持っていけと言ったらしい…
もし、信昭が陽子の日記を見ていたら大変なことになる…
なんとかしなければ…


平成25年3月22日(金)

信昭のアパートに行ってきた
信昭は私の顔を見た途端、挙動不審になった
やはり怪しい
陽子の日記を見た可能性がある
もし見ていたとしたら…
警察に出される前になんとかしなければ…


平成25年3月28日(木)

久しぶりに力を使った
意識を集中し、強い念を信昭の所に送った
やはり信昭が陽子の日記を見ていたことが分かった
しかもデジカメでその内容を写したことも分かった
なんとかしなければ…
次に念を飛ばす時
一気にやってしまわなければ…


平成25年4月2日(火)

日記のデータが入ってた信昭のPCと、デジカメを意識を飛ばし、念の力で壊さしてもらった
これで信昭の方は大丈夫だろうか?
意識を飛ばした時、見慣れない男が信昭と一緒に日記を見ていた
信昭の友人か?
こいつも調べてなんとかしなければ…
こんなことになるなら、信昭がまだこっちの家に居る時に、洗脳しておくべきだった
日記のデータがなくなったからといって安心はできない
やはり信昭をだまらせるか…


平成25年4月4日(木)

信昭に薬を栄養剤と言って飲ました
何の変哲もないネックレスをパワーのある御守りと言って渡した
後は狂っていくのを待つだけ…
問題は信昭と一緒にPCを見ていたあの男…
今度信昭に会った時、それとなく聞いてみるか
あと一応、信昭をセミナーに出席させよう


平成25年4月6日(土)

今日、高校の時の同窓会があった
皆、オジサンとオバサンになってた…
絵理子に久しぶりに会えた
絵理子は何も変わってない…
逆に私が変わり過ぎたのか…
楽しかった
久しぶりに笑った
あともう一つわかったことがあった
あの女…優花だった…
まさか高校の同級生が、先生の新しい女だったとはね…
どうりで何処かで見たと思った訳ね
すっかり変わってしまっていたから判らなかったわ…


・・・・・・・・・・・・・・

朱美は自分の邪魔になる人間は、誰彼構わず薬物を使ったり、不思議な力で次々に排除していったようです。
もう自分のことしか考えられなかったのでしょう。

そして意外でした。
高校の同級生の優花が朱美と同じ宗教に入っていたなんて…

学生の時の優花はクラスの中でも目立つ存在でした。
勉強も運動もできて、その上美人。
男子からもかなり人気があったように思います。
そんな彼女が何故あんな宗教に入ったのでしょう……
解りませんが、彼女は朱美の死について何か知っていたんだと思います。
というのも、朱美の死を一番最初に教えてくれたのは優花からのあの電話でした。

今考えると、彼女が朱美の死を知っていたというのが不思議なんです。
朱美から優花の話など一度も聞いたことがありません。
高校の時も仲が良かったようには見えませんでした。

しかもあの電話の後、優花からしつこいくらい、日記について聞いてきたのです。

私は聞かれても適当なことを言ってごまかしました。
朱美の日記には、優花のことが色々書かれていて、その内容が信じられないものだったからです。

優花の表の顔は薬剤師だったようです。
薬の知識は豊富。教団で使われていた薬のほとんどが優花の指示で仕入れられ、それを先生のパワーが入ってると言って信者達を騙し、売ったり、与えていたということだったようです。
その薬の中には法律で禁止されてる物も沢山あったようでした。

朱美も先生から薬を渡され、飲まされています。
もしかしたら朱美は自殺ではなくて、殺されたのかもしれません。

薬物でまともな判断をできなくし、精神的に追い込んで自殺させた。

そしてそのことについて、仲の良かった私が、何か知っているかもしれないと思い、探りをいれてきた。

そうとは知らずに、私は優花に朱美から日記が送られてきたことを喋ってしまいました。
その日記に朱美の死や、教団内の優花について、何か書いてあると思ったのでしょうね。

彼女は何度も電話で聞いてきたり、自宅にまで来て、日記を見せてと言ってきました。
あまりにもしつこいので、井上陽子さんの日記の教団とは関係ない部分を見せ、全然知らない人の日記が入っていたと言って誤魔化したこともありました。

それからはあまり聞いてこなくなりましたが、その代わり真輪光教会の人間を使って、私をストーキングし、見張るようになったのです。

そこまでしてくるということは、やはり送られてきた物が気になったのでしょう。
朱美の死や優花の正体が解ることが日記に綴られてると思ったのでしょうね。

そしてその送られてきた日記の中には、私にとって、かなりショックなことも書かれていました。


―村瀬朱美の日記―

平成25年4月12日(金)

信昭からあの一緒にいた男の話が聞けた
名前は古田貴則、絵理子の旦那と同姓同名…
しかも年齢も同じだし、住所も絵理子の家の辺り…
まさかね……


平成25年4月13日(土)

信昭に教えられた住所に行くと、マンションがあり、そこの駐車場には絵理子の車があった。
世間って狭いかもね…本当にあの男……
絵理子の旦那の可能性が高くなった…


平成25年4月15日(月)

古田貴則のマンションに意識を飛ばした
そこには絵理子がいた
やはり古田貴則は絵理子の旦那だった
でも、旦那の姿はなかった
念を送り、日記のデータが入っていそうなPCを壊させてもらった
旦那の方もなんとかしないといけないが、今はこれ以上何もできない…
また今度にしようと思う


平成25年4月23日(火)

信昭はもうダメね
完全に頭がイカれてしまった
薬強かったかな?

それよりも最近、私の身体の調子がおかしい…
先生の薬のせい?
まさかね……


平成25年4月30日(火)

信昭をとりあえずアパートに戻した
会社も辞めさせた
しばらくはアパートで様子を見て、ヤバそうなら源教の施設にぶち込むか……
あとは、古田貴則をなんとかしなければ…
優花の存在も気になる…


平成25年5月28日(火)

信昭を源教の施設にぶち込み、アパートも引き払った

最近本当に身体が辛い
幻覚や幻聴も前より酷くなってきてる
本当に大丈夫だろうか?
先生の薬も効かなくなってきた…


平成25年6月6日(木)

久しぶりに絵理子から電話があった
どうやら古田貴則が夜中に痙攣を起こし、救急車で病院に運ばれ、そのまま入院したらしい…
原因は不明
毎日、念を送った効果がやっとでてきたか…
なかなか精神的に強い男だったかもね
殺すことも可能だが、絵理子の旦那だ…
それは勘弁しておいてあげる……
それよりも今は自分の身体が心配だ…


・・・・・・・・・・・・・・

まさか主人の原因不明の痙攣が、朱美の不思議な力によるものかもしれないなんて、微塵も思いませんでした。
というか、本当に朱美の不思議な力で、主人はこんな身体になってしまったのでしょうか?

確かに朱美の日記に記されてる通り、家の中で誰もいないのに、人の気配を感じ、触れてもいないのに音を立ててPCが壊れることがありました。
それも朱美の仕業だったなんて…

しかもこの件に、主人が関わっていたなんて思いもしませんでした。
主人はあまり余計なことは言わない性格です。
主人から陽子さんの日記について、一度も聞いたことはありません。
信昭さんも同じ会社の後輩っていうことは知ってましたが、それ以上は知りませんでしたし、まさか朱美と関係があるなんて全然わかりませんでした。

私に余計な心配をかけたくないと思ったのでしょうか?

痙攣が起きる前までは、真面目に働き、仕事もほとんど休んだことはありません。
難病を患って、痛みのない日はなく、辛く大変な毎日だったというのに…

大変でしたが、幸せだったように思います。

そんな主人が今ではほとんど寝たきりの状態です。
無理をしていたのかもしれません。
でも普通に働き、普通に生活をする。
当たり前のことかもしれませんが、幸せだったんです。

痙攣の原因が、本当に朱美の力によるものだったならば、私は朱美を許しません。
ですが、そんな朱美の性格を、歪ましてしまった原因の一つが私にあるならば、とても複雑な気持ちなのです。
主人には何の罪もないだけに、本当に悔やまれます。
まさかこんな形で私に返ってくるなんて……

私には宗教というものが解らなくなってきました。
私が信じるものは正しいのでしょうか?
祈り続ければ幸せに近づくのでしょうか?
ですが、今の私には祈ることしかできません。
少しでも幸せに近づくように……

朱美も最初は幸せになる為に宗教に入信したはずです。
ですが、日記の中の彼女からは幸せを感じられません。
毎日何かに怯え、日に日に窶れていく姿が日記には記されています。

そして最後には、焼身自殺……
彼女は人生の中で、幸せを感じる時間はあったのでしょうか?
いったい彼女は、何を考えて生きてきたのでしょうか?
真輪光教会という宗教に何を求めたのでしょうか?
未だに何も解りません……

優花もそうです。
彼女も真輪光教会に何を求めたのでしょう…
私から見ればこの宗教は狂人の集まりでしかないように見えるのです。

先生と呼ばれる教祖、人道光照。
彼は何者なのでしょう?
セミナーや会合を開き、薬や奇妙な儀式で信者達を洗脳していったといいます。
金と人を集め、何をしようとしていたのでしょう?
自分の欲の為?
それとも人の支配でしょうか?

そんな宗教に狂わされていった人達……
その人生は皆、壮絶なものだったのかもしれません。

朱美のように、辛く悲しい人生があったのかもしれません。
日記の中の朱美のように……


―村瀬朱美の日記―

『身体が腐っていく
心が腐っていく
涙が滲み
強い苦しみが思いの中で木霊する
冷たい感情の中を歩き
記憶を引き摺るのはもうたくさん
貴女の恐怖を見ているだけで 破壊に狂える今の私は
夢を見ることさえくだらなく感じるの…
さぁ 教えて
貴方の時間は意味があるの?
貴方の命に意義はあるの?
果てることのない歪みの叫びは私を救えるの?

違うと言って
違うと言ってよ
こんな淀んだ血の流れに自分を止められないなんて…
心を剥ぎ 痛みを毟ることの快感
怯え震える眼は
鏡を見ているだけと気付いたわ
込み上げる悲しみに揺さぶられる度 反吐が出るの
現実と幻を彷徨い 滅びの時を歩くのも悪くないでしょう?
さぁ 教えて
貴女に意味はあるの?
私に意味はあったの?』


平成25年7月11日(木)

まただ…また詩……
消しても、ページを破いても、気付いたら新しい詩が次々に書かれていく
気が狂いそう…
これが陽子、あなたの呪いの力なの?
それとも私が狂っているの?
わからない…
何もわからない…
私はどうしてしまったの?
全てあなたの呪い?

まともに過ごせる時間が少なくなってきた
頭痛に目眩、吐き気に震えが止まらない…
幻覚に幻聴もひどい


平成25年8月9日(金)

仕事も家事もできなくなってきた
信治のことも面倒になり、薬の量を増やし、源教の施設にぶち込んできた
金はあるし、しばらく一人でゆっくり暮らそう

平成25年8月19日(月)

先生が様子を見に来てくれた
やはり心配してくれていたんだ
さりげなく優花のことを聞いてみた
優花は薬剤師の資格を持っているみたいで、薬を作るのに助けられていると言っていた
それ以上の関係はないとも…
やはり頼りにしてるのは私だとも言ってくれた
私の力が必要だと、源教には私が必要だと…

先生は帰り際、薬を置いていって、しばらくは家にいなさいと言っていた
この薬…まさかね……
私を狂わしても何のメリットもないものね……


平成25年8月21日(水)

家が炎に包まれる幻覚を見た
喉が苦しく、身体は焼けるように熱い
なんとか家から脱出すると、炎はウソのように消えていた…
本当に私…どうしてしまったのだろう?


平成25年9月13日(金)

幻覚が止まらない…
今日は腕の中に虫が蠢いていた…
気持ち悪い
自分の行動もおかしい…
気が付いたら自分の頭髪を毟っていた
鏡を見るとすっかり変わってしまった私がいた
このままではまずい
なんとかしなければ…
まだまともな意識があるうちに……


平成25年9月15日(日)

先生の薬を少し多めに飲んだ
凄い気分が良い
これなら大丈夫そうだ
源教に久しぶりに顔を出した
先生は心配してくれていた


平成25年10月22日(火)

先生の薬がないと正気を保てなくなってきた
24時間、頭の中に陽子の詩が聞こえる
ずっと詩がループしてる
頭がおかしくなりそう……


平成25年12月18日(水)

今日、源教で先生と優花の話を聞いてしまった
私が怖いらしい…
私はお払い箱らしい…
何で?こんなに尽くしてきたじゃない…
余計なことを知り過ぎた?
私の力がそんなに恐怖?
全部先生の言う通りにしてきたじゃない
こんなの嘘よ…
私より優花をとるの?
何で?


平成25年12月20日(金)

やはり私はお払い箱のようだ…
先生は私を利用したにすぎなかった…
私を心配したのは嘘…
私を大事にしたのは自分の為だったみたい
散々利用して、少しでも危険要因がある者は消すって訳ね…
私は何の為にこの力を使ってきたの?
この力は何の為に私にあたえられたの?
こんな思いをするのなら、力なんていらない……


・・・・・・・・・・・・・・

朱美も人道光照に利用されてるだけだったようです。
多分渡された薬も、洗脳の為に使用してたやつか、それ以上の効果のある薬物だったと思います。

朱美は人道光照を信用してたのでしょう、薬を飲み続け、狂っていった様子が日記に記されていました。
そしてこれも薬の効果なのか、常に陽子さんの存在を感じ、怯えて生活してたようです。

教団の施設に入れられた信治さんと信昭さんはどうなったのでしょうか?
日記には施設に入れられた後の二人のことは何も記されていませんでした。
二人が生存してるかどうかも不明です。

この宗教は…
いえ、人道光照は恐ろしい人間です。
自分の為なら何でもするのでしょう。
もしかしたら朱美以外にも騙され、薬漬けにされ、捨てられた人がいたのかもしれません……

そしてそんな恐ろしい男の側にいた優花は、何を考えていたのでしょうか?
彼女は真輪光教会の実態を知っているはずです。
そして朱美の死の真相も…
だから日記を持っている私まで監視していたのでしょう。
確かにこのことを警察等に知られたら、教団もヤバイだろうし、彼女も多分逮捕されるでしょう。

私はこの日記を読んで、教団の実態、朱美の人生、優花の正体を知ることができました。
そして、それと同時に身の危険も感じています。
多分この日記が真輪光教会の人に見つかれば…
私も無事ではいられないでしょう。

恐ろしいことばかりが記されてる日記…
朱美は何を考え、この日記を書き続けたのでしょうか?
彼女は気が狂い、まともに字が書けなくなってきても書くのを辞めず、自分の死が迫ってきても書き続けていったのです。


―村瀬朱美の日記―

平成26年2月6日(木)

天井が…壁が…動く……
ウネウネ、グネグネうごく……
壁に詩が浮き出る
おかしい…
私がおかしい…
もうダメ、薬がないと生きていけない……
なんとかしなきゃ
このままだと私は消える……


平成26年3月17日(月)

家の周りに源教の人間がいる
私を監視?
そう……私はもう源教にとって危険人物って訳ね…
私を敵に回して無事でいられると思うの?
私の力をなめないで
殺してあげるわ


平成26年4月20日(土)

苦しい、痛い、気持ち悪い
薬が欲しい、でも今、源教に行ったら私はどうなるか……
監視も続いてる…

源教を潰してやろうとしたけど
意識が集中できない…
念を飛ばせない
薬がないと何もできない
動けない……


平成26年5月7日(水)

一か八か、陽子達に渡してた薬が残っていたので飲んでみた
大分楽になった
やはり私が飲み続けた薬も、この薬に近い物だったのだろう……
許さない
私を始末するつもりだろうけど
ただでは死なないわ
見てなさい、絶対潰してやるから


平成26年6月2日(月)

ダメ、本当にダメ
日記を書くのも辛くなってきた
助けて、誰か助けて……
詩が浮き出る
天井に、壁に、テレビに
そして私の身体に……


平成26年7月3日(木)

外に出るのも辛い
出られない
痒い、体が痒い…
気が付いたら自分の左手首に噛みついていた
血が止まらない
正気を保つのが難しい…


平成26年7月5日(土)

死ぬってどんな感じだろう
どうせ生きてても正気じゃいられない
これも陽子の呪いだろうか?
ただの薬のせいだろうか?
どっちにしろ、もう元には戻れない……


平成26年7月6日(日)

もう一度、お母さんに会いたい
ごめんなさい、バカな娘で
絵理子に話を聞いてもらいたい
でも、もう無理
何もかも遅すぎる…
私の身体に刻まれた詩は
少しずつ、私を狂わし苦しめる
皮膚を毟っても
肉を削いでも
詩は消えないの…
たとえ見えなくても、聞こえてくるから…


平成26年7月8日(火)

今の私は化物ね
人間の姿には見えない
鏡を見てぞっとした…
これが私…
これが今の私……
憐れで醜い化物
これも全て…
源教に全てを捧げた結果…
憎い
憎い…
本当に憎い
殺してやる
全てを消してやる…


平成26年7月10日(木)

苦しい…
生きるのが辛い
私の人生なんてこんなもの…
私はバカだった
ずっと特別な存在だと思ってた
でも凡人以下だったのかもしれない…

最後に世間に訴え死んでやる
こんな身体は見られたくない
呪いの詩が刻まれた身体なんて…

自分を燃やし、全てを燃やし尽くそう
世間はどう見るかしら?
警察が動いたら、源教も優花も終わりだわ
ざまぁ
もし警察が動かなかったら、私が呪い殺してやる
それを考えると、楽しくなってくるわ
笑える…
心の底から笑える……


・・・・・・・・・・・・・・

本当に身体に詩なんて浮かびでるのでしょうか?
私にはただの幻覚にに思えるのですが…
それとも本当に陽子さんの呪いだったのでしょうか?

そして焼身自殺で何を訴えたかったのでしょうか?
焼身自殺することで、警察が調べてくれると思ったのでしょうか?
しかし、彼女の願いはむなしく、結局ただの自殺で処理されたようでした。

この日記を自分で警察に出せば、話は変わったかもしれませんが…
彼女はそれをしませんでした。

そして日記の最後には、陽子さんの詩のようなものが書かれていました。


―村瀬朱美の日記―

『少しずつ失っていくのはどんな感じ?
潰され 壊され 蝕み 侵食していく…
まだ足りない
まだ足りないの
聞こえるでしょ?
滅びの詩が……

心を引き裂き どこまでも堕ちるがいい
最高の快楽を逃すほど 私は愚かじゃないの…
連れていってあげる
常世の闇へ

滅びの詩を歌う時
世界は淘汰され 貴女は忘れ去られていく
四悪趣の迷宮で狂いなさい
ここは苦狂の淵
貴女にはお似合いよ

地獄の業火に焼かれ
永遠の絶望を味わう時
私の願いは報われる

深みに落ちるほど 心は歓喜に満たされる
人の運命は醜いもの
死んで罪に縋り泣くがいい
希望を砕き 絶念に震えるがいい

夢を捨てるほど 私は優しくないの
招いてあげる 虚ろの病みへ

滅びの詩を歌う時
世界は淘汰され 私は忘れ去られていく
道心を抉り 狂気に破滅なさい
ここは忘却の淵
貴女は寂滅したのよ

明けない夜はもうこない
これでゆっくり夢を見られそうなの

もう日の光を忘れていたのかもしれない
闇が長くて
僅かな光でも眩しく感じるの

今なら
ようやくゆっくりと
木漏れ日の詩が聞こえてきそうなの
あの眩しく 暖かい詩が…
こんなにも暖かい詩が…』

7月17日 井上陽子


・・・・・・・・・・・・・・

これが最後の日記になっていました。

そしてこの詩が書かれた日付の日に朱美は自殺しています。
もしこの詩が本当に陽子さんが書いたものならば、呪いは成功したのでしょう…
この詩が書かれたと思われる日には、もう朱美は日記を私に送っているのです。

でも本当にこんなことができるのでしょうか?
陽子さんはこの日記が書かれるずっと前に亡くなっています。
彼女の強い念が、日記の中に詩を書き綴っていったというのでしょうか?
もしそうなら、人の念とは恐ろしいものです。

そして朱美が最後に日記を書いたと思われる日は7月10日です。
その4日後、7月14日に私に日記を送っています。
そして更に3日後に彼女は自殺しているのです。

この一週間、彼女は何を考え、最後の時間を過ごしたのでしょう?
何故10日後に私に届くように日記を送ったのでしょう?
自殺するまでの間に何かやりたいことでもあったのでしょうか?
私の所にすぐ届いては、自殺するのを止められると思ったからでしょうか?
この空白の一週間の行動が未だにわからないのです。

私には今回の件、理解できないことが多過ぎるのです。

朱美の不思議な力、欲望に駆り立てれた人生、そして自殺。
優花の思惑、真輪光教会と人道光照。
人はこんなにも無情に、鬼畜のような者になれるのでしょうか?
これがお金や欲にまみれた人間の姿なのでしょうか?
そして本当に不思議な力や呪いといったものがあるのでしょうか?
私の主人は本当に朱美の力で、あんな身体になってしまったのでしょうか……

本当に一つも理解できません。

そして朱美が書いた日記の最後には、警察が動かなかったら私が呪い殺してやると書いてありましたが…
これも現実になったようです。

一週間前でした。
真輪光教会の教団施設等が火災で消失したのです。
ニュースで見てビックリしました。
警察の調べによると、集団自殺か、何かの儀式ではないかとのことでした。
何故ならば、この教団施設の人間誰一人、逃げる様子もなく炎に焼かれ死んでいったといいます。
そして、外に出れば化物に殺されるから外に出てはいけない、と叫んでる声を聞いた近所の住人もいたそうです。

その後、この教団施設にいなかった信者達も次々に自殺していったみたいでした。
あの優花も施設消失の二日後に焼身自殺で亡くなっています。

何故彼女は自殺したのでしょう?
そして何故朱美と同じ死に方を選んだのでしょう?

これも朱美の呪いなのでしょうか?
もしそうなら朱美はこれで成仏できるのでしょうか?

私は真輪光教会が消滅した今、この日記を警察に渡そうと思いましたが、思いとどまりました。

それは朱美の手紙。
日記と一緒に送られてきた手紙に彼女の最後の思いがあったからです。

そしてまだ、呪いは全て終わっていません。
まだ、主人の病は続いているのです……


―村瀬朱美の手紙―

絵理子へ

突然こんな物を送ってしまってごめんなさい。
ビックリしたでしょう?

これには訳があるの。
私は数えきれないくらい罪を犯してきました。
自分を見失い、鬼の心を持つようになるまで……
一緒に送った私と井上陽子さんの日記を読んでくれたら、私の罪の深さを理解できると思う。

そして絵理子…
あなたにもとんでもないことをした。
正確には旦那さんの方にね。
本当にごめんなさい。

今なら辛く苦しんでる人の気持ちが痛いほど解るの。
日に日に弱り狂う自分が恨めしい。

何故こんな自分になってしまったか自分でもわからない…
思い起こせば、絵理子…あなたと一緒にいた僅かな時間が楽しかったし幸せだった。
母親と一緒にいた時間が温かく、幸せだった。
何故気付かなかったんだろう…
何故忘れてしまったんだろう…
ごめんなさい…
本当にごめんなさい。

私は死ぬでしょう…
自分を追い込んだのは自分自身。

本当は警察に出頭すれば、別の道があるのかもしれない。
でも井上陽子は生きることを許してくれないと思う。
私はどっちみち死ぬ運命なの。

日記を警察に送ろうともしたわ。
でも、お母さんのことが心配。
私を最後まで心配してくれたお母さんを犯罪者の母親にしたくないの…
お母さんはずっと苦労してきた。
これから一生、犯罪者の母親として生きていくのは可哀想。

自分勝手なのは解ってる。
都合のいいことばかりやってるのは解ってる。
こんなこと、頼めるの絵理子しかいないの…

日記を全部処分しようとも思ったわ…
でも呪いがあるの、陽子の呪いが…
日記を処分しても、またきっと元の形で戻ってくる。
だから絵理子お願い。

あなたの力で…
あなたの祈りで成仏させてあげて、私が憧れたあなたの祈りの力で…
お願い、救ってあげて…

私も最初から絵理子と同じ宗教に入信すればよかった…
そうすれば、もっと違った人生を歩めたと思う。

本当にごめんなさい……

朱美


・・・・・・・・・・・・・・

宗教っていったい何なのでしょうか?
人を幸せにするもの?
心を豊かにするもの?
それとも不幸にするだけのものなのでしょうか?
私にはわかりません……

朱美が言う力など私にはありません。
でも、強い念で人を殺すことができるなら…
強い念で人を救うこともできるはずだと思います。

だから…
私は今祈っています。
主人の回復と家族の幸せ。
亡くなっていった人達の冥福を……
そして…
呪縛からの解放を……

私はあなた達を見て、自分の存在する意義を必死に見出だしています。

大切な人が笑ってくれない…
大切な友達が一緒に笑ってくれない。
一人ってこんなに恐い…
一人ってこんなに寒い。
私は誰かを不幸にする為に生まれてきたのでしょうか?

少し疲れてきました…
私もあなた達の所で羽を休ませたい……
例え最悪の選択だとしても…
でも、進まなきゃいけないのは解っています。

まだ滅びの詩が聞こえないから…
苦狂を背負う勇気が欲しい。

楽しいことなんてなくてもいい…
辛いことの積み重ねでもいい…
あなた達は私の全て…
人生の欠片であり、生きる喜び。

だから祈るの…
あなた達に光が届くまで。
木漏れ日の詩が聞こえるまで……

これから苦狂が待っていようとも……
祈り続ける。
滅びの詩が聞こえるまで……
私が滅びゆくまで…………………



苦狂日記 滅びの詩 終

そして…

木漏れ日へと続く……

[5371] 苦狂日記 滅びの詩1
私は今祈っています…
主人の回復と、家族の幸せ。
亡くなっていった人達の冥福を…
そして…呪縛からの解放を…
毎日手を合わせ祈っています。

◇◇◇◇


何時間くらい思いにふけっていたでしょう…
ふと、我に返るとかなりの時間が経っていました。

色々考えていました…
色々あったんです。
あり過ぎて今でも時々頭が混乱してしまいます。

主人は病に倒れ。
友人が自殺し、生活が一変してしまいました。
そしてその原因の一つを作ってしまったのが、自分自身かもしれないなんて…

今でも後悔しています。
あんなこと言わなければ…

そのことに気が付いたのは、あの日記を読んだ後、全てが起こってしまった後でした。

日記は友人から突然私の元へ送られてきました。
詳しい住所を教えてもいないのに、ある日突然…

確かあれは、先々月…
7月24日のことです。
私が仕事から帰ってくると、ポストの中に宅配便の不在通知が入っていました。
直ぐにその宅配業者へ連絡し、荷物を持ってきてもらったのです。

差出人は村瀬朱美、私の高校の時からの友人でした。

荷物はやや大きめのダンボールの中に、彼女の日記や昔のスケジュール帳、あと一通の手紙…
そして見ず知らずの女性の日記が入っていました。

そしてまず手紙を読もうとした時、私の携帯が鳴ったのです。
でてみると友人の優花でした。

「あ…絵理子、知ってた?
朱美が自殺したみたいだよ。
私ビックリしちゃって」

「え?ウソ……」

ショックでした。
最近の朱美の生活を知っていた私からすると、自殺をするなんて思いもしなかったからです。

「ちょっと聞いてる?
絵理子仲良かったからさ、知ってると思ったんだけど。
もしかして知らなかった?」

「うん」

「なんか焼身自殺みたいだよ。
一週間前だって」

「一週間前?
今その朱美から荷物が届いてるんだけど」

「荷物?」

荷物の差し出し日を見ると10日前になっていました。
どうやら指定日配達で送ったようで、伝票には7月24日指定と書いてあります。

「荷物の中に何が入ってたの?」

「日記?とかかな…」

「何それ?なんで日記なんて送ってきたの?」

「今開けたばかりだからわからないよ」

「そっか…絵理子は何で朱美が自殺したか心当たりとかある?」

「イヤ…全然わからない…」

「そう…何があったんだろうね?
もしかして日記に何か書いてあるんでない?読んでみてよ」

「今はちょっと忙しいし、気持ちの整理がついてないから、今度にするよ…」

「そう…じゃあ今度さ日記の内容教えてよ。
イヤ、今度見に行くわ」

「え?…うん、わかったよ」


◇◇◇◇

焼身自殺…
焼身自殺というのは自殺の中でも、とても苦しい部類に入るらしく、普通、自殺を考える人はこの方法は選ばないといいます。

朱美は何を思い焼身自殺を選んだのでしょうか?
焼身自殺には意味があり、メッセージが隠されてると言う人もいるみたいです。

最初、彼女が自殺する理由がサッパリわかりませんでした。ですが関係あるかどうかはわかりませんが、彼女は学生の時からある宗教に入信していたことを思い出しました。
この宗教は普通とは違っていたのです。
そう…この宗教は狂人の集まり。
狂人が支配する宗教…

自殺の本当の理由はわかりません。
その宗教のせいだったのか、それとも誰かに対する抗議だったのか…
それともただの気の迷いだったのか…
何故焼身自殺する必要があったのか…
今では何も知ることはできません。

ただ一つ気になることもあります。
それは彼女の日記です。

日記には彼女の人生が綴ってありました。
毎日欠かさず書いていたようで、彼女の几帳面さが窺い知ることができます。

しかし、その内容は彼女のイメージからかけ離れたものでした。
私の知ってる彼女ではなく、本当の彼女の姿が日記に記されていたのです。

信じられませんでした。
イヤ…信じたくありませんでした。

彼女はある親子の死に深く関わっていることが書かれていたのです。
その親子というのは、井上陽子とその娘の井上夏美。
井上陽子は朱美の旦那、村瀬信治の妹です。

朱美は義理の妹と姪を、死に追いやったと日記に記していました。

そしてその親子の死の直前から、彼女の日記には不思議な詩のようなものが書かれていたのです。
その詩はまるで呪いのように書かれていて、恨みや憎しみが込められた叫びのようでした。

筆跡も朱美のものと違っていて、日記の中でも朱美は、自分が書いたものではないと記しています。


―村瀬朱美の日記―

『何を信じればいい…
何を恨めばいい…
声が届かない闇が広がり また心を潰していく…

一緒に過ごした日々を覚えておいてほしい…
時間が戻るなら心を抉り取ってあげる

これは叫びの詩
あなたに聞こえるかしら…
涙を辿って見つけてほしい
私達の切望を…

心が酷く空っぽで
錆びた身体を動かすことはもうできない
時を見失い私達は消えていく…

全てが曖昧な現実に叩きのめされ 失望し 盲目の朝を迎える
これは滅びの詩
あなた達に聞こえるかしら…

最も暗い夢が始まる時
私達はここで待っている
涙を辿って見つけてほしい
これは叫びの詩
逃げることはもうできないから…

偽りの優しさが私に執着な憎悪と哀しみを生んだ…
だから
ずっと待っている夢から覚めるまで…
だから
ずっと待っている想いが枯れるまで…』


平成23年10月15日(土)

これは何?
知らないうちに日記が書かれてる
旦那のイタズラ?かな…
しかもこんな悪趣味な詩みたいなもの…
勝手に日記に書くなんて
勝手に日記を見るなんて…


平成23年10月16日(日)

信治に聞いても詩のことは分からないと言われた
じゃあ誰が書いたのか?
まさか知らないうちに自分で書いている?
そんな訳はないと思う…


・・・・・・・・・・・・・・

外は今日も激しい雨が降っています…
ここ2、3日ずっと雨なんです。
天気予報では一週間くらい雨が続くと言っていました。

確かあの日もこんな雨の日だったような気がします。
それは朱美を変えてしまった日。
全ての始まり…
今でもよく覚えています…

朱美と私は高校からの友人です。
彼女は転校生でした。
2年生の2学期に市内でも有名な進学校から、私の通っていた平凡な市立の高校に移ってきたのです。

何でわざわざ進学校から移ってきたのか、ハッキリしたことは教えてもらえませんでしたが、前の学校で色々あり、仕方なく転校してきた当事は言っていました。

朱美はどちらかというと暗い性格で、最初はなかなかクラスにも馴染めなかったように見えました。
ですが、まわりから話し掛けたりして徐々に友達も増えていったように思います。

そして何がキッカケかは忘れましたが、いつの間にか私と朱美は仲の良い友達同士になっていたのです。

学校帰りによくファストフード店やファミレス等に行き、恋愛話や好きな音楽の話、趣味やくだらない話等、よく飽きなかったと思うくらい一緒にいて、話をしてたように思います。

そしていつ頃だったか忘れましたが。彼女はよく家庭内の話をするようになっていきました。

彼女は一人っ子です。
両親はいたのですが、父親は定職に就いていないらしく、母親は看護師をしていて、ほとんどその母親の収入だけで生活していたようです。

そしてその父親から朱美は頻繁に暴力を振るわれていたようでした。
体にはよく痣があり、「その痣どうしたの?」と聞くと、はじめの頃は転んだとか、ぶつけたと言って隠してましたが、そのうち痣も増えていき、酷い時には包帯をグルグル巻きにして学校に来るようにまでなっていったのです。

さすがに心配になった先生達も、痣や怪我のことを聞いてみたのですが…
彼女はハッキリとした理由を言わなかったようでした。

その頃からよく彼女は「普通の家庭に生まれたかった、早く家から出たい」とか…
「絵理子はいいよね、優しそうなお父さんとお母さんで」と人の家庭を羨むようなことを、言うようになってきていました。

そしてあの日…
これが全ての始まりの日だと私は思っています…

その日は朝から雨が降っていました。
学校を終えると暇だった私達は、放課後いつも行くファミレスに向かうことにしたのです。

放課後二人で傘をさし、他愛ない会話をしながらファミレスに向かいました。
学校を出て200メートルくらい歩いた時でしょうか…
突然中年の女性に声をかけられたのです。
何だろう?と思っていると、その女性は一冊の本を渡してきました。

見てみると、本には『幸福への道』と書いていて、直ぐに宗教の勧誘だということがわかりました。

私は適当にあしらってファミレスに向かおうとしたのですが、朱美がその女性につかまってしまい、立ち止まって話を聞いているのです。

私は直ぐに朱美の腕をとり「行くよ」と言って無理矢理女性から引き離し、そのまま走り出しました。

「ちょっと絵理子、痛いよ離して」

「あんなのに引っかかったらダメ」

「わかったから、もう離してよ」

私は朱美の腕を掴んだまま、かなりの距離を走っていました。

「ごめん…痛かった?」

「大丈夫だけど、ちょっとビックリした」

「ごめんね」

そしてファミレスに着くといつものように適当に注文して、他愛ない会話を楽しんでいました。

すると突然朱美が変なことを言ってきたのです…

「ねぇ…絵理子、さっきのオバサンなんだけどさ…」

「オバサン?」

「これのオバサン」

と言って鞄からさっき渡された本を出してきました。

「ああ~、宗教の勧誘」

「うん…あの人さ、ちょっと普通じゃなかったし、妙なこと言ってきたんだよね」

「な~に?うちの宗教に入信すれば絶対幸せになれるとか?」

「違う…さっきのオバサン、私を見て、凄いビックリした顔しながら恐ろしいこと言ってきた」

「恐ろしいこと?」

「うん…私の顔見てね、あなた凄い力持ってるわねって…」

「何それ?変な勧誘の仕方、でもそれのどこが恐ろしいの?」

「うん…それが真顔でね、それだけ凄い力があれば、人を殺すこともできるって言ってきたの…」

私はそれを聞いた時一瞬固まってしまいました。
不思議な力で人を幸福にするという宗教は沢山聞いたことありますが、人を殺すことができると言った宗教は初めてだったからです。
しかもそれを聞いて興味を持ったのか、朱美はその本を読み始めていました。

本を見ると表紙には、代表者らしき人が載っていて、水明源教、人道光照と書いてありました。

多分人道光照というのは本名ではないのでしょう。
いかにも宗教家らしい名前で思わず失笑してしまいましたが、朱美はそんなのお構い無しにどんどん読み進めていました。

「ねぇ…朱美ヤバイって、そんな本読んでたら頭おかしくなっちゃうよ」

「絵理子…本一冊作るのにどのくらいのお金が必要か知ってる?」

「わからないけど…何で?」

「私もね詳しくはわからないんだけどさ、本一冊作るのに結構なお金が必要らしいよ」

「そうなんだ。
でもその本無料で貰えたね…」

「だからさ、多分この宗教は本物なんじゃないかな?
お金かけてまで、この宗教の素晴らしさを知ってもらいたいんだよ」

「そうなのかな?なんかちょっと違うような気がするけど…」

彼女は注文した物がテーブルに運ばれてきても、それに手をつけずひたすら本を読んでいました。

「ねぇ…そんなに宗教に興味をもったんなら、私も入ってるところに入りなよ」

「え?絵理子何か宗教に入ってたの?」

「うん…」

私はある宗教に入っていました。
生まれた時から…
両親が熱心に信仰していて、物心ついた時から両親と一緒に仏壇に向かい、手を合わせていたように思います。

「どう?やっぱり幸せになれるの?」

「幸せかどうかはわからないけど、大きな問題とか起きてないし、平々凡々とはやっていってるよ」

「そうなんだぁ…平々凡々とねぇ。
いいなぁ…うちとは違って絵理子の両親、優しそうだもんね」

「そうかなぁ…普通だと思うけど」

「…普通ってさ、結構難しいんだよ…
うちなんて…」

彼女はそう言いかけると黙って下を向いてしまいました。

「なんかごめん…」

彼女の家庭内は、どうなってるのかは詳しくわかりませんでしたが、よく痣等をつくって学校に来ていたので、言われなくても大体のことは想像できました。

「幸せになれるなら私もやってみようかなぁ…」

「幸せになれるかどうかはわからないけど、毎日手を合わせて一生懸命信心すれば、心にゆとりができてくると思うし、道が開けてくるような気がするよ」

この時は軽い気持ちでした。
まさかこの言葉が彼女の人生を狂わしていくなんて思いもしなかったのです…

「心にゆとりができて、道が開けるかぁ…
よし決めた、やってみる」

「本当?じゃあ今日帰ったらどうすれば入信できるか、お母さんに聞いてみるよ」

「え?違う違う。入信するのはこっち、水明源教のほうだよ」

「ハ?マジで言ってるの?
人を殺すことができるとか言ってる怪しいところだよ」

「うん、だから信用できるの」

「どういうこと?」

私は彼女の言ってる意味が全く理解できませんでした。
人を殺すことができると言ってくる宗教にどんな魅力を感じたのか…
ですがこれにはちゃんと彼女なりの理由があったのです。

「私さ、転校してきたじゃん」

「うん…」

「前の学校でイジメにあってたんだ…」

「そうなんだ…だから転校してきたの?」

「違う…イジメが原因じゃないよ」

彼女は読んでいた本をテーブルに置くと、注文したジュースに口をつけ、喉を潤し真剣な顔で信じられない話をしてきたのです。

「原因は多分私が人を殺したから…」

「え?なにそれ?」

「ずっと陰湿なイジメに耐えてきたの…
本当に辛かった…
初めて人を殺してやりたいって思うほどに…」

「それでまさか人を殺しちゃったの?」

「わからない…でも…」

彼女は目に涙をうっすら浮かべ、プルプルと体を震わせていました。
その状況から、冗談ではなく、本当のことを言っているのがわかりました。

「絵理子も知ってると思うけど、前の学校は市内でもトップクラスの進学校だったの…
みんな頭が良かったし、一生懸命勉強もしてた。
でも中には思い通りの成績をだせない人も沢山いた…
そして親からの期待もあったんだろうね…
成績が伸びないとどんどんストレスだけが溜まっていった。
他にも理由があったのかもしれないけど、いつの間にかストレスの捌け口としてイジメが行われるようになっていった…
いつもやるのは決まった奴等、クラスの中でもあまり成績の良くない連中だったわ」

「イジメってどこの学校にもあるんだね…」

「逆にイジメのないところってあるの?
イジメはダメって言ってる大人達だって職場や仲間同士でイジメ合ってるじゃない…
そんな奴らの言葉や姿を子供達はどう見ると思う?
イジメは本当にいけないものだと思う?
イジメはなくなると思う?」

「…確かにね…」

「そしていつの間にかイジメの矛先は私になってた…
理由はわからない。
もしかしたら理由なんてなかったのかもしれない…
でも私には地獄だった、本当に地獄だった」

「…そうだったんだ…」

「そして私はイジメをしてくる奴らに対して、強い殺意を持つようになっていったの…
でも行動には移してない…ただ強く思うだけ…
死ねばいいのにって…」

いつの間にか泣き止み、無表情で淡々と語る彼女の姿に、私は寒気を感じていました。
普段とは違った彼女がそこにいたからです。

「そして事件は起こった」

「事件?」

「最初はイジメのリーダー格の夏希だった。
私が死ねばいいのにと一番強く思った奴。
彼女は突然失踪したの」

「行方不明になったってこと?」

「そう…そして一週間後に西内海岸で水死体で発見された…
死因は溺死、自宅から30キロ以上離れた場所で発見されたのよ…」

「事故かもしんないじゃん」

「私も最初はそう思った。
でも私にイジメをしていった奴らが次々に死んだり行方不明になっていったの…
死ねばいいのにって強く思った奴から…」

「偶然でしょ…」

その時私は思い出したのです。
確か彼女が転校してくる前、彼女の学校の生徒が次々に3人、事故死したニュースをテレビで見たことがあったのです。

知らないうちに体から変な汗が吹き出していました。
暑かった訳じゃありません。
逆に嫌な寒気があり、目の前にいる彼女に対して少しづつ恐怖を感じていったのです。

「次は由美子だった。
彼女もイジメグループのリーダー格存在…
そして夏希とは仲の良い友人だったみたい…

夏希が失踪してからも私へのイジメは終わらなかった…
それどころか逆に由美子を中心にして、イジメはエスカレートしていったの。
そして夏希の遺体が発見された日に由美子は失踪した」

「だから偶然だって」

彼女に言ったつもりでした。
ですが、今思えば自分に言い聞かせていただけだったのかもしれません。

「そして間をおかず残りのイジメグループも…
佐山彰、田村宏太、最後に担任の篠崎が失踪した」

「先生まで?」

「一度イジメについて、篠崎に相談したことがあったの。
でもアイツは何もしてくれなかった…
イジメにあってる私を見ても無視したり、酷い時には由美子達と一緒に私をからかったりしてきた…
この時には皆一緒に見えたの…
皆死ねばいいのにって思うようになっていた…」

「でも確かニュースでは事故死は3人だって…」

「だから言ったじゃない。
死んだり行方不明なっていったって…
由美子と担任の篠崎は行方不明のまま…」

「…でもそれだけじゃ、朱美は関係あるかどうかわからないじゃない…」

「そうだね…
でも…私がやったの…5人とも…」

「何で?何でそうだと言い切れるの?」

「…私なの…私がやったの…だから前の学校にいられなくなって転校してきたの」

◇◇◇◇

その時、朱美はそれ以上何も言いませんでした。
ですが自分が原因だと思ってたみたいです。
何故そう思ったのかは、彼女から送られてきた、学生の時のスケジュール帳に記してありました。


―長谷川朱美のスケジュール帳―

1997―6/4

篠崎に相談
相手にしてくれなかった
担任なんてこんなもん


1997―6/10

篠崎に無視された
死ね
先生辞めろ

1997―6/17

夏希失踪
そのまま死んで


1997―6/24

夏希の遺体発見
西内海岸で発見
ざまぁ

由美子失踪
そのまま消えて


1997―6/25

佐山、田村、失踪
死ね、消えろ
皆死ね


1997―6/26

考えたらラッキー
誰も私をイジメる奴はいない
篠崎は私を疑ってきた?
死ね
私じゃない


1997―6/27

意味わかんない
私は知らない
一緒にいない
わからない


1997―6/28

篠崎失踪
死ね
田村の遺体発見
清の杜公園で発見
ざまぁ
田村が持ってたノートに私の名前?
犯人扱い?
意味わかんない


1997―6/30

警察がきた
私じゃない
でも何か変


1997―7/1

佐山が事故死
車に突っ込む
発狂してたらしい
長谷川ゴメンを連呼してたと目撃者の証言
私は何もやってない…
でも何故かうっすら記憶がある


1997―7/3

警察がきた
私じゃない、いい加減にして
アイツら死んで当然


1997―7/4

学校では変人扱い
イジメが無くなっても私の居場所はない…


1997―7/7

お父さんまで私を変人扱い
終わってる
人生終わってる
学校も行きたくない
これならイジメられてた方がマシ


1997―7/8

父…口きいてくれない
母…つめたくなった?
学校…皆無視する
私…死にたい


1997―7/9

やってないのに記憶ある
私が犯人?
でも違う、私じゃない
私じゃないってば…


・・・・・・・・・・・・・・

これが彼女の転校してきた理由みたいでした。
本当に何があったのでしょうか?…

ハッキリしたことはわかりませんでしたが、このことが水明源教に興味をもった原因になったようです。
そして家族とうまくいかなくなったのもこれが原因の一つのようでした。

彼女はあのファミレスの会話の数日後、本に書いてあった連絡先に電話をして、水明源教に入信したようです。

それから私達はあまり遊ばなくなっていきました。仲が悪くなった訳じゃありません。
朱美が放課後、頻繁に水明源教の会合等に出席するようになったからです。

でも彼女は、それから少しづつ明るくなっていったように思います。

「生きる希望が出てきたよ」

とよく言ってたのを覚えています。

ですが…
朱美が入信して一ヶ月位経った頃でしょうか…
彼女の父、長谷川雄二が失踪したのです。

このことについては彼女はあまり話たがりませんでした。
しかし、特別心配してる様子もなく、むしろ居なくなって清々してるようにさえ見えました。
そしてこの頃から彼女の雰囲気も変わっていったように思います。

まず生活が派手になっていきました。
何処で手に入れたかは分かりませんが、常にサイフの中には数万円の現金が入っていて、顔には濃い化粧をし、登下校はいつも誰かに送り迎えをしてもらってるいるようでした。

彼女はすっかりクラスの中でも浮いた存在になっていったのです。
私も学校内では彼女と普通に会話をしたりしていましたが、放課後は何をやっているのか全くわかりませんでした。
学校が終わると直ぐに一人で帰ってしまうからです。

そんな彼女でしたが。学校だけは真面目に出席して、勉強をしていました。
彼女には夢があったからです。
それは彼女の母、長谷川涼子のような立派な看護師になること。

働かない父親と違って、真面目に働き家族を養ってきた母に憧れをもっていたようです。

本当は医者になりたいと言っていましたが、転校してきた時点で諦めたと言っていました。

そしてその頃のことも彼女はスケジュール帳に記しています。


―長谷川朱美のスケジュール帳―

1997―10/14

水明源教の本をもらった
これで私も普通になれる
『絵理子も言ってた、祈れば願いは叶う』


1997―10/16

水明源教に入信


1997―10/20

人道光照先生に会う


1997―10/22

私に凄い力がある?
人を殺せるほどの力?
まさか…


1997―10/24

先生は優しい
この人がお父さんならいいのに…


1997―10/26

先生とデート?
楽しかった
先生は私に楽しい時間をくれる
私は特別な存在なんだと言ってた


1997―10/29

源教は楽しい
私は力があるから特別
先生の側にいる時間が一番楽しい


1997―11/3

ぶたれた、思いっきり
死ねばいいのに
先生とは大違い
クソオヤジ


1997―11/7

家に帰りたくない…
本当に死ねばいいのに


1997―11/8

オヤジが狂って苦しんでた
私の力は本物…
強く念じれば人は狂う
先生の言った通りだった


1997―11/9

オヤジが帰ってこない
何であんなクソオヤジを捜しに行かなきゃならないの?
お母さんも変だよ…


1997―11/11

捜索願いをだした
ムダ
見つけても私が殺すから


1997―11/12

先生の右腕になった気分
欲しい物があれば何でも買ってくれる
お金があれば何でも手に入る…


・・・・・・・・・・・・・・

本当に朱美には不思議な力などあったのでしょうか?
私には分かりませんが、進学校での出来事、水明源教での立場、そして私の言葉…
まるでパズルのように組合わさり、彼女の人生を狂わせてしまった。
そう思えてなりません。

それから彼女は無事高校を卒業して、看護学校の方に進学していきました。
私は高校を卒業するとバス会社の添乗員として就職。
仕事等が忙しくなかなか遊ぶ暇もなかった為、朱美とは疎遠になっていきました。
それでも電話でお互いに心境報告等はしていたのですが…
あまり会うことはありませんでした。

でも去年の同窓会で久しぶりに会うことができました。
高校の同窓会は初めてで、卒業してからもう10年以上は経っています。
皆に会うのは本当に久しぶりで、同窓会の連絡を受けた時は妙にテンションが上がりました…

◇◇◇◇

同窓会の日はあいにく仕事…
仕事を終わらせて急いで会場に向かったのですが、着いた時には開始予定時刻を30分以上過ぎていて、皆もう飲んだり食べたりして盛り上がっていました。

「絵理子~」

会場に入るなり誰かが声をかけてきました。
見るとスッカリ綺麗になってしまった朱美がそこにはいたのです。

お互い電話では連絡を取り合ってはいましたが、会うのは久しぶり、こんなにも彼女は変わっているとは思いませんでした。

同じ年とは思えないくらい若く見え、同じ女性から見ても羨む程、綺麗になっていました。
会場では凄い目立っていたと思います。

「朱美、凄い変わったね」

「そうかな?絵理子は変わらないね」

「それどういう意味?」

「アハハ、本当久しぶり」

そこでお互いゆっくり話をしました。
お酒が入り、電話では話せなかったことも色々話しました。

意外でした。
朱美が結婚したことは電話で知っていましたが、相手は17歳年上のサラリーマン、しかも自分より8歳年下の連れ子がいるなんて…
そんなに歳が離れてても上手くいくのかな?と思いましたが、彼女は「円満よ」と言ってニヤニヤ笑い、幸せそうに見えたのです。

相変わらず宗教の方も続けてるようで、看護師の仕事もあるし、毎日忙しいと語っていました。
ただ宗教の名前は変わったと…
何故変わったのかまでは聞きませんでした。
別にその時は興味なかったし、そんな細かいことは気にせず、楽しい時間を過ごしたかったからです。

本当に楽しい時間でした。
お互い何もかも忘れて、ただ騒いでいました。
朱美もこんなに笑ったのは久しぶりと言って、楽しんでいたと思います。

ですが…本当は…
彼女には人に話せない闇の部分が沢山あったのです。


◇◇◇◇

彼女の人生にいったい何があったのでしょうか?

わかりませんが時間を戻したい…
学生の時まで、いえせめて同窓会まででもいい…
そうすれば彼女を救えた、気持ちを変えれた、彼女を変えれた、私の人生も変えれた…
そう思います。

外を見ると秋の雨が降りしきり、冷たい風はガタガタと窓を揺らしています…
まるで亡くなって人達の悲しみや怒りを表すように…

彼女は何を思い死んでいったのでしょう?
見た目には華やかで幸せそうに映っていた姿。
だが決して彼女の人生は幸せではなかったようです。

そのことは送られてきた日記にも綴られていました。


―村瀬朱美の日記―

平成22年6月6日(日)

私は村瀬信治と結婚した
源教の為、先生の為
私の幸せを掴む為


平成22年6月14日(月)

まずは一歩。被害者の会の連中は私の顔を知らなかった
私は源教の隠し球、先生の切り札
源教は私の全て
信治、あなた達には潰させない
あなたが私の幸せを奪おうとするなら、私がその前にあなたの幸せを奪ってあげる。


平成22年6月23日(水)

流石、先生の力が入った薬
私の力よりも簡単だし、効き目も抜群
これなら予想より早く潰せるかなと思ったけど、甘くなかった…
代表の信治を思い通りにすれば、被害者の会を解散させれると思ったけど、そうもいかないみたい
もう少し内側からゆっくり潰していかないとダメね…
源教の隠し球が、まさか水明源教被害者の会代表の妻だとは誰も思わないでしょうね…
スパイみたいで楽しいけど、あまり時間をかけれない
早く解散させてやる

信昭が家から出ていった。
ある意味好都合、息子も何とかしなきゃと思ってたけど、この家からいなくなってくれるなら助かったわ。
仕事がやりやすくなった。


・・・・・・・・・・・・・・

どうやら朱美は信治さんを愛していなかったみたいです。
それどころか水明源教被害者の会を潰す為に結婚したなんて…
この宗教はどこかおかしい、先生と呼ばれる人がおかしいのかわからないけど、普通ではないと思います。

朱美もすっかり宗教にハマって駒になってるようで、彼女の不思議な力もいいように使われてるようでした。

これが彼女の裏の顔。
この頃の朱美は何を幸せだと感じていたのでしょうか?
日記を読み進めると次々に恐ろしいことが書かれていました。


―村瀬朱美の日記―

平成22年7月2日(金)

信治と中心人物になってる人間を数名潰せば、自然と解散しそう
しかし私達のことを狂信者と言うわりには、あなた達のやってることも第三者から見たら、十分狂気じみてるじゃない
あなた達も同じ、同類よ


平成22年7月19日(月)

今日は信治の妹、井上陽子の家に行ってきた
義理の妹が11歳年上ってなんか変な感じ
むこうも気を使ってるのが凄くわかる
でも可哀想だわ
旦那が交通事故で他界し、娘が難病なんて…
大変なんでしょうね


平成22年7月29日(木)

久しぶりに源教に顔を出した
仕事と源教と被害者の会、全部こなすのは大変
でも幸せの為、源教の理想の為、頑張らなくては

先生は陽子を入信させるつもりらしい
陽子を入信させてどうするつもり?
被害者の会代表の妹なのに、入信する訳ないじゃない…
何が目的なんだろう?
金だろうか?
それとも信治を精神的に追い詰める為?


平成22年8月15日(日)

川島さんと戸園さんが狂って入院した
信治も大分薬でおかしくなってきている
私の言うことは何でも聞く奴隷のよう
人ってこんなにも変わってしまうのね、笑える
被害者の会もあと少しね


平成22年9月14日(火)

陽子の所に行ってきた
年上の妹、何回会っても変な気分
私のことをアーちゃんと呼んで慕ってくれるのは嬉しいけど
好きで信治と結婚した訳じゃないから、複雑な気持ち


平成22年9月22日(水)

陽子も夏美もとってもいい人
夏美は難病で可哀想
でもそれが運命ってやつだと思う
誰も運命から逃れることはできないのよ
源教の為、あなた達にはさらに辛い人生を送ってもらうわ
運命と思ってあきらめて
これも先生と私の為


・・・・・・・・・・・・・・

朱美は何を思い、何を考え、水明源教に身を置いていたのでしょうか?
彼女は先生と呼ばれる人に薬をもらい、それを使ったり、彼女の不思議な力で、信治さんや被害者の会の人達を洗脳し、狂わしていってるようでした。
いったい先生から渡される薬という物はどのような物だったのでしょうか?
しかも義理の妹の陽子さんや、姪にあたる夏美さんまで、源教の為に洗脳するつもりだったみたいです。

日記には難病に苦しむ親子を、あの手この手で騙し、お金を巻き上げる様子が記されていました。

そして朱美から送られてきた荷物の中には、陽子さんの日記も入っていたのです。
その内容は凄まじいもので、苦狂の人生が綴られていました。
日記は陽子さんの夫、雅次さんの死から書いているようで。娘さんの難病のこと、アーちゃんなる人物、これは朱美でしょう…
その朱美に騙されて、怪しい健康器具の体験会場に連れて行かされ、高額の物を買わされたり。
水明源教に難病が治ると言って入信させられ、妙な物を売り付けられたり、挙げ句の果てには薬物を使い、まともな思考を奪い、餓死に追い込まれたということが克明に記されてあったのです。

そして陽子さんの日記に一つ不思議なものが記されていました。
それは詩です。
詩は時々書いていたようで、彼女の心理状態等を表していたのでしょう。
一見ただの詩なのですが、最後に記してあった詩に見覚えがありました。
それは朱美の日記にも書いてあったのです。

詩は二人の日記の同じ日付に記されていました。
平成23年10月15日(土)です。
陽子さんが最後に書いた日記の一日前に書かれたものでした。
多分彼女は自分の死を予感して、書き残した詩なのでしょう。
陽子さんの恨みや、苦しみを表しているようでした。

その詩が朱美の日記にも…
しかも同じ日付に書かれているのです…

朱美は自分では詩など書いていないと、自分の日記に書いています。
よく見ると、二つの詩は筆跡もよく似ていて、まるで陽子さんが直接、朱美の日記に詩を書いた、そんな感じに見えるのです。

しかしそれはどう考えても無理だということがわかりました。
その頃の陽子さんは、餓死する直前の状態で、家から出るどころか、自分の身の回りのこともまともにできない状態だったみたいだからです。

じゃあどうやって、朱美の日記に陽子さんの書いた詩を記したか…
考えても解りませんでした。

まるで陽子さんの恨みの強い念が、朱美の日記に呪いのように書き記した。
そんな風にしか思えてなりません。

しかし陽子さんの行動にも一つ疑問がありました。
それは何故、水明源教に入信したかということです。
娘が難病に侵され、藁にもすがる気持ちだったというのはわかります。
ですが、実の兄が被害者の会代表をしてる宗教に入るでしょうか?
朱美の日記には、陽子親子を水明源教に入信させたと記してありました。
この親子が水明源教に入信したのは間違いないようです。
しかし、陽子さんの日記には、水明源教の文字は一文字も記されてはいませんでした。
代わりに記されていたのは真輪光教会という文字です。

確か朱美は同窓会の時こう言ってました。
宗教の名前が変わったと…

もしかしたら陽子さんは、真輪光教会を元水明源教だと気付かずに入信したのではないでしょうか?

何故宗教の名前を変えたのか…
その頃の事も朱美の日記に記されていました。


―村瀬朱美の日記―


平成22年9月30日(木)

今日は記念日です
ついに水明源教被害者の会を解散させました
主要メンバーがほとんど狂ってしまったからね
なんぼ先生の力が入っているとはいえ、薬の効果って凄いね
自分で使ってて恐ろしくなる

これで信治との結婚生活も終わりかな…
でももう少し楽しむのもいいかも…
陽子のこともあるしね

平成22年10月11日(月)

先生が源教の名前を変えたいと言ってきた。
やはり被害者の会が解散したとはいえ、悪いイメージが残ってるからだろう
どんな名前になるんだろう?
私は水明源教って名前が、馴染みがあって好きなんだけどな


平成22年10月17日(日)

新しい名前が決まった
名前は真輪光教会
やっぱり私は水明源教の方が好きだな
先生はこれで活動しやすくなると言ってたけど…


平成22年11月18日(木)

陽子達の面倒を見るのがダルくなってきた
なんぼ源教や先生や私の為と言っても、さすがに疲れてくる


平成22年12月22日(水)

いい加減にしてほしい
何でもかんでも私に頼ってくる
たまには自分達で何とかしようと思わないの?この親子は…
私だって忙しいし、私はあなた達の介護師じゃないのよ。
早く源教に入信させて、ケツの毛までむしり取ればいいのに…
先生は、もう少しまともな判断ができなくなってからって言ってるけど…
もう陽子は娘の為ならいくらでもお金を出すわよ


・・・・・・・・・・・・・・

難病というものは本当に大変なんです。
私の夫も数年前に難病と診断されました。
それでも何年かは頑張って働いていましたが、去年あたりから色々な症状がでてきて、入退院を繰り返すようになってしまい、今ではほとんど寝たきりになってしまいました。

夫を見てると本当に辛くなってきます。
今の日本の医療では治せないのです。
ただ毎日、症状を抑える薬を飲み、苦痛に耐えるだけ…
そんな夫を見てるとたまに涙が出てきます。

藁にもすがりたい親子の気持ち、私には痛いほど解ります。
それを利用しようとする水明源教や朱美を許せません。

しかし、昔はこんな人ではなかったはず…
朱美は人の痛みがわかる人でした。
何故こんなにも変わってしまったのでしょう?
水明源教で何があったのでしょう?
この頃の日記を見ると、朱美も水明源教はただのカルト宗教、信者からあの手この手で、金を巻き上げるだけの集団で、一生懸命信心しても何の御利益がないということは解っていたはずです。

でも彼女は辞めなかった…
水明源教での立場、お金の力、それが朱美を狂わしていったのではないでしょうか?
この頃の朱美は狂人にしか見えません。

そしてその、人とは思えない行動も、彼女は日記に細かく記してありました。


―村瀬朱美の日記―

平成23年2月9日(水)

ようやく陽子達を源教に入信させた
陽子は完全に先生の言うことを信じきってるみたい…
アホね…これからもっと辛い人生が待ってることだとも知らずに…
恨むなら自分のバカさ加減を恨みなさい
騙される方が悪いのよ


平成23年3月15日(火)

陽子達は熱心に信仰してる
娘の為ならいくらでもお金を出すし、真輪光教会が元水明源教だとは気付いてないみたい
娘の体のことでいっぱいっぱいで、そんなの気にならないって感じね…
でもこんなに大事にされてる夏美は、ある意味幸せなのかもね…


平成23年4月20日(水)

先生が陽子にあの薬を売っていた
ついに仕留める気ね
あの薬を使ったらなかなか元には戻れない…
正確にはあの薬の快感を忘れられなくなる
先生の力は偉大なのよ…


平成23年4月27日(水)

先生の洗脳が始まった
外出禁止命令
これで陽子親子も終わり…
あとは、様子を見に行くふりをして、少しずつ追い込むだけ…


平成23年6月10日(金)

大分弱ってきてるみたい
ほとんど親子は寝たきりの状態
家の合鍵を預かった
そろそろお金をいただきましょうか


平成23年7月22日(金)

意外と時間がかかった
でもようやく銀行のカードを預かったし、通帳がある場所も教えてもらった

身の回りのことをやってあげると感謝してくる
笑える…
そんな動けない体にしたのは私と、あなたが一生懸命信仰してる真輪光教会だというのに…


平成23年8月28日(日)

長かった…陽子親子を介護して数ヶ月
本当に大変だった
でもそれも今日で終わり
親子は薬ですっかり狂ってしまったし、まともな判断もできなくなってる
しかも寝たきりの状態、近所にも助けを求めに行けないでしょうね
あとは私がセミナーでしばらく来れないと言って放置し、死ぬのを待つだけ…


平成23年9月13日(火)

陽子親子から開放されて、大分気が楽になったけど、信治のことをどうしていいかわからなくなってきた…
陽子達が死んだら離婚してサヨナラするのもいいんだけど…
信治に保険をかけてどうにかしてしまうのが一番安全かもね。
とりあえずは生かさず殺さずね…
その前に陽子達が死んだら、自殺に見せかける為にもうひと頑張りしないと…
三ヶ月位放置したら、死んでるかしら?
たまに見に行かないとね。


・・・・・・・・・・・・・・

人を殺したり、人を死に追い込むとは、どのような気持ちなのでしょうか?
どう考えても、普通の人間の行動とは思えません。

そんなにお金って大事でしょうか?
お金で幸せは買えないと言います。
しかし、お金があれば幸せを逃さないとも…

私にはお金より大事なものはいっぱいあると思います。お金の為に人生を狂わせたくはないのです。
お金というものは、麻薬よりも強いドラッグなのではないでしょうか?
お金にトリップしてる人は沢山います…
お金の魔力、快感に取り憑かれたらなかなか抜け出せません。
その中毒性は恐ろしいものです。
人を殺すことにも、何の躊躇もないのですから…
しかも自殺に見せかけてまで…
恐ろしいことです。

自殺に見せかける方法も日記に記されてありました。
そしてこの頃から、陽子さんの詩と思われるものが、朱美の日記にも書かれるようになっていったのです。
最初に詩が書かれたのは、10月15日のあの詩です。


―村瀬朱美の日記―

平成23年10月3日(月)

放置してからもう少しで一ヶ月、そろそろ様子を見に行こうかな…
何回か陽子から電話がきてたけど、確か8月から電話料払ってないから、もうとっくに電話は停まってるはず


平成23年10月4日(火)

まだ生きてた
夏美は生きてるかわからないけど…
陽子の助けを求める声がかすかに聞こえた
多分もう少しね
あとはあの家に人が近づかなければいいけど


平成23年10月15日(土)

これは何?
知らないうちに日記が書かれてる
信治のイタズラ?かな…
しかもこんな悪趣味な詩みたいなもの…
勝手に日記に書くなんて
勝手に日記を見るなんて…


平成23年10月29日(金)

親子は死んでいた
家に入ると変な臭いがした
人間の身体というのは意外と早く腐るのね
とりあえずホームセンターで、ビニールシートとビニールテープを買って目張りしたけど、あれで大丈夫かしら?
直ぐに遺体が発見されると面倒なことになる
臭いが服につきそうで最悪だったけど、臭い遺体を引きずって首に電気コードを巻き付けドアノブにかけた
あと、夏美はほとんど寝たきりだったので、あのまま放置してても大丈夫だろう
夏美に処方されてた睡眠薬も、二人の枕元に置いてきたし…
多分大丈夫だろう…

自殺に見せかける為に遺書を書こうとしてたら、陽子の日記を見つけた
こんなもの警察に発見されたら冗談じゃない
私や源教のことがしっかり書かれてる
中を見ると遺書に使えそうな部分があったから、切って置いてきた
とりあえず日記は持って帰ってきたが、この日記も早く処分した方がよさそうね


平成23年10月31日(月)

日記は近くの山へ行って燃やしてきた
考えたら遺体が発見されて、餓死として調べられたら面倒
明日ある程度の食料と現金を置いてこようと思う
これで誰も餓死とは思わないだろう


平成23年11月8日(火)

処分したはずの日記が玄関先に置いてあった
どういうこと?ちゃんと燃やして無くなるのを、この目で確認したというのに…
しかもあの10月15日に書かれていた詩…
陽子の日記の同じ日付にも書いてあった
意味がわからない
陽子が私の日記に書いたとでもいうの?
陽子の呪いとでもいうの?

続く
[5348] あけてよ

年も押し迫ったとある深夜、店の後片付けを終えた俺は白い息を吐きながら家路を急いでいた。

雪がチラついている。寒い…

片側四車線の幹線道路。

明日も十時起きで仕事の為、薄っすら白くなりかけている歩道を足早に歩いていると、前方から誰かが歩いて来るのが見えた。

大体この時間に歩いているのは酔っ払いのオヤジか水商売の女ぐらい… しかし此方に向かって来る者に半端ない違和感を感じた。

こんな時間に?

どう見てもランドセルを背負った小学生くらいにしか見えない女の子が、楽しそうにピョンピョンとスキップしながら近付いてくる。

黄色い帽子で目の辺りは隠れているが、口元は笑っている様に見える。

その女の子は真っ直ぐに前を見ながら、俺など全く眼中にないといった感じですれ違った。

俺は直ぐにもう一つの違和感に気付き、「はっ!!」として後ろを振り返ったのだが、何故かたった今すれ違った筈の女の子がいない。

消えた?

もう一つの違和感。それはあれ程ピョンピョンと跳ねていたのに有るべき筈の「足音」が無かったのだ。

と、次の瞬間。キィーーーー!!

ドカン!!!

俺の目の前で白いセダンの乗用車が急ブレーキを踏み、後輪をスピンさせながらガードレールへと激突した。

乗用車に駆け寄り運転席を覗くと、割れたフロントガラスの向こうに頭から血を流し放心状態になっている運転手が見えた。

とりあえず救急車を呼ぼうと携帯をいじっていると、ドアが開きヨロヨロと運転手が降りてきた。そして彼はガタガタと震えながらこう言った。

「 ど、道路に飛び出してきた子供はどこだ?!」

すぐに道路と車の下を確認してみたがそんな子供は居ない。さっきのスキップしていた小学生が脳裏に浮かんだが、兎に角救急車を手配した。

家に帰った後、何か妙な胸騒ぎがして震えが止まらなかった。

風呂に入り、ベッドの中で目を閉じても女の子のあの楽しそうな表情がハッキリと目の裏に焼き付いて離れない。そしてやはり寒い…

ピンポーン

「 こ、こんな時間に誰だ?」

夜中三時を回ってから訪ねて来る者などいる筈がない。

そーっと足音を消しながら玄関まで行ってみると、ドアの向こうから口笛を吹く音が聞こえた…

超下手くそな口笛。

ピンポーン

「 ………… 」

ピンポーン

「 ど、どちら様?」

ピンポーン

「 ………… 」

恐る恐るスコープを覗いて見たが誰もいない。いや、いる!下の方に黄色い帽子が見えた。アイツだ!!

口笛が止んだ。

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

突然、物凄い勢いでドアを押されて俺は焦って後ろに飛び退いた。

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

あけてーーー

あけてーーー

ドアノブがガチャガチャと左右に激しく回っている。

あけてーーー

あけてーーー

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…

ガチャン…

施錠した筈のドアがゆっくりと開く。

ガチン!!

チェーンをしていたお陰で数十センチ開いた所でドアは止まった。

ねぇ、あけてーーー

あげてよーーー あけでよーーー

「 も、もうやめてくれ!」

女の子はドアの隙間から手をねじ込んできた。その手はグッパグッパを何度も繰り返している。

ねえ、あけでよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

女の子の声が急に低い男性の様な声に変わった途端、パタリと静かになった。

ドアも閉まり、何事も無かったかの様に静まり返っている。恐る恐るドアスコープを覗いてみたが誰もいないようだ。

「 良かった… 」

安堵したと同時にすぐ後ろから聞こえた。

ふぅん…

ため息の様な掠れた声。

ゆっくり振り向くと、女の子の小さな手がギュッと俺のズボンを掴んでいた。

いたいよーーー

いだいよーーー

よく見ると黄色い帽子は所々破け、黒く汚れている。生気の無い肌、鼻は削げ、紫色の唇からは赤い血の筋が顎まで伸びていた。

そして足元を見ると血黙りが出来ていた。女の子には右足が無かったのだ。

その後は憶えていない。



翌日、例の事故現場を通りかかった時に全ての謎が解けたような気がした。

へしゃげたガードレールのすぐ傍に花と共にぬいぐるみや玩具等が添えてあり、電柱にくくりつけられた白い看板にはこう書かれていた。

『 ○月○日、○時○分、歩行者とバイクによる死亡事故がありました。目撃された方、こちらまで情報をお寄せ下さい。』

「そうか、あの子はここで亡くなっていたのか…」

視線を感じて反対側の歩道に目をやると、黄色い帽子を被った半透明の女の子がガードレールを乗り越えて此方にスキップしながら走って来るのが見えた。

いや、やっと分かった。あれはスキップでは無く片足でケンケンをしているんだな…

「 あ、危ない!!!」

キーーーー!! ガシャン!!!

【了】
[5345] サンクス
やあロビンミッシェルだ。

なるほど!確かにはっきりと顔が見えていないのにも関わらず、やたら強調してる感があるな…ひ…

俺の話は怖さが薄い分厚みを持たそうと、やたら描写が長ったらしくなったり、ついついいらぬ要素を入れてしまったりと自分でも常々思っていたんだ!有難う、勉強になるよ!…ひひ…

またおかしな所や助言があれば是非教えてくれ!…ひ…
[5339] あけてよ
見えたのは口元だけで女の子の楽しそうな表情までは見えていないのでは?(見えてたらわざわざ口元強調しないだろうし)。ロビンMさんはそういうとこ無くすとワンランク上がるよ。間違いない。
[5327] みさき荘

俺が小学六年の時に、場所は忘れたが家族全員揃って海水浴に出かけたんだ。

一泊の予定で泊まった民宿の名は今でもはっきりと憶えている。

宿名を「みさき荘」といった。

古い建物だ。

いくらシーズン中で部屋が取れないとはいえ、こんな何十年前から建っているのか分からないボロい民宿に決めるとは、さすがに俺の親父だなと今になって思う。まあ、ペットOKの宿がそこしか無かったのかも知れないが。

しかも思い立ったら即行動という親父の計画が裏目に出たのか、その日の海は大荒れでとても泳ぎに出れる波では無かった。

さすがは俺の親父だ。

「 あーあ、もう最低!!」

窓から見える高波に癇を発し、妹の美菜が拗ねてブラウン管テレビのチャンネルを回した。

ガチャガチャガチャガチャ

『 あーーー(´Д` )!いくーーー!!』

なんという事か、突然俺達家族の目の前で、裸の男女が繰り広げる18禁映像が残酷にも鮮明に移し出されたのだ。

『 あーーー(´Д` ) あ、あ、あ、いく、いく、いっくーーー!!!』

チャンネルを回していた美菜の右手はショックの余りカタカタと震え出し、目を見開き、大きな口を開けたままで固まってしまった。

無理も無い。

小学校に上がったばかりの純真無垢でいたいけな少女が、目の前で繰り広げられるこんな卑猥な映像に耐えられる訳もない事はあのジミー大西氏でも分かる筈だ。

しかし有料チャンネルの筈が一体何故…? 一つの疑問が残る。

恐らく前の宿泊客が金を入れたまま帰ったのか、単にテレビの故障なのかは残念ながら今もって解けない謎だ。

「 お、おまえ達は部屋で遊んでいなさい… 絶対に外にでるんじゃないぞ! お、お父さん達は風呂に入ってくるからな!」

親父はバツが悪そうにそう告げると、母親を連れてそそくさと部屋を出て行ってしまった。

『 あーーー(´Д` )!!いく、いくう、あっはーーーん♡』

…プツン!!

便所へ行っていた夏美がいつの間にかテレビの側に愛犬マモルを抱っこしながら立っており、ニヤニヤしながら電源のツマミを押した。

「 兄貴ー、私知ってるよw この人達ってエッチな事してたんだよねw」

この美菜と同じ顔をした夏美は、双子の姉の方にあたる。美菜とは少し性格が違い、負けん気が強く、やたら喧嘩も強く、曲がった事が大嫌いな武闘派だ。

多分、親父の血を多めに引き継いでいるのだろう。

「 おい夏美!そんな事より美菜を運ぶの手伝え!」

美菜は先程のショッキング映像のせいで、正座をしたまま気を失っているようだ。目が逝っている。

カビ臭い布団を引き、よいこらしょと二人掛かりで美菜を運んでいると、一階の方から親父の怒号が響いてきた。恐らく宿主に文句を言っているのだろう。



「 あーあ、折角海に来たのになんか勿体無いなぁ… 」

夏美が窓の外を見つめながら溜息をついた。

ここから見える海は相変わらず荒れており、空は灰色で小雨がパラパラと舞っている。風も強いようで窓の隙間からピューピューと音が聞こえる。

「 ねぇ海行こうよ兄貴!泳がなかったらいいんでしょw?」

「 ば、馬鹿かお前?!親父に見つかったらシバかれんのは俺だぞ!駄目に決まってんだろ!」

「 はぁ?何ビビってんのよ兄貴w 大丈夫だよ、ちょっとだけだから!お父さん達がお風呂上がってくるまでに帰るからさ!ね、お願い!」

「 だから無理なんだって!しつこいんだよお前は!さっき部屋から出るなって言われただろ!」

俺は幼い頃から親父のゲンコツの威力を体で覚えさせられていた為に、夏美のこの暴言は命を張ってでも止めなければならなかった。しかし…

(*`へ´*)

そこには指をポキポキと鳴らしながら、現役時代の的場浩司並みのガンを飛ばしている夏美がいた。



数分後、俺と夏美は海岸沿いの砂浜に並んで立っていた。

「 …波、すごいね…」

「 ああ、近くで見るとすげーな!」

『 本日は高波のため、遊泳禁止となっております… 繰り返します… 本日は… 』

丸太に括り付けられたスピーカーから、無機質な声が風に乗って聞こえてくる。

ザザーーー…

ザザーーー…

俺達よりも遥かに高い波が幾度も打ち寄せては、また引いてゆく。

ビュオーーー!!…

ザザーーー…

「 あっ!!」

強い風に煽られて夏美が被る白くツバの広い帽子が飛ばされ、うねる波の中へと消えていった。

ビュオーーー!!…

「 お、おいヤバイだろ、あれ母ちゃんに貰ったやつだろ!!」

ビュオーーーおえおオうー!!…

「 …ちょっと兄貴静かにして!」

「 えっ?」

ビュオーーおえおえオあオお!!…

「 なんか風の音とは別に変な声みたいなの聞こえない?」

確かによく風の音を聞いてみると風の音に混じって呻き声の様なものが… しかも一人ではなく、大勢の人間が一斉に呻いているように聞こえる。

ビュおおおえおおオオおおおおオオおおおおオオおおえあおオオおおおおオオおおおおオオおおおおオオおえおお!!!

「 ひっ!!」

「 あ、兄貴あれ!!」

夏美が指さしたのは俺達が泊まっているあの民宿みさき荘だった。

「 えっ、何だ?何があるんだ?」

目の悪い俺はオデコに掛けていた眼鏡をかけて、先程俺達が覗いていた二階の部屋を見た。

すると窓越しに真っ白な服を着た髪の長い女が此方をジッと見つめていた。

「 だ、誰だよあれ?か、母ちゃんかな?」

「 違う…お母さんあんなに髪の毛長くないもん、兄貴、あの人の事あんまり長く見ない方がいいよ…」

「 じゃ、じゃああれ誰だよ?なんで俺達の部屋にあんな女がいるんだ?もしかして旅館の人かな?」

「 だから違うって!!」

ビュオーーーおえおオオおおおおオオおおおおオオおえおお!!!

「 うわああ!!何だお前?!」

再度、強い突風が吹き、慌てて夏美の手を掴もうとした時にそいつは後ろに立っていた。

腰まで伸ばしたびしょ濡れの長い黒髪。ビッタリと体に貼りつく白いワンピースを着た女。

顔は生気の無い土色、目は窪み、口は欠伸をした時の様に大きく開かれていた。

「 うわあああああ!!」

ザザーーー!!…

「 きゃあ!!」

次の瞬間、夏美は人形の様にパタリと倒れそのまま一瞬で波の中へと引き摺られて行った。波から伸びてきた幾つもの長い「手」によって…

「 夏美ーー!!!」

俺は慌ててTシャツを脱ぐと、パンツ一丁で荒れる海の中へと飛び込んだ。

「 どこだ?!どこだ夏美ーー!!」

泳ぎにはかなりの自信があった方だが、自然が作りだす大きな力の前には全く歯が立つ筈も無い。何度も波を被り大量の塩水を飲んで噎せて涙が止まらなかった。

ものの数分で体力を奪われた俺は、兎に角力の続く限り夏美の名前を叫び続けた。

「 ……に…きぃ…… 」

「 !!!」

もうダメだと諦めかけた時、微かに夏美の声が聞こえた。

「 どこだ?!どこにいるんだ夏美ーー!!」

辺りを見回していると漸く波の隙間に夏美の姿を捉えた。

既に波と塩水のせいで殆ど目は開いていないが、最後の力を振り絞って夏美の元まで必死で泳いだ。もうそれがクロールなのか、平泳ぎなのか、犬掻きなのか分からない無茶苦茶な泳ぎ方だったと思う。

何度も波に押し流されそうになりながらも、あと少しで夏美に届く所まで来た。どうやら夏美は遊泳許可区域を示す丸いブイに掴まっているようだった。

夏美も必死なのか、顔を顰めながら必死でそれにしがみ付いている。

だが夏美を抱き締めた時にその黒いブイの異変に気付いた。

「 …な、夏美… お前それ、何にしがみ付いてんだ…?」

「 ………… 」

どう見てもそれは人間の頭だった。

夏美の二の腕にまで巻き付いた長い黒髪は先程のあの女である事は間違いなく、ゆっくりと此方を振り返った女の窪んだ目をみた瞬間、天地が逆転した感覚に襲われ、そのまま俺の意識は飛んでしまった…





わん!わん!わん!フガ…

わん!わん!わん!フガ…

「 …ん…? ま、マモル…?」

「 良かった!兄貴目ぇ醒ましたよお父さん!!」

「 お、本当か美菜!チッ、このガキャ心配させやがって!!」

ガツン!!!

海岸で目を醒ました瞬間、親父の硬いゲンコツによりまたも意識を失った。



「 …ん…?」

再度目を醒ましたのは夜の七時を回った頃だった。

ズキズキと痛む頭を押さえながら隣りの部屋を覗くと、俺以外の全員 (マモル含む) が夕食を食べながらテレビを見て笑っていた。

「 えっ、夏美!おい、お前大丈夫なのか?!」

「 …………?」

俺は布団から飛び出し、呑気に焼き魚を食っている夏美にしがみ付いた。

ドグッ!!

「 痛っ!!(´Д` )/ 」

重い肘を腹に貰った。

「 やめてよ気持ち悪いわね!大丈夫って何よ?それはこっちの台詞じゃないバカ兄貴!!」

「 …へ?」

そろそろ書くのにも疲れてきたので、夏美がいう事をザッと要約するとこうだ。


まず、海岸に夏美は行っておらず、親父と母ちゃんの後について風呂へ行っていた。

三人で部屋に帰って来ると俺の姿がなく、マモルが窓際でクルクル回りながら外を見ろというので見たら俺が一人で砂浜を歩いており、波に呑み込まれるのが見えた。

昔、ライフセーバーの経験がある親父がすぐ海に入り俺を助けた。

親父が追い付いた時、俺はブイに捕まり既に意識を無くしていた。

と、まあこういう事らしい。


「 マモルに感謝しとけよロビン!助けんのが後もう少し遅れていたらお前は完全にサメの餌になってたんだからな!わははは!」

酒の弱い親父が熱燗で赤くなった顔を崩して下品に笑っている。

マモルを見ると、テレビを見ながらまるで「気にすんな」とでもいいたげに尻尾だけをクルクルと回している…

なんか納得いかない

いや、全然納得いかない

もしかすると俺は頭がおかしくなってしまったのだろうか?

あの時確かに夏美は俺と一緒にいた。砂浜に立ち、一緒にあの女も見た筈だ。

しかしあんな目に会った筈なのに、夏美は今何事も無かったかの様にマモルの背中に顔を押し当ててモフモフしている。

「 やはり俺が間違っているのか…」

これ以上考えると腹が立って来そうなので、もう考えるのはよそう。

「 大体こんな薄汚い、気持ち悪い民宿なんかに泊まるからこうなるんだよ…ブツブツ…」

地獄耳の親父がピクリと反応した。

ぐぅ〜

腹が鳴った。

気持ちを切り替えて俺も晩飯に参加しようと立ち上がった時に口の中に違和感があった。奥歯に何かが詰まっている感覚。

なんだ?

人差し指と親指でそれを摘み、ゆっくりとそれを引き出す。


「 ぎゃーーーーーー!!!」


俺は本日三度目の気絶をし、翌朝チェックアウトの時間まで一度も目を醒ます事は無かった。

【了】
[5307] 叔父の葬儀
手直し、乙です。だいぶ、スッキリ解りやすくなったと思います。関わったお坊さんが短期間で次々に亡くなるのは怖いね。お坊さんにもどうしようもない禍々しいモノがあったんだね。でも関係無いのに可哀想。遺族の妻と娘の笑いと叔父へのエールが不気味。カリカリ音は何だったのかね。
自殺は、神への、命への冒涜だから、成仏できないだろうし、健康でまだ続くはずの命だったのだから生への執着があって焼かれる前にカリカリ音を出しちゃったのかな?…なんて思ったりもした。

[5304]
今日はシラフなんで坊さんと仏さん間違ったところ、直してみた。
それから、コメント貰った仏さん三人とこ、親戚の葬式だから宗派も形式も分かってる上で三人は珍しいと言わせたんだが、なるほど読み手には伝わり難いかと、死んだの叔父とはっきりさせてに色々と家のことを付け足してみた。
サンキューっす。
[5303] 叔父の葬式へ行ってきたのだが…
父方の親戚、叔父なんだが…
投資系の詐欺にやられて尻の毛まで毟り取られてな、奥さん子供残して自殺した。
通夜と葬儀に出るため、教えてもらった斎場へ行った訳だが…
斎場ってだけでおかしいと思ったんだ。
親父の一族は、明治辺りに某県のど田舎へ移り住んで集落を作り新田を開いてな。
地名に初代本家の名が付けられてるんだわ。
戦後まで豪農として名をふるって、本家だの分家だのと古いしきたりが根強く残ってる。
親父は分家のひとつの次男坊、叔父は末弟で可愛がられていたから親に土地を分けてもらって独立し、そこに家を建て奥さん子供と住み暮らしてたんだ。
話が逸れたな。普通、一族の葬儀となると自宅葬で本家が取り仕切り、分家を顎で使ってやるものなんだ。
坊さんは集落にある寺で一族全員が檀家で墓もそこ。親父も俺も死んだらそこへ入る予定。
なんだが、喪主の奥さんが何を考えてんだか、一切合財を葬儀屋に任せちまったんだと。
なもんで本家の面目丸潰れな訳よ。
一族から自殺者なんか出してしまったことで、奥さんが遠慮してしまったんだとか、
伯父やその両親、祖父さん祖母さんがとりなして、墓はダメだったが坊さんは出してもらえることになったんだと。寺には本家の血が入ってるから言いなりなんだわ。
でまあ、異例中の異例な葬儀になった。
斎場へ着くと喪主より先に本家へ挨拶よ。両親の尻について分家の連中にもど~もど~もやってきた。
それを経てやっと叔父さんへ線香あげたんだが…
遺体が凄い状態だったらしくて通夜なのに、蓋がされちまっててな、
死化粧とか、飛び出した舌を切断して口を縫うくらいじゃ済まなかったみたいで、
蓋は釘で打ち付けられて対面することができなかった。
棺の脇に座る奥さんはまだ若いはずなんだが、やつれて一気に十歳も年を食ったみたいになって、両親が話し掛けてもまともに返事ができなくて、気を病んでんのかブツブツなんか呟いてる。
子供は小学五年生の女の子で暗い顔して奥さんの横で微動だにせず座ってる。
その周りを葬儀屋がせわしなく働いてる。
親族は手持ち無沙汰で、壁際にいくつかの集団作って世間話。
坊さんがやってきて通夜が始まった。
読経の間な、なんかずっとカリカリと木を引っ掻くような音がするんだよ。
どこから?前から…間違えなく棺から…
蓋を内側から爪で掻き毟ってる…としか…
親族も葬儀屋も誰だって叔父が生き返ったなんて思わない。
で、ガン無視する暗黙の了解…
死に方が死に方だから確実に死んでるし、読経止めてまで確かめたい奴ゼロだ。
坊さんもなんか経を読むスピード上がってるし。
全員、顔を引き攣らせて背中に嫌な汗かいてるみたいな中、にやにや?
奥さん子供だけが、何がおかしいのか凄い笑みを顔に刻みつかせていた。
それ以外はおかしなことはなく通夜は終了。

ただなあ、俺や両親みたく泊まりがけで来た親族…
斎場で…遺体の傍らに布団敷いて寝ることになったんだが…
遠くてもホテルに部屋取っておくんだったと後悔したよ。
明かりを落として寝てると、真っ暗闇の中、床を伝って棺から、カリカリ引っ掻く…例の音が聞こえてくるんだ。
それはもう我慢できないからと、頼んで先に葬儀をあげる部屋へ棺を先に移してもらうことになった。
こういう例は、以前から結構な数ありますよと、葬儀屋は言っていた。
ほとんど眠れないまま、朝が来た。

葬儀は11時から、坊さんが三人きた。
本山から急遽呼んだのだとか。
夜中、何者かが棺の蓋を開けたとか、葬儀屋がひそひそやってるのを聞いた。
打ち付けられてた釘が外され、仏さんの無理矢理組まされた手、揃えられた足は目立たないよう紐で縛られてたのも解かれてたとか…
遺体が盗まれた訳でもなく、普通じゃなくなってる奥さんがやったのだろうと言うことで…

時間になったので葬儀が始まった。
棺は元通りになって刺繍の入った白い布がかけられ、花輪や生花が祭壇に飾られて普通の葬式に一応見える。
でも、親族の葬式で坊さん三人は違和感がある。
数は増えた坊さん達、それでもなんか焦ってるのか…
無理矢理力で押さえ込もうとするようなハイスピード読経。
対抗するみたいに棺の中のカリカリ音が大きくなってくし。
焼香ん時な、喪主の奥さん見たんだがすげえ嬉しそうに…昨夜以上に笑ってた。
狂っているとしか思えんくらいな、娘と二人で笑ってるんだ。
もうなんか我慢大会みたいな葬式だったよ。逃げたら負け的な。
途中で席を外した親族が何人もいた。
親父も最後までいない方が良いかもしれんて、焼香から戻ってきて俺とお袋にそっと言った。親父にすれば実の弟の葬儀なんだけどな。
全員の焼香が終わって坊さんが挨拶した。
なんか、やれることはやったとか最善は尽くしたとか、患者を死なせた医者の言い訳けみたいなことを言ってた。
葬儀屋のスタッフな、裏方は知らんが進行役の女性…酷い顔色してるし、俺等親族だってどん引きだっつうのに…
奥さんと子供だけ、いまにもハレルヤでも歌い出しそうなくらいの上機嫌。
んで、遺体を焼き場へ運ぶんだが、棺は蓋が閉じられてるから、遺体と別れの挨拶も、棺内を花で飾ることも無しで見送った。

仏さんを焼き終えて納骨の儀になり、親族一同が部屋に集められた。
専用のストレッチャー上にあった遺骨な、突風が巻き起こって、勝手に開いたドアから全部攫って持っていっちまった。
奥さんと子供から歓声が沸き上がった。
坊さん三人は茫然自失の体で、俺達親族は皆、腰を抜かして床の上にへたり込んじまったよ。
「あいつらを地獄へ落としてやって」
突風が出て行ったドアに向かって奥さんが叫んでる。お父さんがんばれと娘も叫んでた。
我慢の限界。精進落としまでなんかいられん、すぐ帰るぞって両親。
俺だってこんなところに一秒だっていたくない。
髪や礼服についた遺骨の粉を手で払い落とし、引き物なんか待合室に置いてっちまえって、
奥さん子供の笑い声を背に俺と両親は斎場を後にした。

その後のことは両親も俺も努めて聞かないようにしている。
葬式で経をあげてくれた坊さん全員が、それから何日もしない内に死んでるとか、絶対ヤバイし。
ただなあ、本家と分家で葬式が最近、頻繁にあるんだよな。
今回は従兄弟だし、両親に任せっきりはできないから…
俺も出なくちゃならんのだけど…
[5270] カクテル怪談
都内でカクテルバーを経営している者でカワラジと申します。先日、店で不思議な話を耳にしましたので紹介したいと思います。

常連のお客様に佐田さんという建設業界を定年退職された方がいらっしゃいまして、怪談好きな私が何気なく話をふった所、こんな話をして下さいました。

「道路にしろビルにしろ、でかい工事に入る前には必ず呼ぶ人物がいたんだよ」

名前は最後まで口にされませんでしたが、どうやら神主や住職とは別に行動されていたようです。

地鎮祭等にはかなりの費用が掛かります。当然領収書が出せるようちゃんとした?神社や寺に依頼する訳ですから、その霊能力者(敢えてそう呼びます)を呼ぶには別途支払いをしなければなりません。その費用、何と全社員の給与から五千円ずつ、ある名目で差し引く形で莫大な金を捻出していたとの事。

にわかには信じがたい話ですが、なにせ元幹部の証言ですから信憑性は高いのではないでしょうか。

私は東北生まれで関西より西へはまだ行った事が無く、実際はどうなのか知りませんが、中国自動車道の岡山に近い広島県内で、高速道路とは思われないようなUターン箇所があるらしいのですが、その人物の忠告でそんな事になったのだとか。

「江戸時代に深く掘られた井戸が何ヵ所もありそれぞれ違う水神様を祀っている。その辺りはまさに日本のヘソに当たり、空気の汚染や騒音は逆鱗に触れる」

結果言い付け通り井戸から半径2km以内には道路を通さなかったのです。

佐田さんは苦笑する。

「政府に近い陰陽道関係者じゃないか?とかいう噂だったな。今でもねえ、あそこで事故が起きないよう祈ってるよ」

彼からは、まだ色々聞けそうです。


[5257]
お坊さん3人は珍しいことではないよ。その地域や宗派にもよるかもしれないけど、うちのあたりでは、一般的。むしろ、1人の方がちょっと費用を削った葬儀だと思われ恥ずかしいくらいかな。費用はかかるけど複数人のお坊さんに来ていただくことが手厚く供養する姿勢の表れだったりする。
[5255]
坊さんと仏さんごっちゃになってんなー飲みながらたったからなー失礼した
[5251] 親戚の葬式に行ってきた。
親父の方の親戚なんだが、投資系の詐欺にやられて尻の毛まで毟り取られてな、自殺した。
通夜と葬儀に出るため、教えてもらった斎場へ両親と行った訳だが…
遺体が凄い状況だったらしくて、死化粧やら飛び出した舌を切断して口を縫うとかじゃ済まなかったみたいでな、仏さんと対面することは出来なかった。
通夜なのに既に納棺されててな、蓋が釘で打ち付けられて開かなくされてた。
残された奥さんと子供な…
喪主の奥さんはまだ若そうなんだが、やつれ方?憔悴っぷりが半端じゃなくて、挨拶もまともにできない様子、子供も小学校高学年くらいか?女の子でな…暗い顔してお棺の脇でじっと座ったまま。
葬儀屋が全て取り仕切って、せわしなく働いてた。
坊さんが来て通夜が始まる。
読経の中な…なんかずっとカリカリ引っ掻く音がするんだよな。
どこから?前から…間違いなく棺の中からだった…
蓋を爪で掻き毟ってる…としか…
遺族も葬儀屋も…誰だって生き返った…なんて思わない。
死に方が死に方だからな…坊さんもなんか経を読むスピードが早くなってるし。
全員、顔を引きつらせて背中に嫌な汗を浮かせてるみたいな中、奥さんと子供だけすごい笑みを顔に刻みつけてた。
通夜はそれ以外、おかしなことはなかった。
ただなぁ、俺等みたいに泊まりがけで来た遺族とか…斎場で一夜を明かす訳だが
遺体の側で寝泊まりになるんだが…ずっと棺が中からカリカリ引っ掻くんでな。
先に棺だけ葬儀あげる部屋に行ってもらうことになった。
こういうことは結構ありますよとか葬儀屋は言ってたが…

ほとんど眠れず朝が来た。
葬儀は11時から、坊さん三人来た。
夜中、棺の蓋が開けられてたとか…釘打ち付けられてたのにな。
仏さんの無理矢理組まされた手、揃えられた足は目立たないように紐で縛られてたらしいんだ。それも解かれてたとか…
普通じゃなくなってる奥さんがやったんだろうと言うことにして時間になったから葬儀が始まった。
お棺も元通りになって白い布が掛けられ、花輪とか生花が飾られて普通の葬式に一応見える。
やっぱ仏さんが三人いるのは妙な感じだった。
お通夜の時と同じで仏さん達、焦ってるみたいなハイペース読経。
ず棺の中からカリカリ引っ掻く音してたしな。
奥さんと子供もやつれた顔に嫌な笑み浮かべて…
焼香に前へ出るのこんなに嫌な葬式初めてだ。
棺を引っ掻く音は止まないし。
我慢大会みたいな葬式だったな、逃げたら負け的な。
でも、途中で斎場を出てったの何人もいたな。
親父も最後までいない方が良いかもしれんと、焼香から戻ってきて俺とお袋に言った。
読経が終わって坊さんの挨拶で、なんかやれることはやったとか最善は尽くしたとか…患者を死なせた医者の言い訳みたいなこと言ってた。
葬儀屋のスタッフも限界近いみたいな酷い顔色してるし。
奥さんと子供だけが、ハレルヤでも歌い出しそうなくらいの顔してた。
納棺終わってるし、死者とのお別れもできない
花で棺を飾ることもできない。
異例だらけの葬儀だった。
火葬な、仏さんを焼き終えて骨壺に納めるとき、部屋の中だぜ?ストレッチャーで運び出された遺骨を突風が巻き起こって全部攫って持ってっちまった。
奥さんと子供から大歓声が起こった。
仏さん三人は茫然自失の体で、俺達は腰抜かして床の上にへたり込んだよ。
「あいつらを地獄に落としてやって」
とか、奥さんは両手を激しく振って大喜び。
もう、精進落としなんかいらんから帰るってな。
髪とか礼服に付いた遺骨の粉とか払い落として引き物なんかいらねーって。
奥さんの笑い声を背に斎場を後にした。

その後のことは両親も俺も知りたくないと敢えて聞かないことにしてる。
父方の親戚に葬式増えて頻繁にそっちへ行く機会があるのだが、なんか怖くてな。
ヘタレですまん。
[5185]
↓↓おだまる君が殺したかった相手だね
[5184] 夢の中へ
おだまる君は他のコメ欄でバカにした奴をオタクにして殺したかっただけだろこれ。あまり深く考えないで書きとばした感じ
足立君になれないと知った森田君は足立君を殺そうとして自分のノドを鉛筆で突いた?よくわからないけどね
[5165] 夢の中へ
「猿夢」入ってる?
受験「戦争」と、二十四の瞳の世界が歪んでコラボっちゃった?
[5158] 夢の中へ(訂正)
二十四の瞳に出てくるような古臭い教室。おそらく先生であろう若い女が教壇から僕に声を掛ける。

「足立君」

目が覚めた。夢だった。妙にリアルな夢。目覚めがあと一秒遅ければ僕は確実に答えていた。

「はい」と。

僕は森田。でも夢の中の僕は足立だ。何の違和感も無く返事をしようとしていたのだから間違いない。

先生の顔に見覚えは無い。でも夢の中の僕は確実に知っていた。何で足立君は知っているのか?同じ僕なのに。ちょっと悔しい。



二十四の瞳に出てくるような古臭い教室。若い女の先生が教壇から僕に声を掛ける。

「足立君」

「はい」

目が覚めた。何と昨晩の続きだった。

先生の顔に見覚えは無い。でも返事をした時には確実に知っていた。紛れもなく僕が、僕の口で「はい」と言ったのに、僕は先生の名前すら知らない。悔しい悔しい悔しい…。先生は、足立君は知っているのに森田君を知らない。それが悔しくて堪らない。悔しい悔しい悔しい…そして、足立君が羨ましい。先生の事、もっと知りたい。だって先生、とっても綺麗だから。

返事した時の気持ちの高ぶりが、目覚めた後も僅かに残っていた。足立君は、先生が好きで好きで仕方がないんだ。こうなったらもう僕が足立君になるしかない。でないと永遠に先生との距離が縮まらない。



二十四の瞳に出てくるような古臭い教室。若くて美しい先生が教壇から僕に声を掛ける。

「足立君」

「はい」

「偉いわねえ~また満点よ。他のみんなも足立君を見習いなさい」

目が覚めた。先生の笑顔は最高に素敵だった。

好き…

でも、足立君も先生を狙ってる。早く足立君にならなきゃ先生を取られちゃう…






「あんた!!!まさか寝てたんじゃないでしょうね!!!今日は面接の日でしょ!!!」

「分かってるわ!!!朝っぱらからうっせーなババア!!!」

「何その…」ツーツーツー…

携帯を壁にぶん投げると頭から布団をかぶる。



二十四の瞳に出てくるような古臭い教室。優しくて美しい先生が教壇から僕に声を掛ける。

「足立君」

「はい」

「足立君は大人になったら何になりたい?」

「兵隊さん!!悪い米兵をやっつけてやるんだ!!!」

目が覚めた。やっぱり僕は森田で、足立じゃないんだ。だって…兵隊になんかなりたくないんだもん…戦争なんて嫌いだ。でも…先生の事は、大好きだよ…。






「あんたああああ!!!もうアパート引き払うから!!!電車乗り継いで様子見に来たら、これだ!!!」

「だって……」

「だってじゃない!!!」

「……」

「私ちょっと用事があるから出るけど、明日、お父さんとまた来るから荷物まとめときなさい!!いいわね!!!」

「……」



二十四の瞳に出てくるような古臭い教室。小百合先生が近付いて来る。

「足立君」

「……」

先生は泣いていた。

「戦争が、早く終わるといいね」

「僕は、僕は…」

「足立、君?」

「足立じゃないいぃぃぃ!!!」

僕は、穴だらけの机に転がっていた鉛筆を握りしめると立ち上がった。


先生を、誰にも渡さない…





「あなた!!!ちょっと来て!!!」

「どうした?」

「この子、死んでる!!!」







[5029] 開かずの踏切(卒業写真②)
「先生、もしかして何か……見た?」

「見た?」自分で聞いておきながら反射的に(ヤバい……)と思った。先生の様子から何かあったのは確かなのだ。

案の定、先生の顔色が変わる。

「先輩、外に、出ません?」

見下ろす先生の目が「何も喋るな!!」と叫んでいた。

アルバムが視界に入るのを避けながら腰を上げ、玄関に向かう先生の後を追う。背後に何かいる気がして、俺は飛び出すように通路に出るとエレベーターに向かった。

先生の「喋んな」オーラはその後も続く。霊感の無い俺はそれまで、自分が当事者になる日が来ようとは思ってもいなかった。生首に襲われようが、髪の長い女が水面に顔を出そうが、所詮は他人事だから楽しめたのだ。オカルト好きの正体は、ただのヘタレだったわけである。

深夜の街をただ黙々と歩く。いつもなら気にも留めない橋の欄干から覗く闇が、路地の死角が、明かりの消えたビルの窓が、異様に恐い。

かなり歩いた。さすがに沈黙に耐えきれなくなって、前を歩く先生に声を掛ける。

「どこまで歩くんだ?」

「最近できたファミレスまで」

「走ろうぜ?」

「了解っす」

俺たちは2分程走って闇夜に煌々と浮かび上がるファミレスの階段を駆け上がった。

息を切らしながらドアを開けると、そこにはいつもの人間社会が広がっていた。見慣れた光景が、影すら存在しないかのように眩しかった。

「先輩、すみません……もう、怖くて……」

「罰としてションベン付き合え。話は後だ」

「いいすけど、先に何か注文しません?」

「ケーキ二個とチョコバナナパフェ!!」

先生が久々に笑った。





「で、何があったんだ?」

テーブルに戻ると俺は早速本題に入った。

「先輩、本当に何も感じなかったんすね……」

「だから何?勿体ぶらないでさっさと言え」

「…………」

「おいマジかよ!!ここに来てダンマリは無しだぜ?」

「……僕あの時、エアコン切りに行ったじゃないすか?」

「…………」

「そしたら、後ろから、凄い視線を感じたんすよ……」

「後ろって俺が座ってた方からか?」

「ですね……ゾッとして振り向いたら……」

「あのな、さっさと言え。いや、待て。心の準備をする」ケーキとパフェを一気に平らげる。

「で?」

「やっぱ、言うのやめようかな……先輩ビビりだし」

「アホか……想像して逆にこええわ」

「本当に何も感じなかったんすか!?」

「しつけえな!!悪かったな鈍感で!!」

「…………」

「だから何なんだよ!!正直にあった事を話せ。俺の横に血まみれの女生徒が立ってたか?」

「先輩の……」

「俺の?何だ!?」

「先輩の身体に一瞬、ほんの一瞬ですけど、佐伯春菜の顔が浮かび上がったんすよ」

「…………」

「頭が半分、欠けてて……眼球が……」

「…………」

「…………」

「事実は想像より衝撃的、だな……」

「顔はもう、判別出来ないくらい酷くて、でも、先輩写真見てるから分かると思うんすけど、オカッパで、だから彼女だと……やっぱ黙ってた方が良かったすかね?初めてです……あんなにハッキリ見たのは……」

「……それって何か?俺に憑いた、て事?」

「その時はそう思いました。でも、違うと思います」

「何で判る!?」

「今は、視線感じないんで」

「……散々恐がらせたんだから、ここは先生のおごり、だよな?」

「どうぞ」

俺は店員を呼びハンバーグ定食と特製サラダを注文した。

「先輩、大丈夫すか!?」

「何か、無性に腹減るんだわ。憑依した女生徒が食いたがってんのかもな」

「だから、違いますって……」

「だーら何で判るんだよ!!根拠が視線だけじゃ不安でよ。天井見てるかも分からんし」

「あのう、先輩、つかぬ事聞いていいすか?」

「何?」

「先輩には、妹さんがいます?」

「え!?いるけど何?今、確か高二」

先生、真面目な顔をして「だからか……」と言った。

「何が、だからか、なんだよ」

「先輩は、特に意識はしてなかったかもですが、これがもし妹だったら、とか考えてませんでした?」

「ん~確かに考えたかも知れんな……」

「それが彼女との距離を縮めてたんですよ」

「…………」

「ほら、よく波長が合う合わないって言うじゃないですか?」

「合うと見るとか言うわな……」

「先輩は恐れる一方で彼女の事を身近に感じてた。感情の波が家族に向けるようなものになってたんです。彼女、そんな思いに反応、てか感応したんだと思うんすよ」

「ふーん……でもさ、それってやっぱやばくね?憑かれたって事じゃん」

先生は少し間を置いて独り言のように呟いた。

「彼女は、開かずの踏切から出られないんです」

「開かずの踏切?」

「部屋に現れたのは多分、本体じゃないと思います。何かは良く判りませんが……」

「本体?何でそう言い切れる?」

「……彼女、佐伯春菜も、元は僕らと同じ、普通の人間だったんです。亡くなってもう何年も経ってますけど人間だった頃の感覚がそうそう変わるとは思えない」

「どういう事?」

「先輩?」

「ん?」

「僕も何か、腹減ってきちゃった」

先生がいきなり、食べ掛けの俺の皿からフライドポテトをつまんで自分の口に放り込んだ。

「他人(ひと)の取んなよ!!先生が払うんだから好きなもん頼めばいいじゃん!!」

「ケチ!!」

その顔が可笑しくて俺は笑った。笑いながら、恐怖が次第に遠退いていくのを感じていた。

先生が憑いてないと言うのだから憑いていないのだろう。いつの間にか俺は、霊能者でもない彼の言葉を受け入れていた。そしてそれは、自分の中ではごく自然な事だった。

先生がミートスパゲッティを食っている間、俺はずっと自ら死を選ぶ人間について考えていた。

人の苦悩は当人にしか判らない。他人には取るに足らぬ事のように思われても、本人にとっては地獄の苦しみかも知れない。もしも死によって本当にその地獄から解放されるのなら、その行為はまんざら捨てた物じゃない。存在が完全に消滅するのであれば、もしくは明るく楽しい世界に飛び立てるのであれば、少なくとも本人にとっては、いたずらに悩み苦しんでいるよりも遥かにマシだからだ。



「先輩、僕は、もしかしたら凄く冷たい人間なのかも知れません……」

「どした!?急に……」

「初めて踏切で彼女の視線に触れた時、感じたのはとてつもなく深い絶望、でした」

「…………」

「僕には、それが痛いほど伝わったんです。だけど、どうする事も出来ないじゃないですか」

「まあな……」

「それに……」

「それに、何だ?」

「正直、自業自得だとも思ってたんです。理由は何であれ、飛び込んだのは彼女自身なんですから」

「…………」

「あの時彼女は、間違いなく僕を見てた。霊がもし、人間の心が読めるのなら、僕はただ、祈った振りをしてるだけの偽善者だと見抜いた筈です。だから、アルバムの視線もひどく遠かった。彼女にとっては僕もトンビに過ぎなかったんです。遥か彼方に見えてはいるけど、ただそれだけ……結局は赤の他人だったわけです。でも、先輩は違った」

「…………」

「彼女の顔、座ってる先輩の太ももに浮かんだんです……横たわってて、とても苦しそうでした」

「…………」

「憑依していないって言いましたよね?」

「あ、忘れてた。開かずの踏切がどうとか」

「列車に突っ込んだんです。目撃者の話では後処理が大変だったようです」

「だろうな……」

「おそらく腕も、足も……」

「…………」

「彼女の感覚が人間だった頃のままなら?」

「……動けない……」

「彼女はまだ線路の上にいます。動けるわけないんです。踏切から出るのは到底不可能だと諦めてる筈なんです」

「じゃあ先生が部屋で見たのは、何だ?」

「霊界の事はよく判りません。だから想像するしかないんですけど、彼女は部屋に来たんじゃなくて、先輩の優しさと彼女の心がリンクした瞬間、距離なんか吹っ飛んでしまった。そう考えています。彼女が見たビジョンが何なのか、霊が人の心に反応するってどういう感覚なのかさっぱり判りませんが、彼女に起きた何かはあくまでも線路の上での事であって、例えば、生番組をテレビで見てるようなものだと思うんです」

「けど、相手は幽霊なんだぜ?そうとも言い切れないんじゃないのか?」

「僕は霊能者じゃないから……でも、横たわってる彼女の顔、何というか、苦痛に満ちてて、あれは、今の彼女の姿だとしか思えないんですよ。上手く言えないんですけど、踏切から離れた場所にいるという自覚が全く感じられない……言ってる意味解りますかね?」

「何となくな……」

「遮断機は下りたまま、警報器も鳴りやまない。彼女は今でもまだ、そんな世界にいるんじゃないすかね……もしかしたら、彼女が見ていたのは僕じゃなくて、遮断機なのかも知れません」

「可哀想だよな……そう考えると……」

「ほら、その気持ちが彼女に伝わったんですよ。僕思うんですけど、彼女と僕の部屋を繋げているのは間違いなくあのアルバムです。だから先輩は、アルバムから離れてさえいれば多分大丈夫だと思います。だけど、全てが想像だから当てにはなりません。彼女次第では今後本格的に憑依する可能性もあるかと……」

「嫌な事言うなあ……」

「だから先輩……彼女がまだ踏切にいる内に、何とか成仏させてあげたいんですよ」

「どうやって?」

「取り敢えず親父に頼んでみます。顔広いから」

「霊能者か?」

「ですね。それしか思い付きません。何で今までほったらかしにしてたんだろ……やっぱ、冷たいすよね……」

「なるべく早くしてくれ……」

「朝イチで連絡とってみます。でも、まず一度二人で踏切に行って花供えましょう。僕は謝りたいし、先輩も、その方がいいと思います。何となく」

「先生、鹿児島だったよな?遠いなあ……」

「旅費、食事代、全部持ちます。酒代も」

「ひょー!!行く行く!!」






[5028]
↓推敲も大事だが、加筆修正することを考え、パスワードを入力して投稿する事が最も重要だと思う。なんてな
[5027] 推敲はやはり大事
管理人さんカフェ→パフェ(泣)
[5023] 開かずの踏切(卒業写真②)
「先生、もしかして何か……見た?」

「見た?」自分で聞いておきながら反射的に(ヤバい……)と思った。先生の様子から何かあったのは確かなのだ。

案の定、先生の顔色が変わる。

「先輩、外に、出ません?」

見下ろす先生の目が「何も喋るな!!」と叫んでいた。

アルバムが視界に入るのを避けながら腰を上げ、玄関に向かう先生の後を追う。背後に何かいる気がして、俺は飛び出すように通路に出るとエレベーターに向かった。

先生の「喋んな」オーラはその後も続いた。霊感の無い俺はそれまで、自分が当事者になる日が来ようとは思ってもいなかった。生首に襲われようが、髪の長い女が水面に顔を出そうが、所詮は他人事だから楽しめたのだ。オカルト好きの正体は、ただのヘタレだったわけである。

深夜の街をただ黙々と歩く。いつもなら気にも留めない橋の欄干から覗く闇が、路地の死角が、明かりの消えたビルの窓が、異様に恐い。

かなり歩いた。さすがに沈黙に耐えきれなくなって、前を歩く先生に声を掛ける。

「どこまで歩くんだ?」

「最近できたファミレスまで」

「走ろうぜ?」

「了解っす」

俺たちは2分程走って闇夜に煌々と浮かび上がるファミレスの階段を駆け上がった。

息を切らしながらドアを開けると、そこにはいつもの人間社会が広がっていた。見慣れた光景が、影すら存在しないかのように眩しかった。

「先輩、すみません……もう、怖くて……」

「罰としてションベン付き合え。話は後だ」

「いいすけど、先に何か注文しません?」

「ケーキ二個とチョコバナナカフェ!!」

先生が久々に笑った。





「で、何があったんだ?」

テーブルに戻ると俺は早速本題に入った。

「先輩、本当に何も感じなかったんすね……」

「だから何?勿体ぶらないでさっさと言え」

「…………」

「おいマジかよ!!ここに来てダンマリは無しだぜ?」

「……僕あの時、エアコン切りに行ったじゃないすか?」

「…………」

「そしたら、後ろから、凄い視線を感じたんすよ……」

「後ろって俺が座ってた方からか?」

「ですね……ゾッとして振り向いたら……」

「あのな、さっさと言え。いや、待て。心の準備をする」ケーキとカフェを一気に平らげる。

「で?」

「やっぱ、言うのやめようかな……先輩ビビりだし」

「アホか……想像して逆にこええわ」

「本当に何も感じなかったんすか!?」

「しつけえな!!悪かったな鈍感で!!」

「…………」

「だから何なんだよ!!正直にあった事を話せ。俺の横に血まみれの女生徒が立ってたか?」

「先輩の……」

「俺の?何だ!?」

「先輩の身体に一瞬、ほんの一瞬ですけど、佐伯春菜の顔が浮かび上がったんすよ」

「…………」

「頭が半分、欠けてて……眼球が……」

「…………」

「…………」

「事実は想像より衝撃的、だな……」

「顔はもう、判別出来ないくらい酷くて、でも、先輩写真見てるから分かると思うんすけど、オカッパで、だから彼女だと……やっぱ黙ってた方が良かったすかね?初めてです……あんなにハッキリ見たのは……」

「……それって何か?俺に憑いた、て事?」

「その時はそう思いました。でも、違うと思います」

「何で判る!?」

「今は、視線感じないんで」

「……散々恐がらせたんだから、ここは先生のおごり、だよな?」

「どうぞ」

俺は店員を呼びハンバーグ定食と特製サラダを注文した。

「先輩、大丈夫すか!?」

「何か、無性に腹減るんだわ。憑依した女生徒が食いたがってんのかもな」

「だから、違いますって……」

「だーら何で判るんだよ!!根拠が視線だけじゃ不安でよ。天井見てるかも分からんし」

「あのう、先輩、つかぬ事聞いていいすか?」

「何?」

「先輩には、妹さんがいます?」

「え!?いるけど何?今、確か高二」

先生、真面目な顔をして「だからか……」と言った。

「何が、だからか、なんだよ」

「先輩は、特に意識はしてなかったかもですが、これがもし妹だったら、とか考えてませんでした?」

「ん~確かに考えたかも知れんな……」

「それが彼女との距離を縮めてたんですよ」

「…………」

「ほら、よく波長が合う合わないって言うじゃないですか?」

「合うと見るとか言うわな……」

「先輩は恐れる一方で彼女の事を身近に感じてた。感情の波が家族に向けるようなものになってたんです。彼女、そんな思いに反応、てか感応したんだと思うんですよ」

「ふーん……でもさ、それってやっぱやばくね?憑かれたって事じゃん」

先生は少し間を置いて独り言のように呟いた。

「彼女は、開かずの踏切から出られないんです」

「開かずの踏切?」

「部屋に現れたのは多分、本体じゃないと思います。何かは良く判りませんが……」

「本体?何でそう言い切れる?」

「……彼女、佐伯春菜も、元は僕らと同じ、普通の人間だったわけですよ。亡くなってもう何年も経ってますけど人間だった頃の感覚がそうそう変わるとは思えない」

「どういう事?」

「先輩?」

「ん?」

「僕も何か、腹減ってきちゃった」

先生がいきなり、食べ掛けの俺の皿からフライドポテトをつまんで自分の口に放り込んだ。

「他人(ひと)の取んなよ!!先生が払うんだから好きなもん頼めばいいじゃん!!」

「ケチ!!」

その顔が可笑しくて俺は笑った。笑いながら、恐怖が次第に遠退いていくのを感じていた。

先生が憑いてないと言うのだから憑いていないのだろう。いつの間にか俺は、霊能者でもない彼の言葉を受け入れていて、それは自分の中では至極自然な事だった。

先生がミートスパゲッティを食っている間ずっと俺は、自ら死を選ぶ人間について考えていた。

人の苦悩は当人にしか判らない。他人には取るに足らぬ事のように思われても、本人にとっては地獄の苦しみかも知れない。もしも死によって本当にその地獄から解放されるのなら、その行為はまんざら捨てた物じゃない。存在が完全に消滅するのであれば、もしくは明るく楽しい世界に飛び立てるのであれば、少なくとも本人にとっては、いたずらに悩み苦しんでいるよりも遥かにマシだからだ。



「先輩、僕は、もしかしたら凄く冷たい人間なのかも知れません……」

「どした!?急に……」

「初めて踏切で彼女の視線に触れた時、感じたのはとてつもなく深い絶望、でした」

「…………」

「僕には、それが痛いほど伝わったんです。だけど、どうする事も出来ないじゃないですか」

「まあな……」

「それに……」

「それに、何だ?」

「正直、自業自得だとも思ってたんです。理由は何であれ、飛び込んだのは彼女自身なんですから」

「…………」

「あの時彼女は、間違いなく僕を見てた。霊がもし、人間の心が読めるのなら、僕はただ、祈った振りをしてるだけの偽善者だと見抜いた筈です。だから、アルバムの視線もひどく遠かった。彼女にとっては僕もトンビに過ぎなかったんです。遥か彼方に見えてはいるけど、ただそれだけ……結局は赤の他人だったわけですよ。でも、先輩は違った」

「…………」

「彼女の顔、座ってる先輩の太ももに浮かんだんです……横たわってて、とても苦しそうでした」

「…………」

「憑依していないって言いましたよね?」

「あ、忘れてた。開かずの踏切がどうとか」

「列車に突っ込んだんです。目撃者の話では後処理が大変だったようです」

「だろうな……」

「おそらく腕も、足も……」

「…………」

「彼女の感覚がまだ、人間だった頃のままなら?」

「……動けない……」

「彼女はまだ線路の上にいます。動けるわけないんです。踏切から出るのは到底不可能だと諦めてる筈なんですよ」

「じゃあ先生が部屋で見たのは、何だ?」

「霊界の事はよく判りません。だから想像するしかないんですけど、彼女は部屋に来たんじゃなくて、先輩の優しさと彼女の心がリンクした瞬間、距離なんか吹っ飛んでしまった。そう考えています。彼女が見たビジョンが何なのか、霊が人の心に反応するってどういう感覚なのかさっぱり判りませんが、彼女に起きた何かはあくまでも線路の上での事であって、例えば、生番組をテレビで見てるようなものだと思うんです」

「けど、相手は幽霊なんだぜ?そうとも言い切れないんじゃないのか?」

「僕は霊能者じゃないから……でも、横たわってる彼女の顔、何というか、苦痛に満ちてて、あれは、今の彼女の姿だとしか思えないんですよ。上手く言えないんですけど、踏切から離れた場所にいるという自覚が全く感じられない……言ってる意味解りますかね?」

「何となくな……」

「遮断機は下りたまま、警報器も鳴りやまない。彼女は今でもまだ、そんな世界にいるんじゃないすかね……もしかしたら、彼女が見ていたのは僕じゃなくて、遮断機なのかも知れません」

「可哀想だよな……そう考えると……」

「ほら、その気持ちが彼女に伝わったんですよ。僕思うんですけど、彼女と僕の部屋を繋げているのは間違いなくあのアルバムです。だから先輩はアルバムから離れていれば多分大丈夫だと思うんですよ。だけど、全てが想像だから当てにはなりません。彼女次第では今後本格的に憑依する可能性もあるかと……」

「嫌な事言うなあ……」

「だから先輩……彼女がまだ踏切にいる内に、何とか成仏させてあげたいと思うんですよ」

「どうやって?」

「取り敢えず親父に頼んでみます。顔広いから」

「霊能者か?」

「ですね。それしか思い付きません。何で今までほったらかしにしてたんだろ……やっぱ、冷たいすよね……」

「なるべく早くしてくれ……」

「朝イチで連絡とってみます。でも、まず一度二人で踏切に行って花供えましょう。僕は謝りたいし、先輩も、その方がいいと思います。何となく」

「先生、鹿児島だったよな?遠いなあ……」

「旅費、食事代、全部持ちます。酒代も」

「ひょー!!行く行く!!」






[4978]
オムライス食べたって書いてあるよ。文章全体から見て、店員は生きた人間ではないね。
[4977] 噂の廃トンネル
レストランで何食べたの?美味しかったの?店員は人間だよね?
[4976] コメントありがとうございます
※4969宛
たしかにそうですねw

その方法が一番だと自分も思いますw
[4969] 噂の廃トンネル
ま、あれだ。そいつらはみんなワライダケ食って死んだんだ。笑い返してやりゃ仲間だと思って襲っては来なかった。俺の霊視によると、ま、そういう事。
ふと思ったんだけど幽霊も人間がニタニタ笑ってたら怖いんじゃなかろうか?「こいつとは関わらんとこ」てな。笑いながら「あんた、ひどいよ!あんた、ひどいよ!」て近付くんだ。俺が幽霊なら引くわ~
[4966] 噂の廃トンネル
はじめまして、初投稿です。
いつも、別の形でこのサイトにお世話になっている者です。
これは、あまり怖くないかも知れませんが、恐怖体験を一つ語らせてもらいます。


あれは、俺が高校を卒業してから、原付の免許を取って直ぐの時でした。

原付の免許を取ったのは、俺を含めて、A、Bの3人でした。
Aはバリバリのヤンキーで、免許を取る前から原付を乗り回してましていた血の気が多い不良少年。Bは見た目は怖いが、やけに冷静で優しい性格の奴だった。

何故か仲の良かった俺達三人組は、とある山の中にあるキャンプ場へと、一泊だけの旅行を計画していた。
あまり頭の良い3人組みでは無かった為、持って行く物は寝袋だけで大丈夫だろうと、テントを持って行く者は誰もいなかった。
そのキャンプ場までは、山の奥深くへ入っていった所にあり、近くには人が住む民家などは全く無い場所だった。
俺達3人は昼頃から出発して、地図も持たずに、感覚だけでそのキャンプ場へと目指していた。

もう随分と長いこと走っていたが、なかなか目標のキャンプ場が見当たらなかった。
時間は、夕方の5時くらいになっていて、辺りはもう日が沈んで薄暗くなっていた。
そこで、Aが突然。

「お! おい! あそこに飯屋があるぞ! ちょっと休憩しよーぜ!」

と、Aが指を指す方向を見ると、そこには古びれたログハウスのような飲食店があった。
その飲食店へと、原付を進め、玄関の看板を見ると”営業中”と書いており、
昼飯もまだだった俺達3人は、急に腹の虫が鳴り、急ぎ足で店の中へと入った。
店の中は、外見とは逆で、レトロ調の綺麗なお店だった。ジャズなどが静かに流れていて、雰囲気の良いお店だ。
そこに、50代ぐらいの女性が奥の方からエプロン姿で出てきた。

「いらっしゃい^^ 何処でもお好きな所どうぞ^^」

感じのいい店員さんだった。
窓際にあるテーブル席へと座った俺達は、一息ついた後、オムライスを三つ頼んだ。

すると、Bが僕とAに小声で話しかけてきた。

B「なぁ…、こんな所に店ってあったか?」

A「あ? そんな事、どうでもういいだろう?」

と、言っていた。
実は、今回が始めての旅行ではなく、何度かキャンプ場には言った事がある。
位置は殆んど覚えてはいなかったが、目指す方向と道だけは何となく正しい事だけを覚えている。というより、殆んどが一本道の道路なのだが…。確かに、前回来た時には無かった、道中でこの店の事を気がつかない訳がなく、道を途中で間違えたというような事も無いはずだった。
そこで、Bは店員にこの近くにあるキャンプ場を尋ねた。

店員「あ~、この近くね^^ あるある! この道を行ってたら看板があるはずよ?」

B「そうですか。それと、この店っていつ頃からやってるんですか?」

店員「・・・・・・」

Bの質問が聞こえなかったのか、店員は真顔になり、店の奥へと姿を消した。

B「あれ、何かマズイ事でも聞いたかな?」

A「お前…、今、あのおばちゃん、マジ顔だったぞ?w」

B「・・・・あれぇ? なんでだろ・・・」

確かに妙だった。別に悪気のある質問でもないのに、にっこりした顔から、急に冷めたような顔で無視をするのには、何か理由があったのだろうか。
だが、会計の時には元通りになっていた。
やはり、さっきは聞こえていなかったのだろうとBは安心していた。
それにしても、聞こえなかったとしてもあの冷めた顔が妙に気になるというか、少し恐怖を感じていた。

店から出た俺達は、再び原付へ乗り、出発しようとした時、急にAが。

A「おい、ちょっと待てよ」

B「どうした?」

俺「もう、日が沈むぞ?」

A「だからいいんじゃねぇーか! おい、あの場所行って見ないか?」

B「おいおい、まさかアレか?」

Aが言う”あの場所”とは、昔から噂になっていた心霊スポットの事だった。
噂では、そこに廃トンネルがあり、そこでクラクションやライトをハイとローに切り変えたりすると、幽霊が現れると言われるという噂だった。
その場所は、キャンプ場の近くにあるという事を最近聞いていた。
オカルト好きのAとBは、今思い出したように目をキラキラとさせていた。

A「よっしゃ決まり! 行って見るか!」

B「ったく、お前も好きだな」

俺「Bの方が好きなんじゃないのか?」

そして、キャンプ場への看板はわりと直ぐに見つかり。
一旦キャンプ場の寝床を探す事にした。

A「寝る場所どうする?」

B「あそこの、屋根がある休憩所みたいな所にしようか」

俺「寝袋しか無いからな・・・。丁度、ベンチもあるしいいかもな」

俺達は、バーベキューもできそうなレンガ作りの釜戸がある木造の休憩所へと寝袋をセットして、貴重品以外の荷物はそこに置く事にした。
キャンプ場には、他に家族と思われる車と、テントや食事などをする用のテントが一つだけ見えた。

俺(あ、他にも人が居る・・・。正直、俺達だけだったら不安だったし、ちょっと安心するな・・・)

A「じゃ、さっそく行って見ようぜ!」

B「丁度、日も落ちたし。雰囲気出てきたな」

俺「しょうがねぇーなー」

俺はこの時、正直行きたくなかった。隠してはいるが、人一倍怖がりなのだ。
そして、俺達三人はキャンプ場を放れて、例の場所へと原始付きを走らせた。

A「お、あれじゃねーか? たしか、あの地蔵を右に…」

B「おい、これ本当にあってるのか?」

俺(うおおぉぉ! 暗い! 怖い! 道路に草とか生えてるし! 誰もここ走って無いって証拠だ! それより、何だか寒いぞ? 何であの2人は平気なんだ?)

そして、Aは原付を止めた。

A「あれ、おっかしいな? この辺だって聞いたんだけどなー」

B「もう、キャンプ場から随分と離れたぞ? 噂だけで、本当は無いんじゃないか?」

俺「どうする? この先には外灯も無さそうだし、ヤバイよ・・・」

A「お? ビってんのか? お前」

俺「ビビってねーし! いいぞ! 行こうや!」

この時の俺は、馬鹿にされると直ぐに強がる癖があり、無理な事でも直ぐに出来ると言ってしまう悪い癖だ。

俺「うおおおおお! 寒いぜええええ!」

俺は全速力で原付を走らせた。

B「おい! ガス無くなんぞ! 待てよ!」

A「いいねぇ! よっしゃ俺も!:

そして、俺は直ぐに原付を止めた。
それから、拍子抜けしたような顔をしたAとBも止まった。

A「あん? どうしたんだよ?」

B「あ・・・・・・・」

俺「もしかして、あれなんじゃね?」

俺達3人の目の前には、車がギリギリ2台通れるぐらいの広さで、苔やら草が生い茂った壁の、比較的小さめなトンネルがそこにあった。
入り口には外灯も何も無くて、それがトンネルだとは直ぐには分からなかったが、妙に吹き抜ける嫌な風が、俺に気づかせた。

俺「暗い・・・な・・・」

A「な? 言った通りだろ?」

B「あ、あったんだ・・・本当に・・・」

オオオオオォォォォ・・・・っと風のせいか、そんな呻き声のような音が聞こえていた。

A「よっしゃ! ジャンケンな!」

B&俺「!?」

A[は? ここまで来たら、やるだろ普通」

B「お前がやれよ、A」

A「いや、俺はやるよ。でも、お前らもやるだろ? だから順番決めようぜ?」

俺「なんじゃそりゃ! こんな暗い・・・ってか何処に繋がってんだこれは」

A「だからそれも調べるんだろうが! さ、はやく決めようぜ」

B「最初は勘弁したいな・・・」

A「最初はグー・・・・」

俺も最初に行くのは嫌だったので、反射的に手を出したが、結果的に2人に負けてしまった。

俺「マジか! お前らグルだったろ!」

A「いいから早よいけや! 俺が最後なんだからよ!」

言い出しっぺのAがジャンケンに勝ち誇った顔でニヤニヤと俺を急かした。
ルールは、トンネルを出口まで走ったあと、入り口の方へ向けて、ライトをハイとローに切り替えるだけだった。

俺「くそ! お前ら、俺が行った後に帰るとか無しだからな!」

俺は覚悟を決めてトンネルへと入った。
トンネル内は酷く寒かった。原付には広く感じるが、妙な圧迫感も感じる嫌な空気があった。道路もジャリや草などがお茂っていて、何度も踏む音が聞こえた。もちろん外灯の明りもなく、真っ暗闇の中を走った。
そして、

俺「うおっ! 危ねぇ!」

俺は急ブレーキを掛けて、急停車した。
目の前にはガードレールが道を塞いでいた。そして、そこには花束が置かれていた。

俺「な、なんだ? 崖なのか? 花束って・・・自殺か? やべぇ!」

そして、俺は急いで入り口の方へ向かってライトをチカチカとハイとローで照らし、全速力で入り口へと戻った。

A[お、早いな! あんまり長くなかったのか?」

俺「いや、最後が行き止まりだった・・・気をつけろよ」

B「わかった、次は俺だな・・・」

そして、Bがトンネルへと入って行った。
しばらくして、遠くの方からライトがチカチカと見えた。
そして、やはり怖かったのだろうか、Bも全速力で帰ってきた。

B「・・・・・・・」

俺「・・・・・おい、B?」

A「よっしゃ! 最後は俺だな? お前らビビリすぎwゆっくり帰って来てやるよ!」

Bの様子が変だった。
そんな事に気づかずにAは、余裕なのか蛇行運転でエンジンをブンブン吹かしながらヤンキー走りで暗闇へと消えた。
途中で、ヒャッホー!とか奇声が聞こえた。本当にAは怖い物知らずなのだと、この時の俺は関心していた。

B「・・・・お前。あれ、見たか?」

俺「・・・・え?」

Bの顔は青ざめていた。今までに見たことの無い顔で、それは直ぐに本当にヤバイと思わせる顔だった。

俺「見たって・・・。ああ、あの花束か?」

B「違ぇーよ! 顔だよ!顔! 壁に顔があっただろうがぁ!」

Bは突然、怒ったように大きな声でそう言った。

俺「え? な、なんだよ! 何怒ってるんだよ!」

B「違う! 顔だよ! 見たろ? お前も!・・・・・おーい!!A!!!早く戻ってこーーーーい!!!!」

Bは物凄い大声で、迫真の演技をしているようにも見えたが、本気でヤバイと感じるそんな声でAを呼んだ。

B「やべぇ・・・、マジで・・・・、冗談じゃねぇーぞ・・・・」

Bは放心状態のような、口をパクパクさせながらAが戻ってくる方を見ていた。俺はBの大声で、身体が震え上がったように動けなくなっていた。
それは、普段冷静なBがあんな大きな声を出すという事は、よほどヤバイ事だと分かったからだ。

俺「な、何があったんだよ! 言えよ! わかんねぇーよ!」

B「顔が壁にいっぱい張り付いてたんだよ! 全部笑って俺を見ていやがったんだよ! Aが戻ったらすぐに帰るぞ!」

俺「マジか! わかった! オーーーーーーーーーーーーーーーイ! Aぇぇぇぇぇえ!!!!]

俺も必死にAを呼んだ。
すると、Aのライトがチカチカとせずに、こちらへと全速力で戻ってくるのがエンジンの音でわかった。
”ゆっくり帰る”と余裕で行ったAが全速力で帰ってくるという事は、きっとAも何かを見たのだろう。
そして、Aが乗る原付のライトの明りがだんだんと大きくなり、俺達はそれを迎え入れようと止まっていたが、Aはそのまま俺達2人を全速力で通り過ぎて、キャンプ場の方へと向かって行った。

俺「・・・・・・あ」

B「俺達も行くぞ!」

俺「あ・・・・ああ・・・そう、だな・・・・」

B「おい・・・、アレ・・・」

俺「え?」

Bが、俺の後ろを指さした。
俺はゆっくりと後ろを振り返った。
その時だった。
トンネルの奥の方から、チカッチカッっとライトが見えた。
その瞬間、全身が総毛立ち、俺とBは無言で原付をアクセル全開で走り出した。
俺はその逃げる途中で、ずっと考えていた。
それは、先程のAとすれ違う時の、Aの顔の事だった。
真っ白な顔だった。それにあんなにも姿勢を正して、口をポカーンと開けて、真っ直ぐと目を見開いていて、何かとんでもない物を見てしまったというような顔だった。俺達に目を向ける事なく、過ぎ去ったその姿は不気味で仕方なかった。

俺「おい! B! とりあえずAを・・・・」

B「・・・・・」

Bも真っ直ぐと前を見たまま、俺の声が聞こえていないようだった。
そして、俺は少し冷静になって、何故か後ろを見てしまった。
すると、そこには。

俺「な・・・・」

そこには、安全ヘルメット? を被って作業服を着ている男が満面の笑みで、俺の2メートル後ろまで追いかけてきていた。
それは、宙に浮いていて、手足が操り人形のようにブランブランと揺らせながら、原付のフルスピードにピッタリとついてくる感じだった。
カーブに入っても、同じように曲がってブランブランとさせながらついて来た。

俺「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

B「!?」

Bも気づいたのか、後ろに顔を向けた。

B「わあああああああああああああああああああああああ!!!!」

そして、俺達は叫びながら山道を走り、キャンプ場へと向かった。
走っている途中は、視界の横で常に、ニタニタと笑っている男の顔が見えた。俺は見えていないフリをしながら、震える手をなんとか押さえて走り続けた。
時折、ブランブランと揺らしているが原付のミラーに当たり、ミラーで後ろが確認できなくなっていた。

俺「・・・・・・・・ガチガチガチガチ]

たぶん、寒さでなく恐怖で歯が震えていただろう。それからは声も出なかった。
その時、男は俺達が走る前へと、スゥっと意図も簡単に宙を移動するように浮いた。
原付のフルスピードで入っているにも関わらず、俺達の目の前とゆっくりとスピードを合わせるように近付いてきた。

俺&B「ぎゃあああああああああああああ!!!!」

そこで、俺はその男の姿をハッキリと見た。
その姿は、まるで動画にCGで貼り付けたような違和感のある姿で、手足をブランブランとさせたまま、右手には大きめのレンチを持っていた。
安全ヘルメットには小型のライトが付いており、先ほどのトンネルで見た明かりはこれだったのだろう。
男は、大体30代ぐらいに見える痩せ型の男だった。
相変わらず、顔は青白くニタニタと不気味に笑っていた。
そして、ゆっくりとBの方へと向かって、レンチを振りかぶった姿勢をとった。

B「うわあああああ!!やめろおおおおおおおおおおお!!!!」

俺はこの時、白状だが自分は助かると思ってしまった。
Bはそれを避けるようにしたが、誤って転んでしまった。

俺「B! おい! くそっ!」

俺はBが転んだ方へ、原付を向けた。
正直怖くて仕方なかったが、Bが転んだ事で、この亡霊への怒りが恐怖を吹き飛ばしたようだった。

B「うおおおお! 助けてくれええ!!」

俺「バイクを立て直せ! 早くしろ!」

背後が怖い。
視界には男の姿が見えない。
それでも、俺はBのバイクを立て直し、Bも滑り込むように転んだので大した怪我をしていないようだった。

B「・・・・・アイツは? いねぇぞ?」

俺「え?」

俺は辺りを見渡すと、確かにあの男の姿が見えなかった。
これはチャンスだと思い、俺達は直ぐに逃げ始めた。

B「Aは? Aを見なかったか?」

俺「わからん! たぶん先にキャンプ場に行ってるはずだ!」

そして俺達はキャンプ場の看板を見つけた。
すると、入り口の所にAがいた。

A「お! お前ら!」

B「お前らじゃねえよ! 死ぬところだったんだぞ!」

俺「とにかく荷物の所に行こう」

Aは俺達の事を心配していたらしく、ずっと待っていたらしい。
俺達は最初に寝床を決めた休憩所へと向かった。
そこから周りを見ると、最初に見た家族連れのキャンプの明かりが見えた。

B「お前ら、荷物をまとめろ。直ぐにここからも逃げるぞ!」

A「お、おう!」

そして俺達は直ぐに荷物をまとめて、帰る支度を済ませた。

俺「ちょ、ちょっと待って。あそこでキャンプしてる人達にも教えてくる!」

B「え? いや・・・・それは・・・・。ああ、わかった。俺達は入り口の方で、アイツが来ないか見張ってるわ」

A「え? アイツってなんだよ!?」

俺「わかった、直ぐに行く」

俺とBは、Aを無視するようにしていた。事を早く済ませたかったからだ。
そして俺は、家族連れと思われるキャンプへ向かった。

俺「あ、あのこんばんわ・・・・。・・・・っえ?」

俺は驚愕した。
そこには、男の子2人と夫婦が、テーブルを囲うように姿勢良く真っ直ぐと座っていて、全くこちらに反応を見せる素振りもせず、ニタニタと笑いながら2対2でお互いを見詰め合っているように全く動かなかった。

俺「あ、あの! すいません!」

全く反応が無い。子供の一人はコップを途中まで持ったまま固まっている。
そこ光景が不気味で怖くなり、俺は直ぐにAとBの元へ行く事にした。

B「おう、どうだった?」

俺「あの家族もヤバイ、笑ってた」

B「行くぞ!」

有無を言わさないように、Bは急発進させて、来た道を進んだ。
Aと俺も直ぐにそれを追いかけるように急発進させた。

A「おい! ちょっとよぉ!」

B「何だぁ?」

A「あの店に逃げねぇか?」

あの店とは、最初に訪れた飲食店の事だろうと、俺とBは直ぐに分かった。
そして、かなり早いスピードで後ろをちょくちょく警戒しながら、飲食店へと着いた。

A「明かり付いてる・・・、た、助かったんだ!」

B「もう10時か・・・、遅くまでやってるんだな」

俺「こんな山奥なのにか・・・? まさか・・・」

A「お、脅かすなよ! 大丈夫だって!」

俺「あんな事があった後だぞ? 俺はもう帰りたいんだよ!」

B「まぁ、飯食ったら直ぐに帰ろう」

そして、Aは直ぐに店の入り口へと走り、玄関を開けた。
勢いよく玄関を開けたAは固まっていた。
そのAの姿を、横から見た俺とBは直ぐにAの元へと走った。

B「・・・・・・・」

俺「・・・・・・・」

A「あ、あの・・・」

あの店員が直立不動のまま、ニヤニヤ顔でコチラをジッっと睨むように見ていた。このあまりにも不自然で不気味な店員にAも気がついたのか、汗をどっぷりと掻いていた。

A「何なんだよ! 何なんだよチキショー!!!」

そして俺とBはAを引っ張るようにして原付へと戻り、そのまま無事に帰る事が出来た。
家に着くまで、俺達3人はずっと無言だった。
そして、それからは特に何も起きていないが、この事は俺達3人だけの秘密にしておこうとなった。
因みに、Aが見たものは、”明るくニコニコと笑いのある作業場”と書かれた看板を見た後、6人ほど作業着を来た男がニヤニヤしながら立っていたと言っていました。そして、あれからはその付近には近よらなくなりました。


終り

結局、あれは何だったのかよく分からなかったんですが、3人だけの秘密にしておいてもアレなんでここに投稿させていただきました。
あれ以来、自分は人の笑顔が苦手ですw
[4847] 一応オリジナルで実話です
僕はY県のJR某駅近くのテナントビルでカクテルバーを営んでるんだけど、根っからの怪談好きってのもあって、深夜になるとたまに客と怖い話で盛り上がる事がある。

先週も、地元の不動産屋に勤務するAさんの話で店内は大いに盛り上がった。

僕は地元出身じゃないので知らなかったんだけど、平成になりかけの、昭和の後半10年の間に、新聞沙汰になった自殺が三件あるらしい。その三件が三件ともその方法が特異だった事から、地元で育った客は皆覚えていた。

一人はガソリンスタンドの前で焼身自殺。一人は海辺の林の中に車を乗り入れての排気ガスによる自殺(腐乱した状態で発見)。もう一人は深夜小学校の体育館に忍び込み首を吊った。

A氏によると、その三人は全て、同じ物件の住人だったという。

話を聞いた者全員が(自分も含めて)、その家がどこにあるのか気になったが、Aさんは頑として教えてはくれなかった。

理由は「手離して現在は他人の持ち物だから」との事だった。客の中にマニアがいて「調べりゃ判る」と言う。すると真剣な顔で「あそこはマジヤバいから止めとけ」と怒っていた。そこで「絶対に場所を特定しない」との条件で話を聞く事が出来た。

「最後の自殺者である中古車販売店のオーナーに貸した時は月五千円だった」Aさんは続けた。「前の入居者が連続して自殺してるのを彼は知ってたのに。俺はむしろ止めたんだ。倒産して金に困ってて、家族には逃げられるわでかわいそうになってな。内心この人もやるんじゃないかなと思ってたんだが知らない間柄じゃないし、ガードマンから人生立て直すとかで懇願されて、つい」

一軒家の家賃が五千円。信じられない話だが事実らしい。

「彼の死後、二束三文で土地ごと売りに出したんだが売れる訳もなく、結局市に管理をお願いしてそれっきり。公園にでもするかって話だったが」

その物件は今もあるそうだ。

「その家、何故か百足が異常に多いんだ。屋内にも多いんだが、それでよく苦情の電話が掛かってきてたんだが、庭に大小三つの石が墓石みたいに並んでてな、まん中の石にはいつもでかい百足が何匹も干からびてた。夏場は特に凄いんだ。百足の集団自殺だよ」

僕はA氏に尋ねた。「自殺者が出る前の住人は?」

「大学の教授で車ごと崖から海に飛び込んで亡くなってる。一応事故扱い」

「その前は?」

「刑場跡地」

全員が押し黙った。


[4844] すいません
確かにおっしゃるとおりです、そうします。
次回はオリジナルで勝負します。(誰と?(´Д` ))
すいませんでした!
[4842] 収集マニア君へ
テーマに沿ったオリジナル投稿限定です。投稿の感 想・反響コメントも募集しています
という投稿広場の決まり読んだのか?
あんたのやってることは既成の作品を他人のサイトに無断で投稿しているというものだ。
自分のサイトを作って自己責任でやったらどうだろうか。
[4841] 殺生

もう前のことだけど、友人の知り合いに修行もしたという霊感の強い人がいた。

その人の亡くなってるおばあちゃんがもともと見える人で、 彼自身は小さい頃から勘が強くおばあちゃん子だったらしい。

ある秋の休日、一人で山で沢釣りをしていた時のこと。
その日はさっそく一匹釣り上げ、クーラーボックス?に魚を入れた。

しばらくして二匹目を釣ってボックスを開けたが、中に魚が居ない。
活きが良いので、跳ねてフタを開けて勝手に出てしまったのかと思い、また魚を入れた。

ところが、三匹目を釣ってフタを開けるとまたさっきの魚が居ない。
さすがにおかしいと思い、三匹目を「確かに入れたぞ」と確認し慎重にフタをして、 四匹目を釣ってボックスを開けたらやっぱり魚は居なかった。

すると、呆然とする彼の耳もとで「お彼岸に殺生しちゃいけないよ」という亡きおばあちゃんの声がした。

合点がいった彼はすぐに釣りを中止して、そして本気で修行をしてみようと思ったという。

随分前に聞いた話なんだけど、今でもお彼岸が近づくと思い出してしまう。

おわり
[4840] 八尺様?

田舎に母と里帰りした時に地元の子に誘われて川に釣りに行ったんだ。

そんときに「ぽ、ぽぽ。ぽぽぽ。」て鳩のような人のような声が聞こえた。
声のした方を向くともの凄く背の高い女の人が帽子かぶって立ってた。

俺は地元の子と顔合わせてキョトンとしてたけどいつの間にか女はいなくなってた。

翌日、突然、ほんとに何の前触れもなく一緒に釣りしてた子が死んだ。
外傷もなんにもなく、子供がいつまでたっても起きてこないので起こしに行ったら死んでたそうだ。

当然なにか変わったことはなかったか問い詰められたけど、怪我とか咳とかはなかったよ、ただ「ぽぽぽぽ」とか鳴く変な女の人と遭遇した。
そう言うと大人たちの顔色が一斉にかわり、亡くなった子の両親は泣き崩れた。

うちの母親も真っ青に血相を変え、その日のうちに親戚に囲まれて家に帰らされた。
どういうわけか目隠しさせられたまま駅まで車で向かったんだけど途中で例の「ぽぽぽ」って声が聞こえた。
駅につく頃には聞こえなくなったけどね。

15年くらい前のガキの頃の話だけど未だにあれは何だったんだろうと考えることがあるよ。

おわり
[4839] 某ダム湖

数年前にあるダム湖で夜通し釣りをしようと友人と夕方から出かけた時の事。

到着後、岸辺近くまで降りてみると赤い帽子を被った子供がいる。
しかしその時は季節が夏でまだ少し明るかった所為もあり何も思わなかった。
上から友人の呼ぶ声に振り返り、しばらくして同じ場所を見ると子供がいない!

「あれっ」と思ったが、その時も「余所見してる間に家に帰ったかな?」位の気持ちだった。

とりあえず子供がいた場所に荷物を置こうとその場所に向かったがその場所が何かおかしい。

よく見ると地面と思ったその場所はゴミや藻が集まって地面に見えただけだった。 当然この上に人が居られるはずは無い。

自分は思わずその場所に石を投げてみたのだが、
「ドッボーン!!」と石が沈む物凄い音がしてその瞬間に全身の総毛が立ち、 慌ててガクブルしながらとっとと帰りました。

おわり
[4838] 夜釣りにて

友人と無謀にも京都の某ダムにゴムボート(2隻)出して徹夜釣りにチャレンジした時の話。

そのダムはめちゃめちゃ縦長のダムで俺達は夕方からエントリーして2馬力船外機回して一番奥の奥まで行きました。
夕まずめ時期に結構釣って浅瀬で夕食、気分はちょっとしたキャンプです。
澄んだ空に輝く満月と煌めく星々が水面にも写り谷間のダムは幻想的な世界と化し時々野生動物の歩く音や鳴声にビビりましたがそのスリルを楽しんでいました。

時間がさらに進み、時刻は深夜1時頃、仮眠を取っていた俺は知人におこされました。

「なんやねん、こんな時間に」 「しっ・・、足音が聞える」
確かに足音が。
「動物じゃね?」「いや、あれは確かに人に違いない いったいどこだ?」
俺達はあたりを見回すと山の斜面に灯が見えました。やがて灯はある場所で止まりました。

「あれか、何やってんだろう」「カブトムシでも捕まえてんのかな?」
灯はさらに増え、どうやらロウソクを灯したようです。そしてさらに少しして...

カーン!カーン!カーン!

何かを打つ音が谷間のダムに木霊して響きました!そして何をしているかを思いつくのにそんなに時間はかかりませんでした。

「スゲ、あれってわら人形打ってるんだよな?」「おお、マジだな 俺ヤバイもん見るのって初めてやわ」
光源と俺達とはかなり距離があってしかも木々に隠れてこちらは確認できないはず。俺達はじっくりと様子を観察しました。

カーン!カーン!カーン!カスッ!カスッ!カーン!

「おい、今打ち損ねたぞw」「ほんまや鈍くさいなぁw」
俺達は必死で笑いをこらえましたがやがて、

カーン!カーン!カーン!ガスッ!...いったああああ!!

女の悲鳴がダム中に響き渡りました。もう限界です。

「ぎゃはははははww」「わは、わははは、ぷっくくくww」
ダム中に響く俺達の笑い声。

「誰じゃぁ!出てこーい!」
女の雄叫び。

「ヤベエ、怒ったww」「し、静かにしろって、ぷくくww」
必死で探す女。しかし俺達を探しあてることはできず、暫くして女は立ち去っていきました。

おわり
[4836]
切ない…
[4835] 一番好きな話
収集まにあです。
すいません、多分超有名なお話なので皆さん知っていると思いますが、僕の一番、二番を争うほど好きなお話なので読んで欲しいです。

勝手な事して、気分を害される方がいましたら申し訳ないです…(´Д` )
[4834] 守れなかった存在


桜の咲く季節になると思い出す。


俺は、小学校からの悪友3人とよくつるんで、高校生になっても遊んでいた。
A、B、Cの悪友3人と俺。そしてもう一人、同じく小学校からの付き合いがある“さくら”って言う女と。

さくらは俺らの中では、アイドルって程羨望の存在ではなかったが、他に女の子との付き合いも無かった中、そこそこ清純で可愛らしかったこともあって、『付き合いたい』という思いが全員の中に有りつつも、それをどこかお互いに悟られまいとしていた。

そんな歯がゆい関係だった。

高校3年の夏、俺ら5人は夏祭りのあと酒を買い、近所の公園で飲んだ。
酒の勢いもあってか、話題はいつしか『肝試し』になっていた。

近くの林の中には塚があり、塚の前で手を合わせると恐ろしい姿の女が現れ、女の姿を見た者は発狂するという、他愛もない噂が当時、半ば伝説のように伝播していたからだ。


「行ってみようぜ。俺らでさ」

当時、一番悪ぶっていたCが切り出した。
お調子者のBは気のせいかいつもの元気がなく、「やめよう・・・」と子犬のような顔でCを見る。

文武両道、正義感も強い俺らのヒーローAは乗り気なようで、さくらに「お前どうする?帰るか?」と気遣いも見せていた。

俺はといえば、さくらも一緒に行って、俺の肝が据わっていることを見せつけ、好意を寄せてくれれば幸いと、当時皆が思っていたであろうことを考え、 Aの問いかけに首を振るさくらの姿を期待していた。

「私も行く!あんた達だけじゃ不安!」
さくらも同行の意思を示し、俺達は林へ向かった。

あんなことになるとも知らず。



林を分け入って黙々と進んでいく。酒の力も徐々に薄れ、口数が少なくなっていく。
幸運にもさくらは俺の隣を歩いており、俺のシャツの袖を引っつかんでいた。

夜の林は、月の光とAの照らす懐中電灯のか細い光が頼りだったが、程なくして噂の塚に辿り着いた。

「ここで手を合わせる、んだっけ?」
Cはまだ酒が抜けていないのか、恐怖を表に出すまいと強がっているのか、普段見せないおどけた様子で塚に近づく。

Bは既に顔面蒼白で、「帰ろう・・・」と、Aと俺の顔を交互に見ている。
Aはつとめて冷静を保とうと、周りを注意深く観察していた。

さくらは相変わらず俺のシャツを掴んでいたが、もはやシャツが引きちぎれんばかりの力で、シャツを持つ手も心なしか震えていた。

「わあああああ!!!!!!」
Bが物凄い声で叫んだ。

途端、俺たちは恐怖と緊張のピークを超え、脱兎の如く散り散りに逃げ出した。誰がどう逃げたか、どこをどう走ったかも覚えていない。

ただ、闇雲に転げ周りながら走った。


林からどうにか抜け出すことができた俺。
公園に帰り着きしばし呆然としていると、少し遅れてAが戻ってきた。

「他のやつらは?BとCとさくらは?一緒じゃないか?」
Aにきつめの口調で問われ、一人で逃げてきたことを後悔しつつも、会っていないことを伝える。
Aは舌打ちをすると、一緒に探しに行くよう俺に求めた。
だがさすがのAも怖かったのか、懐中電灯を落としてきたという。

公園から一番家が近い俺が、懐中電灯を取りに戻り、その後再度林に入ることとなった。

家から懐中電灯を持って、公園に戻ったときには、Cも公園に命からがら辿り着いたところだった。

Cも俺と同様、Bとさくらは見ていなかった。更に、探しに戻るのも嫌だと言うC。

「言いだしっぺはお前だろ!」
AがCを睨み付ける。

Cはばつが悪そうに、「悪かったよ・・・」とAに詫び、続けた。

「でも、俺見たんだよ。女みたいな影がさ、塚の後ろから出てこようとしてんのをさ・・・」
普段悪ぶって、俺らを鼻で笑う態度のCはそこになく、今にも泣き出しそうな顔をしている。

「女が顔を上げようとしたときBが叫んだから、『やべぇ!』って思ってさ・・・」
それを聞くと、俺も先刻の光景を思い出し、行くことが躊躇われた。


行くことを拒むC、行って2人を探すことを主張するA、どっちつかずの俺。 3人が膠着状態となっていた時、土まみれのBがとぼとぼ歩いてきた。

息は乱れ、Tシャツは伸び、あちこちから血も出ている。

「大丈夫か」と駆け寄り、「さくらは」とBに問いかける。
Bは泣きながら、「わかんない」と答えるだけだった。

それぞれの親に事情を話し、警察にも連絡して、その日の夜は町内総出でさくらの捜索が行われたが、行方はわからなかった。

件の塚周辺も重点的に捜索されたが、手がかりさえ何も見つからずその後何週間にもわたって捜索は続いたが、さくらは見つからなかった。

俺らも自発的に毎日林に集まってはさくらを探した。
1週間もするとある程度の覚悟はできていたが、『さくらを探す』のであって、『さくらの亡骸を探す』のではない。と自分に言い聞かせて探し続けた。

さくらが見つかったのは翌年の春、桜の咲く頃だった。



さくらは林の出口付近で、白骨化した状態で見つかった。衣服と持ち物からさくらだと確認された。

くまなく探したはずなのに、なぜ見つけてやれなかったのか。俺らは悔やみながら、葬儀に参列した。

さくらのご両親は、俺らの事を決して悪く言わず、娘の良き友達として接してくれた。
それがどれ程辛いことか、当時の俺らにも痛いほどよくわかっていた。
Aはご両親に深々と頭を下げ、俺らが事前に決めておいた、さくらの弔いの為のお願いを始めた。

「さくらさんのお骨を、分けて頂けますか・・・?」
訝しげにAを見るご両親。
「5人でよく遊んだ公園の、桜の木の下に埋めてあげたいんです」
俺が続ける。

「気持ちは分かるけど、お寺さんに相談しないと・・・」
ご両親が戸惑っていると、やり取りを聞いていた住職が、「ご家族がお許しになれば、いいでしょう」と許可してくれた。

俺らは葬儀のあと、泣きながらさくらの一部を、満開の桜の木の下に埋めた。


俺らは進学、就職と、別々の道を歩いた。俺とAは進学、Bはフリーター、Cは就職した。

それぞれが忙しく日々を過ごし、さくらの忌まわしい出来事は考えないようにした。
もちろん、何かの折には公園を訪れ、桜の木の下で座りながらさくらのことを考え、語りかけたりもした。自分勝手だが、さくらとの綺麗な思い出だけを考えていた。

翌年の成人式。久々に4人で顔を会わせ、近くの居酒屋で昔話に花を咲かせた俺ら。

酔いが回り始めた頃、Cが唐突に言った。

「さくらに会わないか?」
Aが過敏に反応した。

「お前、よくそんなことが・・・」
慌ててCが釈明する。

「いや、公園に行こうって言ってんだよ!」
Bはあの時のようにあまり乗り気ではなく、「ゆ、幽霊にでもなって出てきたらどうすんだよ・・・」と怯えている。

CはBの背中を叩き、「さくらなら幽霊でも会いたいだろ」と笑って言った。
Cなりにあの出来事にけじめをつけようとしている、と思った俺とAは、公園に行く事に同意した。


4人で公園に来るのは、さくらを埋めたあの日以来だった。
夜風が酒で温まった体を容赦なく冷ましていく。
桜の木の幹は冷たく、春の訪れを遠く思わせた。

「さくら、会いてぇよ・・・」
Cが呟いた。

「ずっと好きだったのに」と続けた言葉に、全員が頷いた。
皆が言いたくて言えなかった言葉だ。

「俺もだよ」とAが、俺が言う。

「いつまでも好きだ」
Bが言い、誰ともなく手を合わせた。

「ひいいいいいい!!!!!!」
あの日と同じようにBが叫んだ。

桜の木の後ろから、あの日のさくらが、あの日の姿でゆっくり現れた。
あの日と違うのは、憤怒の表情と、体全体を覆う痛々しい生傷。
そして、股間からの夥しい出血だった。

さくらはゆっくりと俺らの方に、Bの方に近づいていく。Bは腰を抜かし、口からは泡を吹いている。
俺、A、Cは、金縛りにあったようにその場を動けずにいた。

「許して、許してぇ!!」
Bが震え、上ずった調子外れの声をあげる。
さくらはBの目の前まで来ると、Bの中に入り込むようにスッと消えた。
途端、Bが物凄い勢いで嘔吐を始めた。
ガックリと膝を折り、うつ伏せて吐く。血も混じっていた。

吐き終わると、今度は口を滅茶苦茶に動かし始めた。Bの口からは血と汚物がとめどなく流れた。
舌と口の内側を食い千切っていると気づいたときには、Bの体は痙攣し、Bは呻き声を上げながら白目を剥いていた。

ようやくBの元へ駆け寄った俺らの頭上で、「ごめんね」という声が聞こえた。
見上げた先には、きれいなままの姿のさくらがいた。 うっすらと涙を浮かべ、さくらは消えた。

「さくら!行くな!」
Aが叫んだ。
Cは倒れているBの元へ駆け寄り、瀕死のBを更に殴りつけた。
「お前が!お前がぁ!なんてことを!」
Cは泣きながらBを殴り続けた。俺はそれを止めることもできなかった。


Bはその後救急車で運ばれ、何とか一命は取り留めたが、口内と内臓に重大な損傷があり、顔の骨も折れていた(これはCが殴ったせいだったが)。

そして何より、精神に異常を来たしており、傷が癒えた後は精神病院で暮らすことになった。
CはBの怪我の責任を全て負うこととなり、傷害罪で逮捕されたが、「酔った勢いでの喧嘩」扱いで罰金刑となった。



春になり、俺とAは公園を訪れた。
さくらは無事に天国へ行けただろうか。

そんなことを考えていると、Aが言った。
「さくらは、強かったな・・・あの日、塚の後ろから女が出てきたとき俺もびびって逃げちまったけど、振り返ったとき俺見たんだよ。
さくらが逃げ遅れたBをかばってる姿を。それなのにBは、そのあとさくらを・・・」

Aの言葉に、言い知れぬ悲しさと空しさが滲んでいた。
俺は桜の木に手を合わせて祈った。


どうか、さくらが天国で幸せに暮らせるようにと。

おわり
[4814] 成る程ね
↓すぐ突っ掛かるのやめた方がいいよw
[4802] 4797です
収集まにあさん、キツい書き方してごめんなさい

確かに、聞いた話(っつー体裁)の投稿をしてるのは某氏も一緒だしね


それはともかく、素直なあなたにちょっと萌えました
[4799] 収集まにあ君へ
ここは広場だし半値でコピペ告知してるんだからいいと思うケドな。面白かったよンありがと♪
[4798] すいません
面白い話だったのでみんなにも見て欲しくてついやっちゃいました。(´・_・`)
ほんの出来心です、悪気はこれっぽっちもありません。本当にすいませんでした。
[4797]
他サイトの感想欄に長々書いてんのあんたか。

自分の作品じゃなく、収集した話を載せるのは、管理人さんの仕事じゃないの?
[4796] 女鬼トンネル

僕の住む県内に女鬼トンネルっていう小さなトンネルがあります。いわゆる心霊スポットです。

ある時そのトンネルの向こう側に住んでる女の子と僕の住んでる街で遊んでいました。
その子、僕の住む街に来るときには女鬼トンネル通らない道で来たそうです。

で、夕方近くなってその子が「親も出かけてることだし家遊びにこない?」とか言い出しました。当然承諾です。
その時遊んでいた場所からその子の家までの最短ルートが女鬼トンネル突破コースでした。

その子は「女鬼トンネルだけはヤバいって! 他の道から行こうよ」と半泣きで言い張りましたが、ヤる気満々だった僕は「平気だって! 行こうよ!」とその子を引きずる勢いでトンネルへ向かいました。

けど、いざトンネルに着いてみるとやっぱり後悔しました。日没直前の女鬼トンネルからはヤバいオーラ全開でした。

流石に此処を通り抜けるのは無理っぽい……でも今から引き返すのも…
などと考えていると、その子(めんどい、以下梓ね)がトンネルの脇にある階段を見付けました。

どうやらその階段を上ると山(ってか丘)の上を通って行けそうです。
助かったーなどと思いながら階段を駆け上がると、そこは墓地でした。

かなりビビりましたが、梓の手前、僕は虚勢を張りました。
「平気だって。墓くらいどこにでもあるじゃん」的なことを言いながらなんとか先に進んでいると突然梓が立ち止まりました。

「どしたの?」
僕が問いかけると梓は無言で少し先の墓を指差しました。
その墓には人形が供えられていました。フランス人形。

またもやビビりましたが、強がった僕は「平気だって。人形くらいどこにでもあるじゃん」的なことを言いながら、こともあろうにその人形を蹴り飛ばしました。


150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/17(金) 13:35:03.34 ID:4IsUQkhk0
>>148
人形蹴り飛ばす・・・・・・
どうみても死亡フラグです。
本当にありがとうございました。

149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/17(金) 13:34:52.56 ID:Gn+av1lQO
ちょwww蹴り飛ばすなよwww

152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/17(金) 13:36:55.22 ID:QcPpiZJx0
お前備え物に対してwwwwww


人形はそのまま墓の向こうの斜面を転がっていきました。
さらに脅える梓を連れて少し歩くとすぐに墓を抜けました。そこにあった石段を降りるとトンネルの向こう側でした。

そこから梓の家までは五分もかからなかったと思います。
やっと家にたどり着き、一息ついていると梓が「さっきから肩が重い」とか言い出しました。


158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/17(金) 13:41:16.57 ID:QcPpiZJx0
>>154
しかも憑かれたの梓かよwwwww


「絶対気のせいだって!」とか言いながら、ボディタッチを試みようと梓の背後に回りました。その時梓はパーカーを着ていましたが、そのフードが不自然に膨らんでいます。

「脅かさないでよ。フードに何か入ってるだけだって」
言いながらフードの中身を取り出しました。

どうみてもあのフランス人形でした。本当にありがとうございました。


164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/17(金) 13:45:41.75 ID:GAcZpPQs0
>>161
梓とばっちりくらいまくりんぐwwwwwwwwwwww

165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/17(金) 13:46:12.77 ID:IUm43Pni0
>>161
バロスwwwwwww すげぇキックだwwww
[4793] 故障中のエレベーター
短いケドこっちの方が好き。
[4792] 故障中のエレベーター

彼はエレベーターの管理、修理をしている。
ある日、病院のエレベーターが故障して止まってしまった、と連絡を受けた。

すぐに車を飛ばしたが、到着した時には2時間がたっていた。
現場へむかうと、人だかりがしている。
中には看護婦が閉じ込められているらしい。
「大丈夫ですかあっ!」
彼が呼びかけると、怯えた女性の声が返ってきた。
「出してください。はやくここから出して!」
がんがん扉を叩く音がする。
「待ってください。今すぐに助けます」
道具を並べ、作業に取り掛かった。
「扉から離れていてください!」
と叫ぶ。

「はやくはやくはやく!」
がんがんがんがんがん!!

「扉から離れて!」
彼はもう一度叫んだ。

がんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがん!!!

扉は狂ったように内側から叩かれている。ちょっと尋常ではない。

パニックになっているのだろうか…。周りの人も不安げに顔を見合わせている。
見かねて院長が扉に近寄って、怒鳴った。
「扉から離れなさい!危険だから!」

「離れてます!!」

女の悲鳴のような声が聞こえた。

「暗くてわからないけど…ここ、なにかいるみたいなんです!」

彼はぞっととした。
じゃあ、今目の前で扉を殴打しているのはなんだ?
つとめて考えないようにして大急ぎで作業にかかった。
扉を開けたとき、看護婦は壁の隅に縮こまり、しゃがみ込んで泣いていた。

彼女曰く、電気が消えた後、何者かが寄り添って立っている気配がしたという。
気配は徐々に増え、彼が来る頃には、エレベーターの中はそいつらで一杯だったそうだ。

おわり。
[4791] エレベーター

仕事中にエレベーターに乗ることがよくあるんだよ。お前らエレベーターに乗るときなんて何も考えないだろ?
目的の階数のボタン押して待つだけだ。

あれは夜の11時頃だったかな。俺の使うエレベーターは入って真正面に鏡があるんだよ。で、俺は地下1階から4階まで行きたかったんだ。
そして地下1階は夜中電気も消えてるし人影もないし、まぁ不気味な雰囲気プンプンなわけだ。特別心臓も強くない俺だから正直そわそわしてたんだ。

怖い思いを我慢してエレベーターの前まで来た。エレベーターは現在3階にいるようだ。しばらく待つな、と上ボタン押した。
エレベーターが地下まで来てドアが開いたんだ。何のことはない、普通だ。
そしてエレベーターに乗ったんだが。鏡に映る自分の全身を確認して振り返って階数ボタンを押そうとしたそのとき。

階数ボタンが全て押された状態なの。 1階から最上階の8階まで。
全部だぞ?お前らションベンちびるだろ。

え?っと思って怖くなったが他に上に行く手段もないしそのまま乗ることにした。
ここで1番怖いのは初めの1階なのはわかるよな?

上に上がるエレベーター。

1階に着く。
停まったがドアが開かねーんだよ。

おいおい。これやばいやつじゃねーの?

そして10秒くらいしたらまた上に向かうんだよ。

お前らこの恐怖想像できるか?

そんで2階で停まるわけだ。
案の定ドアは開かない。

おいおい勘弁してくれよ。超怖え。
この時点で俺は心に決めた。4階停まらなかったら緊急ボタンを押そうと。
緊急ボタンてのは外にいる技術員と会話できるボタンのことだぞ。

そしてまた10秒くらいしたら上に向かいはじめるんだ。

ここでふと気になる。
後ろ怖え、と。

全身映るだけの大きな鏡があって、なおかつ気のせいか気配を感じるわけだ。
やばい。見たくないけど見たくなるのが人間だよな?

だがその時点でかなりちびってた俺だ。見れるはずもない。
だが俺は何を思ったかドアの方を向いたまま後ろに下がってった。鏡が背中に当たるまで。
見れないながらも誰もいないと確認したかったんだろうな。

背中に当たる鏡。
特別何もない。

そしてエレベーターは3階に停まった。

ドアが開いたんだ。

ドアが開く瞬間あることを思い出した。

3階はエレベーターのドアの向かいに全身鏡があることを。
つまりだ。

エレベーターが開くと鏡が向かい合わせになる構造なんだよ。

瞬間的にやばいと思ったが時すでに遅く、俺はその暗闇の中に自分が映る鏡を見てしまった。

なんていうんだろうな。
もう頭の中は無なんだよ。その瞬間は。

鏡に映る全身の俺。

鏡に映ってるのが俺だと認識していながらも全身に鳥肌が立つ。
寒さとは違う冷感。

俺は鏡に背をつけるくらい後ろに立ってたから閉まるボタンを押しにいくにも動く必要がある。

しかし動けないんだよ。

俺が避けた鏡に何か映りそうで。

恐らく10秒で自動的に閉まるだろうと無心で待つことにした。

ガシャン。

とドアが閉まる前兆の音が鳴ったところで軽く息を吐く。
まだ問題は終わってないが向かい合わせの鏡で何もなかったことに安心したんだが。

恐怖は終わらなかった。

ドアが閉まろうとして動き出しているその機械音とは別に。
遠くの方から駆け足のタタタッっていうような音が聞こえた。

いやこんな時間に誰もいないだろ。駆け足っておかしいやん。
と、自分に言い聞かせるがその駆け足の音は次第にはっきりと。

しかも近づいているような気もする。

さすがにやばいやつだ。
俺はとっさに閉めるボタンを押しに前に出た。

が。
俺はそのときサンダルを履いていたんだが、焦りからか右足が脱げちゃって不意に右足を見るような姿勢になった。

そして目線を自分の後ろの鏡に向けてしまった。
あ、と思ったがそこには自分が映っているだけだ。
そして鏡越しにエレベーターのドアが閉まろうとしている。
いやすでに半分くらい閉まりかけてたよ。
でもタタタッが頭から離れない。
いやすぐ近くに聞こえる。
もうそこまで。

タタタッが止まった。

エレベーターの前にいる。

瞬きすらできない俺。

エレベーターのドアが閉まるのがこんなにも長く、ゆっくりなことはないだろ。

もう少しで閉まるドアの数センチのところで何かがハアハア言ってるんだよ。こう隙間から口だけ出して息をしてるみたいな?何も見えはしなかったんだけど。

恐怖MAX。
閉まれーっと念じたところでドアは完全に閉まった。

が。
その瞬間ドアがドンドン鳴った。

そんな人間いねーだろww

しかも規則的な感じじゃなくて無差別に。まぁリズムを刻んでるわけでもない。
これは完全におかしい。
しかしそんなことは関係ないのかエレベーターは上に上がっていく。
ドンドンとドアが叩かれてる音は下の方に移動していった。

仮に4階に停まったところで既に恐怖を克服することはできないんだけどな。
それでも何か安心感があるだろ?

ため息まじりに息を吐く。

ふー。

ドンドン‼︎‼︎ドンドンドン‼︎‼︎‼︎

ッッ(゚д゚lll)‼︎‼︎‼︎‼︎⁇

そのドンドンが足の下から鳴り響いた。

不意に『うおっっ‼︎‼︎‼︎』っと声が出た。
恐怖を感じたが何か冷静だったんだ。足の真下をドンドンやられてるからそこから移動したんだよ。

そしたらそのドンドンっていう音がエレベーター内を移動してるのがわかった。
そしてまた俺の真下にきたときにそこで停まったドンドン。

さすがに怖いのは当然で、そのドンドンから逃げ回るように移動したが同じように俺を探し、真下に位置する。

気が狂ったか、俺は足を地団駄した。逆にドンドンしてやったわけだ。本気の力で目一杯。

するとチーンっていう音がした。
目線をドアの上の階数表示に持っていくとそこは4階だった。

開く!

話は前後するが、その日は当直みたいな当番で40代の先輩と2人勤務だった。
4階に事務所っていうか宿直室みたいなところがあってそこに先輩と一緒にいたわけだ。

そんで必要な書類が地下にあるってことで俺が取りにいってたんだよ。

だからこんなに恐怖を感じてても4階にさえ行けば先輩がいると安心感があったわけだ。

そしてドアが開く。
4階は明るく、ドアが開くと同時に光がエレベーター内に入ってきた。
ドアが開いたところに先輩が立ってた。

当然それにもビックリして声を出したんだけど。先輩が『なにしてんだお前?』と何事もなかったように声をかけてくれたのが一気に安心感を与えてくれた。

そのとき気づいたんだが既にドンドンは消えていた。

とりあえず俺がとんでもない形相をしていたようで、先輩も心配してコーヒーを淹れてくれた。

俺は出来事を全て話した。

すると先輩は苦笑いしながら『気のせいだよ。疲れてるんだなお前。』いやいやいや。
疲れてたところでそんな勘違いなんかするか!

『‥‥でも。本当だって言うならお前には言っておいた方がいいな。』

は?なにを?
『夜勤の奴がお前と同じ経験をしてるのが何人かいるんだけどな。まぁ俺は聞いたことしかないけど。この会社作るときにエレベーターの設置工事中に事故で死んだ奴がいるんだってよ。』

初耳です。

『あのエレベーターも大分古いやつだろ?今じゃそんなことありえないんだろうけど一昔前はエレベーター設置するときに下から滑車っていうのか機械がちゃんと動いてるか確認するっていう作業があったんだってよ。』

まさか‥。

『そんであのエレベーター設置のときに下から指示出してるの聞こえなくてそのまま潰しちゃったって。だから今もエレベーターの下に祠?お札だったか?があるんだって。』

そんな曰く付きエレベーターよく稼働させてんな。
すると先輩がこう言った。
『よし。じゃあこれから清めに行くか!』

‥‥‥は?(゚д゚lll)

先輩、勘弁してくださいよ。

『いやお前には何かの合図を出してきたんだろ?それって放っといたほうがダメだろ。お前も今後安心して夜勤できねーべ。ほら、一緒に行ってやるから。』

マジ無理。
パワハラじゃんww

半ば強引に先輩に地下に連れて行かれることになった。
またあの恐怖のエレベーターに乗って。

先輩とエレベーターに乗るがボタンは当然押されてない。
先輩が地下のボタンを押した。

恐怖が蘇る。

3階に停まったのよ。
何も押してない3階に。

何も押してない3階に停まったエレベーター。もちろんさっきと同じように鏡合わせになる。しかし今度はさっきと違う。先輩が一緒だ。
『あれ?お前3階押した?』

押してませんよ。
『じゃあ何で停まったのよ。』
知りません。そしてさっきと同じ現象です。もしかしたらタタタッって‥‥。そう言おうとしたそのとき。
タタタッ‥‥‥。
うわ!先輩!聞こえます?ほらっ!
タタタッ‥‥。
『聞こえないわ。お前からかうのやめろ。』

マジです。超真面目。
『‥‥。聞こえねー。』
するとこの先輩がまたとんでもないことを言い出した。
『降りるか。』
はい無理ー。俺4階で待ってるんで先輩見てきてくださいよ。
『馬鹿か。お前が聞こえてるんだからお前が行かなきゃわからんだろ。ほら。』

足マジでガクブル。
3階で降りて鏡を通り過ぎ、非常灯だけのまっすぐな廊下を2人で歩く。当然先輩が前な。タタタッは聞こえなくなってたけど恐怖は消えない。そして数十メートル歩いたところで会議室の扉の前に着く。
『この中か?だったらもう無理だな。』
そう、夜間帯は防犯的な観点から宿直室以外のドアは基本鍵がかけられてるんだ。当然鍵は持ってない。
『どうだ?聞こえるか?』

聞こえません。
『ほら、空耳ってやつだろ。じゃあ地下まで行くか。』
もう帰りましょう。
『何の解決もしてないぞ。』
先輩になだめられ意を決してエレベーターまでの道を戻ろうとしたとき。歩いてきた数十メートルの道の突き当たりにエレベーターがあるんだが、そこが光ったり暗くなったりしてるんだ。定期的な速度で。
『なんだ?光が‥。』
先輩‥‥もしかしてエレベーターが開いたり閉まったりしてるんじゃ?

ガコン‥‥‥ガコン‥‥‥。

ほら、音が‥‥!
『ほんとだ。勝手に動いてんのか?』
先輩マジでやばいですよ。
『でもエレベーター乗らねーと上も下も行けないしな。行くだけ行くぞ。』
男前か。
そう言ってエレベーター前までそろりそろりと近づいていき、ついに角を曲がろうとしたときに丁度エレベーターは閉まった。そして定期的に閉まったり開いたりを繰り返していたのにシーンと動かない。
『下、押すぞ。』
ほんとにこの人は。怖くないのか?
先輩がボタンを押すと普通にドアが開いた。

そんでエレベーターに乗ったんだけど怖くて鏡見れねー。先輩が地下のボタンを押して俺はまたエレベーター内の鏡を背中にするように真ん中らへんに乗った。

足の下に違和感が。来たときには感じなかったけどなんか床がちょっとベトベトするんだよ。
なんだ?と思って床に目をやるとはっきりはわからないんだけど靴の跡が無数にあって、何かわかんないけどベトベトしてるんだよ。そこに埃が被ってる感じ。
あれ?来たときこんなのあったか?むしろこれだけ無数にあるんなら踏まないで乗ることなんて不可能じゃ‥?
俺らが降りた後に誰かが‥‥乗った?

先輩?これ‥おかしくないですか?こんな無数の足跡、来るとき無かったのに!
『なんだこれ。気持ち悪いな。なんか具合悪くなってきた。帰って寝るか。』
そうしましょう。
『でもお前明日の当直日誌になんて書けばいいんだよ。こんな経験今までないぞ。』
さすがに先輩もビビってるのか表情がこわばってる。
それでもだ。乗ったときに既に先輩が地下のボタンを押してるからエレベーターは下に向かう。

チーン。
地下1階にエレベーターが着いた。そこは3階と同じように非常灯だけがある資料室が並ぶ廊下。
『来ちゃったな。ついでに行ってみるか。ここまで来たんだし。』
もういいってマジで。
そう言って降りる先輩。一人でいるのも怖いから後を追う俺。

同じように廊下の突き当たりまで行って何もないのを確認するが、俺の耳はずっとエレベーターの音を追っていた。
開いたり閉まったりしている様子はない。

先輩、何もないですね。さっさと帰りましょう。
『ほんとだな。気味が悪いだけだ。』
そしてエレベーター前まで歩き上ボタンを押す。普通にエレベーターに乗って4階を押した。今度は全階ボタンは押されていない。
そしてエレベーターは3階まで上がる。
俺の心臓爆音。
まさか停まらないよな?

俺の心配をよそにエレベーターは3階を通り過ぎ4階で開いた。

その後何の現象も起こらず朝を迎えた。
俺の会社は隔週で当直があり、当直後には日誌の内容と夜間帯の報告を直接社長にするっていう変わった風習がある。
朝になって先輩が社長に報告にいったところ何故か俺も呼び出された。すると社長から。
『また出たか。君が怖い体験をしたのかい?』
言っていいのかわからなかった俺は先輩を見た。先輩は俺を見てうなづいた。言えってな感じに。

はい、怖かったです。
『そうか‥。ここ数年何も聞かなかったから大丈夫だと思ったんだけどな。君はエレベーターの事件のことも聞いたのか?』
はい。
『そうなんだよ。その事件が関わってるのかわからないけど君と同じような経験をした社員が今までに何人かいてね。この会社で働きたくないって辞めてったことがあった。けどこうも続くなら1度お祓いをしてもらった方がいい。今日はしっかり休んで、明日お寺さんにいこう。』
おいおい随分と大袈裟なことになっちゃったな。

そして翌日。先輩と俺は社長に連れられて近くのお寺さんにやってきた。
そこで社長からお坊さんに事の顛末を話していた。するとお坊さんはこう言った。
『それはあなたがどうとか言うことではなく、根本を払わなければいけないね。』

そう言うと社長が。
『じゃあさっそく。』と言って四人で会社に向かった。
すると会社にはエレベーターの管理会社?の人たちが作業服を来てエレベーターの穴を調べているところだった。
そしてエレベーターの穴の底まで連れて行かれた。
そこには卒塔婆っていうのか?位牌みたいなものと片隅に並べてお札が貼られてあった。

坊さんがお祓い道具みたいなのでなにやら唱え出した。
『ここに残る理由はない。成仏しなさい。』的なことをブツブツ言ってた。

そうこう30分は立ちっぱなしでそれを見てた。お祓い終わったのか坊さんが俺たちにこう言った。
『私はこの地に長く携わってきたが、この事故‥いや事件と言った方がいい。この事件はおそらく殺人であったのではないかと思います。
でなければこのような怨念めいたものとしてこの地に残る霊魂にはならないでしょう。私は霊の言葉はわからないがとても悲しさ、悔しさ、怒りなど負の感情が湧いてきました。』

殺人だと?こんな会社で。坊さん続ける。
『いつの時代も不可解な事件や殺人はあるからね。今となってはもうどうしようもないが、ただ成仏を唱えましょう。』

俺ら合掌。
それからエレベーターは通常稼働して特別問題なく過ごしていたんだけど、この事故の話を知らない奴が入社してきて初めての当直。今回は俺が先輩だ。
『資料室行ってきまーす』
と元気にエレベーターに向かったときに俺は懐かしく思い出した。あのときはマジで怖かったなと。そして後輩が戻ってきたんだけど後輩がこう言った。

『先輩、俺が資料室行ってるとき3階に行きました?』
は?行ってないよ。
俺は少し嫌な予感がした。
『あれ?だって俺地下にいたからエレベーター勝手に動いたんですか?3階で停まってたんですよ。』青ざめる俺。
『そしてタタタッで小走りで歩く音聞こえて‥‥。今日は先輩以外に誰もいないし。』

おいおい。
『あれ?でもそうだとすると‥あれ?じゃあ先輩どうやって戻ってきたんですか?エレベーターは俺が乗ってたのに‥‥。』マジか‥‥。
どうやらエレベーターの件と足音の件は別だったようだ。これ知った時マジで発狂しそうになった。

しかし原因もわからず、特別害はないとのことで知る人ぞ知る怪談話として除霊はしていない。
そして俺は今日も出勤するのだ。

おわり。
[4670] クロちゃん(後編)

で、ある一室に通されてしばらく待ってるように言われたので待ってるとお菓子とジュースを持ってクロちゃんが戻ってきた。

食べながらいろんな話をしてそろそろ帰らなきゃと思ってクロちゃんに玄関までおくってもらって、そのころ集めてたきれいな石をひとつクロちゃんにあげてバイバイしてもう一度バイバイしようと思って少し振り向いたらクロちゃんの後ろにひょろ長い影がふたつゆらゆら揺れてるのが見えた。その影が微妙に背が違う。

そんなものを見たんだけどその時はもう眠くて眠くて早くお家に帰らなきゃという感じで帰るとすぐ眠りに落ちた。

それからもしかしたら会えるかもと何度か林を探すんだけどあんな館があった形跡すらなくてみんなに聞いてもそんな館なんて最初からないよと言われてしまった。

クロちゃんとは一体誰でなんで私と遊んだのかわからないけどまたクロちゃんには会いたいなあと思ってる。
ただひとつだけ帰り際クロちゃんの後ろで揺れてたふたつの影はなんだったのかはわからない。もしかしたら子供のときに一度しか見ることのできない会うことのできない子だったのかなあとも思ったりした。
[4669] クロちゃん(前編)

立て続けに申し訳ない。

子供の頃にFさんが体験した話。

Fさんは病気で医者から空気のいい場所でしばらく病状が安定するまで過ごしたほうがいいというんで田舎の空気のいい場所に住んでたことがある。

で、おばあちゃんの家がちょうどそういう場所だったんでしばらくおばあちゃんの家で住んでた。

空気もいいし遊び場はたくさんあるし、何よりおばあちゃんが好きなFさんには天国のような場所だった。

たまにはおばあちゃんが飼ってた犬と遊んだりしたけど同い年の子と遊んだりもした。

で、いつからなのかちょっと曖昧だけど多分おばあちゃんの家に住み始めて少ししてからだけど夜中に友達が遊びに誘って来ることがあった。

その友達というのは外人さんみたいに肌が真っ黒な男の子ででも日本語がものすごいうまい子だった。

おばあちゃんが寝たのを見計らってこっそり出て行く。それが毎日楽しみだった。

Fさんはその子をクロちゃんと呼んでた。

まあ遊ぶって言っても夜中だからたかがしれてる。
ちょっと話したり本を一緒に呼んだりするんだけど必ず明かりのある場所でなおかつ人があまりいない場所でだるまさんが転んだをやる。

でもね全然動かないんだ。そのクロちゃんは笑いもしない。
いわゆるクールで口調はとっても優しいんだけどどっか暗いというかカゲのある子だった。

で、ある日また夜中にクロちゃんと遊んでた。

するとクロちゃんが突然「今夜でもうFとは遊べない。だから今夜は特別にぼくの家に招待するよ」
そう言ってきた。

で、「クロちゃんの家はどこにあるの?」と聞くとそんなに遠くない。
ちょっと離れた場所に夏になるとカブトムシがいっぱいとれるSという林があった。

で、その林の中に家はあるという。
で、林には数回行ってるんだけど家なんかあったかなあと不思議に思った。
でもクロちゃんはあるっていう。

子供のことだからべつにそれならそれで良かった。

さっそく行くと林の中に本当に家があった。

庭も立派で、何より家がすごい。
お屋敷みたいな映画に出てくる西洋館まんまだった。

でも夜中だからか不気味な感じで小さなドラキュラ城みたいなふうにFさんには見えてたという。

さっそく中に入ると正面に階段がある。
赤いカーペットというか敷物が敷かれてて左右になん部屋かあって扉にも凝った模様が彫られてて天井がすごい高かった。
見上げるとシャンデリアみたいな照明があった。
[4668] 名を間違えてしまった
奇妙→サド
[4667] 魔女の家、あるいはよしこちゃんち

心霊スポットっていうかまあその町でだけ怖いなあとか不思議だなあと思われてる場所とか建物とかってのがあると思うんだけどSくんの町にもそういう場所が1箇所あった。

まあ仲間ではそこを「魔女の家」と呼んでいた。
なぜ魔女の家なのかはわからない。
ただ思うに蔦とか絡まっていたから見た目が魔女の家っぽいからだと思う。魔女の家は空き家で誰も住んでない。前は誰かが住んでたっていう。

でも遊び場っていうとやっぱり広い公園になる。
魔女の家はただ怖い怖いいうばかりでみんな近づかない。
遊びに行こうなどという子供はいなかった。

で、いつも決まった仲間で遊んでたんだけどいつの間にか知らない女の子が仲間に混じって遊ぶようになった。
名前も知らない。
みんなそれぞれに勝手に名前つけてえっちゃんとかぷーやんとかさちとか好きに呼んでた。自分でも名乗らんかったしSくんからも聞くことはなかったっていう。

隣町の子だってのは教えられたんだけど名前を聞かなかったのは多分誰でも偏見なく遊びたかったからで名前を聞いちゃうとなんだか贔屓してる隣町の子だからっていうどっかそういう思いが生まれちゃうからあえて聞かなかった。

で、何回かその子とは遊んだ。
というかふつうに、自然に仲間に入ってた。

でもいつもいるわけじゃなかったけど。
たまに来ては遊ぶ。

で、ある日みんなと遊んで家に帰ったとき夕方だったかな。
その日は家に自分しかいなかった。
親は出かけてた。

そしたらお腹すいてしまって早い夕飯食べてたら呼び鈴が鳴った。

誰かなあと思ったらあのたまに遊んでる隣町の子だった。

自分ちは知らないはずなのにあの子は誰に聞いたのか不思議だったんだけどまあ「なに?」と要件を聞いた。

したら、「よしこちゃんちに行こう」

そう言う。言ってなかったけど魔女の家をよしこちゃんちってその子だけは呼んでた。隣町では魔女の家をよしこちゃんちと呼んでるのかなあと思った。

でもいい時間だったし怖いし、「行きたくないよ」と断った。

そしたらすごい暗い顔というか悲しそうな顔で

「ああそう…」

そう言って帰った。

それからあの子が遊びに加わることはなかった。

一体何だったのかなと思ったが、父母とかに聞いてもあの家によしこちゃんっていう女の子はいたのかと聞いたが、あの家はずいぶん前に老夫婦が住んでいただけでよしこなんて名前の人はいなかったと言われた。
[4666] 未来人

あの…
変な話聞いちゃったんですな。

ぼくの友人のMちゃんの話。
そのMちゃんと同じ大学に通ってたんだけどMちゃんがぼくを呼び止めて「一昨日おまえを見た」って言われた。
「何時に○○ランドで見た」そう言う。

で、見ただけだったらべつにいいんだけど、ぼくはその日ずっと家にいたし、そこに行ってない。
そもそもそこって言うのはけっこう遠くてそんな興味もないとこに行かない。

「そっくりな人なんじゃない」って言うと
そうかもしれないと言ったが、服装がどうもおかしいと言ってた。

たとえるなら(タイムパトロール)みたいな(未来人)が着てるようなピシッとしたタイツっていうんじゃないけど秘密の機関とか組織が着てるようなみんなで着てる服ってあるでしょ。ああいうの。

笑っちゃったけど、不思議なことはまだあって
べつの友達のkとRもべつの場所でぼくを見たっていう。

しかもMちゃんが見たのと同じ日時に。
それでその二人もMちゃんと同じように未来人っぽい現代人っぽくない変なコスプレしてたっていう。
でも間違いなくおまえだった。
そう言う。

まあべつにそれだけの話なんだけど大学で唯一あった不思議な話でした。

未来人なのかはわからない。セワシくんみたいに未来にいるぼくに関係ある人なのか。

ただ話を合わせてる感じじゃないしMちゃんとkとRは全然三人とも学年もばらばらだし友達とかじゃない知らない間柄なんでそういうのはないと思う。
[4665] では

シリーズは次からはぬきます。
ただの「こんな夢を見た」って題にします。

それで不満ないですか?
[4663]
シリーズと言うのは読者に好評で、続編や次回作を期待されて作られるもの。
自分からシリーズなどと名を打つものではない。
そういうのをどうしてもやりたいなら自分のブログでやればいい。
ロビンさんや歌のタイトルシリーズの作者さんや兄の弟さんやこげさん等だな
[4662] こんな夢を見たシリーズ①

こんな夢を見た。

左右前後どこまでも続く広い畳の部屋。
まるでお城の中のようだけどまるで合わせ鏡のような世界。
いくつもの同じ部屋が続いている。

やがて衣擦れの音が聞こえてきた。
ズッズッと音が近づく。
見ると前方から髪を振り乱した女が来る。狂ったみたいに髪を振り乱した女。

その女が自分から3メートルほど近づくと目の前の襖がピシャッとしまり目が覚める。

翌朝、お父さんが庭で一心不乱って感じで穴を掘ってる。
家族で止めたときにはもうかなり深くまで掘ってた。
その穴の下に赤い布が落ちていた。
お父さんになぜ穴を掘ってたのか聞くが全然覚えていなかった。

ただ夢に見た髪を振り乱した女が着ていた着物も赤い着物だった。
[4661] それから

ドライな感じの姉妹関係だったらしい。
詳しくはわからないけれど。
パラパラという表現はおかしかったかな。まあ読む人が好きにパラパラならペラペラなりペラ…ペラなり修正しながら読んでいただければいいと思います。
[4660] 質問に対して

民族衣装と
つなぎみたいな感じで柄は表現しづらいんだけどおしゃれなカーペットみたいな感じだと聞きました。
[4652]
真面目な指摘なら全く腹は立たないお
パラパラだけでいろんな意見がー!!ときっと喜んでると思うお。わいもアルバムパラパラは違和感無いお。ペラペラより硬質な感じだしぃ。でも顔を確認しながらだからの意見は確かにと思ったお。
[4651]
↓添削じゃないと思うぞ。よく添削という言葉の意味を考えて使おう。
[4650]
投稿者って…あんたが投稿した人じゃないんだろ?

あ、コメントしてくれてる!嬉しい〜
と思ったら、あれがおかしい、これが変だと添削してあるばっかじゃ凹むけどな。

俺はパラパラに違和感は覚えなかった
[4648]
写真が収まったポケットアルバムを本当にパラパラできるのか?薄い紙を軽妙に捲る表現に使うものだと思うが?
遺品相手だし擬音、表現も適切ではないと思うぞ。見飽きるとか、故人への思いやりも感じられないのもなんだかな。
[4647]
ウザいとかいう言葉やめない?投稿者はウザいとか思わない。コメくれただけで嬉しいもん。
顔を確認しながら見てるから、おいらは別の意味でパラパラには違和感あったね。
[4646]
ポケットアルバムならパラパラ出来ると思う

アドバイスしてあげるのはいいけど、やりすぎるとウザい

[4643]
↓確かに。民族衣装の一言じゃ何よりも勿体ない(>_<)短い話だけどゾクッとした
[4639] 三人の写真
修正した方が良いと思うこと。
薫視点なのか第三者視点で書かれているのか分からない。
優ちゃんの説明で友人が多いと書いた上に社交的と続けるのはしつこい。
アルバムはパラパラできないと思う。
写真を見たのだからもう少し民族衣装の描写をはっきりさせた方がよい。
[4638] 写真の三人

妹の優ちゃんが亡くなってからしばらくしてから優ちゃんの荷物を家族で整理してた。

優ちゃんは姉の薫とは反対に友人が多くて社交的な面があった。カメラが趣味でアルバムなんかもう何十冊もある。

それをひとつひとつ整理してた。

ひととおり整理が済むと薫ちゃんは一冊のアルバムを手にとりパラパラとめくってみた。

写真を見ると知っている顔もあるが殆どは知らない顔だった。
見るのも飽きしまおうとするとポトリと写真が落ちた。

その写真を見た途端我が目を疑った。玉石の敷かれた場所で誰かの家を背景にして優ちゃんを含めた4人が写っている。

一番端に優ちゃん、その脇に三人の男女が写る写真。ただその三人がおかしい。
優ちゃんと比べるとあまりに小さく、明らかに背が低い。いや低すぎる。

それにその三人は同じ民族衣装のようなものを着ていた。

カメラ目線ではなく優ちゃんのほうを見上げるような形で写っていた。

そんな写真を見つけてしまって、なんとなく親に言うのもはばかれて何も知らないふりをして元のアルバムの中に挟んで何事もなかったようにアルバムを片付けた。

あの三人は一体何者なのか、わからないけれど優ちゃんが死んだのは病気でその三人とは関係ないと思うんだけどただあの三人が何か物欲しそうに優ちゃんを見ていたあの写真が気になって仕方ない。
[4613]
クッキングパパさん

本採用された方に感想よせられてますけど


投稿広場だと、他の作品に埋まって見づらいからと気遣いしてる人もいるんじゃないですか?
[4612]
小6女子二名ビルから一緒に飛び下りとか、最近特におかしいね…。
[4588] 苦狂日記
大作お疲れ様でした。本当に現実にありそうなお話で面白かったです。
私のお婆ちゃんも一時期怪しい健康器具の体験会場に通ってて、よく家族と喧嘩してたのを思い出してしまいました。日記も上手く作られてて良かったです。
続き楽しみにしてます。
[4584] 苦狂日記
まだまだ続きがありそうですね。宗教団体による悲劇は対岸の火事ではありません。

ここって読者の反応が無くて投稿者さんのモチベーションが心配ですが頑張って欲しいです。

[4583] 苦狂日記
なげーなオイ!笑
大作お疲れ様
現実でも十分あり得る話
[4581] 苦狂日記 叫びの詩2
何か変な事に関わらなければいいけど…
と思いながらも、嫌な胸騒ぎを感じていた。

最近の村瀬の変わり様や、セミナーの事、継母の存在も気になった。
そしてそれ以上にあの日記が気になった。

村瀬はもう解決したと言っていたが、あの日記のデータを保存してた物が次々に壊れるのは理解出来なかったし。
何となくだけど全ての元凶はあの日記なのではないかと思うようになっていった…

私は日記のデータが残っている会社に置きっぱなしにしてあったノートPCが気になり、そのまま会社に車を走らせた。

会社に着くと、丁度昼休みの時間で会社の中の人影はまばらだった。
私は自分の机からノートPCを取り出すと、その場で起動させてみた。
すると普通に起動してデータも無事だった。

それから直ぐに家に持ち帰り、日記を読もうとしたが、また得体の知れない気配に壊されたらたまったもんじゃないと思って、何処か安全な場所を探したが結局良い所も思い付かなかった。

本当は友人の中で、霊感ゼロ?のやつがいて、そいつと一緒に行けばどんな心霊スポットに行っても何も起こらない、霊的なものを一切寄せ付けない、生きる御守りみたいなヤツがいたのだが…

今回は何も起きないという保証は何もないし、何かあっても責任は取れない。
多分オカルト好きだから、頼めば嫌とは言わないと分かっていたが、迷惑はかけられない。

そいつ以外でも一緒、他の人には関係ない、俺が村瀬に頼まれて相談にのった事だし、今では自分から読み進めようとしている。

絵理子には怖い思いをさせてしまったが、他の人には迷惑はかけられない…

そしてこのノートPCの中のデータが最後の日記、多分あの気配が現れるのも、あと一回だと何の根拠もない自信もあった…

絵理子には悪いと思いながらも、私は日記を自分の家に持ち帰り、自室で日記を読み始めた。


―井上陽子の日記―

平成22年12月21日 (火)

今日は大変でした
夏美の容態が急に悪くなり、朝から病院にずっといました
今は落ち着いたのか寝ています。
最近夏美の調子が悪くなってきています
オーラメディカ毎日やっているのに…
不安です
明日またアーちゃんに相談してみようと思います


平成23年1月12日 (水)

今日夏美は一日中寝ていました
もう見てるのが辛いです
助けてください
月曜日にアーちゃんが凄い人を紹介してくれるみたいです
話によるとオーラメディカを売っている会社の関係者って言ってた。
凄い忙しい人で普通の人は会えない人みたい…
普通の人は会えないってどんな人なんだろ?
どっかの社長とかかな?
なんだかよく分からないけど、私達を助けてくれる人って言ってた…
今度こそ幸せになりたい…


平成23年1月17日 (月)

今日は不思議な体験をしました
真輪光教会という所に行ってきました
周りから先生と呼ばれてる人に会い、色々話をしたんだけど
先生には何でも分かるみたいでビックリした
不思議な力がある人みたいで、何人も病人を救ってるみたいです。
漢方薬みたいな物も貰えたし
何よりも夏美の病気を必ず治せると言ってくれたのが一番嬉しかった。
ちょっと遠いけどバスに乗れば通えるし
夏美の為に頑張ろう

・・・・・・・・・・・・・・

やはり夏美の体調が良くなっていたのはプラシーボ効果で一時的なものだったのだろう。
ある日を境に日に日に体調が悪くなっていく様子が日記に綴られていた。
しかしこの真輪光教会というのは何なんだろう?
宗教団体が健康食品を売り付けるという話は聞いた事があるが…
まさかバックに宗教がついてるとは思わなかった。


―井上陽子の日記―

平成23年1月29日 (土)

今日で先生に会えたのが3回目
会う度に凄い人だと思わされる…
本当に忙しい人みたいで教会にもあまり顔を出さないみたい
それよりもアーちゃんが真輪光教会の人だと思わなかったなぁ…
だから色々知ってたんだね


平成23年2月9日 (水)

遂に私達も真輪光教会に入りました。
これから毎日頑張って幸せを掴もうと思います
神眼鏡も買ったし、神眼根も買った
神眼根は一ヶ月分で五万円はちょっと高いけど…
これで夏美が良くなるなら
何より先生のパワーが夏美を治してくれるよね


『今日天使が舞い降りて
私達は解放される
苦しみだけの世界はもう見えない…
今なら高く飛べそうなの
漆黒の翼から苦痛で錆びてしまった羽が剥がれ落ちてゆく…
やっと綺麗な翼に戻れそうな気がする
やっと自由に羽ばたいていけそうな気がする』

・・・・・・・・・・・・・・

アーちゃんが真輪光教会の人間って事は…
このアーちゃんなる人物が本当に村瀬の継母なら…

私は村瀬の事が急に気になり、彼に電話をかけてみた、だが何をやっているのか分からないが繋がらなかった…
仕方なくLINEで「セミナーって本当に大丈夫なのか?本当に宗教と関係ないのか?」
とメッセージを残した。
これで彼が見てくれれば、何かしら返事をくれるだろう。

しかし考えてみれば、村瀬は一度日記を全部見ているはずなのだ。
全部見てる上で継母の言葉を信じて、セミナーに参加すると言っていた。
やはりアーちゃんと継母は別人なのだろうか?
色々考えても答えが出てくる訳ではなかったが、ずっと考えてしまっていた。

日記のデータを入れた物が次々に壊れていったのも不思議だったし…
ネックレス一つであんなに雰囲気が変わってしまった村瀬も不気味と言えば不気味だった。
そんなネックレスを持ってきた継母はもっと不気味だったし、気持ち悪かった。
そして謎のセミナー…

元はと言えば、村瀬が実家で日記の内容をデジカメで撮り、そのデータを持ってきた事から全ては始まった気がする。

やはり私はこの日記が気になってしまった。
全て読めば何か解るかもしれない…
そう思い私は日記を読み進める事にした。


―井上陽子の日記―

平成23年3月11日 (金)

今日は夏美の病院の日でした。
相変わらず同じ検査に同じ話
本当に日本の医療は進歩しているのでしょうか?
お金ばかり取られるし、薬だって高い
でも薬がないと辛いみたいだし
もうどうしたら良いのか分からなくなってきました
雅治助けてください
先生助けてください


平成23年3月15日 (火)

今日は一日中ダルかったなぁ
最近凄い疲れを感じる
夏美の身の回りの事をやるだけで疲れてくる
家の中も散らかってきたし、掃除しなきゃ…
気が付いたら神眼鏡の前で何時間も過ぎている


平成23年4月4日 (月)

痛い、痛い、朝から晩まで
痛くない時はないの?
私だって痛い所いっぱいあるんだよ
夏美お願い…たまには私を一人にさせて…
ごめんなさい…
辛いのはわかっているの
でもね…お母さんも辛いんだよ


平成23年4月5日 (火)

わたし…何やってんだろ…
昨日はとんでもない事をした
ごめんなさい…
夏美には私しかいないのに…
私が見捨てたらどうするの…
明日はアーちゃんが来てくれる
会合もあるし、先生に会えたらいいな
先生に色々相談したい
どうか夏美を救ってください
そして私を許してください…


『理解していると思っているだけだった…
自分で自分を貶めても何も癒されない
ごめんなさい…信じてほしい…
ごめんなさい…愛してほしい…
ごめんなさい…』

・・・・・・・・・・・・・・

夏美の症状は日に日に悪化し、陽子も心身共に、疲れてきてる事が日記に記されている。
ストレスも相当なものだったのだろう。
内容こそ書いてないが、夏美に対して酷い行動をとった事も伺える。

そして病院や日本の医療に対しての不平不満…
私も難病持ちなので彼女の気持ちはよく解る…
確かに毎回同じ検査はあるし、診察でも大体同じような事しか言われない…
でもこれは仕方ない事なんだよ。
医者も治療法が分からないからね…

そして一つ気になったのが神眼鏡という物だ。
これはどういう物なのだろう…
多分、カルト宗教お決まりの売り付けられる壺や掛け軸のような物だと思うが…

あと神眼根。一ヶ月で五万と書いているが、これは多分健康食品か薬のような物だろう。
これもカルト宗教お決まりのパターン…
しかし五万は高過ぎだろう…

そしてまた日記を読み続けようとした時に、机の上に置いてあった携帯電話が鳴った。
電話に出てみると、今朝PCの修理を依頼した店からだった。

話によると、故障した原因がハッキリしない上に、データが保存してあるハードディスクまで壊れてるようだった…
これを修理するには専門の業者に頼まないといけないそうで、しかも修理に出しても直る保証もないらしい…

色々話をしたが、結局買い替える事になってしまった。
別に大したデータが入ってた訳じゃないのだが…
新しいPCを買う金が痛ましかった。

気が付いたらもう夕方になっていたらしい。
夢中で日記を読んでいた。

もう直ぐ絵理子が仕事から帰ってくる。
そろそろ日記を読むのを辞めた方がいいだろう。
絵理子は幽霊の類いは苦手で、その手に関係ある物を見てるだけで嫌な顔をする。
私はノートPCを机の引き出しの中へしまった。

◇◇◇◇

その日の夜、村瀬からLINEで「何も心配はないですよ、何かあったら途中で帰ってきますから。心配しないでください」
と返事がきていた。
私はそれ以上何も言わなかった…
凄い嫌な予感はしてたが、多分今の村瀬に何を言っても無駄なような気がしたからだ。

◇◇◇◇

それから仕事も忙しく、日記をなかなか読む暇もないまま、時間が過ぎていった。
気が付けば、村瀬が出張から帰ってきて、そのまま有休を取り、セミナーに参加してしまっていた。

私は心配で、セミナーの内容を聞く為に、何度か村瀬に電話をしたり、LINEでメッセージを送ったが、一度も連絡もなく返事がなかった。

セミナーの最中は、携帯の使用を禁止されているのかな?
と思ったが、セミナーが終わる日時を過ぎても何も連絡はなかった…
それどころか有休が終わっても、村瀬は会社に顔を出さなかった。

会社の方には継母と名乗る人物から、体調不良の為2~3日休ませてほしいという電話があったという。

私は心配になり、仕事帰りに村瀬のアパートを訪ねたが、具合が悪くて寝ているのか、それとも留守なのか…呼び鈴を何度押しても彼は姿を見せなかった。
携帯の方にも何度か連絡してみたが相変わらず繋がらない…
私はますます心配になったが、それ以上どうする事も出来なかった。

それから私は、暇を見つけては日記を読むようにした。
村瀬の事や、彼の継母の事、今までの怪奇現象について分からない事ばかり…
日記に何か手掛かになるような
事は書かれていないかと思い、読み進めた。


―井上陽子の日記―

平成23年4月21日(木)

先生ありがとうございます
薬の効果バツグンです
夏美が前のように痛いと言わなくなりました
そしてよく笑うようになりました。
今日は何が面白かったのか、テレビを見て一日中ケタケタ笑っていました。
私も薬のお陰でやる気が凄い湧いてきました。
前のように疲れもありません
流石先生の力が入った薬ですね。


平成23年4月27日 (水)

今日先生にあまり外に出るなと言われました。
外には細菌がウヨウヨしていて、夏美の病気はそれが原因と言っていました。
先生は何でも分かるみたいですね。
もう病院も必要ないと言われました。
こんな事ならもっと早く先生に会いたかったです。
外の用事もアーちゃんや教会の人がやってくれるし
これでずっと夏美のそばにいてあげられます。
ようやく光が見えてきた気がします。


平成23年5月30日 (月)

今日は一日中フラフラします
とっても楽しくもあり
辛い時もあります
夏美は相変わらず笑っています。
幸せだね、笑えれば
幸せだね、楽しければ
フラフラが止まらないので、今日は早めに寝ます。

・・・・・・・・・・・・・・

多分ここに出てくる先生というのは、医者の方じゃなく宗教の方の先生だろう…
しかし線維筋痛症の激しい傷みを抑えられる薬とは何だろうか?
強力な鎮痛剤では、ステロイドやボルタレン、ロキソニン等が思い浮かぶが、もっと別の物のような気がする…
そして『一日中笑ってた』や『やる気が湧いてきた』等、今までにはない文面が急に出てくるようになった気がする…

もしかしてこれはドラッグ(麻薬、覚醒剤等)と呼ばれる物ではないだろうか?

私も詳しくは知らないが…
ドラッグには、アッパー系(興奮剤、精神を通常以上に高揚させる)
ダウナー系(抑制剤、アッパー系の逆で、興奮、緊張を抑制し急激な眠気や、強力な鎮痛作用を引き起こす)
そしてサイケデリック系(幻覚剤、その名の通り幻覚を誘発し、感覚を鋭敏にする)等があり、効果や用途も様々だという。

最近では合法ドラッグや脱法ドラッグとか色々聞くが。
酒やタバコもお国公認の合法ドラッグだというのは知ってるだろうか?

酒はダウナー系のドラッグで脳を麻痺させる作用がある。
酔う感覚を楽しんだりする人も多いが、多量に摂取すれば泥酔したり、中毒を引き起こす。
そして粘膜(直腸、膣等)から摂取すれば、急速に血中アルコール濃度が上がり、飲酒とは比べ物にならない早さで酔う事ができるし、直接注射針で体内にアルコールを注入すれば、一気に急性アルコール中毒で死に至る。
酒は中毒性、依存性の高い立派なドラッグなのだ。

逆にタバコはアッパー系のドラッグで、興奮、覚醒作用がある。
その中毒性、依存性は高いのは言われなくても解るだろう…
トリップしないよと言う人もいるだろうが、初めて吸った時や、時間を空けて吸った時に頭がクラクラした事があるだろうと思う。
あれがトリップなのだ。

覚醒剤も同じで、最初は少量で簡単にトリップできるが、使っていく内に、耐性ができて、同じ量ではトリップできなくなる。
するとトリップする為に量を増やしていく、そうやって中毒になり依存していくそうだ。

タバコもニコチンの量を増やせばトリップできるそうだが、ニコチンは毒性が強いのでやらない方がいいだろう。

日本人はドラッグに対する知識も低い。
ドラッグと知らずに手を出す人がほとんどだろう。
国が認めてるドラッグなのだから無理もないが…

あと、国が認めてるのだから比較的安全と思っている人もいるかもしれない…
しかし酒やタバコより安全なドラッグもある。
それはマリファナだ。
マリファナの方が毒性も弱く依存性も低い、ただマリファナは幻覚作用があるみたいだし、吸い続ければ廃人の様になってしまうらしいので、やはり危険な物なのだろう…

酒やタバコはドラッグなので禁止にした方がいいと言う人がいるが。
それも難しいだろう…
禁止にしてしまうと、国の税収が一気に減るし、暴力団等の資金源にも繋がってしまう。

話を戻すが。今ではその辺の主婦や高校生でも簡単に手に入れる事が出来るドラッグ。

この宗教の先生が持っていても何も不思議ではないだろう。
昔から大麻やケミカル等のドラッグは、宗教儀式やシャーマニズムで用いられてきたと言うし、神懸かり的な力があるように信じ込ませるには、ドラッグは最適だろう…

一般的なドラッグは、注射針で体内に注入するか、炙って吸引するのが知られている。

それは摂取の仕方で効果や、効果が表れるまでの時間が違うからだ。そして依存性も…

アルコールも摂取の仕方を変えれば一気に酔ってしまうように、他のドラッグも注射や吸引で摂取した方が効果的なのだ。

逆に普通注射や吸引で摂取するドラッグを経口摂取すれば、トリップ感は減るし、依存性等も低くなる。

だがLSDやリキッド系のドラッグのように、極めて微量を経口摂取するだけで簡単にトリップしてしまうドラッグもある。

そしてこの手のドラッグは無色なうえに無味というのが多いらしく、知らないうちに人に飲ます事も可能なのだ。

そして次々に作られる、合法ドラッグや脱法ドラッグと呼ばれる薬物は、それを扱ってる業者でさえ、その詳しい効果や依存性等が分からない物もあるそうだ。

この親子も、騙されてドラッグを摂取させられていたなら、日記に書かれているような事が起こっても不思議ではない。

そして外に出るな、病院も必要無しの意味もイマイチ理解できない。
これは洗脳か何かだろうか?

読めば読むほど分からない事がでてきたが、私は気にせず日記を読み進めた。



―井上陽子の日記―

平成23年6月7日 (火)

もう一ヶ月位外出していません。
私は薬がないと全身きつくて動くのも辛い
布団も敷きっぱなし、何もやる気がしない…
でも夏美に食事と薬だけは飲ませなくては…


平成23年6月10日 (金)

今日はアーちゃんが食料と薬を持って来てくれた
アーちゃんが来た日は、夏美の面倒を見てくれるので本当に助かる。
私は鬱にでもなってしまったのだろうか?
アーちゃんは今までの疲れのせいと言ったけど…
本当にそうだろうか…


平成23年6月16日 (木)

手足が痛い、動くのも辛くなってきた
病院に行った方が良いのか?
でも病院は信用できない…


平成23年6月21日 (火)

どうも痛みが取れない
全身がキシキシ痛む、薬も効かなくなってきた
でも夏美が良くなるまで、私は倒れるわけにはいかない
なんとか薬を飲んで騙し騙し動くしかない。


平成23年6月30日 (木)

毎日こんなに体が痛い、たまにこの先どうなるだろうと考えてしまう。
私はいいが、夏美には元気になってほしい
最近夏美は笑っているか、痛いと言ってるかどっちかになってきた。
食事もあまり取らなくなってきたし大丈夫だろうか?
私も薬でなんとか動いているが、薬を飲んでもフラフラするし辛い…
私達はどうなってしまうのでしょうか…


『不安は恐怖を生み
恐怖は私を支配する
思考は停止し 心に刻みつけられる
この暗い世界で あとどのくらいの時間を過ごすのだろう…
この暗い部屋で あとどのくらい耐えるのだろう…
月明かりも届かない現実に私は沈んでゆく…』

・・・・・・・・・・・・・・

陽子の容態が日に日に悪くなっていくのが記されている。
ドラッグが効かなくなってきたのか、薬の副作用なのか、ただのバッドトリップなのか?
それとも本当に病気なのか?
日記を読むだけでは判らない…

ドラッグが切れた時の禁断症状に近いものも感じるが、それもハッキリしない…
一体どのような薬物を使用してたのだろうか?

そして私は村瀬が会社を休んでる最中も、彼が気になり何度か携帯の方に連絡してみたのだが、相変わらず繋がらない上に何も連絡もない…
どんどん不安だけが募っていったが、どうする事も出来なかった。
会社の方にも一向に村瀬は顔を出さず、会社の方からも彼の携帯に何回も連絡したらしいのだが、全然繋がらなかったそうだ。

◇◇◇◇

村瀬が仕事を休んで一週間位経った頃だろうか…
会社に彼の継母と名乗る女性から電話が入ったという…

継母の話によると、彼は今原因不明、病名不明の病気になってしまい、ほとんど動く事も出来なくなってしまったそうだ…
それで多分仕事に復帰するのも難しいと思うから、会社を辞めさせてほしいという話だったそうだ。

電話を受けた上司は、取り敢えず休職という形にして、傷病手当てを受けられてはどうかと言ったらしいのだが…
継母はそれを断り、退職させてくれと言って、近いうちに退職届けを郵送させてくれと言ってきたそうだ…

仕方なく受け取る形にしたそうだが、その時村瀬の事を色々聞いたそうだ。

彼は今病院にいるそうで、ほとんど寝たきりの状態だという事だ。
この時見舞いに行きたいと言ったらしいが、人に会わせられる状態ではないと断られたという…
そして彼の借りているアパートも近いうちに引き払うと言っていたそうだ…

私はそれを聞いた時、何か納得出来なかったし、やはり継母の存在が気になった。
本当に彼は病気なのか?
前から不安に思ってた事が現実になってしまったという気分だった。

その日の仕事帰り、村瀬のアパートに行ってみたが、やはり部屋には人の気配はなかった…

それから私は家に帰ると、またいつものように日記を読み進めた。


―井上陽子の日記―

平成23年7月13日 (水)

本当に辛い…
一日中体はキシキシ痛む
何か変わった病気じゃないだろうか?
私まで難病とかになってしまったら冗談じゃない
取り敢えず調子の良い時にアーちゃんに病院に連れて行ってもらおう。


平成23年7月22日 (金)

アーちゃんが新しい薬を持って来てくれた
新しい薬はとても楽だ
痛みが嘘のようになくなる
ただ強い薬で値段も高いみたい
銀行のカードをアーちゃんに預けた
本当に色々やってくれる、アーちゃんがいなかったらどうしてたんだろ?
迷惑ばかりかけてるよね…
ごめんなさい…本当にありがとう。


平成23年8月16日 (火)

ほとんど布団の上で過ごしてる
一日中変だ、フラフラしてしょうがない
痛みはないが何か変だ…
夏美は居間で立ったままさっきからニタニタ笑いながらこっちを見ている…
声を掛けても返事をしない…
大丈夫だろうか?

・・・・・・・・・・・・・・

本当にどんな薬が使われていたのだろう?
幻覚と思われる症状まで日記のあちこちに記されてあった…
この日記は読み進めるほど恐ろしい事が書かれている。

しかし銀行のカードを預けるとは…
それほどアーちゃんの事を信じていたのだろう…

確か村瀬の話ではこの親子が遺体で発見された時は預貯金等はほとんど残っていなかったと言っていたが…

日記を読む分だとまだ残ってそうな気がするが…
260万の電位治療器や月5万もかかる神眼根も買っていたみたいだし…
高い薬と言われ銀行のカードを預けたのなら、まだそれなりのお金は銀行に預けられていたのではないだろうか…

カードを預けるほど信用してるなら、通帳等のある場所も知っていただろうし…
家の合鍵等も持っていたのかもしれない…

最初から金が目的で親子に近づいたのなら恐ろしい事だ。
それについて、宗教が関わっていたのかアーちゃん一人の考えだったのか分からないが…

そういえば、村瀬の両親は家を建てると言っていた…
もしこれも関係あるのなら父親もグルなのだろうか?

イヤ…確かいつだったか、村瀬はこんな事も言っていたような気がする…

彼が実家を出た理由を聞いた時。
継母と再婚して父親は性格が変わってしまったと…
再婚する前は穏やかな性格で、優しい父親だったが、継母が家に住むようになってから、まるで別人になってしまったかのように、常にイライラしていて急に暴力的になったり、平気で理不尽な事を言ったりやったりしてきたという…
そして継母の言う事は何でも文句言わずやっていたという…

もしかしたら継母はドラッグを利用し、父親を洗脳していたのではないだろうか?
って事は…村瀬も…

何故今まで気が付かなかったのだろう…
それなら彼が急に明るくなって常に笑顔だったのも、変なネックレスで体の調子が良くなり、何をやっても疲れなくなったというのも説明がつく…

もっと早く日記を読んでいたなら彼を助ける事が出来たかもしれない…

やはり継母は日記に出てくるアーちゃんなのではないだろうか…
この日記が村瀬に見られた事に気付き、彼にドラッグを使用して洗脳していったのではないだろうか…

父親は親子から金を取る為か、それとも他に理由があって洗脳したのか判らないが、何か思惑があったのかもしれない…

しかしあの得体のしれない怪奇現象は何だったのだろう?
あれはどう見ても説明がつかない…
あれは普通の人間に出来る事ではない…
色々考えても答えは出てこなかった…

そして私はまた日記を読み進める事にした。


―井上陽子の日記―

平成23年8月28日 (日)

一日中吐き気がする、食事も取っていない、とにかくフラフラする。
アーちゃんが来てくれました
久しぶりにメロンを食べた、美味しかった
しばらくアーちゃんはセミナーで来れなくなるらしい…
代わりに教会の人が来てくれるみたい…
誰が来てくれるんだろう…


平成23年9月8日 (木)

今日も教会の人は来てくれなかった…
いつ来てくれるんだろう
アーちゃんに連絡しても繋がらない、忙しいのかな?
そろそろ誰が来てくれないと不安です。


平成23年9月15日(木)

今日も連絡がつきません。
薬ももう本当にありません
フラフラが止まらない
教会に電話しても分からないと言われた
頭がグルグル回っています
夏美の笑い声が一日中聞こえます
頭がおかしくなりそう…


平成23年9月16日 (金)

今日も連絡がつかない、体が動かない
夏美の面倒も見れない、食事も作れない、お菓子しか食べてない…
明日は何か作ってあげたい

・・・・・・・・・・・・・・

セミナーという言葉が出てきた。
これは村瀬も参加したセミナーの事だろうか?

しかし遂にアーちゃんは親子を放置したらしい…
金を取り、薬漬けにし、まともな判断を出来なくさせてから放置…
人間のやる事じゃないだろう…
親子も辛かっただろう…
薬でバッドトリップしたのか、禁断症状なのか判らないが、日記には、目眩、嘔吐、不安感、幻覚、幻聴等で苦しんでいる様子が書かれていた。

この日記を読めば読むほど、村瀬の事が心配になった…
彼は大丈夫だろうか?

◇◇◇◇

彼が会社を辞めるという話を聞いてから一週間が経とうとしていた。
相変わらず、彼からは一切連絡はない…

この頃、一度警察に相談しようと思った事があった…
しかし、確かな証拠でもあれば別だが、今の状態では多分相手にしてもらえないと思い、辞めてしまった…

そして、暇を見つけ村瀬のアパートまで行った事もあった…

アパートの前まで行くと、駐車場には彼の車はなかった…
多分実家の方にでも置いてあるのだろう…
そしてそのまま、アパートの前を通り過ぎて行こうとした時、彼の部屋の台所の窓が少し開いてる事に気が付いた。
閉め忘れかと思ったが、気になったので部屋まで行ってみる事にした。

彼の部屋の前まで来ると、部屋の中から僅かだが物音が聞こえた。
帰って来てるのだろうか?
呼び鈴を鳴らしてみた。
だが返事もなければ、物音も消えてしまった…
何回か呼び鈴を鳴らし、ドアを叩いて名前を呼んでみた。
一向に返事も何もない…
さっきまで物音が聞こえ、気配もあったのだが…

それでもしつこくドアを叩き、名前を呼んでみた。
すると五月蝿かったのか、隣の部屋から中年の女性が玄関ドアを少し開け、怪訝そうにこちらを見つめてきた…

「あ、すみません…五月蝿かったですか?」

「村瀬さんの友達かい?」

私は会社の先輩だったと説明し、彼と連絡が取れない為、心配になり訪ねたという事を伝えた。
すると信用したのか、それともただの話好きなのか色々話をしてくれた…

「村瀬さんなら、3日位前に見たわよ、お姉さんと一緒だったわ」

「お姉さん?確か彼は一人っ子ですよ」

「そうなの?30前後の綺麗な人が体を支えながら付き添ってたわよ」

「体を支えながら?」

「なんか村瀬さんがゲッソリしてフラフラしながら、その女の人に付き添われて歩いてたのよ。
それでいつも会ったら挨拶してたから、大丈夫?って声をかけたの。
そしたらその女の人が弟は原因不明の病気になってしまって、これから病院に連れて行くんですって言ってたわ」

「そう…ですか…」

「でも入院とかはしないで部屋に帰ってきてると思うわよ…
たまに村瀬さんの部屋から物音や笑い声とか聞こえるから」

「そうなんですか…」

「でも具合悪くて出てこれないんじゃないかしら?
別人のようにゲッソリしてたから…」

「そうですか…」

私はその女性にお礼を言うと、自分の車に戻り、そのまま自宅に帰った。

多分姉と名乗ったのは継母ではないだろうか…
何故姉と嘘をついたのか解らないが、村瀬とは年齢が8つしか離れていないため、継母と名乗るより姉と名乗った方が面倒くさくないと思ったのだろう…

しかし取り敢えず村瀬が生きてる事は確認出来た。
でもこれ以上は何も出来なかった…
本当に彼が病気になっているのなら、何回も訪ねるのは迷惑だろうし…
逆に継母に何らかの薬を飲まされ、病人のような状態になっていたとしても、何も証拠はない。

どうすれば村瀬を助ける事が出来るだろう?
彼から何らかの形で連絡があれば良いのだが…

それからも私は日記を読み続けていった。
何か継母とアーちゃんが同一人物という確信を得れる事や、村瀬を助ける事が出来るヒントがあればいいと思いながらも…


―井上陽子の日記―

平成23年9月17日 (土)

電話が停まってしまった…
何故だろう…
アーちゃんどうなってるの?
お金は全部あなたに任せてるのに…
教会の人も来ないし…
食料ももうないし、薬もない
頼れる人はアーちゃんしかいない…
体も動かない…助けて…


平成23年9月19日 (月)

残ったお菓子と水はなんとか夏美の部屋に置いてきました。
夏美は死んだように寝ていました…
薬はもうありません…
私はお茶しか飲んでいません
お腹がすきました
家中食料を探してみましたが、食べれそうな物はほとんどありません…
アーちゃん何をやっているの?
体が痛くて動けません…


平成23年9月25日 (日)

お腹がすきました…
もうしばらくまともな物を食べていません…
夏美は大丈夫でしょうか?
私達はどうなるのでしょう…
体が痛くて動けません
アーちゃんが来なくなってどのくらいが経つでしょう…
全身が痛くてしょうがありません
頭もグルグルしていておかしいです
お風呂もしばらく入っていません…
誰かに助けを求めたくても呼べません…
助けてください
どうすれば良いのでしょう…


『もう何も見えない…
このまま闇に溶けていけたら楽なのに…
軋む体を温めるものはもう何もなくて…
淡い夢さえ見えなくて
果てる事も許されず
モノクロの部屋で枯れた花を握っている
擦り切れた人形のように願いは枯れて声にできなくて…
風化した機械のように思いはひび割れて…
バラバラと音を立てて崩れてゆく…
明けない空の下 私はこの体を引き摺って彷徨い続ける…
まだ息ができるから…
まだ動かす事ができるから…』


平成23年10月4日 (火)

窓から人が見ています
誰だか分かりません
助けてくださいと言うと消えてしまいます。
朝からずっとです…
怖いです…

・・・・・・・・・・・・・・

ついに究極の状態に追い込まれた事が記されてある。
金も食料もない状態というのは、かなりのストレスと不安を感じただろう…
本当に可哀想だ、日記の続きを読むのが辛くなってくる…

しかしこうなる前に、電話が繋がるうちに警察等に助けを求めれば良かったのに…
それだけアーちゃんを信じていたか、薬のせいでまともな考えができなかったか…
どちらにしても可哀想なものだ…

そして私は日記を読み続けようとした時、変な事に気が付いた。
10月5日 (水)の日記がないのだ。
正確には10月5日の日付はあるのだか、内容がないのだ。

デジカメで撮ってきたデータなので分かり難かったが…
よく見ると内容の部分だけ、3~4行位ハサミか何かで切り取られていて、次の次のページに書かれている日記の内容が見える状態なのだ…

切り取られた10月5日の裏側が気になり、次のページに書かれている日記を見てみた。
すると…10月9日 (日)の日付の部分だけが切り取られなくなっていた…

これはどういう事なのか…
何故切り取ったのか…
少なくとも10月9日の日記を書いた後に切り取った事になる…
わざわざ10月9日の日付の部分を、どうにかする為に切り取った訳ではないだろう…
という事は10月5日の内容の部分をどうにかしたくて切り取ったのだろうか…

しばらく考えていると、ある事を思い出した。
それは親子の遺体が発見された時に枕元にあった遺書の事だ。

確か村瀬はこう言っていた。
遺書と思われる物はノートか何かの切れ端で、『疲れました、夏美を楽にしてあげたい、私も楽になりたい』と一行だけ書いてあり、裏には日付が記してあったと…

この遺書は10月5日の日記の内容と、次のページに記してあった10月9日の日付ではなかったのではないだろうか…
もしそうなら、遺書に使う為に切り取った事になる…

多分切り取ったのは陽子以外の人物だろう…
もし陽子が遺書に使うなら、自分で新しく書いた方が手っ取り早いし、他の者が遺書のように見せる為に使ったのなら、筆跡も陽子のものなのだから、もし筆跡鑑定されても怪しまれる事もない…

という事はやはり陽子は自殺ではないような気がする…

私はそのまま日記を読み進めた…


―井上陽子の日記―

平成23年10月8日 (土)

もう動けません
日記を書くのも辛くなってきました
このまま私達は死ぬのでしょうか?
助けてください
夏美の笑い声が聞こえます
何がそんなに可笑しいのでしょうか?


平成23年10月10日 (月)

夏美、こんなお母さんを許してください
何もしてあげられないお母さんでした
私が死んでも夏美は助かってほしい。


平成23年10月11日 (火)

夏美の笑い声が聞こえます
何か食べているのでしょうか?
もう体が動きません
心配です


平成23年10月12日 (水)

今日も夏美は笑っています
何がそんなに楽しいのか解りません
笑い声が四方八方から聞こえます
夏美が沢山いるように感じます


平成23年10月14日 (金)

最後の水を飲みました
もう部屋には食べる物も、飲める物もありません。
水道をひねればまだ水は出るでしょうが、もう動けません
夏美は生きてるのでしょうか?
声は聞こえなくなりました
寝てるだけならいいのですが
心配です

・・・・・・・・・・・・・・

最後まで娘の夏美を心配してる事が記されていた。
そして所々に夏美に対して謝罪の言葉を残していた…
最後まで母親として娘が気になったのだろう…
しかし、よく夏美の笑い声が聞こえると書いてあるが、これは本当に聞こえていたのだろうか?
それともただの幻聴なのか?
第一この時点で夏美が生きていたかも判らない…


―井上陽子の日記―

平成23年10月16日 (日)

今日夏美が楽しく踊ってる夢を見ました
私も一緒に笑いながら踊った
楽しかった
本当に楽しかった

・・・・・・・・・・・・・・

これが最後の日記となっていた。
10月17日から死亡するまで日記も書けず、動く事もできず、横になり続けていたのではないだろうか?

こんな状態で自ら首を吊り、死を選んだとは到底思えなかった。
やはり親子が死亡した後に、誰かがこの家に入り、自殺に見せかけたのではないだろうか?
この家に自由に出入りできるのは多分アーちゃんだと思うが…

そして村瀬が言ってた通り、アーちゃんと継母は同一人物で間違いないだろうと思う。

この日記が遺体と一緒に発見されていれば、多分簡単に無理心中として処理されなかっただろうし…
第一継母がこの日記を持っていた事がなにより怪しい…

目張りの件も日記には記されていなかった。
多分親子が死亡した後に何者かが目張りをしたのだろう…
腐臭を漏れにくくし、遺体の発見を遅らせる為だろうと思うが…

早く発見されて解剖なんてされれば、一発で薬物反応や他の事まで色々発見されてしまう…
そうしたら、面倒くさくなってしまうだろう…

骨だけになっても調べ方によれば薬物反応は出るらしいが…
自殺に見せかければ、詳しくは調べないと思ったのだろう。

そして、思った通り自殺で処理された。

あと気になったのが日記には、お金がありませんと書かれていたが、村瀬の話だと遺体が発見された寝室には数万円の現金が発見されている。
これも謎だ…

しかし何故、アーちゃんと継母が同一人物ならば、この日記を処分しなかったのだろう?
こんな日記を持っていたら、怪しまれる事は判っているだろうし…
何か処分できなかった理由でもあったのだろうか?

どっちにしろ今となっては、もうこの日記が継母が所持してたという証拠は何もない…
私が村瀬の実家にこの日記があるのを直接見たわけじゃないし、日記のデータを持ってきた村瀬があんな状態じゃ、もうどうしようもないだろう。
警察が直接、村瀬の実家で日記を発見すれば話は別だが…
今はもうそこまでもっていく事も難しいだろう。

村瀬に相談に乗ってくれと言われた時点で、警察に行かせていれば、こんな事にはならなかったかもしれない…
村瀬も無事で今でも一緒に働いていたかもしれない…
考えれば考えるほど、後悔の念に駆られてしまうだけだった…

◇◇◇◇

それからたまに村瀬のアパートには行ってみたが結局1度も会う事はなかった…
だが村瀬が会社を辞めて、1ヶ月以上経った頃だろうか…
彼について話を聞く事ができた。

それは私が、何気なく村瀬のアパートの前を通った時の事。
村瀬の部屋の隣の住人、あの中年の女性がコンビニの袋を持ってアパートの前にいたのだ。

私は何か話が聞けるかなと思い、車を降りてその女性に声をかけてみた。

すると、一瞬誰?みたいな顔をされたが、直ぐに「確か村瀬さんの会社の方でしたっけ?」と思い出してくれたみたいだった。

私はそうですと言おうとしたが、その前に女性の方から一方的に話をしてきた…

「村瀬さんなら引っ越ししたみたいよ。
3日位前に引っ越し業者が村瀬さんの部屋から荷物を運び出してたから…
実家にでも帰ったんじゃない?」

「そうなんですか?」

「多分ね…
だって村瀬さん相当体調悪かったみたいだから…
ずっと部屋に引き込もってたみたいだったけど…
たまに村瀬さんの部屋から苦しそうな呻き声が聞こえてきてたわ…
あと気味が悪かったんだけど、たまに奇声を発したり、一人で大笑いしてる声も聞こえるのよ…
本当に気持ち悪かったわ…
あとたまにお姉さんみたいのが来てたみたいよ。
女の人の怒鳴り声も聞こえてくる時があったから…
お姉さんも大変よねぇ…」

「イヤ、だからお姉さんではなくて…」

「でも居なくなってくれて内心ホッとしたわ、夜中とかに奇声とか上げられたらたまったもんじゃないわよ…
気の毒だと思うけど、まるで精神病患者みたいな感じだったし…
あのまま住まわれたら、隣に住んでる私まで気が狂っちゃうわよ」

「そう…ですか…」

私は話の内容に驚愕し、しばらく呆然としてしまっていた…

「私これからお昼食べるところだったから、部屋に帰ってもいいかしら?」

「あ、すいませんどうぞ」

私は女性にお礼を言って、一応村瀬の部屋の前まで行ってみた。

するとやはり引っ越ししたみたいで、玄関ドアの横に置いてあった彼の私物が綺麗さっぱり無くなっていた。

私は自分の車に戻り、ダメ元で村瀬の携帯に電話をかけてみた…
すると、現在使われておりませんというアナウンスが返ってきた。
どうやら携帯も解約したみたいだった…
結局村瀬がセミナーに参加してから今まで一度も連絡はなかった…

今村瀬は何をやっているのだろう?
元気に生活してるのだろうか?
それすらも今では分からない…

そしてそれから数日が経った頃…
私は夜中に突然激しい痙攣に襲われ、救急車で病院に搬送された。

色々な検査を受けてはみたが、結局原因は分からなかった…
その後も頻繁に原因不明の痙攣が起き、入退院を繰り返すようになってしまった…

今では働く事もできなくなり、ほとんど寝たきりの状態だ…

難病を患ってから、いずれはこんな状態になるのではないかと思ってはいたが…
まさか別の原因不明の病気でこんな形になるとは思ってもいなかった…

イヤ…
本当にこれは病気なのだろうか?
最近ではまるで、村瀬や日記の中の親子のような状態に日に日になっていくような気がしてならない…

私も知らない内に洗脳されたとでもいうのだろうか?
それとも、あの日記の親子の呪いとでもいうのだろうか?

今ではもう調べる事もできないし…
どうする事もできない…

今は苦しみと戦う毎日と、言いようのない不安があるだけ…


―井上陽子の日記―

平成23年10月15日 (土)

『何を信じればいい?
何を恨めばいい?
声が届かない闇が広がり
また心を潰してゆく
一緒に過ごした日々を覚えておいてほしい…
時間が戻るなら 心を抉り取ってあげる
これは叫びの詩
あなたに聞こえるかしら…
涙を辿って見つけてほしい…
私達の切望を…
心が酷く空っぽで
錆びた身体を動かす事はもうできない…
時を見失い 私達は消えてゆく…
全てが曖昧な現実に叩きのめされ 失望し盲目の朝を迎える
これは滅びの詩
あなた達に聞こえるかしら…
最も暗い夢が始まる時 私達は此処で待っている…
涙を辿って見つけてほしい…
これは叫びの詩
逃げる事はもうできないから…
偽りの優しさが私に執着な憎悪と哀しみを生んだ…
だから…
ずっと待っている 夢から覚めるまで…
だから…
ずっと待っている 想いが枯れるまで…』


苦狂日記 叫びの詩 終

そして…
滅びへと続く…



[4580] 苦狂日記 叫びの詩1
個人名や団体名等、一部の薬物を除き全て仮名で書かせてもらう…

そしてこれは、今でも謎が多くて分からない事だらけなのだが…
なるべく順をおって書いていこうと思う…

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「古田さん、ちょっといいスか?」

事の始まりは。会社で帰り支度をしてる時に、後輩の村瀬に相談に乗ってほしいと持ちかけられた事からだった…

村瀬とは結構仲が良く、家に遊びに行ったり、よく一緒に飯を食いに行く間柄で、相談等にもよく乗ってあげていた。
いつもは大した事のない相談で、ただ話を聞いてほしいみたいな事ばかりだったのだが、その日はいつもと違って真剣な表情で話し掛けてきた。

相談というのは村瀬の継母の事で、見てはいけない物を見てしまったかもしれないというものだった…

村瀬は10歳の時に本当の母親を病気で亡くしている。
その後、父親が男手一つで彼を育て上げ、継母と再婚するまで一緒に暮らしていたそうだ…
だが父親が再婚し、継母が一緒に暮らすようになってから、父親と仲が悪くなっていったという。

元々は父親とは仲が良かったそうだが、継母と性格が合わなかったらしく、それが原因で父親とも喧嘩をするようになっていったそうだ…

そして間もなく村瀬は、実家を出てアパートを借り、一人暮らしをするようになったらしい。

そして相談の内容なのだが…
村瀬が相談しに来る約半年位前に村瀬の親戚が二人亡くなっている。
正確には亡くなっていたと言った方が良いかもしれないが…
一人は村瀬の父親の妹で叔母の井上陽子、もう一人は陽子の娘で井上夏美。
この親子は死後1年以上経過していて、白骨化した状態で発見されたそうだ。

娘の夏美は、自室の布団の上で仰向けの状態で発見され、死因は不明…
母親の陽子は、寝室のドアノブに電気コードを巻き付け、ドアに持たれかかり、そのコードで首を吊った状態で発見された。

そしてその寝室には数万円の現金と、枕元には陽子の遺書と思われる、ノートか何かの切れ端。そして大量の睡眠薬があったという。

この睡眠薬は夏美が難病を患っていて、その病気の為に病院から処方された物だと分かった。

遺書らしきものには『疲れました… 夏美を楽にしてあげたい、私も楽になりたい』
と一行だけ書いていて、裏には日付が記してあったという…

この事から、この日付の日に親子は、無理心中したのではないかという事だった。

夏美の病気の状態はかなり酷く。日常生活も色々制限があり、陽子の介助が必要だったという。

その為陽子も仕事をせず、ほぼ一日、夏美に付きっきりの状態だったそうだ。

この事から、先の見えない難病と介護の疲れから心身共に追い詰められ、心中したのであろうとの事で警察に処理されたらしい…

だが謎も多かったという。
というのは、陽子の夫、雅次は、親子の遺体が発見される約三年前に交通事故で他界していて、多額の保険金が入っている。
他にも雅次は、地元では有名な建設会社の幹部で、かなりの収入があり、蓄えもそれなりにあったというのだ。

それが雅次が亡くなって約二年位の間に、何に使ったのか分からないが、現金は数万円、預貯金等もほとんど残っていなかったらしい…

しかも遺体が発見された時。家の窓等にはビニールシートとビニールテープで目張りしてあったそうで、死臭が外に漏れにくくなっており、白骨化するまで誰にも気が付かれないまま、1年以上も経過してしまったという。

これも不可解で。家は雅次が亡くなる三年位前に建てたばかりで、まだ隙間等は全然なく、目張りをする意味が分からない。

他にも不自然な点がいくつかあったらしいが、それ以上は警察も調べなかったという事だ。


そして先週。村瀬の携帯に父親から電話がかかってきた…

電話の内容は。どうやら父親達は家を建てるらしく、引っ越しする前に実家に残っている彼の私物を取りに来いというものだった。

村瀬は(陽子叔母さんの葬式から1年も経ってないのに、家なんて建てるなよ)と思いながらも、近いうちに取りに行くよと父親に告げたという。

そして彼は実家の合鍵を持っていたし、両親にはあまり会いたくなかったので、二人が不在の時を見計らって、物を取りに行こうと思ったらしい。

彼の父親(信治)はサラリーマンをしており、いつも帰りは遅く。継母(朱美)は総合病院で看護師をしていて、両親が家にいない時は頻繁にあったというのだ。

そして彼は暇をみつけ。両親が不在の時に実家に物を取りに行ったという。

まず自分が使ってた部屋に行き、必要な物は車にのせ、要らない物はゴミ袋にまとめていったそうだ。
そして、片付けをしてる最中。ふと、亡くなった母親の写真をあまり持っていない事を思いだし、母親のアルバムを探しに両親の部屋へ入って行ったという。

そこにはもう継母の物が色々あり。ちょっと気が引けたのだが、あまり触れないように押し入れの奥から母親のアルバムを出したそうだ。

その時。押入れの隅に見慣れないノートを見つけ、何だろう?と思い、ノートも引っ張り出したという。

中を見ると。どうやら日記のようで、最初は継母が書いた物だと思い、読むのを止めようとしたが、興味が湧いてしまい読んでしまったらしい。

すると変な事に気がついた。どうやら日記は継母の物ではなく、亡くなった陽子叔母さんの日記だという事が分かった。
一瞬形見分けのような感じで、父親が持って帰ってきたのかな?と思ったらしいが…
読んでいく内に妙な違和感を覚えたという。

日記はA4サイズのノートに。
夫の雅次が亡くなった日からほぼ毎日、何かしら書いてあったそうだ。

ノートは全部で10冊以上あり。最後の方を探して読んで見ると、陽子親子が死に至る経緯が記されてあったという。

日記に書いてある事によれば。到底心中など出来る状態ではなく、ある人物によって殺されたかもしれない事が書かれていたというのだ。

その人物というのは日記の中ではアーちゃんと記され。村瀬の考えだと、そのアーちゃんなる人物は村瀬の継母ではないかという事だった…

私は一瞬固まってしまったが、何故村瀬がそんな事を考えたのか話を聞く事にした…

「なあ、何でそんなに継母を疑うんだ?」

「聞いてくれますか?」

「ちょっと興味がでてきたからね…」

「そうですか。じゃあまず、あの日記が警察に調べられていたら、多分無理心中という形で片付けられるのはおかしいんですよね…
そして日記は実家の押入れに隠すようにしまってありました…
それと継母の名前は朱美…アーちゃんと呼ばれても不思議ではないんですよ」

「……それだけじゃあさ、俺には訳が分からないし…
第一そんなに気になるならその日記持って一度警察に相談してみたらどうだ?」

「もう半年以上前の事ですから…
第一日記を持ち出し警察に相談して俺の勘違いなら洒落にならなくなりますよ。それでなくても継母とは仲悪いんですから…」

「でもなぁ…その日記にどんな事が書かれていたか分からないし…
ただ漠然と言われても…アドバイスの仕様がないよ。」

「じゃあ一回見てくれませんか?
なんとかしてその日記手に入れますから。どう思うか一度見てくださいよ」

「分かったけど。無理するなよ、ヤバイ事になったら警察とかに相談しろよ」

「分かりました。古田さんに相談して良かった。他にこういう相談出来る人いなかったから…」

「分かったから今日はもう帰ろう。腹減ってきたよ」

そしてその日はそのまま村瀬と別れ家に帰った…

◇◇◇◇

それから3日位経った頃だろうか…
仕事の一服休みに村瀬が話かけてきた…

「日記手に入ったッスよ」

と言って、村瀬の手にはデジカメが握られていた。

どうやら彼は、流石に日記そのものを持ってくるのはマズイと思ったらしく。両親が居ない時に日記の内容をデジカメで撮ってきたらしいのだ。

私は取り敢えずそのデジカメを預かると、日記を写したデータを、会社に起きっぱなしにしてあった、自分のノートPCにコピーした。

そして村瀬も自分の家のPCにコピーしたらしいので、仕事帰りに村瀬の家に寄り、二人で日記の内容をゆっくり見てみる事にした。

仕事を終わらせると。二人で真っ直ぐ村瀬の住んでるアパートへと向かった…

彼のアパートは何処にでもある様な、外に階段が付いた二階建てのアパート…
彼の部屋は二階の一番奥で、彼の部屋の玄関ドアの横には彼の私物が並べられて置かれており。半分物置状態になっていた。

村瀬は玄関の鍵を開け「どうぞ」と言って中に入って行った…

部屋の中に入ると。いかにも男の独り暮らしって感じで、必要な物以外何もない殺風景な部屋だ。

「適当に座ってください」

彼はそう言って奥の部屋で着替えをし始めた。

私はソファーに腰をかけると、直ぐに着替えを済まして彼は奥の部屋から出てきた。

「早速日記見てみましょうか」

彼はそう言うとPCの電源を入れ起動させた。
そして日記のデータが入っているフォルダを開いた…

するとそこには膨大な数のデータが入っていた…
どうやら彼は日記の中でも後ろの4冊位を丸々写してきたみたいで、その量は凄まじく、重要な事が書かれている所を見つけるのに少し時間がかかった…

日記の内容を書いていこうと思うが、流石に全部書くとその量で気が遠くなるので、抜粋して書いていこうと思う…


―井上陽子の日記―

平成22年5月12日 (水)

何を目標にしたら良いのでしょうか?
雅次が死んでからというもの何も良い事がない
夏美の病気も日に日に悪くなる一方
本当に辛いです…


平成22年5月20日 (木)

今日は夏美の病院の日でした
ようやく夏美の病に病名が付いた
病名は線維筋痛症
初めて聞く名前だった
原因不明、治療法不明の病気らしい
難病や奇病と言われてるらしい
ますますこれからの生活が不安です


平成22年5月31日

最近夏美の身の回りの事をやっているだけで、一日が終わるような気がする…
こんな生活になってから、どのくらいの時間が過ぎたんだろ?
今はまだ蓄えと、雅次の残してくれた保険のお金があるので大丈夫だけど…
いつまでもこんな生活が続くのなら不安です
夏美の元気な姿が見たい
何か良い治療法が見つかれば良いのだけど…

・・・・・・・・・・・・・・

「古田さん、線維筋痛症って知ってます?」

「ああ…知ってるよ
線維筋痛症ってのは全身に凄まじい激痛が走る難病だよ
ていうか、この夏美って人、従姉妹なんだろ?
病気の事知らんのかい?」

村瀬は複雑な顔になってしまった…

「夏美ちゃんとは、あまり会った事がなくて…
最後に会ったのが確か夏美ちゃんのお父さん、雅次さんが亡くなった時だったかなぁ…
その時にはもう体の調子が悪かったみたいだけど…
そんな病気になってるとは知らなかったんですよ。
その後、夏美ちゃん体調悪くしてほとんど寝たきりになったっていうのは聞いてましたけど…」

と言って村瀬は冷蔵庫から発泡酒とお茶を出して、酒を飲めない私にお茶を渡し、自分は発泡酒をグビグビと飲み始めた…

「村瀬、実は俺も難病持ちなんだよ」

村瀬は一瞬固まり、人の顔をまじまじと見てきた…

「…見た目じゃ分からない病気はいっぱいあるよ…
それより難病って何で難病って言うか分かるか?」

「いや…分からないッス」

「難病とは原因不明、治療法不明で後遺症が残る可能性がある病気…
そして経過が慢性にわたり、介護等に人手を要する為、家庭の負担が重く、精神的にも負担の大きい病気の事だよ…
まぁ俺の病気は難病の中でもポピュラーな病気で、特定疾患の中に入ってるから助かってるけど…」

村瀬は複雑な顔を更に複雑にした…

「特定疾患って何ですか?」

「特定疾患ってのは難病の中でも積極的に研究を推進する必要のある疾患で、厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の臨床検査研究分野の対象指定された疾患の事だよ」

「イマイチ解らないッス…」

「簡単に言えば、難病の中でも患者数が多く、治療法の発見が早く求められてる疾患の事。
そしてその疾患者に対し、国である程度面倒見るので、研究の対象者になってくれって事だよ」

「研究ッスか…」

「言い方を変えれば、人体実験の対象者になってくれって事…
特定疾患の申請にはそういう事に対しての同意書にサイン、捺印をして申請するんだ…
しかも申請や更新する場所は役所とかじゃなくて保健所なんだよ…」

「保健所って…」

「まるっきり病原体扱いだろ?でもこの制度のお陰で大分助かってる。
無かったら大変だよ、診察、検査、薬等の病院代が治療法が確率され治るまで、延々と払わなければならないからね…
その人の症状によっては毎月莫大な治療費がかかる訳だし…
だから同じ難病でも特定疾患対象外の人は気の毒だと思うよ…
ちなみに線維筋痛症は現時点では特定疾患の対象外だよ…」

村瀬は残ってた発泡酒を一気に飲み干すと、冷蔵庫から新しい発泡酒を出してきた…
そして私達はまた日記を読み始めた…


―井上陽子の日記―

平成22年6月9日 (水)

最近夏美の容態が少し落ち着いてきた
あのリリカという薬を飲んでから痛みが和らいできたみたい
前のように痛いと叫ばなくなった
でも…
叫ばなくなっただけで痛みはあるんだろうね
夏美の辛そうな顔を見るのは何よりも辛いよ…


平成22年6月19日 (土)

信兄が再婚したらしい
真由美さんが亡くなってからもう10年以上経つし、信昭も大きくなったし、信兄も新しい人生を送りたいのかもね
幸せになってほしい
私達にも幸せが訪れないかな…
今の私には夏美が全て…


平成22年7月2日 (金)

朝から晩まで痛いと言っている
下痢も続き、外出なんて出来る訳がない
でも動かないと、筋肉が固まって余計動けなくなるらしい…
可哀想…
何故夏美なの?
私が代わってあげたい
辛いよ…見てるだけで辛い
夏美はもっと辛いんだろうね
雅次見ていますか?
夏美は頑張ってますよ
お願い…助けてあげて…

・・・・・・・・・・・・・・

部屋が暗くなってきたので、村瀬は立ち上がり電気を点けて、カーテンを閉めた。

「線維筋痛症って辛い病気なんですね、下痢が続くとかって何なんですか?」

「辛くない病気なんてあんまりないと思うよ。下痢は線維筋痛症の症状なのか、合併症なのか、薬の副作用なのか、よく判らないけど、線維筋痛症の人は結構下痢に苦しんでる人はいるみたいだよ…」

「合併症って何スか?」

「合併症とは。その病気が原因で起こる病気の事だよ。
重い病気や、複雑な病気程、合併症もあるし。
薬の副作用も強力な薬を使うから半端なものじゃない…
実は俺も薬の副作用で腎臓の機能が50%以下になってしまったし、肝機能も低下してきてる…
俺も合併症が色々あるし、いつまで働いていけるか判らないんだよ」

「マジッスか…」

「それより日記に書いてある、信兄って村瀬の親父の事かい?」

「そうッス」

「じゃあやっぱりこの日記は、村瀬の叔母さんの物なんだね。」

私達はそのまま日記を読み進めた…


―井上陽子の日記―

平成22年7月19日 (月)

今日は朝から大騒ぎした
信兄が遊びに来てくれたから…
新しい奥さんは若くて美人だった、とっても素敵な人
信兄にはもったいないような気がする…
夏美も久しぶりに笑ってた
嬉しかった
笑顔は大事
毎日笑顔で居られたら最高だね
信兄も幸せそうだったなぁ…
ちょっと羨ましいな…


『時は川の流れの様
時に早く
時に遅く
穏やかな時
激流の時
それは時によって違う
違うけど同じ
同じ川
同じ時』

・・・・・・・・・・・・・・


日記には時々、詩のようなものが書かれていた。
詩の言葉には飛躍的な表現があるが、多分書いた時の彼女の心理状態を表していたのではないだろうか?…

「なぁ…村瀬、新しい奥さんは若くて美人って書いてあるけど…
継母って何歳なの?」

「33です、俺の8つ上ですよ…
親父と17違います」

「マジで?それじゃあ夫婦って言うより、親子だな。
村瀬も母親って言うより、姉貴って感じだろ?」

「そうなんですよ。
だから余計居づらくなっちゃって…
実家出てきたんスよね…」

「そうなんだ…解るような気がする…」

ふと時計を見るともう夜の8時を過ぎていた…

「ヤベ…もうこんな時間、早く帰らないと嫁に怒られるわ。
日記の続きは家で見る事にするよ」

そう言って私は村瀬のアパートから出て、自宅へと車を走らせた。

自宅に着くと。早速預かったデジカメから日記のデータを自室のPCにコピーして…
そして次の日には村瀬にデジカメを返した。

それから仕事の忙しさから日記を見る暇もなく、数日か過ぎていった…

◇◇◇◇

そんなある日、また仕事中に村瀬から声をかけられた…

「古田さん、なんかヤバいかも…」

村瀬は何かを焦っているのか、どこか挙動がおかしかった…

「どうした?…何かあったのか?」

「実は…継母がうちのアパートに来たんですよね…」

「それがどうしたの?」

「今まで一回も来た事ないんですよ…
おかしくないスか?」

「そうでもないような気がするけど…
継母は何しに村瀬の所に来たんだ?」

「それが解らないんですよ…
ただ様子を見に来たって言って、部屋に上がってジュース飲んで帰っていきましたわ…」

「そうなんだ…なんだろうな…」

「俺が日記見たの気付いたんですかね?」

「どうだろうね…
でも考え過ぎじゃないか?
あんまり気にするな」

この時、私が日記の最後の方にも目を通していれば、もっと別の事を言ってあげれてたのではないかと思う…
だがこの時は村瀬の考え過ぎだろうと思ってしまったのだ…

その日私は家に帰ると、久しぶりに日記の続きに目を通した。


―井上陽子の日記―

平成22年8月6日 (金)

今日は夏美の病院の日だった
暑い中、夏美は頑張って歩いていたな
杖も新しいのを買ってあげたい…
新しい杖はもっと使いやすい物を買ってあげよ
本当は杖なんてなくても普通に歩けたらいいのに

またお薬が増えてしまったね
増えたのはコロネルとトリプタノール、便通と鬱病の薬
これで全部で16種類、もうすっかり薬漬けみたくなってしまったね
副作用も色々あるし心配だよ
早く良くなって、笑顔で暮らしたいね
旅行とかにも一緒に行きたいね


平成22年9月14日 (火)

今日はアーちゃんが来てくれました
色々お土産貰ったし、何より夏美の笑顔が見れた
楽しかったね
夏美は疲れたのかな?
今ぐっすり寝ています
私も久しぶりに笑ったな…
アーちゃんありがとう

・・・・・・・・・・・・・・

問題のアーちゃんなる人物がここで初めて登場する。
村瀬の言う通り、アーちゃんが村瀬の継母なら、もっと前から登場してる訳だが…
アーちゃんの本名等は書かれておらず、継母だと断定する事も何も書いていなかった。

◇◇◇◇

それから私は。出張で一週間位、地元を離れた…
暇があれば、日記を読もうと思い、会社からノートPCを持って行ったのだが…
結局そんな暇もなく、一度も読まず出張を終わらせ帰ってきてしまった。

それから久しぶりに出社すると、村瀬が私の顔を見た途端声をかけてきた…

「古田さん、お帰りッス」

「ただいま」

この時私は、村瀬が変な事に気が付いた…
疲れているのか、やたらゲッソリとしてしまっているのだ。

「村瀬、この一週間で随分窶れたんでないか?」

「分かります?あんま寝てないんですよ」

「大丈夫か?何かあったのか?」

「なんか家が変なんですよ…
家に誰か居るっていうか、常に誰かに見られてるような気がするんですよ」

「もしかして幽霊か?」

「やめてくださいよ、マジでヤバイんですから」

「前に行った時はそんな感じしなかったけどな」

「判るんですか?」

「なんとなくだけどな、帰り寄って見てやろうか?」

「頼みますわ」

私は昔から霊感みたいなものがあり、そういう所に行けば、何かしら感じる事が出来た。
でも感じとれるだけで除霊等、専門的な事は一切出来ないのだが…
それでも何か解るかなと思い、仕事の帰りに村瀬のアパートへ向かった。

村瀬の部屋に上がると、私の好きなコーラとお菓子を買って来てくれていた。

「どうッスか?何か感じます?」

「イヤ別に…いつもの村瀬の部屋だよ」

「そうッスか…」

「考え過ぎなんじゃないのか?
最近色々あったから、神経が高ぶってんだろ」

「そうッスかねぇ…」

本当にこの時点では何も感じなかった…
色々見て回ったが、普段と何も変わらない普通の部屋…
私は彼の思い過ごしだと思いそのまま帰ろうとしたのだが…
せっかく来たので彼と日記の続きを読む事にした。


―井上陽子の日記―

平成22年9月22日 (水)

またアーちゃんが来てくれました
すっかり夏美も懐いてしまった
今度、電位治療器の体験会場に連れて行ってくれるみたい
その治療器で癌や糖尿病、難病が治った人がいるみたい
夏美の病気も治ってくれたらいいな
アーちゃん良い情報ありがとう
今から金曜日が楽しみです
それより電位治療器ってどんなのだろ?


平成22年9月24日 (金)

今日は夏美とアーちゃんに連れられて、電位治療器の会場に行ってきました
会場は意外と近かった
あんなスーパーの一角でやってると思わなかった
あと老人が多かったなぁ…
でも椅子に座ってるだけだし、会場も近い。
これなら夏美も毎日来れそう
しかも本当に色々な病気を治してる人がいっぱいいるみたい。
こんなのあるならもっと早く知りたかったぁ
アーちゃんには感謝です


平成22年10月1日 (金)

オーラメディカの会場に通って一週間
夏美の調子が日に日に良くなってきてるよ~な気がする。
私も最近体の調子が良い
これもオーラメディカのお陰かな…


平成22年10月8日 (金)

今日は夏美の病院の日でした
最近、先生から同じような事しか言われない…
線維筋痛症って血液検査等で反応が出ないから難しいみたい…
でも最近調子が良い事を伝えると、トラムセットの量が少しだけ減らされた
やっぱり薬の量が減ると嬉しいな
薬が無くても普通の生活が出来るようになりたいね。

・・・・・・・・・・・・・・

「古田さん、電位治療器って分かります?」

「電位治療器ってのは、肩凝りや頭痛、不眠症とか便秘とかに効果のある医療機器の事みたいだよ。
俺も詳しくは解らないけど…
高電圧をかけて、電界を発生させ、その中に人間の体を置く事で治療するらしい…
実は俺もこの電位治療器の体験会場に一度行った事があるんだ」

「どんな感じでした?」

「俺が行った所は、潰れたコンビニの建物を借りてやってたんだけど…
まぁ…簡単に言えば催眠商法だったよ」

「催眠って催眠術の催眠ですか?」

「そう…その催眠。この電位治療器ってのは癌や糖尿病、難病を治せる効果は無いよ。
これで治せるなら医者や病院が要らなくなっちゃうかもね」

「でも日記には治ってる人がいるって書いてますよ」

「多分プラシーボ効果を利用してんだよ。
体験会場に来るのは体の調子が悪い人や老人が多い。
どこかしらに不調を抱えて、少しでも良い健康グッズを探してる人が多いからね。
その人達に実際に体験させて、その間に暗示にかけていくんだよ。
多分マニュアルか何かあるんだろうけど…写真や資料を見せながら、あの人は癌が治った、この人は難病が治ったと言って、治療器の効果を信じ込ませていくんだ。
時にはサクラを使ったり、特許取得してると言ってみたり、高名な医学者、又は医療に携わってる人の名前まで出したりしてね。
そうやって暗示にかけてプラシーボ効果で、体の調子が良くなったと勘違いさせて、この治療器を高額で売り付けるんだよ


「恐いッスね…」

「でも買う人は、これで病気が治ると信じてしまうんだよ。
特に長年病気に苦しんでたり、俺みたいな難病もってる人とか、本当にそれで治せるんなら買ってしまうと思うよ」

「でも効果は無いんですよね?」

「それが微妙なんだよね。
本当にこの治療器で治した人もいるらしいんだよ。
病は気からってやつだろ…
最後まで治ると信じ込んだんだろうね…
でも、やっぱりほとんどの人は効果は無いよ。
病気は根本から治さんとね。プラシーボ効果だけじゃどうにもならん事がほとんどだよ」

そしてまた日記の続きを読もうとした時だった。

私の頭が勝手に玄関のドアの方を向いたのだ…

上手く説明出来ないのだが…
目の前に突然何かが飛んできて、それを無意識の内にかわした事がある人がいると思う。
それに似た感じと言えばいいだろうか…

無意識の内に玄関の方に目がいったのだ。
でも、そこには誰も居ないし、何もない…だが何者かの気配だけがそこにはあった。

そいつは動く訳じゃなく、じっとこちらの動きを伺っている様だった。

私は昔から幽霊と言われる者を何度か見た事がある。
突然消えてしまう女の子を見たり。
心霊スポットと言われる場所で、無実を叫びながら処刑される人を見たり。
火災現場の炎の中に無表情の男が立っていたり。
誰も居ないのに物が動いたり、ドアが開いたり閉まったりするところも見た事がある。

昔からそういう体験をしてるので、ちょっとの事ではビビったりはしないのだが…
この時は正直恐怖をおぼえた…

突然現れた何者かの気配…
姿も見えず、音も声も聞こえない。
ただそこに居るという事だけは確実に解るのだ。

どんな形をしてるのか、どんな色なのかも分からないのだが。
そいつはじっとこちらを見てるのが分かった。

これが本当の第六感ってやつではないだろうか?
見える訳じゃなく、触れる訳じゃなく、聞こえる訳でもない。
本当に感じるのだ。
それも直接肌にビリビリと伝わってくる感じがした。

ハッキリ言って怖かったし動けなかった。
そうして固まっていると、その気配はスッと消えてしまった。

「古田さんどうしたんスか?」

「いや……何でもない……」

どうやら村瀬は何も感じていないらしく、変な顔で私の顔を見ていた。

私は村瀬を心配させたくなかったし。気のせいかもしれないと思い、日記の続きを読む事にした。


―井上陽子の日記―

平成22年11月1日 (月)

今日から11月、寒くなってきました
そろそろ灯油を買わなくては…
今日も日課のオーラメディカの会場に行ってきました。
そしてショックな事がありました。
11月いっぱいで今の会場から他の会場に移動になるみたいです…
せっかく夏美の調子が良くなってきてるのに…
オーラメディカ欲しいけど、オーラメディカ一式で260万位するみたい…
買えない金額ではないけど…
アーちゃんに相談してみようと思います。
でも夏美が元気になるなら260万位安いのかもしれない
病院代や薬代だって高いし、このまま病院通っても治る保証はないし…
病院代だって何年も通えば260万を超えてしまう…
どうすれば良いのだろう?


『長い夜は終わり 朝日が昇り始めた
私達を優しく包み込み 心を満たす
苦痛の道は分岐点を向かえたようだ
分かれた全ての道から誘惑の声が聞こえる
正しい道を歩けるのだろうか…
光の道はあるのだろうか…
でも今は歩く事しか出来ない
その道がまた長い夜に続いても…』


平成22年11月18日 (木)

遂にオーラメディカを買いました
アーちゃんの車で運んでくれて、設置も協力してくれた
分からない事があればアーちゃんが聞いてくれるし、本当に助かった
アーちゃんには本当に感謝しか言いようがないね。

・・・・・・・・・・・・・・

「古田さん、何でオーラメディカの会場が移動になったんですかね?」

「俺もよく分からないけど…
この手の催眠商法、詐欺商法にはよくある事みたい…
空き店舗を利用した期間限定の会場を使うのは、逃げる為、トラブル回避の為と言われてるよ。
何かトラブルがあって、消費者がその業者に連絡したい時があっても、そこに業者がいなければ連絡のしようがない。
しかも本社の所在地が遠方だったり、不在がちだったり、なかなか連絡が取れない事が結構ある。
しかもその連絡先が架空のものだったら、被害の回復は困難になってしまうんだ。
だからこの手の業者は期間限定の会場を利用するみたいだよ」

「なるほど」

「そして移動する前に商品を高額で売り付けるんだよ。
私達が移動してしまったら、もうこの商品は買えませんよ、特許を取っているので他では手に入りませんよってね」

そんな話をしてる最中だった。
また私は何かの気配を感じ、自然と今度は台所の方に目をやった。
しかし、さっきと同じで何も見えないし、何も聞こえない…
だがやはり、そこには何者かの気配だけがあり、ビリビリと直接肌にその存在が伝わってきていた。
今度は村瀬も感じたのか、彼も黙って同じ方向を凝視していた。
その状態のまま数十秒経った時だった…
突然机の上に置いてあった、コーラを汲んだガラスのコップが『ガシャーン』という凄まじい音と共に砕け散ったのだ。
普通落としたり、物がぶつかったりしたら、割れると思うのだが、何故か割れた訳ではなく粉々に砕けたのだ。

私と村瀬は一瞬体を震わせ、その光景を理解出来ず固まってしまった。
そしてその数秒後、今度は村瀬のPCの液晶画面が『バーン…バーン…』と音を立てて砕け散っていった…
そして最後に机の上に置いてあった、デジカメが『ボン』と音を立てて飛び跳ねた…

私達は全く理解出来ず、動く事も喋る事も出来ないまましばらく固まってしまった。

◇◇◇◇

「今のなんスか?」

「解らん…」

会話が出来る頃にはその気配も無くなっていた。

取り敢えずコーラでビシャビシャになった机の上や、コップの破片、PCの砕けた液晶等を二人で片付ける事にした。

二人共、得体のしれない恐怖で少し体が震えていたような気がする。

そして片付けた後、PCやデジカメが起動するかどうか確かめたが…
両方共ダメだった…
完全に壊れてしまっていた…

デジカメはデータまでイカれてしまっていた。
PCの方は分からないが、古いPCだったらしく、直す程の物じゃないから、買い替えると言って、そのまま放置する事にした。

そしてこの得体の知れない存在が、村瀬の言っていた家に誰かがいるという事かと聞くと…

「分からないッス…
そうかもしれないけど、こんな物が壊れる事は初めてッス…」

と言って落ち着かない様子で部屋の中を見回していた。

そしてもう得体の知れない者の気配は消えていたが…
これ以上、この部屋に居る勇気もなく、取り敢えず二人で部屋から出る事にした。

「村瀬、これからどうするんだ?」

「取り敢えず何処か泊めてくれそうな友達を探しますよ。
もうこの家には居たくないですよ」

「そうだよな…
俺家に泊めてあげたいんだけど、俺家狭いし、第一嫁が何て言うか…」

「大丈夫ッスよ、泊めてくれそうな友達はいますから…」

「そっか…何かあったら連絡くれ」

そう言って私は村瀬と別れ家に帰った…

◇◇◇◇

その日の夜、突然会社から電話があり、急遽明日から一週間位、本社の方に出張に行ってほしいという話をされた。
急な話だったが断る事も出来ず、私は直ぐに出張の用意をして、その日は早く眠ってしまった。

◇◇◇◇

次の日、本社の方に車で向かった訳だが、今回は荷物になると思い、ノートPCは会社に寄って置いてきた。

この事も後に後悔する事になるのたが…
この時はまだ日記に書かれている事よりも仕事に集中したいという思いと、なんとなくだが日記を読む気分にはなれなかったのだ。

それから出張中も、何度か村瀬とは連絡を取り合っていたが、あれから別に何も変わった事もなく、今では自分の家に戻っているという事だった。


私もその事を聞いて安心したのだが。
何故か妙な違和感を感じるようになってきていた。
それは村瀬の喋り方というか、なんとなくだけど、いつもの村瀬じゃないというか…
なんかそんな感じがしていた。

そしてその違和感が確信に変わった出来事が起きた。

それは本社の仕事がかなり忙しくなり、私の出張が伸ばされ、更に応援で村瀬も本社の方に出張に来た時の事。

私は出張中、会社が用意してくれた小さな温泉付きのホテルに宿泊していたのだが。
村瀬も同じホテルに宿泊する事になり、時間が合えば風呂や食事等は一緒に行動するようになっていた。

その日も私が仕事を終え、ホテルに戻ると、丁度村瀬も戻って来ていた。

「お疲れッス、飯の前に一緒に風呂行きませんか?」

「いいけど、先に行ってて、着替えて用意したら行くから」

「了解です」

私は部屋に戻り、着替えてから洗面用具を持ち、風呂へ向かった。

脱衣場に入ると、村瀬が素っ裸になり、体重計に乗っていた。

「ヤベー、また太っちまった」

村瀬は独り言を言うと、そのまま浴場に向かおうとしたのだが、私は彼の見に付けている物が気になって声を掛けた。

「村瀬、そのネック外せ、そんなもん付けて温泉に入ったら、錆びちまうかもしんないぞ」

「大丈夫ッスよ、これ本物なんで錆びないッス」

村瀬の言ってる意味がイマイチ解らなかったが、彼はそのまま浴場に入って行ってしまった。

まあ…本人が大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろうと思い、私も浴場に向かった。

浴場の広さは20人も入ればいっぱいになってしまうだろうか…
湯船は3つあり、洗い場も10人位は座れるだろう…
そして浴場全体が薄暗く、所々に段差があり、気をつけて歩かないと転んでしまいそうな浴場だった。

私は軽く湯に浸かり、直ぐに洗い場で体を洗い始めた。
すると直ぐに村瀬が隣に座り、彼も体を洗い始めた。
私はどうしてもネックレスが気になり、彼に聞いてみる事にした。

「なぁ…そのネック何が本物なの?」

「これッスか?
実はこれ普通で買ったら五万位するらしいんスよ」

「ハッ?マジで?」

どう見てもネットとかで五千円位で売ってそうな、シルバー系のネックレスにしか見えなかったのたが、村瀬は自信たっぷりに見せびらかしてきた。

「これ継母からもらったんスよ。
友達の家に泊めてもらってる時に、俺家に継母が来たみたいなんですよね。
それで俺が留守だから携帯に電話掛けてきて、それで一回自分家帰って、そこでもらったんですよね」

「そうなんだ…でも五万もするようには見えないけど…」

「俺も最初は半信半疑だったんスけど、これを身に付けてから家で変な事が起きなくなったんですよ。
そして、なんか体が軽くなったっていうか…
何やっても全然疲れなくなったし、あんまり寝なくても普通に動けるようになったんですよね」

「マジかよ?」

「継母に俺家であった怪奇現象の事言ったら、魔除けになるし、不思議なパワーがあるから身に付けてろって言われたんですよ。
そしたら本当に継母の言う通りになったんですよね」

「それで自分の家に戻ってたんだ」

「そうなんですよ。
そうだ、古田さんの分も継母に言って手に入れましょうか?
そしたら難病も多分治りますよ」

「俺のはいいよ…そんなんで治ったら医者が要らなくなる」

「そうッスか…本当に凄い効果あるのにな…
あ、あとあの日記の件…
もういいッスわ、多分俺の勘違いッスわ」

「そう…なのか?…」

「俺、継母と色々話したんスわ、ネックレス貰ってから頻繁に俺家に来るようになって、色々気に掛けてくれるってこというか…本当に心配してくれてるみたいで。
俺、継母の事誤解してたかもしんないッス。
だからあの日記の事は忘れてください」

「そっか…そんなんならいいけど…
俺も忙しくて全然日記読んでなかったから…」

「もう日記消していいですよ。解決しましたから」

「そっか…分かったよ…」

この時、村瀬に感じていた違和感の理由が解った。
彼は普段、あまり笑顔を見せたり、笑って会話するタイプではないのだが、この時は終始笑顔で時折笑いながら話をしていた。
少し不気味にも感じたが、それ以上何も感じなかったし、あまり気にしないようにした。

◇◇◇◇

それから何事もなく、本社での仕事も終わり、その日ホテルに泊まって、次の日の朝地元に帰れるという時に嫁から電話がかかってきた。

「ねぇ、今直ぐ帰ってこれない?」

電話に出た途端叫ぶように言ってきた。

「おい、どうした?」

「何か…何かが家に居るの」

かなり取り乱してるようで、息遣いまで電話越しに聞こえてきた。

「何かって何だよ?」

「分からないの…分からないけど何かが家に居るのよ」

そう言った時だった、突然何かが割れる様な『バリーン』という音が電話越しに聞こえてきた。

「キャーー」

「おい、大丈夫か?何があった?」

「分からない…分からないけど何かが壊れる音がした」

「取り敢えず落ち着け、そして家から出ろ」

「うん、わかった」

そう言って妻の絵理子は家から出て自分の車に移動したようだった。
しばらく興奮状態だったが、しばらくすると落ち着いてきて、今まであった事を話始めた。

絵理子の話だと、家でテレビを見ながら寛いでいたらしい。
すると、何者かの気配が玄関の方から扉を開けずに、音も立てずにスゥーっと入ってきたらしいのだ。
(何だろ?)と思い、そちらの方を見たが何も見えなくて、何者かの気配だけがそこにあったという。
少しするとその気配が家の中をあちこち移動しはじめたそうだ。
それで怖くなり、私に電話をかけてきたらしいのだ。

「ねぇ…今直ぐ帰ってこれない?怖くて家に入れないよ、まだ家の中にいるかもしれないし…」

「仕事は終わってるからな…
本社に連絡取って帰させてもらうように言ってみるよ」

「うん、お願い…」

私は電話を切ると、直ぐに本社に連絡をいれ、妻が急に具合が悪くなったと理由をつけて、帰る事にした。

泊まっているホテルから自宅まで、車で飛ばせば二時間半位で帰る事が出来る。
私はノンストップで自宅まで車を走らせた。

◇◇◇◇

自宅に着いた時には夜10時を過ぎていた。
絵理子はずっと自分の車の中にいたらしく、私の顔を見ると落ち着いたのか…
「ごめんね」と一言言って、私の後ろに隠れるように着いてきて、一緒に家に入って行った。

家に入ると、別に変わった様子はなかった。
そして何か壊れた物がないかと家中見て回った。

すると、私の部屋に置いてあるPCの電源ランプが点灯してない事に気が付いた。
最初コンセントから電源コードが抜けたかな?と思ったが、電源コードは挿さったままだった。
見る限り特別異常はなく、電源を押してみたり色々と試してみたが、全て無駄で全く動かなくなっていた…

その他は何も壊れたりしてる物もなく、何者かの気配ももう消えていた …

その後二人で軽く食事を取り、私は仕事や車の運転等で疲れたのか、直ぐに眠ってしまった。

◇◇◇◇

次の日仕事は休みだった。
私は朝から近くのPCショップに壊れたPCを持ち込み、修理を依頼した。

その帰り、昨日の事を村瀬に伝えようと彼に電話をかけた。

「お疲れッス、どうしたんですか?」

「いや…実は俺家でも何もしてないのにPCが壊れちまって…
壊れる前に嫁がやたら何かの気配を感じていたみたいなんだ…」

「マジッスか?やっぱり継母に言ってネックレス手に入れた方がいいんじゃないッスか?」

「いや、ネックレスは要らないけど…」

「そうッスか…せっかく古田さんの分調べてもらったんですけどね」

「調べるって?」

「なんか人それぞれ合うネックレスがあるみたいで、使う素材や値段も違うらしいんスよ」

「何を基準に変わるんだよ?」

「なんか名前とか、生年月日とか住んでる場所とかみたいです」

「ハッ?調べてもらったって事は俺の事色々言ったのか?」

「言っちゃいましたが…マズかったですか?」

「マズかったもなにも、そういう事は一言言ってくれ、もしかして住所も言ったのか?」

「詳しい場所までは言わなかったッスけど、大体の場所は言っちゃいました」

「マジかよ…」

私は会った事もない人に自分の個人情報を知られるのは、ちょっと嫌だったが、もう言ってしまったのなら仕方ないと思い、そのまま電話を切ろうとした…

「そういえば、俺あと3日位本社の方にいなきゃなんないんスよ」

「え…そっか頑張れよ」

「出張終わったら有休取って、俺セミナーに参加するんスよ」

「セミナーって?」

「なんか体の内側の力を増幅させるだか…なんかそんな感じで…
このネックレスのパワーももっと協力にするセミナーだと言ってました」

「それも継母に誘われたのか?」

「そうですよ。なんか2泊3日でパワースポットみたいな所に行くみたいッスわ」

「そうなんだ…村瀬が決めた事なんだから、あんまり言いたくないけど、変な宗教とか関係してるんじゃないだろうな?」

「大丈夫ッスよ、ただの健康セミナーみたいなもんですよ」

「そっか…頑張れよ」

私はそれ以上何も言わず電話を切った。

続く…












































[4537] 卒業写真
面白い。「先生」シリーズ化希望!!※4536宛
[4536] 卒業写真
サークル(テーブル・マジック同好会)の後輩に、俺が「先生」と慕うイケメンがいる。

父親が有名なマジシャンで彼の腕も既にプロ級。実際にもう、あちこちのクラブに呼ばれて結構な額を稼いでいる。俺は一応先輩だが、生まれつき手先が不器用なのを自覚してるから、彼に対するジェラシーなんてものは微塵も無い。まあ、微塵も湧かないくらい差があるって事だ。

先生の得意分野は他にもあって、マジックの腕よりもその能力の方が俺をいたく刺激しているのだが、それについては後で話す。個人的に彼の事を『先生』と呼んでいるのは、実はその才能による所が大きいのである。

夏休みも終わりに近付き、ミンミン蝉の勢力が次第に衰えてきたある日、俺は新潟の実家から送られた“コシヒカリ”10kgをバイクに載せ先生のマンションに向かっていた。俺の方が遥かに貧乏だがそこは先輩、結構気を使っているのだ。

途中、目印のコンビニを曲がろうとした時、店の駐車場に一際目立つチャリを発見。先生いわく最高級ロードバイクらしいが興味無いからママチャリとの区別は見た目だけだ。

「よ、先生」

「先輩、早いっすね」

相変わらずのイケメンぶりに何時もの事ながら内心、負けた、と思う(嫉妬ではない…多分w)。

「あのう、公共の場で先生はちょっと…」

「わりぃわりぃ、つい癖で」

見ると先生、カゴにアルコール類を山積みしている。

「今夜はバーベキューっす。ワイン、ビール、焼酎飲み放題」

「マジか」

「昨日チップだけで三万入ったんで」

「三万!?」

「ホストクラブですよS区にある」

「わお!!じゃあ、遠慮しねえぞ。アイスも頼むわ。ついでにケーキと、プリンもな」

「どんだけJKなんすか…」




先生の部屋はいつ行ってもおそろしく整然としている。いわく「潔癖症がマジシャンの最低条件である」らしい。

たらふく食って酔いが回った頃、夏休み直前に催された麻雀大会の話になった。その大会で先生は「麻雀なんかした事ない」と言いながら断トツの優勝だったのだ。

「何かいろいろ裏でやってたんだろうが全く見抜けなかった」

「視線ですよ重要なのは。リーチを掛けたら掛けた人間や宣言牌に目が行く。これはまあ当然ですが、大事なのは目の動きとは別に心の視線というものがあるって事です。誰かが「腹減った」と言えば目は動かさなくても心がその誰かに向く。同時に視線もそっちに飛ぶんです。すると視界に一瞬空白ができる。簡単に言えば注意力が散漫になるんです。そんな時ですよ、捨て牌取り放題なのは。捨て牌だけじゃない。前の山からも左右の山からもどんどん持って来て不要牌と入れ替えます」

「だろうと思って注意して見てたんだけどな」

「先輩は僕の真後ろにいて僕の手が変わっていくのに全然気付かなかった。散漫過ぎますよ」

「…………」

「人間って、見てるようで見てなかったり、見てないようで実は見てたりする。ギャラリーの心の視線を自在に操れるようになれば、マジックなんて意外と簡単なんです」

「心の視線ねえ…」

「先輩?」

「ん?」

「常に周囲の視線を意識してるとですね…人間以外の視線にも敏感になるんですよ」

「待ってました~先生の怖い話」

「霊とは限りません。犬や猫だったり、烏だったり、物だったり、山だったり、いろいろですよ。植物の時もあります」

「植物!?」

「あ、先輩、ひとつ実験しましょう」

先生は立ち上がると奥の部屋に行き一冊のアルバムを持って来た。

「これ、僕の中学の卒業アルバムなんですが、ええとですね…」

「…………」

「クラスは違うんですけど、ああ、これこれ、三年四組。この中で視線を最も強く感じる生徒選んで貰えます?」

「え?勘でいいのか?」

「勿論です。ちなみに正解なんてありません。人それぞれの主観で変わるでしょうから」

先生はそう言うと立ち上がった。

「そろそろデザートの時間すね」




俺には霊感なんてものは無い。しかし、40以上はある顔写真の中で一人だけ目を引いた女生徒がいた。見た目は極々普通。姓名もありきたりだ。写真写りも他と変わらない。特段目力があるとも思われない。それなのに何故かその生徒から目が離せない。

カップアイスを手に戻って来た先生は、俺の意見を聞きもせずに呟いた。

「彼女、卒業式の帰り、列車に飛び込んだんです」

「判ってたのか!?どれを選ぶのか…」

「佐伯春菜。虐めが原因だとの噂はありますが、真相は闇の中です」

「…………」

「どうぞ」

目の前に置かれたアイスだが、何かざわざわ寒気がして手を付ける気にならない。

「視線ってね、おかしいんですよ。その生徒にしたって別に撮影者を睨み付けてるわけじゃない。目の迫力だけを言うなら他にも候補者は沢山います」

「確かにな」

「ヒトラーの写真見て恐がる日本人、あまりいないんじゃないですかね。でも、ユダヤ人なら違う筈です。自分を見ている、と感じてしまうんですよどうしても」

「なるほど…」

「でもね先輩、その生徒は先輩とは縁もゆかりも無い。それなのに選んだ。不思議ですよね?」

「…………」

「答えは簡単、その生徒が先輩を見てるからですよ」

「やめてくれよ先生…気味の悪い」

「佐伯春菜は卒業式の日を敢えて選んで自殺した。言い換えれば卒業という行事は彼女にとって特別な儀式だったに違いない。卒業写真に彼女の思いが籠るのは当然なんですよ」

「この写真に魂が宿ってるって事?」

「先輩、これ前にも言ったかも知れませんが…僕は、親父を尊敬しています。マジシャンというよりはお笑い芸人に近い親父ですが、僕には到底敵わないキャラがある。あの路線で勝負してたら一生勝てません。だから僕は一心不乱に本格派を目指したんです。やっぱり負けたくないですからね」

「…………」

「そこで、まず指先の感覚を研ぎ澄ます練習をとことんやったんです。シャーペンの芯、上から軽く触れただけで太さが判るようにするとか、水の温度を指先で当てるとか。方法は自分で考えました」

「スゲーな先生はやっぱ」

「でね、触れると判るんですよ。その生徒の写真だけ、温度が低いのが」

「マジ!?」

「それに、僅かですが風を感じます。洞窟とかで奥の方から吹いてくるような、湿った感じの…」

「こわ…」

「科学的に調べたら立証出来るんじゃないですかね。それくらい温度に差がある。風も。僕の錯覚なんかじゃないと思いますよ。最先端科学の研究チームに調査を依頼したいなあ…霊の存在が意外と簡単に解明される気もするんですけど」

「でもまあ、却下されるよな~普通…」

「先輩、おかしくないすか?ニュートリノが発見されてるってのに霊の存在は完全にスルーされてる。写真に写ったりするんだから分子レベルで調べたら一発だと思いますけどね。学部の選択ミスったかな(笑)」

「先生が世界的なマジシャンになったら、話聞いてくれる科学者が現れるかもよ?」

「ですね~じゃあ取り敢えずそれ目指しますか。先輩、アイスがシャーベットになってますけど」



俺が彼を「先生」と呼ぶ所以、それは異界の存在を彼独自の感覚で見抜く才能が尋常じゃないからに他ならない。幽霊をはっきりとは見た事無いらしいから、単純に、霊感のある人間だとは言い切れない。だが妙に説得力がある。そんな所についつい尊敬の念を抱いてしまったのだ。


シャーベットを飲み干したら今度はケーキが食いたくなった。キッチンで後片付けをしている先生に声を掛けようとした時、ふとテーブルに置かれたままのアルバムが目に入る。唐突に先生の言葉が蘇った。

「女生徒が先輩を見てるからですよ」

改めてゾッとする。という事はその写真、自殺した女生徒の幽霊その物って事じゃないのか!?そう考えると、再度ページをめくって彼女の写真を見るなんて恐ろしくて到底出来ない。さっきのヒトラーの話じゃないが、先入観で同じ物でも印象が変わるのだとつくづく思う。

先生は恐くないのだろうか!?その生徒は列車に飛び込んでバラバラになっているのだ。顔写真に視線を感じた時点で俺なら捨てる。とてもじゃないが傍に置いたまま生活なんか出来ない。

「先輩、10時のおやつですよ」

見ると先生、ケーキとコーヒーを盆に乗せている。俺はたまに、先生は心が読めるんじゃないだろうか?と感じる瞬間がある。確認はしてないが。

「あのな、先生…そのアルバム、どっかやってくんねえ?…ケーキが不味くなる」

「あ、先輩、もしかしてビビってます?」

「先生が恐がらせるからだろうが…」

「大丈夫ですよ。まだ気付いてませんから」

「はあ!?だってよ、俺を見てるって言ったじゃん」

「間違いなく視界には入ってますね。でも、電車の窓から外の景色眺めてて、遠くでトンビが飛んでたって気付かないでしょ?先輩はまだ、そのトンビに過ぎないっすから」

「…………」

「でもね、そのトンビが妙な動きをしたら、気付くかも知れません」

「どゆこと?」

「ん~例えばですねえ、彼女を罵りながら写真をアイスピックで突き刺すとか、試しにやってみます?」

俺は当然断わった。


[4506] 言葉にできない
僕はオカルト好きだからよく妄想をする。よくやるのが、どんな状況が自分にとって怖いか?を、あれこれ設定を変えながら空想するたわいない遊び。

例えば、深夜のエレベーター…


マンションの自室を出て、いつものようにエレベーターに乗る。何事も無く一階に到着。

チン…

その瞬間!!

ドアの隙間から次々となだれ込む大量のゴキブリ!!!驚いて飛び出そうとするもエントランスは一面、光沢のある、蠢く黒い絨毯と化している。

慌てて【閉】ボタンを連打!!そこに地震、転倒、停電。見るとドアは五センチ程開いたまま。

これは怖い…。銃を所持していれば迷わずこめかみを撃ち抜く所だ。

僕は絶叫するだろう。

――それはもはや、言語を超越した魂の叫び――

「うひぃぃやあぁぁぁ!!!!!!」






マンションの自室を出ていつものようにエレベーターに乗る。先客がいた。1Fを押そうとするもそいつが立ち塞がっていて押せない。

(非常識な女だな…ま、どうせ一階だろうから押すまでもないか…)

水商売系の派手なドレスのその女、ヒールのせいもあるのだろうが見上げる程に背が高い。長い髪は腰にまで達し身長162cmの僕からは、まるで滝のように見える。

チン…

(8F…)

一つ下の階でドアが開く。が、誰も乗って来ない。女が降りる気配もない。

ドアが閉まる。

チン…

(7F!?)

薄暗い通路に人影はない。女は動かない。

(…………)

ドアが閉まる。再び外界と遮断され狭い空間に二人きり。

コツ

(え!?何!?今の音…)

チン…6F。

(…………)

コツ

(ボタンを押す音!?)

チン…5F

コツ

(指で押してるんじゃない…他の、何か硬い物で次の階を押してるんだ!!)

チン…4F

(…………)

コツ

(何なんだこの女!?)
“キチ○イに刃物キチ○イに刃物キチ○イに刃物…”嫌な予感が胸底から触手のように伸びて来て這いずり回る。

現実を把握しきれないまま、僕は打開策を求めて女の観察を始める。長身なので一見華奢に見えるが、肩幅が異様に広いのに気が付いた。肩の盛り上がりはパットなんかじゃなく明らかに三角筋によるものだ。長い髪に隠された首は間違いなく極太。でないとバランスが取れない。

(男…なのか!?)

チン…3F

奴は微動だにしない。当然のように誰も乗って来ない。

僕は決断する。

(次の階で飛び出そう。高校時代は100m12秒02、足には自信がある。だが喧嘩は駄目だ。身体は小さいし何より実戦経験がない。

問題は飛び出した後、階段を上に駆け上がるか、下に下りるかだ。下?…馬鹿か!!下手すりゃ鉢合わせじゃないか!!!

奴は刃物を隠し持ってる。そう考えとかないといざという時、対処出来ない。よし、部屋に戻って警察に電話だ。警察?被害に遭ってもいないのにか!?)

チン…2F

一瞬の躊躇が身体を硬直させ脱出に失敗してしまった。化け物に追い掛けられるシーンをリアルに想像してしまったのだ。映画なら絶対に助からない。部屋の解錠に手間取り必ず殺られる。

(いざとなったら、闘うしかない!!こうみえてもサッカーの名門○○実業高校で国立にも行ったんだ!!〈控えだったが…〉)

チン…(ええ!?3F!!!)

(…………宣戦布告!?。何でだ!?俺、誰かに恨まれてたっけ?)

チン…4F

(…………)

チン…5F

(…………)

チン…6F

僕は覚悟を決めた。奴がどう出るか、臨戦態勢を整えてひたすら待つのだ。それまでは現状維持。こちらからは動かない。

族のパシリだった従兄のサブちゃんの言葉を思い出す。「喧嘩の必勝法を教えてやる。相手の髪を両手で掴んでよ、まずは鼻っ柱に頭突き。うずくまった奴の顔面に膝をぶちかます、それで決まり」脳内でシミュレーションを繰り返す。頭付きかますには跳ばなきゃならない、それが多少気になった。

(そうか!!ヘディングの要領だ!!来るなら来い!!ぶっ殺してやる!!)

チン…7F

ぶっ殺すとか考えている癖に、エレベーターから飛び出す事も出来ない自分に絶望する。それを見越してか、突然、奴が、しゃがれた声で歌い始めた。

「あたまテカテカ♪さえてピカピカ♪それがどうした♪ぼくドラえもん♪」

(ひっ!!)ズルズル…歌に合わせて長い髪が上にずり上がって行く。ズル…ズルズル…想定外の展開に思考が付いていかない。

ドサ!!

ドレスの向こうに大量の髪の毛が落ち、広がった。

視線を上げると、奴は、ツルツルの頭を直立させている。その形状に僕は思わず目を見張った。

(ジダンだ!!かつてフランス代表だったジネディーヌ・ジダン!!)

チン…8F

ジダンはデカい鉈(なた)を隠し持っていた。ストレッチのつもりなのか、彼はそれを大きく振り上げると刃の無い方で自らの逞しい首や肩をパシパシ叩き始める。袖が大きくめくれて二の腕が露になった。紛れもなく、超一流アスリートの上腕二頭筋だ。

(ああ…どう考えても僕に勝ち目は無い。もはや、運命に身を委ねるしかないのだ。ここで人生を終えるのは不本意だが、ジダンなら、あのジダンなら、許せる気がする。超絶トラップ、怒涛のファンタジスタ、昔、死ぬ程憧れたジダン…。貴方になら殺されてもいい。それがご意志なら喜んで従います…)

ジダンだと思い込む事でこれから起こるであろう悲劇を少しでも緩和しようとしたのだ。でないと、自分があまりにも可哀想過ぎるから。

ジダンの言動は常に僕の意表を突く。

「どこでもドアー」

ポツリそう呟くとゆっくりと振り向いた。

(うわ!!)その顔は、僕の幻想を粉砕どころか人間ですらなかった。顔面が全て陥没し、そこに、隙間無くびっしりと、蛆が蠢いていたのだ。

目も口も無いのに奴は僕を見下ろし、今度は叫んだ。

「どこでもドアー!!」口の辺りから蛆がボトボト落ちる。

チン…ドアが開いた。

(助けて、くれるのか?いや、下さるのですか?)

思いがけない行動に、僕は感謝の気持ちで一杯になった。生殺与奪の権利を一手に握っているサイコ野郎は、今やイエス・キリストよりもお釈迦様よりも天照大御神よりも確実に、格上の存在なのだ。

(ありがとうございます!!)
僕は心の中で礼を言い、ドアから出ようとした。

メリ!!

一瞬、首筋に、雷に打たれたような衝撃が走る。

グラッ

首が大きく傾くのが分かった。視界が瞬時に暗転する。

ゴト…頭が何かにぶち当たる音がひどく遠くで聞こえた。



口の中に何かが入ろうとしている。

薄れゆく意識の中で、僕は叫ぶ。

「ωφε?∇☆@σ∀φ!?(何これ?もしかして蛆!?)」

言葉に、ならない…







以上、空想を文章にしてみたらただの糞だったというお話。

でもさ、解剖して人の中身見てみたかった、なんて妄想よりは、まだまだ健全だよね?w


[4409]
感想どうもです。HNは付けない主義なので。自由が奪われる気がするし。サイコ書いたら動物愛が書き難くなったりw本当は長編にするつもりだったけど室井が村井になってるの指摘で挫折した~ww
[4408] 僕が僕であるために
面白かったです。

意表をつく内容で、画伯=猫ってところ、吹き出しちゃいましたが。

それまでの流れに比べ、室井の最期があっけなかった気もしますが、十分、興味を惹かれ読み応えのある作品でした。

ハンネを入れていただければ、今後、作品を読むときの取捨選択するのに助かります。

これからも楽しみにしています。
[4407]
いろいろ感想をどうも。また何か頭に浮かんだらまた書くのでその時はよろしく。一つ仕上げるの結構疲れるもんすね。
[4406]
後半から最後まで力と勢いがあった。面白い。オチの部分もいいな。
昨夜も書いたが書き手さんの斜めに見るスタンスが生きてる。
これで十分面白いが、あと少し見直し入れてみるとさらに完成度上がると思う。
書き出し部分、主人公の正体が分かる所やクライマックスでの画伯の台詞。
書き手が誰であれ、ロビンさん以来の読ませられる話が書ける人が現れたな。
[4405] 僕が僕であるために
「盛況のようだな」

「予想を遥かに超えてます。これ程とは」

H刑務所の敷地内、一般の出入りが許されているエリアに、受刑者オリジナルの作品を販売する店【昇華堂】がある。
犯罪者の殆んどが貧しくて被害者への償いもままならない。しかし自らを反省し、謝罪の思いを何とか形にしたいと望む受刑者も多かった。【昇華堂】はいわば、被害者支援事業の一環として昨年オープンした店なのである。

「人喰い佐山の、読みました?」

「あの手記は確かに面白い。しかし被害者家族はどう思うかな?金の問題じゃないだろ」

「そこはまあ複雑ですが、断わったという話は耳にしておりませんので、貰わないよりは貰った方がまだマシという事なんでしょう。どっちにせよ娘さんが戻って来るわけじゃないですし」

「けどな、どこが美味かったとか不味かったとか・・・調理法まで事細かく・・・いくら年齢制限設けたからって一旦街に出りゃ古本屋にも出回るだろうし、模倣する奴が出て来たら厄介だぞ?」

「それは、今後の課題ですね」

「室井俊雄の作品、ネットで見たよ」

「彼の作品は海外でも注目されてまして、オークションなら五百万は下らないだろう、なんて話もあります。実際、室井の絵は言い値で売れます。前回の百万だって安過ぎたと思ってます」

「連続猟奇殺人鬼の描く聖母マリアか・・・」

「あれは傑作でした。崇高としか言い様がない。ただ、画伯としての室井は九つある人格の一つに過ぎませんからね。滅多に姿を現さない。だから出品が極端に少ない。ま、それも高値の要因なんですけど。あの~参事、今日は室井画伯に会いに来たんでしょ?」

「画伯といっても猫なんだろ?多重人格説はそこで既に破綻してる。人格じゃないだろうが。それに、猫が何で聖母マリアを知ってる?油絵をどこで習ったんだ?」

「さあ、私に聞かれましても・・・確かに、猫らしいのは鳴き声と四つ足歩行くらいで絵筆持ったりしてますもんね。変な握り方ですけど」

「今日は通訳の女いるの?写真でしか知らないんだが」

「朝から室井に付きっきりです。画伯が集中し出すと空腹も感じなくなるらしくて最近は看護士の代わりですね。普段もカメラ監視しながら待機してるんですよ。ニャーと鳴けばすぐ行けるように」

「今日は何描いてるんだ?」

「さあ、チラッとカメラ覗いただけですから」

「俺に売ってくれんか?」

「無理です。あんなに注目されてたらすぐにばれますよ。大袈裟じゃなくピカソ盗むより難しいかも知れません。それに」

「それに?」

「世界に向けてオークションにかけるのもアリかなと考えています。一体いくらで落札されるのか興味もありますしね」

「・・・・・・残念だ」

「ここで少しお待ち下さい。彼女に連絡します」





「お待たせしました」

「どうも。噂には聞いてます。動物の心が読めるそうだね」

「奏(かなで)と申します」

「早速で何だが、猫が絵を描く事自体あり得ないと思うんだが、彼は猫なのか?猫の真似をしているだけなのか?」

「正真正銘の猫でございます」

「室井俊雄の人格に猫が混ざってたってか(笑)?」

「いえ、正確には猫の霊ですね」

「霊?猫が室井に憑依したって事?で、今は油絵を描いている?」

「簡単に言えば、まあ、そうです」

「馬鹿言っちゃいけない。絵をどこで習ったんだ?」

「ご存知だと思いますが、室井俊雄は中学の頃から油絵を趣味にしてました。大学では登山部に所属してますよね?美しい山々を描きたかったからでしょう。でも滑落して意識不明に。室井の魂はその時既に肉体から離れていたんです。そして、魂不在の植物人間に憑いた九つの霊の一つが猫だったという訳です。私は、最初に憑依したのが猫だと思っています」

「調べたのか?室井の過去を」

「どこをどう視ても室井本人の魂が見付からないので不思議に思いまして、いろいろと」

「君は霊能者なのか?」

「スピリチュアル・コーディネーターです」

「・・・・・・」

「話を戻します。画伯の実力は独学によるものです。絵の力量に関しては、学生だった室井との接点は全くありません。強いて言うなら油絵の道具が身近に揃ってたくらい」

「独学?猫がか?」

「刑事さん?」

「(俺は刑事じゃないんだが・・・ま、いいや)何?」

「猫と人間の一番の違いって何だと思います?」

「はあ?」

「ズバリ、脳です。脳ミソが猫並みなら刑事さんだって、今こうして私と会話なんて出来てないでしょ?」

「何が言いたい?」

「動物霊って基本的には人間に憑依出来ないんです。やはりレベルが違い過ぎますから。でも極まれに知能の高い動物もいて、それらは例外として人に憑く事がある。画伯がそうです。知能が高いといっても、あくまでも猫にしては、ですが」

「・・・・・・」

「室井に憑依した猫は人間の身体を手に入れた。普通の憑依とは違います。なにせ大元の魂が居ないのですから。誰にも邪魔されずに身体の隅々まで独占出来た。当然、脳も」

「じゃあ何か?人間の脳で猫の知能がアップしたと?」

「簡単な例を挙げますとお稲荷さん。狐は所詮狐。畜生でしかありません。しかしながら全国で信仰の対象になっています。私は、過去日本において、狐が人間の肉体を乗っとる、そんな事が実際にあったのではないかと考えています。その人物は特殊な能力を持ち民衆に崇拝されていた」

「どうも納得いかないな。所長はニャーしか言わない、みたいな事を言ってたが」

「室井俊雄の父親の職業ご存知ですよね?」

「ああ、最高裁の判事」

「母親は?」

「総合病院の理事長」

「俊雄の通っていた大学は?」

「・・・・・・東京大学」

「一匹の野良猫が手に入れたのは優秀過ぎる程優秀な脳でした。彼がその気になれば会話も出来る筈です。驚くべき事に彼は聖書を読破しています。別に私でなくても刑事さん、貴方が話し掛けても普通に通じるのです。ただ他人との意志疎通にはあまり関心が無いようです。人間嫌いの側面もあるみたいですし。当初は私に対しても心を固く閉ざしてました。彼は、月並みですが、自分がこの世に存在したという証を残したいのだと思います」

「・・・・・・」

「お会いになりますか?」

「お願いします」





画伯の為特別にしつらえたアトリエでは、椅子にくくりつけられた室井がキャンパスに絵筆を叩き付けていた。両足には足枷。横向きなので何を描いているのか全く見えない。

「いくつか質問してもらえるかな?」

「言葉は通じます。直接どうぞ」

「俺が?」

その時、室井が筆を止め二人に顔を向けた。「ニャー」一言そう鳴くと視線を再びキャンパスに戻す。

「・・・・・・」

「会話が耳に入っていたようです。絵が完成するまで待って欲しいと言ってます」

「・・・本物の猫の鳴き声だ。人間が真似てるものとばかり・・・驚いた」

「邪魔すると悪いので私の部屋で待ちません?」

「・・・え?」

「監視カメラの映像が視られるんです。どうです?」

「ああ、貴女さえ良ければ」





刀根官房参事官に霊感は無いが、警視長時代には彼独特の勘の鋭さで数多くの難問を処理したという実績がある。
その彼が怯えていた。室井の鳴き声に生命の危機さえ覚えたのだ。一瞬で全身に鳥肌が立つ、そんな経験は初めてだった。アトリエを離れる際も背を向けるのが恐くてたまらない。背後から飛び掛かって来るというイメージが彼を急襲したのだ。椅子に縛り付けられ、更に足枷で近寄れるわけないのに、である。

刀根は部屋に入るのを待ちわびたかのように奏に質問をぶつけた。

「君は平気なのか?」

「何がです?」

「室井だよ。奴は危険だ」
「そりゃあ異常者ですから。画伯以外は」

「そうじゃない。断言するが、あんたは奴に騙されてる」

「どうしてそう思うんです?」

「勘だ!!」

「画伯は白ですよ。じゃないとあんな絵は描けません。確かに生前は悲惨でしたが」

「生前?猫だった頃の話か?」

「そうです。一度だけ私に訴えてきた事があるんです。自分がどれだけ苦しんで死んだかを」

「聞かせてくれ」

「まず金づちで四肢を粉々にされました。動けないように」

「それから?」

「灯油を全身に掛けられ」

「焼死か・・・」

「当然、猫に神の概念なんかありません。でも、地獄の苦しみの中で何かにすがった。心の底から助けを求めたんです」

「・・・・・・」

「その時おそらく、光輝く存在を見たか、感じたかしたのでしょう。人間として復活した彼は、それが何だったのかを追い求めた。聖書にたどり着いたのは必然だったのかも知れません」

「似てないか?」

「え?」

「いや、殺し方がさ」

「殺し方?」

「そうか、君は知らないんだ。あまりにも酷(むご)くて報道規制かけたからな」

「どういう事です?」

「被害者の両手両足は皆、鈍器で粉砕されていた」

「・・・・・・」

「その後、しばらく生かしていたと、君の説によると画伯とは別の人格がそう証言している。」

「私の説ではありません。あれは分析医が」

「だが、君も認めてるんだろ?多重人格を」

「・・・・・・」

「室井は、潰した手足が腐敗し蛆がわくと躊躇なく切断した。そして、医学的知識を駆使し、止血した上で延命処置を施した。精神的にとことん追い詰めたんだ。この証言は更に別の人格によるものだ」

「・・・・・・」

「それから、焼き殺したんだよ生きたまま」

「そんな・・・」

「やったのは間違いなく画伯だ。奴は分裂症を装い社会復帰を企んでるんじゃないのか?」

若くて大きな瞳が特徴の奏の顔は僅かな時間で真っ青に変色していた。ふと気配を感じたのか力無くその顔を監視カメラのモニターに向ける。それとほぼ同時だった。

「ニャー!!ニャーニャー!!ニャー!!!」

部屋中に猫の声が響き渡った。

「絵が、完成したようです・・・」

「行きましょう。こうなったらやけくそだ」





室井は二人を見るからに優しい笑顔で迎えた。そして首から上だけで丁寧にお辞儀をする。

(この笑顔に騙されたんだな奏さん)刀根は警戒心を更に強めた。隣で奏は今にも貧血で倒れそうだ。

「奏さん、申し訳ない。私は貴女に嘘をつきました」

二人は思わず顔を見合わせた。(ニャーじゃない!!)

「昔、猫だったというのは本当です。多重人格者の振りをしたのは自分の犯した所業だと認めたくない別の自分がいたから。しかし、全て私がした事なのです。やはり、真実は受け入れなければなりませんね」

「室井、さん・・・」

「死の間際、私は神を見ました。この世界には愛が溢れている事を知ったのです。あのまま、天国に旅立てたらどんなに良かったか、ふと考える事も一度や二度ではありません。しかし、私はその輝きに背を向けた。天国は自分の住み処(すみか)ではないと確信したからです。考えてもみて下さい。何もしていないのに焼き殺されたんですよ?復讐もしていないのに真の幸福を得られる訳ないじゃないですか!!そんな偽物の幸福ならこちらから願い下げです。地獄に堕ちた方がよっぽど自分らしい。私は神に言いたい。自惚れるなと。誰もがお前を必要としていると思うなと。しかし、一方では優しく包まれたい自分もいる。分裂症は私そのものなのかも知れません」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「奏さん、人類を焼き尽くすまで止めない、復讐は始まったばかりだ!!そう主張する者も自分の中にいるのです。虐殺を無上の悦びだと感じる自分も。それはもうどうしようもない。全て本当の自分だから歯止めなどきかないのです。殺して下さい。貴女の手で」

「出来ません・・・そんな事・・・」

「そうおっしゃるだろうと思ってました」

刀根と奏、二人は声も出せずに画伯の最期を見守った。

室井は両手に絵筆を握ると「ニャーゴー!!!」と雄叫びをあげ両目に突き刺したのだ。

二本とも筆の殆んどが埋没していた。


室井画伯の遺作は結局売り物にはならなかった。

どれもが焼け爛(ただ)れた顔、顔、顔・・・被害者の死に顔を描写した物のようであった。



[4404]
相変わらず手厳しいな。

おに(=もの)さんでしょ?
あんまり、厳しいと続きを書いてもらえないおそれがあって心配だ。続き、支援!
[4403]
ここのところ連投されてる方だろうか。
一人称で書くならもう少し地の文を増やして説明が欲しいところだ。
でないと会話している人間がどういった背景でその場に居合わせているのか気になって仕方がない。
しかし、斜めに物を見る人だな。スピリチュアル系の人間によくある他宗教の知識がなく独自設定で突き進む馬鹿っぽさを上手く描写していて、謎の主人公、画伯等くせのある登場人物達によってどういった結末へ導いてくれるか楽しみだ。
[4402] 僕が僕であるために
お預けがキツいです。
続きが早く読みたいです。
それから。お名前を載せて欲しいです。
[4401] 僕が僕であるために
なんか、とっても面白くてワクワクする作品です。

途中、室井が村井になっていましたが。

続きを楽しみにしています。
[4400] 僕が僕であるために①
「盛況のようだな」

「予想を遥かに超えてます。これ程とは」

H刑務所の敷地内には一般の出入りが許されているエリアがあり、そこに、受刑者オリジナルの作品を販売する店【昇華堂】がある。
犯罪者の殆んどが貧しくて被害者への償いもままならない。しかし自らを反省し、謝罪の思いを何とか形にしたいと望む受刑者も多かった。【昇華堂】はいわば、被害者支援事業の一環として昨年オープンした店なのである。

「人喰い佐山の、読みました?」

「あの手記は確かに面白い。しかし被害者家族はどう思うかな?金の問題じゃないだろ」

「そこはまあ複雑ですが、断わったという話は耳にしておりませんので貰わないよりは貰った方がまだマシという事なんでしょう。どっちにせよ娘さんが戻って来るわけじゃないですし」

「けどな、どこが美味かったとか不味かったとか・・・調理法まで事細かく・・・いくら年齢制限設けたからって一旦街に出りゃ古本屋にも出回るだろうし、模倣する奴が出て来たら厄介だぞ?」

「それは、今後の課題ですね」

「室井俊雄の作品、ネットで見たよ」

「彼の作品は海外でも注目されてまして、オークションなら五百万は下らないだろう、なんて話もあります。実際、室井の絵は言い値で売れます。前回の百万だって安過ぎたと思ってます」

「犯罪史に残る連続猟奇殺人鬼の描く聖母マリアか…」

「あれは傑作でした。崇高としか言い様がない。ただ、画伯としての室井は九つある人格の一つに過ぎませんからね。滅多に姿を現さない。だから出品が極端に少ない。ま、それも高値の要因なんですけど。あの~参事、今日は室井画伯に会いに来たんでしょ?」

「画伯といっても猫なんだろ?そこで既に破綻してる。人格じゃないだろうが。それに、猫が何で聖母マリアを知ってる?油絵をどこで習ったんだ?」

「さあ、私に聞かれましても・・・」

「通訳は出勤か?私は画像でしか知らないんだが」

「今日は朝から室井に付きっきりです。画伯が集中し出すと空腹も感じなくなるらしくて最近は看護士の代わりですね。普段もカメラ監視しながら待機してるんですよ。ニャーと鳴けばすぐに行けるように」

「今は何描いてるんだ?」

「さあ、チラッとカメラを覗いただけですから。人物描写のようにも見えましたが」

「俺に売ってくれんか?」

「無理です。あんなに注目されてたらすぐにばれますよ。大袈裟じゃなくピカソ盗むより難しいかも知れません」

「・・・・・・残念だ」

「ここで少しお待ち下さい。彼女に連絡します」







「お待たせしました」

「君か?動物の心が読める・・・」

「奏(かなで)と申します」

「早速で何だが、猫が絵を描く事自体あり得ないと思うんだが、彼は猫なのか?猫の真似をしているだけなのか?」

「正真正銘の猫でございます」

「村井俊雄の人格に猫が混ざってたってか(笑)?」

「いえ、正確には猫の霊ですね」

「猫が室井に憑依したって事?で、今は油絵を描いている?」

「簡単に言えば、まあ、そうです」

「馬鹿言っちゃいけない。絵をどこで習ったんだ」

「ご存知だと思いますが、室井俊雄は中学の頃から油絵を趣味にしてました。大学では登山部に所属してますよね?美しい山々を描きたかったからでしょう。でも滑落して意識不明に。室井の魂はその時既に肉体から離れていたんです。で、魂不在の植物人間に憑いた九つの霊の一つが猫だったという訳です。私は、最初に憑依したのが猫の霊だったと思っています」

「調べたのか?室井の過去を」

「どこをどう視ても室井本人の魂が見つからないのです。不思議に思って、いろいろと」

「君は霊能者なのか?」

「スピリチュアル・コーディネーターです」

「・・・・・・」

「話を戻します。画伯の実力は独学によるものです。絵の力量に関しては、学生だった室井との接点は全くありません。強いて言うなら油絵の道具が身近に揃ってたくらい」

「独学…?猫がか?」

「刑事さん?」

「(俺は、刑事じゃないんだが…ま、いいや)何?」

「猫と人間の一番の違いって何だと思います?」

「はあ?」

「ズバリ、脳です。脳ミソが猫並みなら刑事さんだって、今こうして私と会話なんて出来てないでしょ?」

「何が言いたい?」

「動物霊って基本的には人間には憑依出来ません。やはりレベルが違い過ぎますから。でも、極まれに知能の高い動物もいて、それらは例外として人に憑く事がある。画伯がそうです。知能が高いといっても、あくまでも猫にしては、ですが」

「・・・・・・」

「室井に憑依した猫は人間の身体を手に入れた。普通の憑依とは違います。なにせ大元の魂が居ないのですから。ですから身体の隅々まで独占出来た。当然、脳も」

「じゃあ何か?人間の脳で猫の知能がアップしたと?」

「簡単な例を挙げますとお稲荷さん。狐は所詮狐。畜生にしか過ぎません。しかしながら全国で信仰の対象になっています。私は、過去日本において、狐が人間の身体を乗っ取る、そんな事が実際にあったのではないかと考えています。その人物は特殊な能力を持ち、民衆に崇拝されていた」

「どうも納得いかないな。所長はニャーしか言わない、みたいな事を言ってたが」

「その気になれば会話も出来る筈です。驚くべき事に彼は聖書を読破しています。別に私でなくても、刑事さん、貴方が声を掛けても普通に通じるのです。ただ他人との意志疎通にはあまり関心が無いようです。人間嫌いの側面もあるみたいですし。彼は、月並みですが、自分がこの世に存在したという証を残したいだけなのです」

「・・・・・・」

「お会いになりますか?」

「お願いします」








室井画伯の為に特別にしつらえたアトリエでは、パイプ椅子に腰掛けた室井がキャンパスに筆を叩き付けていた。両足には足枷。横向きなので何を描いているのか分からない。

「本人にいくつか質問してもらえるかな?」

「言葉は通じます。直接どうぞ」

「俺が?」

その時、画伯が唐突に筆を止め二人に顔を向けた。「ニャー」一言そう鳴くと視線を再びキャンパスに戻す。

「・・・・・・」

「会話が耳に入っていたようです。絵が完成するまで待って欲しいと言ってます」

続く



[4394] スローバラード
ゲッ…徳永シリーズ消される…泣 マジ…か…
[4364] OH MY LITTLE GIRL
三つ年下の幼なじみが死んだ。通っている中学の、校舎の屋上から飛び下りたらしい。最初同姓同名の別人かとも思ったが、年齢まで合っていたのであのこずえに間違いない。報道では虐めによる自殺の可能性にも言及していた。
いつも僕の後ろでちょろちょろしていたこずえ。川でメダカを掬ったり蛍を追いかけたり、可愛かったな。そう言えば周りからよく「今日は奥さんと一緒じゃないの?」なんてからかわれてたっけ。
小6の夏休みだったか、僕の家族は何かの理由で他県に引っ越した。以来こずえとは会っていない。不思議なのは、誰ともサヨナラしていない事。こずえともクラスメートともだ。でも当時を思い出そうとすると何故か頭が痛くなるんだ。

こずえの死を知って一週間が過ぎた頃、僕は突如、尋常じゃない程の喪失感に襲われた。かけがえのない恋人を突然失ったような虚しさが胸一杯に広がる。
その喪失感は哀しみよりもむしろ強い後悔の念を伴っていた。何か、とてつもなく大切な事をやり残したという焦りにも似た感覚。それがこずえに対しての物なのかさえ分からない。だってこずえは恋人でも何でもなくただの幼友達なんだから。

僕に本当の自分を取り戻させたのは母親だった。その日、夕食の仕度をしていた母に背後から声を掛けたんだ。「お母さん、こずえの自殺の事なんだけど」振り向いた母親の目が我が子を見る目じゃなかった。ひどく怯えてる。ひきつるとでもいうのかな。その目とこずえの目が見事に重なったんだよ。「可哀想だったわね」震える声で一言そう言うと母は僕から逃げるように奥の部屋に消えた。

悪いけどお母さん、あんたのお陰でこずえとの、至福の時を思い出してしまったよ

ああ何で、飛び下りる前に僕に相談してくれなかったんだ…



僕はかつて王だった。こずえは完全なる下僕。何をしてもあれは従順だった。川に投げ込んでも、木にぶら下げても、ナイフをちらつかせれば泣くのを止めた。僕は次第にエスカレートしていく。殺す直前で助けてやる寸止め遊びに夢中になる。
そうか、あの日はこずえを燃やそうとして…

あんなに愉しかった日々を忘れてしまっていた事自体信じられない。引っ越し後約一年間、入院していた事と関係があるんだろうか?

それにしても悔やまれる。そんなに死にたいのなら僕が殺してあげたのに。




まあいい、代わりはいくらでもいる。



[4331]
編集パス入れれば
元の作品を推敲出来るよ
[4139] 最後の言い訳
面白かった、好きです、こういう作品。

怪文書…的なのかな?

「殺すか…」が犯人になりそうな人の心の声なのか、はたまた「俺」の決断した気持ちなのか…。
また、最後の「殺される側」とは、犯罪を犯しそうな人にこれから殺される子どものことなのか、或いは、それを阻止するために、今から「俺」に殺されるソイツのことなのか……。

読み手によって、様々に内容が変化したり膨らんだりし、面白い作品だと思いました。

最近、更新がないので(特に怪文書は)、投稿広場が楽しみです。ありがとうございました。
[4138] 最後の言い訳
例えば、俺に他人の心が読める能力があるとして、ある日、通りですれ違った見知らぬ男が、明らかに幼い少女を狙っているのが判ってしまったとする。そんな時、自分ならどうするだろうかと考えてみた。

これといって他に用事が無ければ、取り敢えず尾行するだろう。単にいたずら目的じゃなく、その男に残忍性を感じたなら尚更だ。
居場所を突き止め、氏名まで判明。さて、問題はそれからだ。
警察には言えないし、かといって探偵を雇う金も無い。仕事があるから四六時中見張るのも不可能だ。しかし、『幼女誘拐殺人』そんな新聞の見出しが脳裡にちらついて離れない。

暇さえあれば奴の心に波長を合わせるようになる。そして、いやが上にも不安が確信に変わっていく。



殺すか…



そこで、俺は想像を止める。やはり、放っておくしかない。仕方ない。FBIにはそういった部署もあるみたいだがここは日本だ。結果的には見殺しになってしまうがどうしようもない。

あげく、言い訳を考える。



殺される側にも原因があるのだと。


[4067] 捕縛の家

「家」と来ましたからまた家の話をします。

これはある一家の話。
私の祖母の家の近くに曽根という家があった。
その曽根さんという家にはもちろん人が住んでいるんだが人付き合いがなく何人家族なのか子供はいるのかそれさえわからない。

たまに見かけても挨拶するどころか話すのが嫌なのか誰かと会うと早足で逃げてしまう。会うときも奥さんか旦那さんどちらか片方しか会わない。

旦那さんか奥さんがたまに外を歩いている。一緒に出かけているのは見たことがない。
仲が悪いのか変人なのかはわからないが、ある日変なことがあった。

その家から奥さんと思われる人が凄まじい形相をしながら飛び出してきた。

奥さんは狂ったように顔に半笑いを浮かべ「どこに行きやがったどこに行きやがった」

そう言って町中を駆け回る。
そんな奥さんを見たのははじめてだったので皆なにが起きたのかと奥さんの家に群がる。

すると、中からものすごい異臭がした。

まるで動物が腐ったようなそんな臭い。

家族を呼ぶんだが誰もいないのか返事がない。中で人が死んでるんじゃないのか。そう思い何人かで中に入って見たそうだ。

中は荒れ放題でいろんなものがあちこちに散乱している。

異臭は部屋の奥からした。
その家はどうやら地下があるらしく。
地下といっても物置のように少しのスペース。

一番奥にある突き当たりの扉を開けると凄まじい異臭がさらに凄まじく鼻の奥を刺激した。

鼻をつまみながら皆が石の階段を降りていくと数本の柱がありある柱の下にロープが垂れ下がっておりその近くに腕に嵌める大きな鎖のついた足枷と手枷が落ちていた。

なんだか恐くなり皆は地下から上がって家から出た。
それから警察が家に入ってくまなく調べると監禁の疑いがある。という。しかし食べ物の残骸や痕跡がないことが不思議だった。

それから一週間も経たず近くの雑木林で白骨死体が見つかった。奥さんの服を着ていたことから奥さんだということがわかったが、しかし不思議なことがある。
死後、一週間しか経っていないのに白骨化するかということ。

もしかしたら奥さんは最初から死んでいてあの地下にいた何かを育てていた、もしくは育てられていた、地下にいた何かは奥さんに養われていたのかもしれない。または逆かもしれない。

ただ、たまに見かけられていた旦那さんはどこに行ったのかという不思議がある。
[4066] 忌中の家(追記)

(追記)
もしかしたらおじさんが染谷や、私を助ける為に身代わりになったのか。

親戚たちが運び出していった箱はもしかしたら彼らの罪の象徴、彼らがかつて犯した何かの証なのかもしれない。
あの家には何かとてつもない闇のようなものがあるのかもしれない。
[4065] 忌中の家(炎上やがて消失)

残ったからといって何が出来るわけでもなくただ時間だけが過ぎ去っていく。

そんな中、親戚たちがおじさん宅に集まり何やら話をしている。

「あれじゃあないか、もしかしてあれが関係しとるんじゃ」

みんな口々に「あれ」と言っている。

あれとはなんなのか。気になって聞いてみた。
だが、ごまかすばかりで教えてくれない。

そしておじさん宅に来て、2週間あまりが経ったころ朝一番におじさんの奥さんの悲鳴で目を覚ました。

「ひゃあっ、どうしてこれがあるの」

そんなふうに言っている。
見に行くと庭の一角に大きな泥だらけの木の箱がある。

その木の箱にはあちこちに重ねるように札が張ってありその札には漢字で何かが書かれていた。
かすれて読めないのもあったが、梵字に似たような感じだったのを覚えている。

その箱を家族や親戚が見つけると慌ててどこかへその箱を運び出していってしまった。

皆には「見たことは内密にするように」と言われた。

それから、私はとりあえず染谷とともに各々の自宅に帰った。あとで聞いたんだがおじさんの家族は誰にも知らせずに家から出て行ってしまったという。

それからも立て続けに4件、突然死で亡くなる家があった。
あの箱が原因なのかはわからない。
ただ分かっていることはひとつもなく気になるのが夢に出てきたおじさんの言葉とあの箱。
こっそり出て行った奥さんとおじさんの家族。

今は無事なのかわからないが無事であって欲しいと願うのと同時にとり憑いていたのであれば何があの家または親戚にはあったのか、また繰り返し連鎖した死は誰の仕業なのか。
それは今もってわからないし、正直な話知りたいとも思わない。

それが一連の出来事のあらましである。
[4064] 忌中の家(連鎖)

おじさんは多趣味な人で二人を誘って釣りやゴルフ、ボーリング、カラオケ、
スポーツにとどまらず様々な遊びを二人に教えた。

「そうだったよなあ、そうだったよなあ」なんて言いながら話していると先に染谷が寝てしまった。

その夜、夢を見た。
暗闇の中を延々歩いている自分。
しばらく歩いていると誰かが向こうからやってくる。
それはおじさん。
おじさんは寂しそうにこちらを見て一言こう言った。

「これから数人死人が出る。気をつけろ」

そう言って消えた。

翌日、数キロ離れたところにいるおじさんの親戚で安達という家と野村という家で死人が出た。

朝一番に電話が鳴ったのだ。

「久雄さんと初男さんが亡くなった」

どちらも病気でも何でもなく突然に亡くなったという。
おかしな事態に家族は頭を悩ました。

この家には何かよくないものが憑いているんじゃないか。
信心深いお婆さんはは数珠を手に一日中仏壇の前でお経を唱える始末だ。

だが、このままにしておけない。
妙な気持ちでまだこの家に染谷とともに残る事にした。
[4048]
纏まってから書き込んだらどうですか?
[4041] 忌中の家につきまして

後々、(忌中の家)炎上篇を書きますので出来ればそれまであけておいてくだされば幸いにございます。
[4035] 忌中の家(発端)

この話ほどおぞましく禍々しい話を私は知らない。「死」というものにただ恐怖する自分がいる。
実際聞いたあとに胸の中に何か忌まわしい何かが生まれた。

最初にこの話を聞くに至ったのは長野に住む私の知り合いの話からしなければならない。
そこから徐々に闇へと一歩また一歩と近づいていくのだ。
話が進むにつれ追いかけている側から追い詰められる側に回ってしまうことに気づくまで私は多分知りたいという邪な欲求に駆られていたのだろう。

私の友人染谷の話をしなければなるまい。

その染谷のおじさんが無くなるところから物語は始まる。

おじさんというのが昔から染谷を可愛がっており、優しく温厚な人で周りからもあの人はいい人、素晴らしい人、仏様みたいな人、そんなふうな高評価を得ているような人望もあつい人だった。

そのおじさんのことは実は私も知っていて昔夏休みになるとよく一緒に染谷のおじさんの家に行き遊ばせてもらったものだ。
おじさんは地主でかなり大きな家でたくさんの部屋があり、おじさんのコレクションルームみたいなものもあり昔の玩具だったりプラモデルなんかが所狭しと陳列棚にきちんと納められていた。

そのおじさんが亡くなったという。
もちろん世話になった私も葬儀に参加する。

葬儀にはたくさんの人が訪れておじさんの死を悼んでいた。
中でもおじさんの奥さんは葬儀のさなかに泣き崩れてしまったりしてたいへんな葬儀だったことを記憶している。

参列者の中にはハンカチで顔をおさえ涙をポロポロと流す人、ただ黙って瞼を閉じ膝の上で手を合わせる人、すべての人がおじさんの死を悲しみ、悼んでいた。

葬儀が終わると「忌中」そう書かれた提灯が灯る玄関口で皆が帰ったあとしばらくおじさんとのいろんな思い出を思い出しながら一人で真っ暗な空を見上げながら煙草をふかしていると後ろから

「おい、〇〇晩御飯食べるだろ。おじさんの家でだしてくれるからって」

そう言って私に中に入るように促す染谷。

葬儀のあとということもあってかあまり皆、喋らずに黙々とご飯を食べる。

その日はおじさんの家に泊まることになった。

二階の部屋に眠る。
真夏ということもあり寝苦しくなかなか眠れなかった。
年期の入った扇風機の首が回転して時折自分のところにあたる以外はあとは網戸にした窓からたまに入る風があるだけだ。

どうやら隣で寝ていた染谷も眠れないようでいくつかおじさんとの昔話をした。
[4031] 弔い火(後編)

そんな歌がどこからか聞こえた。

まあ良いかと思ったが、車に乗るとどこから聞こえてきたのか気になって聞こえてくる場所にその歌声に誘われるように行ってみた。

倉庫、或いは物置小屋なのか。
とにかく木でできた小さな小屋の陰におじいさんたちが輪になっていて火を囲んでいる。

ドラム缶かなんかを半分にぶった切ってそこにダンボールやら枝やらを入れて焚き火をしているらしい。
皆一様にその火に手をあてている。
時々くべられた枝かなんかが中でパキッと鳴る。

最初は黙って見ていたが、何をしているのか気になって聞こうとした。

瞬間、矢野の一番近くに座っていたおじいさんが矢野の心を読んだようにしゃべり出した。

「こりゃあね、弔い火って言ってね。
海で亡くなった者たちをこうやって空に向けて煙を立てて弔ってやるのさ」

そう言うおじいさんの言葉に反応するようにほかのおじいさんが顔に手をあてて泣き出してしまった。

それを見てなんだか何も言えなくなり、それ以上何かを聞く気になれなくなった。でも一言、貴重なお話をありがとうございますと言った途端にぎょっとしてしまった。おじいさんたちがいつの間にかいないのだ。焚き火のあともない。怖くなり車で宿に帰る。

宿の主人であるお婆さんにそのことを話すと、

「そりゃ珍しいことを知ってるね。
今はあまりやらないというかやっている人はめったに見なくなったけど確かに昔はやってたな」

もしかしたら、自分は今はあまり見られなくなった弔い火を焚いて海で亡くなった誰かをあの人たちは弔っていたのかもしれない。
そしてあの人たちこそ海で亡くなった人たちなのかもしれない。

地味な話だが、何か胸にあったかいものがともる。そんな話じゃないかと思う。

今もあの場所に集まっては海で亡くなった者たちのために弔い火を焚いているのかもしれない。
[4030] 弔い火(前編)

立て続けに恐縮だが、西日本の漁村の話をしようかと思う。
この話はイメージで言えば夕闇が少し入り混じる夕暮れのような橙である。
優しくて切ない気持ちに包まれる。そんな怪談だ。
とにかく聞いていただくしかない。

詳しくは言えない為に人名、土地名はすべて仮名にするがその漁村を西日本Wにある漁村、Tとする。
Tはのどかな場所。
静かで落ち着いた雰囲気の田舎町である。

そこに今回この話を聞かせてくれたカメラマンの矢野という友人が仕事で来ていた。

あらかた撮影を終えるとなんとなくいい写真がとれるんじゃないかと思い車であちこち回っていたそうである。

まあ回るといっても何か面白いところや都会のように遊べるところもないために何枚かの写真を撮って宿泊している民宿に帰ってきた。

夜中に、一枚一枚写真を整理しながら飯を食って、さっさと眠ってしまった。

余談になるが、この男はとても面白い男で私に会うといつもカメラの話を熱く語りカメラはこんなに素晴らしいんだ、このカメラはすごいんだ、自分が好きな写真家の話やカメラマンの話をしながらいずれは大カメラマンになるんだと私に語って聞かせていたりもした。

その展望はまるで星座のようにいくつもの形を成しながら様々に彼の中で夢という星となって輝いている。
カメラマンとなって活躍しだしたころも夢を語る彼の瞳はキラキラと輝きまるで少年のように夢いっぱい希望いっぱいという感じだった。
そんな彼を見ていると何か忘れかけた情熱がわいてくるようなこないような摩訶不思議な気持ちになるのもまた彼が持つ秘めたるパワーなのかもしれない。

少し脱線してしまったが、彼自身の話はここまでにして本題に戻る。

翌日、目覚めるととても気持ちのいい朝だ。

早速、今日帰るとなった時に民宿から荷物を車に詰め込み、夕方の写真も撮ってみたくなったので暮れゆく海を撮影するために日が暮れるのを車の中で待つことにした。

いつの間にか、眠ってしまったようでふと見ると夕暮れと夕闇のコントラストがきれいな空が目の前に広がっていた。

「撮ってしまわなくては」

そう思い、カメラを構えて構図やアングルを決めていると少し離れたところから奇妙な歌声のようなものが聞こえてくるのがわかった。

どんな歌かというと

「ひとつ数えりゃ、まだ足りぬ
ふたつ数えりゃ、
まだまだ足りぬ
みっつ数えりゃ、
ひとつ残らず皆、消える 皆、消える」
[4028] ケイコさん(後編)訂正

実証検分→実況検分。
[4027] ケイコさん(後編)
心肺停止による突然死だったようである。その亡くなった男性があの井戸端会議の時途中で抜けた粟辻さんだったのだ。
管理を任されている江古田さんも警察の実証検分に立ち会った。

机の上にアルバムがありそのアルバムからとったのであろう数枚の写真があり、それが横に一枚ずつ並べられていてその中の一枚に何も写っていない風景だけの写真。(湖畔かどこか)があり、下の空白スペースにマジックでこう書いてあった。

(1981.ケイコと〇〇湖にて)

そう書いてあった。

ケイコさんと粟辻さんのつながりはわからないが、そもそもなぜ何も写っていない風景のみの写真のタイトルが(ケイコと)などとなっていたのか。それさえ謎でわからないことだらけの話だった。

ケイコさんがマンションにあらわれ続けたのは粟辻さんを探していたのか。
そして何らかの形で粟辻さんを見つけ出したケイコさんは。

想像を膨らませるとかなり怖いイメージが次から次へと気泡のように生まれる。

江古田さんと別れるとき、最後に「あなたもケイコさんを見たんですか?」そう言うと「さあね」と意味深に笑い、要件だけを言うだけ言って先に帰ってしまった。遠ざかるその背中をただ友人となんとも言えない顔をしながら見送った。友人は言った「な、変な奴だろ」私は黙って頷くしかなかった。

それ以後はもうそのマンションではケイコさんを見た人間はおろかケイコさんのことを話題にする人もいないそうだ。
[4026] ケイコさん(中編)

そう何度も何度も自分の名前を言いながらギャハハハと笑い走って行ってしまう。

呆気にとられていると、ケイコさんが消えて行った廊下の奥からよく知るS美さんが買い物袋を下げてこちらに来たので、変な女性が走って来なかったか聞いてみた。

「ねえ、S美さん、さっき今さっきなんだけど変な女の子が走って来なかった笑いながら」

というと怪訝そうな変なものを見るような感じでこう返ってきた。

「そんな人いなかったわよ。どうしたの?疲れてんじゃないの?」

一階の廊下は一本きりなのであのタイミングであれば必ず出くわすはずなのにS美さんは見なかった。
そう言った。

まあこれ以上掘り下げても仕方ないし見てないと言われればしょうがない。

(見なかった。疲れてた。幻覚だった。)
そういうことにしてしまった。

べつの人なんかは雨の日、ゴミを捨てるためにゴミ捨て場に行ったときにこんな土砂降りの雨だというのに傘も差さずにゴミ捨て場に立っているのを見た。

やはり同じ黒いワンピースを着ている。

じっとゴミ捨て場に積み上げられたゴミの山を見ている。

何をしているのだろうかと思いその女の子に近づき隣に立ってみると何かをその女の子が抱えているのが見えた。

それはなんとマネキンの首や手足でそれを愛しそうに抱いている。

たまに肩を揺らしながら(クスクス)と笑っている。

これが噂に聞くケイコさんじゃないかと思ったこともありさすがに今見ている異質な状況に気味が悪くなり、ゴミをさっさと捨てるとアパートに戻った。

そしてある日、井戸端会議というわけじゃないが数人がマンションのエントランスで話をしていると頭のおかしな人なのじゃないかという人もいれば、幽霊なんじゃないかという人もいる中で一人だけ(仮に粟辻さん(男性)とします)が、
ぶるぶるとふるえている。

「どうしたの?」
一人がそう聞くと粟辻さんは何も言わずに自室に帰ると言って帰ってしまった。

なんとなく空気が悪くなってみんなは「じゃ今日はこの辺でまた今度ね~じゃあね~」っていう感じで各々別れた。

そして季節がケイコさんを見始めた秋から冬に変わるころだったか、住人たちは誰一人ケイコさんを見かけなくなり、誰もケイコさんの話題をしなくなったころにある悲しい出来事があった。

その悲しい出来事とは住人の一人の男性が突然に死んでしまったことがわかった。
死因はわからなかったのだが、どうやら
[4025] ケイコさん(前編)
これは北九州に住む江古田という人物に聞いたおぞましい話。

不条理という言葉があると思うんですが、まさにその不条理という言葉にぴったりな話だと思う。

まずその方からその話を聞いた経緯を話すとしようか。

北九州にある仮にN町とするが、N町に住む友人にちょっと会いに行った際に紹介されたのが江古田さんだった。

江古田さんは変わっていて服や靴といった身につけるものに無頓着というか気にしない人だった。

履いているジーンズなんかも穴だらけでお世辞にもダメージジーンズという感じではなかったので最初会ったときはおうっと唸ってしまったのを覚えている。

まあ彼は何をして生計を立てているのか。
それがとてつもなく気になった。
最初は怪談を聞くというか怖い話を聞くつもりなどなく彼の生活をなんとなく知りたい、気になる。
全くの興味本位から聞いたのだ。その話が自然的にというかいつもの具合に怖い話だった。という感じだ。

彼はある賃貸マンションの管理などをしているという。
賃貸ですから、それ程高くもないのですが(安くもないですが)

そのマンションである時期に住人の間でよく見かけるようになったケイコという女の子がいたらしく住人にはケイコという名前の女の子などいないし、そもそもそんな人間が居るならばケイコさんを見た住人が誰だか気づくはずだし、見たみんなが知らない、わからない、見たことがない。
となれば一体ケイコとは誰なのかという話になる。ただ、ひとつだけ確かなことがあり一度ケイコさんを見た人は二度目に見ることはないという。一度きりしか出会えない女性らしい。だから見たという人は常にケイコさんを見ていなかった人に限られる。

その女性はだいたい見た目からいうと20代、いつも見かけられるときは同じ紺か、黒系のワンピースのようなものを着ているという。

ただだいぶ変なところがある。
ある人が見たのは、エレベーターのところで、降りてくるエレベーターをボタンを押して待っているとチンと開いたエレベーターの中に黒いワンピースを着た女性がいる。

その方ももちろんケイコさんを見るのは初めてだった。
まあでも普通に挨拶をと思い、

「こんにちは、今日はあったかいですね」

そう言うと、(タン、タン)と軍隊が足を高く上げるような足を踏みならすような感じで近づいてきて何を言うかと思ったら

「わたしケイコよ、ケイコ、ケイコって言うのケイコ、ケイコ…」
[4009] 麗子
ロビン・ミッシェルさん、ファンです。ひひ…ひ。

おっ、意外な展開に、ひひひぃ…ってなりました。

今日、愛車を車検に出して不慣れな代車に乗っている私には、身のつまされるお話でした。

鍵穴の無い車…「もはや、これは鍵ですらないではないか」とキーを回してエンジンをかけたい私は、最新のシステムの代車に頭がついていけず、終始パニクっていました。

事故らないように気をつけますね、麗子さん。

[4006] 麗子

ある晩、麗子を助手席に乗せて国道を走っていると、少し先の交差点を指差して「あっ!」と声をあげた。

目線の先を見ると、中央分離帯の切れ目に生花が幾つも供えてあるのが見える。

「ここに来るのも随分と久しぶりだな…」

俺の言葉をスルーした麗子は、目を見開いて「今の見た?!」と俺の手を強く握ってきた。

麗子曰く、生花の傍に髪の長い裸の女が泣きながら突っ立っていたと言う。

そしてまだ臍の緒が繋がったままの赤ん坊を抱いていたと…

「お前、あんな一瞬でそこまで見えるか普通? 嘘つくなよw!」

と、嗜めた瞬間「ガコッ!!」っと凄い音がして突然左のサイドミラーが変な方向へと折れ曲がった。

バン!! バン!!バンバン!!バンバン!!バンバンバン!!

続いて、車体のありとあらゆる場所から沢山の手で平手打ちされた様な嫌な音が車内に響いた。

慌てた俺は急ブレーキを踏んだ。

幸い深夜で後続車も無かった為、追突事故は免れたが、路面にはクッキリとスピンしたタイヤの後が残った筈だ。

とにかく借り物の車が心配になった俺は慌てて運転席のドアを開け、車を一周して見て周った。

すると左右共々、黒いヘドロ状のヌメヌメとした汚れが、折れ曲がったミラーから後ろのリアフェンダーにかけて手で引き伸ばしたかの様にびっちりと付着していた。

「ほらね言ったじゃない!あの子めちゃくちゃ怒ってるよ…」

麗子は先程のあの交差点を指差しながら震えている。

「えっ、怒ってるのか?!」

麗子は掴んでいた俺の袖口にギュッと力を込めた。

「なんで道路に倒れてたお花、踏んづけちゃったのよ!本当馬鹿じゃないの?!」

「ごめん!見えなかったんだ、間に合わなかったんだ… 」

昼間の予報が当たったのか、ポツポツと空から雨が落ちて来た。

俺は車を一刻も早く洗車機に通したかったので、麗子に早く車に乗ろうと即したのだが、彼女は交差点をジッと見つめたまま一歩も動こうとはしない。

「…あっ… お花拾った。あっ、こっち向いた… あっ…走って来た… 」

俺の袖口を掴む手の力は更に強くなった。

それと比例するかの様に強さを増した雨は路面を叩き、俺と彼女の髪から下をずぶ濡れにしてゆく。

「…来たワ…はやく逃げナきゃ。」

独り言の様に囁く彼女の横顔を眺めながら、俺は口を開いた。

「逃げなくてもいい、あの女は昔死んだ俺の女だ。お前が見たガキも俺の子だよ。」

麗子は雨でびったり張り付いた長い前髪の隙間から、虚ろな目を覗かせてゆっくりと俺を見た。

「俺は七年前の雨の日にここで事故を起こした。飛び出してきた自転車を避け損ねて民家に突っ込んだんだ。助手席に乗っていた妊娠中の彼女も、後部座席に乗っていた麗子… お前もあの時に死んだ。」

俺はトランクを開けて、用意しておいた腕一杯の献花を取り出した。

「本当にすまない麗子。お前はこんな所まで飛ばされちまったんだもんな… 痛かったろうな 」

「…………… 」

交差点から三十mも離れたガードレールの切れ目にひっそりと小さなお地蔵様が祀られている。

ようやく麗子も自分が既に亡くなっている事に気付いてくれた筈だ。

雨は激しさを増し、辺りは一瞬明るくなった数秒後に雷鳴が鳴り響いた。

ゴロゴロゴロゴロ…

俺は麗子と云う石の前に膝を着き、買ったばかりの生花を丁寧に並べた後、いつまでも三人の冥福をただ祈る事しか出来なかった。



【了】
[3998] 悪夢(後編)
思い出したことがある。夢の中で車が木にぶつかったとき車の中で見た女の顔、それは顔が抉れたように陥没した顔だった。

死んだ元彼女と夢の女は同一人物だと思う。

ただ、女は何度も何度も和夫と寄りを戻そうとしたがあまりのしつこさにキツい言葉を浴びせたらしい。それが原因かはわからないが、女は自殺を決意したのかもしれない。

和夫をあの世に引きずり込んだであろう女がなぜ菅生さんの夢の中に出てきたのかはわからないが、何度も見た何かから逃げ続ける夢と最後に見た陥没した女の夢は何か意味があったのか。
不可解なこともあるが、何か後味の悪さが残る話でした。
[3997] 悪夢(前編)
命を奪うほどのおぞましい話や後味の悪い話は世の中にはたくさんありますがこれもそのひとつじゃないかと思う。

仮にこの方を菅生さんとします。
菅生さんはある時期頻繁に夢を見ることがあった。
その夢とは何者かに追いかけ回される夢で、延々と樹海のような森の中を逃げ続ける。そんな夢だった。

毎日見るわけではないものの結構な確率で見続ける夢に恐怖を感じ始めていたころ付き合っていた彼氏の和夫と一緒にドライブに出かけた。

気晴らしの為でもあったが、和夫と話すと幾分か気を紛らわすことが出来た。

どこへ行こうかと話していると急に和夫さんがハンドルに顔をつけてぐったりしてしまった。

停まっていたので事故にはならないもののどうしたのかと肩を揺さぶって名前を呼んだ。

ものの数分もしないうちに和夫は頭を上げたかと思うと左脇の道に入り林の中を突き抜けてゆく。

木にぶつかりながらも木々の間を抜けていく。
だが、一本の木にぶつかってしまった。
その衝撃で菅生さんは意識を失ってしまった。

気づくとどうやら怪我はしていないようだ。腰を打ったくらいで済んだらしい。

横を見ると和夫さんは先ほど同様にハンドルに顔をつけている。

揺さぶって名前を呼んでみる。
しかし、暗い車内で最初は気づかなかったが、それは和夫さんではない。
知らない女だった。

(え?)と思っていると女はむっくり起き上がり菅生さんを見た。

その瞬間、菅生さんは意識を失ってしまった。

そして、気づくと自室のベッドの上である。

どうやらまた夢を見たようだ。
汗でべったりしている。

それから一週間くらい経って和夫さんが亡くなった。事故だった。

葬儀の中、親戚たちが菅生さんを見て何やらひそひそ話をしている。
気になって何か用なのかと聞くと、

「ひいおばあさんがあなたに言いたいことがあるって」

と、親戚のおばちゃんがひいおばあさんを連れてきた。

ひいおばあさんは言った。

「あんた、かわいそうだったね。
でも心配いらないよあんたのことは最初からあの女は狙ってなかったんだ。最初からあの女の狙いは和夫だったから。でもあんたが自分を責めることはない。仕方ないことだから」

そう言って、行ってしまった。

あとで聞けば和夫の前の彼女は自殺をしていたことがわかった。
マンションの部屋から飛び降り自殺をしたらしく遺体は顔が抉れる形になっていた。
[3993]

妖怪というか化け物に近い話で面白いのが二つある。

ひとつめの話は東京の某所のアパートの話。
その部屋は二階の階段をのぼって一番端っこにある部屋。

出水さんとします。借りる前、変なことを言われた。
「壁にね、ポスターとか張ってもいいけど洋室にある壁に張ってある紙は悪いけどはがさないでね」
借りる条件としてそう言われた。

まあそれくらいならいいやと出水さんは借りたらしい。

で、見たらやっぱり壁に大きな正方形の紙が張ってある。

まあ何日かは気にしなかったが、ある日の夜中妙な音と異臭で目が覚めた。

(ガリガリガリ)

そういう音がする。

見るとあの壁に女が立っていて壁に手をかけて斜めに爪でひっかいていた。

ただ、その手が妙だった。
まるで獣の手のように毛だらけで大きな手。

それがガリガリガリと上から下へ上から下へひっかいている。

さすがに怖くて動けない。やがてこちらが見ているのに気づいたのかくるりと向くと出水さんの手首に巻いてある数珠を見て

「チッ、命拾いしたな」

そう言って消えた。

数珠はおばあちゃんからいつもつけているようにと言われた数珠だったという。

その後、そのアパートから出た。
[3970] ツーリング

昔、父に聞いた話。
父が仲間と一緒にツーリングをした帰りのこと。

予報にない雨が降ってきた為、急遽秩父某所の廃墟に雨宿りをしに入った。

元はホテルのようでたくさんの客室があり雨が止むまで退屈なので隠れん坊をしようという運びになった。

いい大人が隠れん坊をする。それもどうかなあとは思ったがほかに退屈を紛らすすべがなく仕方なく隠れん坊に参加した。

父は隠れる側で鬼が百を数えるまでにどこかに隠れなければならない。

こうなればいちばん上まで上がってやれと思ったが、なかなか階段を上がるのが面倒で三階の宴会場に隠れることにした。

宴会場にある押入を開けると上にはまだ布団があり、下には何もなかったため、その中に隠れることにした。

しばらく隠れていると眠くなってしまった。
うとうとっとしているとどこかからプーンと焦げ臭いような焼けたような臭いがした。

押入を少し開けると開かれた宴会場の入り口にデカい和人形があらわれた。

その和人形はボロボロの着物を着て髪の毛もぼうぼうであちこちに焼け跡のようなものが見て取れた。

それが民謡のような不思議な節というか言い回しの歌を歌いながら目の前を過ぎて行った。

しばらく隠れ、歌が聞こえなくなるまで待って、押入から飛び出し階段を一目散に駆け下りて一階まで着くと、ちょうど探していた友達とばったり遭って、

「どうした?青い顔して?まあいいとりあえずみっけたわ」

そういう友達に先ほど見たものを説明するとここはヤバいってことになり皆を集めて速攻で廃墟を出た。

雨は廃墟を出てからしばらくして降り止んだらしい。

父はそのこと以来和人形に嫌悪感を持つようになってしまったと言っていた。
[3896] 不幸の数だけ増える手形

現在進行形の怖い話。和歌山に小野瀬という家がある。
その家で今も起きていることを記す。

今から数年前、夏のこと天井に小さなシミが出来ているのを家族が見つけた。

そのシミは不思議なことに家族に不幸があるたびにひとつずつ増えているようだ。

しかもそのシミは手の形をしていてしかもその手形の指の数がおかしい。
指が七本あるのだ。

その手形は今では天井のほとんどを埋め尽くしてしまっているという。

ただ、不幸が起きても小さな不幸で済むという。

ちょっとしたけがをしたり、風邪を牽いたりといった小さな不幸でも手形は増える。

このままいったら一体どうなるのか、わからないがいつかその天井を埋め尽くしてしまった時大きな不幸があるような気がして怖い。
[3895] 誰でもいい

私ごとですが、厭な話が最近多いです。
いい人がターゲットになったり被害をこうむったりする話が多い。
それは生きてる人同様にあちらの世界の人も「誰でもいいから」っていうわがままで幼稚で愚かな理由からなのか。

考えたら怖いのはそういう人間の心ない部分なのかもしれませんね。

お目汚し失礼仕る。
[3876] てぃあらさま
そうですね。可哀想な人なのかもしれません。
嘘つきとゆうのも、ある種の病気なんでしょう。せっかく頭が良いのに…

不快な話をすみませんでした。
[3861]
虚言癖…というか、嘘をつくことが平気なサイコパスなPC遠隔操作の容疑者みたいで危ないですね。深く関わらない方がいいですね。
本当は、病気で気の毒なのかもしれないけど、どうも、相手を見て人の良い人にだけ絡んでくるみたいなので同情は禁物です。

専門医の治療を受ければよいのでしょうが、ここまで来ると親身になって治療をすすめる人もいないのでしょう。

……可哀想な人かもしれません。
[3859]
少女時代、幾つかの小説や漫画のあらすじを、間違えて記憶していました。
物識りな友人から「こうだよ」と教えられたのを真に受けていたからです。
…まあ、訊いただけでちゃんと読まなかった自分が悪いんですが。

その物識りな友人は、他にもいろいろな嘘を私に吹き込んでくれたものです。

「ベートーベンの耳が聴こえなくなったのは、彼の友人が悪戯で非常ベルを耳元で鳴らして鼓膜が破れたからなんだって」

そんな事を訊かされた私は、しばらく怖くて非常ベルの前を走って通過していました^^;


高校の修学旅行は北海道でした。
私はお土産屋さんであるお菓子を必死に探していました。
別の高校に行っていた彼女から、そのお菓子が北海道限定だと教えられていた為です。
でも、どこにも見つからず…気落ちして帰って来たのですが、
後日、全然別の観光地でそのお菓子を見つけて呆然としました。

修学旅行の時に探すのを手伝ってくれたクラスメートから、

「そのお菓子、◯◯でも△△でも売ってたよ」
「私も◇◇で見たよ」
「…ひょっとして、北海道以外ならどこにでもあるんじゃないの?」

等と言われる始末…ソースが彼女だと知った、やはり小学生からの友だちは、露骨に厭な顔をしました。

「あの子から訊いた時点でまず疑いなよ。何度も騙されてるんだからさ」
「…ははは…」

その通りですが、彼女が頭が良いのも事実で、宿題を教えてもらったりもしていたのです。


私は就職した当時、数年程は地元を出ていましたが、結婚後は又実家の近所に住み、ほぼ生活圏が変わっていません。
嘘つきな彼女とは全く付き合いを絶っていましたが、彼女がずっと実家に住んでいる事は知っていました。

その彼女と、数年前再会した時の事です。
暫くは他愛のない昔話をしました。勿論、彼女から色々騙されたエピソードには触れずに。

近況報告に話が移った時、

「実は…」

彼女は語り出しました。最近、不幸続きなのだと。
付き合っていた男性が、実は妻子持ちで借金を肩代わりさせられた、とか
夜道を歩いていたら男に自動車の中に引き摺り込まれ、レイプされた、とか…

更に、そのレイプ犯から脅迫されて、父親がショックを受けて自殺してしまったのだと言うんです。

まるで安っぽいドラマみたいな不幸の数々。

彼女の父親は、確かに既に他界されていますが、病気で亡くなったという事は、私は母から訊いています。

「ちょっと、性急に必要なお金があって…悪いけど、◯万円で良いから貸して貰えない?必ず返すから」
「……」

彼女が提示した金額は、対した額ではありませんでした。
でも、これは反則だ…私は思いました。
過去に彼女が私に吐いてきた嘘は、言わば負けず嫌いな彼女が、物識りなイメージを壊したくないとゆうつまらないプライドからのものだったでしょう。
でも、お父さんの亡くなった事まで利用しての嘘となると。

おそらく、彼女は私を見下していて、私程度の女なら簡単に引っかかるだろうと考えたのだと思います。

私は徐に言いました。

「うちの旦那の友だちがね、連帯保証人になって酷い目に遭ってるの。だから、どんな場合でも、借金の頼みはきくなって言われてて…だから、ごめんね」
「……」

彼女は口を歪ませました。

「…ふーん、ずいぶん俗っぽい男と結婚したんだね。あんた…」

更には、友だちを無くすよとか、男なんてみんな下らないから、私は一生結婚なんかしない…とか捨て台詞を置いて行きました。

まあ、結婚しない事には賛成です。彼女の遺伝子は遺さない方が良さそうですから。

あの程度なら、本格的な詐欺師にはならないとは思いますが…無責任ですけど、私はもう、彼女とは付き合う気持ちはありません。
[3854] 邪悪な気配(弐)

大小様々な箪笥が1箇所に集められている。

なぜ、箪笥ばかりあるんだろうと思ってじぃと見ていると箪笥のひとつがカタカタと勝手に揺れ出した。

その揺れに合わせて箪笥の引き出しが開いてゆく。

(ガタッガタッガタッ)と少しずつ少しずつ開いてゆく引き出し。

やがて半分くらい開いたと思ったら
中からにょきっと何かが出た。

それは白いキノコのような形をしたものだった。

番傘のような膨らんだ形状のものがあり、その下は細くなっている。

それが左右に揺れながら少しずつ少しずつ出てくる。

有馬さんの手を見るとライトを握る手がわなわなと震えている。ライトの光もそれに合わせて小刻みに揺れる。

やがてハッと気づくとそのキノコの形状をしたものの正体がわかった。

それは頭が肥大した女で白目をむいて左右に揺れている。

それが這い出して来ている。

流石に怖くなり、二人は慌てて階段をおり、もとの位置に階段をしまった。
階段をおりて自室に戻ろうとするとおばあちゃんとおじいちゃんが開けた襖に立っていた。

見つかったと思ったが、「何か見たか?」と言われたので「何も」と言ってごまかした。

その後は何もないが、あの邪悪な気配を越える気配はいまだ感じない。

ただ、あの女はなんだったのか、そしてなぜ屋根裏にあんなにたくさんの箪笥があったのかそれはわからない。

(追記)そのことがあってから数年後おばあちゃんの家で不審火があった。出火もとはあの屋根裏。
不思議なことにあの屋根裏にあった箪笥だけはひとつも燃えなかったそうだ。
それからその箪笥がどうなったのかはわからない。
ただ、今もたまに屋根裏に箪笥があるあの夜の光景、そして引き出しからにょきっと女の頭が出てくる光景がたまにフラッシュバックのようによみがえるときがある。
[3853] 邪悪な気配(壱)

中谷は昔から気配とか予感とかそういったものに敏感で特に五歳からそういった気配を感じる力があり十歳ともなると気配によってその気配が形とか色とかの違いがわかるようになった。

その中でいくつかは「邪悪な気配」を感じたことがある。

邪悪といっても種類は様々で小さなものから大きなものまであり、中谷曰わく本当に邪悪なものは吐き気や目眩さえおぼえるらしい。

感覚も様々あり、チクチク刺すような痛みがある気配からだんだんと迫るような距離感を感じるもの、ゾクゾクするような寒気をおぼえるものもあるという。

様々な気配を感じてきた彼がもっとも邪悪な気配だと断言する出来事がある。

それは彼が十歳のときで、8月のことだ。

友達の有馬さんのおばあちゃんの家にいっしょに遊びに来たときのことだ。

有馬さんのおばあちゃんの家は農家でとても広くおまけに古い。

その広い家の壁や天井には所々にシミがあり、中には顔に見えたりするものもあったが、それよりもある部屋に階段があった。
その階段は屋根裏に続く階段らしく上げ下げできる仕様らしい。

有馬曰わくなぜか昔から近づいてはならんと言われてる。
だからか、普段は多くの場合、階段は上に上げられている。

邪悪な気配はその階段の上からしたのだ。

気配を感じてからは絶対に近づかないようにしていたが、夜中有馬さんに起こされた。

聞けばどうやら有馬さんは階段の上にこっそり言ってみようという。

やめようと言ったが、有馬さんの押しの強さに負けてやむなく行くことになってしまった。

こっそり部屋を抜け出しその階段のある部屋に行く。

懐中ライトの明かりを頼りに進むと階段を静かにおろす。

ギィと鈍い音は立ったが、どうやらおばあちゃんやおじいちゃんはぐっすり寝入ってしまって誰にも気づかれてないようだ。

やがて静かに階段を上り屋根裏に続く蓋をそっと上げる。

先に行ったのは有馬さん、埃っぽいのとカビの匂いがプーンとして鼻をつまんだ。

懐中ライトでかすかに明るくなった部屋をふと見るといくつかの荷物がある。
多分物置として使われてるのだろうということがわかった。

その部屋をぐるりと照らしていくとある1箇所で止まった。

懐中ライトを持っていた有馬にどうしたかを聞くと首をしきりに傾げる。

「おい!どうした?何があった?」

有馬を押しのける形でふっと照らされたその1箇所を見ると妙なものがある。
[3844]
あら、やだw

×息子に効いて

○息子に訊いて

でしたw

読み返さず、このザマです。(>_<)ハズい

[3843] 軋む音
なんだったのでしょう?通り過ぎて行ったので良かったですが…。

びっこ……久し振りに聞いた言葉ですが、今の若い人たちに解るのでしょうか?息子に効いてみたいと思います。

が、下肢の障がいを揶揄した差別用語かと思いますので使わない方が適切かと存じます。

とは言っても、この言葉が一番表現しやすいことも確かです。

「片足が巧く使えないため、その足を引きずるようにもう片方の足でピョコピョコ歩く」ってことですが、面倒ですね。

作中のソレはマリオネットの動きのように感じとれ不気味でした。

[3840] 骨の軋む音

気持ち悪い話とか、グロい話とか好きな私としては結構好きな話です。

真壁という男の話。

真壁は夜中、電話ボックスの中にいた。彼女と別れる別れないで口論していた。

散々悪態をついたあとしばらく煙草を吸って気を落ち着かせようと何本か吸い終わったとき音がした。

「カコッカコッギチィギチィコチッ!」

そんなような何かが擦れるような音、軋むような音がした。

その音は外から聞こえた。

電話ボックスの中からガラス越しに見ると少し離れた場所、夜の闇に何かがいた。

肩をこう斜めにしたような形で前のめりに転びそうで転ばない。そんなぎこちない危うい歩き方をした何か。

じぃーっと目を凝らして見ているとやがてその正体が分かってしまった。

体の殆どが焼けただれ肉が削げ骨のはみ出した何かがびっこを引きながらこちらに迫ってくる。

心臓がバクバクした。
後ろのガラスに思い切り背中をつけて、震えて動けない。

混乱してなにがなんだかわからない。
ただ目の前の異様な光景に頭の整理がつかない。

来るかと思ったが、予想とは反してその骨のはみ出した奴は電話ボックスを通り過ぎ、また闇の中へと消えていった。

軋む音が遠ざかりやがて完全に消えたとき、電話ボックスから出て急いで帰った。

ちなみに彼女とはその後、色々あって別れたそうだ。
[3808] スペシャルサンクス
やあロビンミッシェルだ。

てぃ、てぃあら氏、ご指摘有難う!助かったよ!

直ぐに直そうと思ったんだが「成美」の数の多さに焦って、一度削除してからまた掲載させて貰ったよ!
それに伴いコメが前後してしまって本当に申し訳ない!…ひ…
[3807] 地獄のサプライズ

やあロビンミッシェルだ。

今回の話は俺の中では珍しくおフザケ無しの怪談だ。

これは数年前に怖いDVDを見ていて思い付いた話で、あり来たりな話と言えばそうなんだが、ラストを少し練ってみたんで少し長いが良かったら一読してみてくれ…ひひ…






幼い頃に両親を亡くした成美は、父の妹にあたる親戚の元で幼少時代を過ごした。

だが、叔母である恵子は幼い成美に事あるごとに辛くあたった。

夕食の品数が少ないのは勿論、着る物も全て自分の子のおさがりを着させ、皿洗い、風呂掃除、ゴミ出し、それ以外にもいくつもの仕事を与え、もし口答えでもしようものなら一晩中食べ物も与えずに容赦なく物置に閉じ込めた。

その為か成美の性格は他の子よりも暗くなり、小学校に上がった頃からイジメの対象となってしまった。

物を隠されたり、無視されたり、汚い汚いと逃げ回られたり、必然的に一人ぼっちになってしまった彼女には友達と呼べる者は一人も居なかった。

そんな学校でも家庭でも完全に孤立してしまった成美の唯一の味方は、一緒に同居している父方の祖母、薫お婆ちゃんだった。

薫お婆ちゃんはいつも成美の話をうんうんと優しく聞いてくれて、恵子が癇癪を起す度に間に入って助けてくれたり、時には隠れてお小遣いをくれたりもした。

成美はそんな薫お婆ちゃんが大好きで、日頃の辛い出来事もお婆ちゃんと居る時だけは忘れる事が出来た。

だが、そんな優しい薫お婆ちゃんも成美が高校三年に上がってすぐ、肺炎を拗らせてアッサリと亡くなってしまった。

唯一の味方を失った成美の落ち込み様は激しく、気力も無くなり、学校も休みがちになっていった。

遂には高校を自主退学、部屋に引きこもるようになった。

しかしそんな成美に恵子が黙っている筈もない。

「このただ飯食らいが!学校行かないなら仕事しろ!」

と無理やり飲食店等のアルバイトを掛け持ちで朝から夜遅くまで働かせられた。

勿論給料は全て取り上げられ、毎日クタクタで家に帰る成美は前にも増して暗く…全く人に心を開かないようになっていった。

しかしアルバイトを始めて半年が過ぎた頃、成美に転機が訪れた。

なんと彼氏が出来たのだ。

相手はアルバイト先の先輩、三才年上の大学生だった。

彼は爽やかでイケメン、とても優しく、心が開けず上手く人と付き合えない成美の事を心から心配し、いつも成美の話を真剣に聞いてくれた。

徐々にそんな彼の優しさに惹かれ、二人はいつしか付き合うようになった。

初めて出来た彼氏。

成美は夢中だった。

彼とずっと一緒にいたい!あんな家から一刻も早くでたい!

日に日にその想いは募り、付き合いだして三ヶ月、気付けば家出同然で彼のマンションに転がり込んでいた。

数ヶ月後荷物を取りに帰った際、恵子からは汚い言葉で散々悪態をつかれもしたが、これから先の彼との生活を思うと少しも苦ではなかった。

そしてそれからの二年間は成美にとってとても幸せな生活が続いた。

今までこんな幸せだった事はない。

生きてる事がこんなに楽しいなんて、まさか自分にこんな生活が待っていたなんて…

優しい彼のおかげで成美は徐々に心を開いて行き、性格も明るくなり、友達と呼べるものも何人か作る事が出来た。

毎日が充実していて必然的に成美は彼のお嫁さんになりたいと思い始めていた。

その頃彼はすでに大学を卒業し役所勤めをしており、お互いに結婚を意識する時期に来ていた。




ある時、彼氏 (浩志)と、その友達 (亮太)は、大型連休を使って一週間程海外へ旅行に行く事になった。

成美はお留守番だ。

内心、独身生活最後の思い出にと成美は心良く浩志を送り出した。

『 一週間会えないけどこれからはずっと一緒にいられる。
本当に浩志に出会えて良かった!
もしかしたらお婆ちゃんが私たち二人を引き合わせてくれたのかな~? ありがとう薫お婆ちゃん… 』

成美は祖母の写真を胸に抱きながら、これから先のまだ見ぬ幸せな未来に涙を流した。






帰国当日、浩志はある決意を胸に秘めていた。

プロポーズだ。

家に帰ったら真っ先に成美に渡す予定の「指輪」も訪問先のショップで既に購入済みである。

浩志は一世一代の「行事」に少し緊張気味だった。

「浩志!やっぱ今日プロポーズすんのか?!」

「ああ、考えたら俺成美にちゃんとプロポーズして無かったもんな。ちょっと緊張するけど…もしかして断られたりしてなw」

「んな事あるかよ!いいな~成美ちゃんみたいな可愛い嫁さん!なかなかいないぜ~、性格いいし、飯も美味いしよ!」

「なんだよ亮太、俺には勿体ないって思ってんのか?」

「いやいやそんな事ねぇよ。でも成美ちゃん喜ぶだろうなー!んじゃあ俺はこっからタクシーで帰るからよ…」

「ちょっと待てよ亮太、このまま帰って素直にプロポーズすんのもいいけどよ…折角だしちょっとしたサプライズみたいにしてぇなぁって思ってんだよw!悪りいけどもうちょっとだけ付き合ってくんねぇか?」

浩志の考えたサプライズとはこうだ。

訪問先の国で浩志が事故に巻き込まれ死亡した事にして、亮太はその事を伝える為に取り敢えず帰国し成美に電話をかける。

浩志の死を知りすっかり落ち込んでいる成美を亮太が迎えに行った時に、死んだ筈の浩志が後ろから突然現れて指輪と花束を持ってプロポーズをする!

ダブルの喜びに成美は涙する!

といった何とも下らない子供っぽいプランだった。

「えー、俺ヤだよそんな趣味悪りぃサプライズに付き合うの~!」

「そんな事言うなよ亮太ぁ~。これでも必死で考えたんだぜ!頼むよ、お前がいてくれた方が何かと心強いからさー」

「えー、俺にそんな演技出来るかな~?」

亮太は多少旅の疲れもあったが、親友の頼みとあって渋々引き受ける事にした。

プルルルル、プルルルル、

三コール目で成美は電話を取った。

「あ、もしもし!な、成美ちゃんか?!」

「うん そうだけど亮君お帰り♪ どうしたのそんなに慌てて?」

「な、成美ちゃん!大変な事になったんだ!ちょっと落ち着いて聞いてよ!」

「え?大変な事…?」

「ああ、じ、実は浩志がね…」

「浩君?浩君がどうかしたの?!」

「あっちでね… 事故に遭っちゃったんだ… 」

「えっ?…事故?」

「う、うん…」

「えっウソ!事故って…浩君大丈夫なんでしょ?」

「そ、それがね… 言いにくいんだけど向こうの病院でさ…その…な…亡くなっちゃったんだよ!」

「…亡くな?!…ふふ…もうっ!亮君たら私をハメようとしてない?冗談なんでしょもう!」

「じょ、冗談って言いたい所なんだけどさ… 浩志、溺れちゃったんだ…ほらあいつ泳げねぇじゃん?泳げねぇくせに浮き輪で沖まで行って、その… 流されて溺れちゃったんだ…う… 」

「……………」

「もしもし成美ちゃん?」

「…うそ…で…しょ…嘘なんでしょ?」

「…俺が付いておきながら…ご、ごめん成美ちゃん!!…グス…」

「い、い、イヤーーーーーー!!イヤーーー!!」


そこで電話は切られてしまった。


「お、おい亮太!!お前どうなってんだよもの凄い迫真の演技じゃねぇかよ!凄えなお前、俺って本当に死んじまったんじゃねぇかと思ったぜw!」

「お、おい浩志やべえぞ…成美ちゃんマジで信じちゃってんぞ…」

「…え?」

「やべえ!マジやべえ!!成美ちゃん大丈夫かな?!」

亮太は慌ててその後何度も掛け直したのだが、成美が電話に出る事は無かった。

「おい!何であいつ俺の電話にも出ねーんだよ?!」

「ひ、浩志!あの驚き様はハンパじゃなかった…な、成美ちゃん大丈夫かな?!」

「‥‥‥……」

二人はすぐさまタクシーを拾い、マンションへと急いだ。




マンションの下までたどり着いた二人は、エレベーターを待っていた。

「おっせーな!このエレベーター!! 」

「おい浩志…なんかパトカーの音聞こえねぇか?」

ウーーー!! ウーーー!!

「ぱ、パトカーなんてどうだっていいんだよ!成美ごめんな…今すぐ行くからな!!」

「なんか事件…でもあったんかな…?」

マンションの前を何台ものパトカーと救急車が勢い良く通り過ぎて行った。




「成美ーーー!!」

玄関のドアを開けた途端、浩志はいつも成美が寛いでいるリビングへと靴も脱がずに走った。

「いねえ…成美どこだー!!」

硝子製のテーブルの上には編みかけのマフラーがそのままの状態で置いてある。

「成美ちゃーん!!」

二人は一通り全ての部屋を探してみたが、成美の姿は何処にも無かった。

「だ、大丈夫だよ、あいつ買い物にでも行ってるんだよ多分…」

「お、おい浩志あれ!!」

亮太が指差す先に成実はいた。

リビングの窓の外、ベランダに立って此方をジッと見ている。

「な、成美!良かった!」

浩志は急いでベランダへと走った。

「あー良かった!マジ助かった~!!」

亮太はマンションに着いた時から嫌な予感がしており、成美の姿を見て安心したのか全身の力が抜けてへたり込んでしまった。

「成美ごめんな!!」

浩志はベランダの窓をガラリと開けた。

しかしそこには先程まであった成美の姿は無かった。

「あれ成美…?おい亮太!いま成美ここに立ってたよな?!」

「え、何?いないの?」

亮太は腰の抜けた状態のまま、這いずるようにベランダへと向かった。

「…………… 」

浩志はベランダの手摺から階下を見下ろしたまま固まっている。

「…浩…志?」

亮太は浩志のジーンズに掴まりながら、必死に重い体をゆっくりと立たせた。

どうもマンションの下がガヤガヤと騒がしい。

亮太は恐る恐る浩志の見つめる先を見下ろした。

するとそこには沢山の野次馬にパトカー、救急車、そして…

野次馬と救急隊員達で出来た輪の中に、丁度人一人を隠せるぐらいのブルーシートが一枚敷いてあった。

目の良い亮太にはシートからはみ出た赤い血黙りまでハッキリと見えた。

「…亮太、あれ成美じゃないよな?」

「‥‥‥‥…」

「おい亮太!!泣いてないで教えてくれよ!あれ成美じゃないよな!!」

「…あっ!」

亮太は人集りから少し離れた駐輪場の方を指差した。

「…成美、成美だ!」

そこには七階の二人をジッと見つめている彼女の姿があった。

二人は堰を切ったように部屋を飛び出していた。
遅いエレベーターなどは使わずに階段を転げるように全力で走った!



「な、成美?!」

ようやく駐輪場までたどり着いた浩志は一人佇む成美に近づこうとしたのだが、あと少しの所でガツンとした金縛りのような感覚に襲われて動けなくなってしまった。

「………!!」

『…浩クン?…なんで…?』

それだけ言うと成美は煙のように消えてしまった…

すると浩志は金縛りが解け、漸くして追いついてきた亮太に向かって叫んだ。

「亮太!成美が…成美が消えた!!」

「浩志…」

「一体どうゆう事だよこれ?なんで消えんだよ!意味分かんねーよ!!」

「浩志…さっき上から成美ちゃん見た時さ…大きさ…おかしくなかったか?」

「はっ、大きさ?何言ってんだよ亮太?!」

「…もしかしたら俺の見間違いかもしんないけど…成美ちゃん異様にでかかったような…
隣りの自転車置き場から比べても多分三メートル近くはあったんじゃねぇかな?」

「はぁ?もう分け分かんねー!分け分かんねーよ!!」

「…浩志、確認しに行こう!」

亮太は更に増え続けている人だかりを指差してそう言った。



「失礼ですが、ご家族の方ですか?」

「………」

「いえ、同居している者です…」

事情を説明して身元を確認をして貰った後、周囲を目隠ししてからブルーシートの中を見せて貰った。

それは紛れもなく成美だった。

生前の姿とはかけ離れた状態の成美とおぼしき肉の塊がアスファルトに張り付いていた。

「あーーーーー!!!」

浩志は糸の切れた操り人形の様にその場へ崩れ落ちてしまった。

「なんでだよ!なんでなんだよ成美ーーー!!」

手を血だらけにしながら浩志は何度もアスファルトを叩き続けた。



カーーン!カーーン!カーーン!

不意に頭上から聞こえたその音に、亮太は涙を拭いながらマンションの七階へと目をやった。

するとそこには一心不乱に両手でベランダの手摺を叩く成美の姿があった。

あっ!!と思った瞬間、成美は手摺を越えて飛び降りていた。

亮太は動く事も出来ずに只自分の頭上へと降って来る成美から目が離せずにいた。

両手、両足を大の字に開きながらスローモーションで落ちて来る姿。

近づいて来るにつれその顔は悲しみからかクシャクシャになっているのが分かった。

バーーーーン!!!

亮太は成美と重なり、一瞬でその場へと崩れ落ちた。

体中の骨が折れる音がして全身の感覚が無くなった。

浩志を含め周りの人間は何が起こったのか分からずに、血塗れの亮太を只眺めるしかなかった。

そう、亮太以外の人の目には成美の姿は映っておらず、何の前触れも無く突然圧縮される様に潰されてしまった理由を理解出来る者は一人も居なかったのだ。

「…う… 」

辛うじて亮太にはまだ意識があり、薄れゆく意識の中視線は七階のベランダを見ていた。

カーーン!カーーン!カーーン!

そこには鮮血で真っ赤になってしまった顔の成美が、折れてブラブラの両手を何度も手摺にぶつけていた。

成美が再度ベランダの手摺を乗り越えた瞬間、亮太の視界全体を遮る様に覗き込む老婆の顔が重なった。

「…おまえのせいじゃ…おまえの…楽にシネるとは思うな…」

グシャ!!!

再度成美の体と重なった亮太の体は既に有るべき原型を失い、その肉片は周りを取り囲む者へと数十mに渡って飛び散った。

きゃーー!!という周りの叫び声を耳に捉えながら、運良くというか、頭蓋骨の破壊を免れた亮太にはまだ少しの意識が残っていた。

カーーン!カーーン!カーーン!

「…な…る…み…ちゃ…ん…」

七階ではまた手摺を乗り越えようとしている成美の姿がボンヤリと見える。

消えそうで決して消えない意識。

亮太は永遠に繰り返されるであろうこの終わりの無い復讐に、後悔と恐怖の想いを感じたが、もうそれから逃れる術は無かった。

既に眉一つ動かす事の出来なくなった亮太は、目前に迫った成美の顔がいつしか先程の老婆の顔に変わっている事に気が付いていた。

グシャ!!!




【了】
[3806] サプライズ
ロビン・ミッシェルさん、ファンです。ひひひのひ…ひひ…。

なんという……嘘や悪戯も程々に…ってことですね。ちょっとした、悪戯や冗談は誰でもするものですが、少し驚かせるくらいなら兎も角、誰かが死んだ、などという人を絶望させるような不謹慎な冗談は言うべきではないのでしょうね。

それに、男性が思うほど、女性は、「サプライズ」を好きではないです。プロポーズでもバースデーでも普通にしてくれるのが一番。特別な演出って、される方も必要以上に驚いたり、喜んだりしなきゃ悪いような気がして、疲れるし……ダサい。


あと…本掲載される前に、
「成美」と「成実」、「浩志」と「浩史」のようになってますから、統一した方が宜しいかと。いつもウザくてすみません。
[3788] 坂の上のファンシーハウス

江島の実家の近くには長い坂がある。

その坂を仮にL坂と呼ぶが、そのL坂をのぼると小さな洋風の家がある。

表札もなく空き家のようなんだが、 外見はかわいらしくまるで人形ハウスのようなつくりだ。

時々、庭に面した窓に人が立っていることがある。

日によってその窓辺に立っている人は異なり、ある日は男性ある日は女性、年齢も子供から老人まで様々な人間が立っている。

誰かがいたずらで人形を置いているのかとも思ったがたまに手を振るというのだ。

江島の友人の宇佐美が正体を確かめに行く。家を見に行くといってから帰って来ない。

警察にも行って、その家を調べてもらったが宇佐美は見つからなかった。

ただあとで知り合いが窓辺に宇佐美に似た人物が立っているのを見た。

もしかしたら宇佐美はあの家の住人にされてしまったのかもしれない。
そして今まで窓辺に立っている人たちは住人にされている人たちなのかもしれない。

何にせよ、不思議な家だ。

いつの間にか更地になってしまったが、不思議なことがもうひとつある。

知り合いの誰に聞いても皆口をそろえてこう言う。

「そんな家は知らない。最初からあそこは更地だった」

そして、「宇佐美?知らない。そんなやついない」

家のことはおろか宇佐美の記憶まで皆の記憶から完全に消えていた。覚えているのは江島ただ一人なのである。
[3787] 毛糸玉

都内の住宅の話。

一階は店舗、二階は住居という店舗兼住居がある。
そこにRは越してきた。

「部屋に入っても大丈夫ならOK」
そう言われた。

なんのことだかわからないが部屋に入ってみてわかった。

部屋の壁の中央から天井にかけて部屋を一周するようにブルーシートで覆われた何かがロープでぐるぐる巻きにされた形になっている。

「まあ見ないと思うけど見ないほうがいいよ」

そうも言われたので見ないことにした。

簡単に荷物を整理し片付けたらいつの間にか日は暮れ夜になっていた。

布団を敷き眠っているとずりずりとかがさごそとか何かが這うような音がする。

なんだろうと思って天井を見た瞬間、固まってしまった。

ブルーシートの一部がはがれて中身が露出してそれがうねうねと動いていた。

慌てて電気を点けて驚いた。

髪の毛が壁から生えてそれが勝手にうねうね動いている。

(もうここにはいらんない)

そう思って後日借してもらっている人間に電話をすると一言だけ。

「ああ、君もだめだったか。いやあの毛だろ。抜いても抜いてもいつの間にか出てきやがる。おまけに引き抜くとまるで毛糸玉みたくなっているんだよ。蛇がとぐろを巻くようにさ。」

いろいろあとから言ってきたりはしたが、Rはその部屋を問答無用で退去した。

かつてその部屋で何があったのかは知らない。
[3786] 神呼ばわり
ちょっと厭な話が最近目立ちます。
私は文才がなく伝える力に乏しいですが、今回は大好きなどす黒くて厭な厭な話。

これはKがKの祖母から聞いた話。四国にあるKの田舎には小さなお堂があった。そのお堂の中に奉られているものを皆は「神」と呼び豊作を願い手を合わせる。

しかし、皆が神様と呼んでいるだけで本当のところはいつそのお堂が出来たのかまたは誰がつくったのかなどといった具体的なことは一切わからない。
ただいつの間にか神様と呼ばれていた。

たまに年寄りが掃除をしているのを見かけていた。

今はもうすっかり荒れ果て掃除をする者もいなくなってしまった。
おばあちゃんが小学校にあがる頃になるとそのお堂には良くない噂みたいなものができて夜中、あのお堂で一晩明かすと呪いたい人間に災厄を与えることが出来る噂された。

最初は噂だけだろうと思ったが、佐竹という家の主人が惨い亡くなり方で死んだのを皮切りにだんだん周りの人間が不審な死を遂げる。

ある者は突然泡を吹き死に、ある者は行方不明、ある者は原因のわからない病にかかりやがて死んだ。
そしておばあちゃんは仲間連中を引き連れてそのお堂に行ってみることにした。

夜中、こっそり家を抜け出して茂みからお堂を見張る。

しばらくすると主人が亡くなった佐竹の家の奥さんが真っ赤な口紅に真っ赤な着物を着てお堂に入っていった。

おばあちゃんはすかさずお堂の横にある格子からお堂の中を覗いてみた。

すると、卑猥な言い方になってしまうが奥さんとずんぐり頭の毛だらけの何かが行為に及んでいた。

悲鳴ともつかない笑い声をあげながら奥さんはやがてぐったりした。

その光景が怖くなりおばあちゃんたちはそれぞれの家に帰った。

これは推測だが、多分あの毛だらけの奴があのお堂の神様で、いや神様と呼ばれている者で対象を殺す代わりに女には性行為をさせていたのかもしれない。

その後奥さんは子供を産んだ。
その子供はどうやら奇形らしく全身毛だらけだったといいます。
メイドや手伝いの者は何人か気味悪がってやめてしまったようだが、奥さんは子供をその子を抱きながら自室で死んでいたそうである。

終わりに、神様だからといって、いや神様と呼ばれてるからといってむやみに祈ることは避けたほうがいい。
今回の話では祈る行為そのものに災いはないにしろ、神様と呼ばれてる者は必ずしも幸や恵みをもたらす者ばかりではないと知った。
[3706] 夜中のノウマクサマンダバザラダンカン

「ノウマクサマンダ
バザラダンカン!」

ふいに聞こえてきた声で目を覚ましたR。
周りを見渡すが声の主はいない。
そもそもRはひとり住まい。家は一戸建て。外からかとも思ったが明らかに部屋の中から聞こえた。

しばらく身構えるように神経を集中しまた聞こえるかなと待っていたが、その声は聞こえることはなかった。

気づけば夜を明かしてしまっていた。
[3705] 桜金造さんの3ミリの女

桜金造さん、
有名な方ですが、
彼の話に3ミリの女という怪談がある。
それに似た話で3ミリのおじいさんを見た人がいる。
情報だけで恐縮だが、世田谷にあるマンションの一室にいるらしい。
[3674] 寝言

厭な話。戦後からだいぶ経ってから東北にあるFという街にある夫婦がいた。

奥さんは妙子と言い、子供を欲したがなかなか出来ない。
旦那さんは吉郎と言い町で商いをしていた。

だが、ある日のこと夜中旦那さんだけが寝付けずにいた。
隣では奥さんが寝息を立てている。

「眠れんなあ」
何度も何度もごろんごろんと寝返りを打つ。

するとふいに奥さんの声で呼びかけられた。

「ねえ、あなた?」

そう言われたので奥さんを見ると

相変わらず寝息を立てている。
どうやら寝言らしいんで「面白いや退屈に紛れに会話してみよう」

そう思い、「なんだよ?」と返事をしてしまった。

すると、すぐに奥さんは

「この女の心臓ちょうだい」

そう言った。
おかしなことを言うなあとは思ったがまあ自分の心臓なんで

「いいよ、くれてやるよ」

そう言うや否や

「うふふふふ、じゃあいただくわね」

そう言って気持ち悪いくらいにうれしそーに笑った。

翌朝、目覚めると奥さんがいつまで経っても起きない。
顔を見るとやけに青白い。
そして肌に触れるとやけに冷たい。

慌てて医者を呼んだが、時すでに遅し。
奥さんは亡くなっていた。
その後、医者から言われた事がある。

レントゲンを撮ったときに気づいたんだが奥さんの心臓がきれいになくなっていたことがあとでわかった。
まるで最初から心臓がなかったみたいだったという。

旦那さんはあの夜のことを思い出した。
(寝言で心臓をやると言ったこと、でも確かに奥さんの声だったこと、そしてあのうれしそうな笑い声)

旦那さんは奥さんを寝言で何者かわからないやつに奥さんの命を、心臓を渡してしまったんだ。

そしてあとで旦那さんもあとを追うように亡くなった。

旦那さんの胸には奥さんと同じく心臓が丸ごときれいになくなっていたといいます。
[3623] 鳥の群れ

突拍子もない話ってよくありますが、これもその類ですね。

団地のベランダでよく煙草をふかすA氏。

その日もベランダで煙草をふかしていた。

向かいにはべつの棟がある。

なんとなくその別棟の屋上を見ていたとき(ひゅーい)と右側から鳥が群れをなして飛んできた。

それはよくあることだが、その中の一羽の鳥が群れをぬけてこちら側に飛んできた。

あっという間に近づいて、その姿が見えた。

それは緑色の顔がついたまさに人面鳥。

中高年のようなやや彫りの深い顔立ちで頬骨が張っている顔だった。

その鳥のような人のような生き物はA氏の真ん前の空中で止まりこちらをギロリと睨みこう言って上昇した。

「おかしいな、見えているのか」

そんなものを一度だけ見たが、あれ以来ベランダで煙草をふかしててもその鳥は見ない。
[3622] バシャバシャ

学生Lの体験。

部活を終えたLが体育館から外に出るためのドアを開くともうすっかり真っ暗だった。

時刻は9時を過ぎていた。

一人、帰ろうとドアの前に続く数段の階段を降りると

ものすごい勢いで(バシャバシャ、バシャバシャ、バシャバシャ)という水音が聞こえた。

(ん?誰か水を止め忘れたかな)と思い裏手にある手洗い場に回った。

すると暗い中、手洗い場に誰かが屈んで勢いよく水を出し腕や手をバシャバシャと一心不乱に洗っている。
洗っているというよりも水を押し付けるというか水を纏うかのような感じだ。

少し近づいてハッとした。

黒い影。月明かりに照らされたそれは全身が焼け焦げ頭なんかは髪の毛がほとんど焼けてしまってところどころ残っているだけだ。

背中なんかは皮がベロンとめくれてしまってめくれた皮が垂れ下がっている。

ヤダァと思って逃げようとした時、確かに聞こえた。その人が

「熱い熱い熱いよう」

Lは振り返ることなくその場から一目散に逃げ出した。

逃げ出している最中にも後ろから

(バシャバシャ)という水音と(熱い)という声がしていた。

だんだん遠ざかるその水音と声に何か言いようのない悲しさがありいつの間にか涙があふれてきて泣きながら帰ったという。
[3621] 赤風呂

O氏が嘗て住んでいたアパートでの出来事。
その日友人のKが泊まりに来た。

飯を食い風呂にお湯を溜めに入ろうとするとOがそれを遮る。そしてこう言った。

「すまん、風呂は使えないんだ。近くに銭湯があるからそこに行こう」

仕方なく銭湯に行き、また部屋に返って来たときにビールを飲んでトイレに行くついでに風呂をのぞいてみた。

ガラガラと浴室のドアを開けるがべつに変わったところはない。

その時後ろからOの声がした。

「K、何してる?」

K氏は「ちょっと気になって」と言うとOは黙って栓をし、蛇口に手をかけ浴槽にお湯を溜め始めた。

ジャバジャバとお湯を溜めるOに「何やってんの?壊れてなんかないじゃん。ふつうに使えるし」

そう言うと、Oは「黙って見てろ」と言った。

浴槽の半分くらいまでお湯を溜めたときなぜ使えないのかがわかった。

みるみるうちに溜めたお湯が赤く染まってゆく。

最初はまるで赤いインクを落としたようにまだらに赤く染まっていたが、次第に全体にインクが行き渡ったかのように浴槽に溜まったお湯をすべて赤く染めてしまった。

「だから使えないんだ。わかったろ」

そう言ってOは栓を引き溜めたお湯を抜いた。

聞けばここはいわゆる事故物件ってやつらしくOの前の前に住んでいた女が浴槽で自殺したらしいことがわかった。

Oに住み続ける理由を聞くと安く済むからと言うが、KはもうOの部屋に来る気はなくなってしまった。

ちなみに今でもOはそのアパートに住んでいる。
[3615]

N氏は夜中、塾からの帰り道にこんな体験をした。

道の端に虫がイヤに集まっている。
カナブン、蛾といった気持ち悪い虫がうじゃうじゃと。

そこを通り過ぎようとしたときにいきなり声をかけられた。

「おい!」

とっさに振り向くが闇があるだけで誰ひとりいない。

また行こうとするとまた声をかけられる。

「おい!」

頭の中で誰がどこから声を発しているんだと思った。
瞬間、

「ここだよ」

見ると虫たちがいつの間にか一匹もいなくなっていて先ほど虫たちが集まっていた場所に白いお面のようなものが落ちている。

なんだろうと思い近づくとそれは人の顔で薄っぺらいお面のように地面に顔だけがある。

上から覗き込むといきなり目をカッと開きニヤリと笑い

「よう」

そいつがしゃべった途端逃げるように家に帰った。

そんなことが一度だけあったという。
[3597] 人形
そうですね。
最後に人形を貰ってくれた人が言うように、
人形には、全く罪はないのに、人間の都合によって作られた人形が、人間の都合によって「不気味」とか「縁起が悪い」とか…偶然の産物かもしれないのに、あたかも人形が悪い、みたいに言われ、たらい回しにされたのでは、人形も人間同様に歪んでしまうかもしれません。

そうは言っても、人形は苦手です。人間に模して作られたもの、というのは、扱いが難しい…。

不思議と、人形って、好きだと言う人って、中途半端ではなく、徹底して好きな人が多いですよね?物凄い数集めたり、徹底的に調べ上げたクオリティの高いコレクションにのめり込んだり…それだけ、魅了されるものがあるということでしょうが、だからこそ…やはり怖いです。

[3596] 六十九体目の人形(後編)
そういった人形をよく預かったり引き取ったりしているらしいこともわかった。

事情を説明しても快く承諾してくれた。

そして人形を渡したその日、家を出ようとすると人形を抱いたその方にお辞儀をしたときに

「ありがとう。いい人に巡り会えた。
母親にもおまえにもいろいろ怖い思いをさせてすまなかった。私はここで幸せにこの人と暮らす」

そう聞こえた気がした。

その後母親はみるみる元気になり久々に人形を見に行くとあのときの怖い顔ではなくやさしい笑みを浮かべていた。

「事情を話してわかってもらえるようにしたから、この子も反省してますよごらんなさい今はもうすっかり邪悪な気もぬけてやさしい心を持った人形です」

そうその人は話した。

「多分思うにいろんな人のもとを渡るうち邪悪さとかいい加減さとか人の負の面を人形が見るうちに人形は次第にその心を映したように邪悪な心を持ってしまった結果であなた方を苦しめたのでしょう」

そうその人は言っていた。

母親は八十を迎える間もなく亡くなったが、母親の人形たちはその人のもとで今も幸せにあの六十九体目の人形とともに暮らしていることだろう。
[3595] 六十九体目の人形(中編)
庭で燃やしてしまった。

その翌日、母親が涙に暮れているかと思って見に行くと母親があの人形を抱いている。

燃やしたはずなのにあの人形は母親の胸の中で焦げ跡ひとつなく抱かれている。

「母さん…どうして…その人形は燃やしたはずなのに」

すると、母親はニコッとして

「戻ってきたのよ、この子は私と一心同体よ」

そう言って笑った。

そして歳月が流れあと数ヶ月で七十歳の誕生日を迎えようという時、少しずつ少しずつ母親は窶れていった。

普通の食事も受け付けなくなり寝たきりになった。
それでもあの人形を自分の横に寝かせまるで添い寝をするかのように置いていた。

「いい加減、その人形は捨ててくれ、自分の体が参っちゃう母さんもその人形のせいだと薄々わかってるんじゃないのか」

そう言うと

「いいのこの子と一緒にいけるならさびしくない。お父さんにも先立たれて残ってるのは息子のあなたとこの人形だけ」

そう言って涙ぐんだ。

どうすればいいかわからなくなった。

ただ、あの人形の経緯を知れば何かわかるかもしれないと母親に人形の出どころを聞いた。

するとある店で掘り出し物だと言われて買ったらしいことがわかった。

その店に行き店主に聞くと意外な事実がわかった。

その人形はやはり流れてきた商品で最初の出どころははっきりしないものの聞いた話ではいろんな持ち主をたらい回しにされたとのことで、母親のように持ち主がおかしくなるのであまりに気味が悪いので人から人へ渡ってゆきそしてこの店にいつの間にか流れてきて、そして母親の元に来たということだ。

粗末に扱われたのにも関わらず燃やそうが真っ二つにされようが傷つけられようが翌日にはきれいに戻っている。
その話を聞いたとき全く同じだと思った。

燃やしてもだめ、切断してもだめ。
行き詰まった息子さんは厄介払いではないが、母親に次のもらい手を探したいことを伝えた。
すると、当初はあんなに人形と離れるのを嫌がっていた母親はやっと折れて

「わかったわ私も生い先短いしこの人形も私より大事にしてくれる人と一緒にいたほうがいいものね」

そう言って次のもらい手を探そうといくつか人をあたってみた息子さんはあるひとりの人を見つける。

その人は力のある人で人形をもらっても問題ないと言ってくれた。その人の家に行くとたくさんの人形が置かれていた。
まるで母親の家のようだと思った。
聞くとどうやら
[3594] 六十九体目の人形(前編)

五十嵐氏は変わった人で誕生日が来るたびに和人形を一体ずつ増やす。

幼い頃から親が買い与えたものを含めると六十八体の人形がある。

人形専用の棚にはものすごい数の人形がきれいに並べられている。

ガラス戸がついていて人形はガラスを通して見ると不気味な感じがするという(息子談)

これは実際にはその五十嵐氏の息子さんから聞かせてもらった話ですので息子さん視点から語る。

五十嵐氏が生前六十九歳の誕生日に六十九体目の人形を買った。

その人形は扱いがほかの人形と少し違っていて棚には入れずにいつも五十嵐氏は肌身はなさずちょうど赤子を抱っこするように胸に抱えていた。

夜も朝もなく五十嵐氏はその人形に話しかけまるで一人遊びをするように

「今日はいい天気ねえ、お出かけしようか」

そう言ったり

「可愛い、可愛い」

そう言いながら人形をなで回したりする。

そんな母親がなんだか不気味で怖かった。

息子さんは人形が好きではなくなるべくなら捨ててほしいと思っていた。

あの六十九体目の人形はほかの人形と違う。そんな気がした。
違うというのはなんとなくではなく雰囲気もさることながら息子さんが人形を見ると人形が睨んでいるような威圧感を感じる為だからだ。

人形の纏っている気というか雰囲気がなんだか邪悪な、もっといえば殺さんばかりの威圧感があるのだ。

ある日、母親が家を空ける日があった。
母親が月に数回の茶会に出かけた日だった。

これはシメタと思ってその人形を思いきって捨ててしまおうと母親の部屋に入り人形を探すが、何処にもない。

「おかしい、いつもある場所にない」

そう思って部屋から出ようとした時に背後からものすごい視線を感じた。

振り返るとベッドにあの人形があってこっちをじぃーっと睨みつけている。
明らかに表情がおかしい。
目はつり上がりまるで般若の形相だ。

アアッと悲鳴を上げて尻餅をついた時、慌てて逃げようと思ってノブをつかんだ瞬間、頬に人形の顔があたる感触がし、

「逃げきれると思うなよ」

低い女の声がした。

瞬間、意識を失った。

どれくらい経ったか目覚めると夕方でちょうど母親が帰ってきたところだったので
「あの人形は捨てた方がいい」
そう言うも母親は嫌だの一点張り。

仕方なくかわいそうだとは思ったもののあんな人形を置いておくわけにはいかない。母親にもしものことがあったら大変だと無理やり人形を奪うと
[3590] 帰省

このお話をしてくださった方は名前、住所、その他プライバシーに関わることは一切伏せてくれとのことなのでここでは仮にR氏とします。

R氏が田舎にある実家に電話をしてこれから帰ることを告げた。

帰省の日、家に帰ろうと家までの道を歩いていたところ。
周りの人間がやけにひそひそと自分を見つめながら話をしてる感じがする。

畑で働くおじいちゃんとおばあちゃんも無表情にこちらをじっと見て時々ひそひそと話をする。

「お久しぶりです」と懐かしい顔に挨拶をしても返事をしない。

何だろう嫌な感じだなあとバツの悪そうな顔をしながら家に帰ると玄関は開いていたので、

「帰ったよ」と玄関先で返事をするが誰も返事をしない。

仕方なしに家に上がり、家の中を見回るがやはり誰もいない。

「なんだよ、田舎とはいえ誰もいないのに不用心だな。出かけてるのかな」

ぶつぶつと文句を言いながらも家族を待つことにした。

やがて気づくと日がとっぷり暮れていつの間にかうとうととしてしまった。

「いけない」と思って目を覚ました時には開けた網戸の向こうに見える空は夕焼けだったはずなのに青空で、まるで昼間のようだ。

(トントン)と音がするので見ると台所で母親がまな板の上で野菜を切っている。

少し振り返って、
「あんたどうしたの?帰るなり寝ちゃって」

夢だったのかなあと思って話を合わせてそれから3日間実家にいて遠く離れた自宅に帰った。

程なくして家族が亡くなったことを聞かされた。
心臓麻痺による突然死だった。

それからあの時見た夢のことを考えてもしかしたらあの(誰もいない家)の夢は暗示だったのかもしれないとR氏は語っている。

年に何回かは実家に戻り墓参りをするが、あの時のような誰もいない家がぽつんとあるのを見るたびに悲しくなってしまう。
それと同時にあの夢の景色と重ねてしまうんだという。
[3524] ありがとうございます。

感想コメントありがとうございます。
今後の励みにさせていただきます。
[3518] お葬式
狐か狸が人間がやっている葬式や弔問を真似て化かしたのかな?って思いましたが、もっと悪意のある厄介なものだったら嫌ですね。

回りの人たちが泣いているのが、「笑いを押し殺している」というのがゾッとしました。
[3517] 御葬式

折原氏の出張先での体験。

出張先はN県。用事を済ませ、宿泊先に戻ったあと買い物をしようと宿泊先から出ていろいろ探検するつもりで慣れない道を曲がったりしながら進むと家々の並ぶような比較的開けた道に出た。

見ると提灯がかかった家があった。提灯には「御霊燈」とある。
家の前にはたくさんの喪服を着た方々が立っていた。
その前を通ると、家の前に立っていた人の中のひとりの女性に声をかけられた。

「すみません、ご焼香をしてもらえませんか?」

その言葉に折原氏は「故人と関係ない他人である私がご焼香するのは失礼にあたりますので出来ません」

そう言って行こうとすると袖をつかまれた。

引き離そうとするがいつの間にかたくさんの人に囲まれてまるで引きずられるかのように無理やり家の中に入らされた。

いくつか角を曲がると暗い部屋に明かりがいくつか灯されていてそこに棺があって故人の写真がたてられていた。

「ご焼香をしろ」ということなのか。
仕方なしにご焼香を済ませ手を合わせた時、

後ろに並んでいた何人かの喪服の人たちが顔をおさえながら

「うぅぅっ」という具合に泣き出してしまった。

しかし、そのうちその泣き声が笑いを押し殺しているのだと気づいた。

次第に「クックッ」という笑い声に変わってゆく。

そしてしきりに何かをつぶやいている。耳をすますとかすかに

「ざまあみろ」という声が聞こえた。

怖くなり顔をおさえながら笑っている人たちを押しのける形で駆け足で廊下に出て玄関に向かった。

靴を履き、(パッ)と戸を開くと、もうあたりは暗くなっていた。

ホテルに戻り、後日出張先のA氏と昼食をとっているとあの御葬式の話をした。(あとで考えてみるとなぜあの時A氏にあんな話しをしたのかはわからない。ただ誰かに話したくなったのだとは思う)

「これこれこういう場所でさご焼香してくれって言われて仕方なしにしたんだけどおかしな連中だったんですが」

そう言ってあの場所を言うと

「そこにそんな家はないよ。そこは更地だからね」

そう言って笑った。

勇気を出してもう一度行ってみるとあの場所は確かに更地であの細い道などはなかった。

確かにその手前まではそっくり記憶にある同じ道なのにその細い道に出たところにあったはずの家などはなく更地があるだけだった。

あのご焼香をした家は一体何だったのか。今もたまに思い出してはぞっとすることがある。
[3244] 斬る夢(2)
(1)の名前欄がおかしくなってました。すみません。
[続き]
その頃からか不思議な夢を見るようになりました。
舞台は教室。Aと喧嘩して私は何故かカッターを持っていて廊下に出たAを追いかけるが捕まえられない。
最初に見た夢はこうでした。
次の日も同じ夢でまたAを追いかけるが捕まえられない。
3日目も同じ夢。でもAを追いかける前に男子が「切るのか?やめとけ」と止められました。
4日目。また同じ夢。でも違う。男子に止められるがそれを振り切り、Aを捕まえて顔を切りました。
切った瞬間、Aの顔には血が出て私は今まで感じたことのないスッキリした気分になってました。ストレスが体の中から全て抜けた感じでした。

Aの顔を切った夢を見て数日後、A達の嫌がらせはパタリと無くなり、気が付いたら自主退学してました。
理由はよくサボっていたから辞めたんだろう、いじめが発覚したからだろうと噂が流れてましたが私はあの夢が原因、無意識に生霊を飛ばしてたのかなぁと思います。


生霊かなぁと思う理由は小学校や中学校の時、私をいじめた人のほとんどが病気になったりしてたので…。「あいつ病気になって不幸になれば良いのに」とか頭の中でいつも願ってました。

不思議な夢を見たのはこれが初めてです。


あの夢は一体何だったのか?

今でも謎です。


以上、読みにくかったらごめんなさい。
[3243] 斬る夢(1)
こんにちは。
ふと怖い体験を思い出したので書きたいと思います。初めてなので文がおかしくなってたらごめんなさい。

学生時代、私はクラスメートの三人組にいじめられていました。(A、B、Cとします)
三人組はギャル系…今で言うとDQN。クラスで目立つ子で私はおとなしく真面目な生徒でした。
その中のAは中学が同じでよく嫌がらせしてきて嫌いでまさか同じ高校とは思ってなくて入学当時は驚いた覚えがあります。
高校生になっても嫌がらせされました。
ある日、頭にきてAを蹴ってしまいました。(担任は兄の恩師で御世話になってたので停学は免れました…)
次の日からAの嫌がらせはエスカレートし、BとCからも嫌がらせされました。
ロッカーが壊されたり、キーホルダーを盗まれたり…
ほぼ毎日事務室に行ってロッカーを直してもらう羽目に…。
担任に相談しようかと思いましたが出来ませんでした。
そして家はどこか探すように帰りは後ろからゆっくり自転車でついて来たり…
(振り向くと「死ね」と通り過ぎる)
怖いので下校時刻まで図書室やPC室にいたり、電車やバスの時間を遅らせたり大変でした。
嫌がらせはほぼ毎日続き、次第にA達に復讐したい気持ちが芽生えました。
[3151]
これは私の"叔母"とその""家"の話。


私が幼少の頃、叔母は、1人暮らしで2階建ての家に住んでいた。
体が不自由な叔母は、1階で生活していた。

しかし、1階で生活している理由は他にもあるらしい。


そのことを叔母は何も話してくれない。
普段は、優しくて、大人しい性格なのだが、何故か2階のことを話すと、形相を変え、怒鳴るのだ。


疑問を抱いた私は、叔母が台所にいる間に思い切って2階へ上がった。


そこは、8畳ほどだろうか、1人で生活できるほどのスペースがあった。しかし、明らかに異様な点がある。


窓がない。

屋根裏部屋でもないのに。
まるで何からも遮断されたかのように。
一面の白い壁がそれを強調している。
今まで感じたことのない恐怖を感じた私は、1階へ階段を降りようとした

その時




叔母が1階から私を見ていたのだ。


そして叔母は低い声で、

「何を見たの?」

と言ったので、私は

「か・・・壁とか・・・」
と、あやふやな返事をした覚えがある。

すると叔母は、何を思ったのか、その場を去っていった。





叔母が亡くなった今、その家に行くことは無い。

しかし、振り返ってみると、幾つか不可解なことがある。


まず、2階には窓が無く、光が遮断されているのに何故私は8畳くらいだと、白い壁だと解ったのか。そしてその時、1階から私を見ていた叔母は何を思ったのか。
あの時、他のことを言ったらどうなっただろうか。

もはや知る由もない。
[3051] 変質者
コメついてて嬉しかったです。ありがとうございますm(__)m

あの人が何かに取り憑かれてたかどうか、解りません。私もかなり興奮してたし、見間違えとか、思い込みもあるかも。でも、皮膚がざわざわして、耳の聞こえかたが変になる、あの異様な感じは、現実にだったと思います。

唾とか、付いたって死ぬ訳じゃないんですが。
本当に全然知らない他人になにかされそうになったの、初めてで怖かったです。

文章下手で、自分で読み返してもあんまり怖くなくて、でもこれより書けなくて…すみませんでした(>_<)

人に話すと、怖さが整理できていいですね。
トラウマでしたが、少し平気になったかも。
[3050] 変質者
やあロビンミッシェルだ。

「ばあおぼえあああああ」ヤバイな…

唾を垂らしながら茜氏に近づく変態君。
生きてる変態が一番怖いと先人は言っていたが、正にその通りだな…ひひ…

こんなコメしか出来ない俺を許してくれ!
[3048] 変質者
うわぁ(>_<)
駅員さんて、お巡りさん並みに大変な仕事ですよね。酔っ払いの汚れ仕事なんかも…。公共の場で他人に迷惑かける危ない人、本当にどうにかならないのか…

ちなみにその変質者は何かに取り付かれておかしくなっていたんでしょうか?…黒いカゲって。
[3047] 変質者
気持ち悪かった話。

高校生のころ、通学で使う駅に変質者が出た事がある。
うちは田舎なので、駅って言っても無人なのね。
二時間に一本とか、三時間に一本とかの電車がくる時意外はマジで誰もいない。

そんな駅に、変質者。
話題の少ない田舎では、すぐ噂が広まった。

でも、実際に変質者なんて見たことなかったから、危機意識とかあんまりなくて、普通に使ってた。
そんなある日。
私は学校を早退して、一本早い電車で帰宅してた。
一本早いと、学生がいないからか、電車貸し切り状態。
社会人はみんな車移動だから、こんなことも珍しくはなくて。

まあ何にも考えずに乗ってたんだけど、少し違和感を感じて、顔をあげると。
少し離れた所に、二十代くらいの男の人が立って、こっち見てた。
ガン見。
しかもなんか、身だしなみが汚い感じで、目付きが異様だった。なんてかな…瞬きしないの。
で、うわっと思って、目を反らしたんだけど、なんか近づいてくるのね。じわじわ。しかも唾を床に垂らしながら。意味の聞き取れない言葉を呟きつつ。

もう、えっ?!えっ?!
って感じ。

すぐ逃げたけど、二両しかないし、また近くによってこられて、本当にどうなっちゃうの?!って時に駅に着いたからダッシュで外に逃げた。
そしたら、後ろから、『ばあおぼえあああああ』みたいな意味不明の雄叫びが聞こえた。振りかえる余裕なし。
でも転んだ。
なんかに足を引っ張られた感じで。
ぱっと見た足首の辺りになんか影みたいモノが一瞬ぞぞぞって動いた気がした。

なんか後ろの方で、数人が揉み合うような声がして、振り替えると、あの気持ち悪い人が車掌さんらに押さえつけられてた。
なんかしたのかもしれない。
そこんとこは、わかんないけど。
見ちゃった。
男の人の首のあたりに、巻き付くように蠢く黒く長い影みたいなのと、肩口からこっちをみてた顔。

もう、うひゃうって感じで、転がるように逃げた。自転車の鍵あけらんないくらい動揺しまくってた。

それからなんかあったとかはない。
でも、変質者がでたとか、そういうのは本当に気を付けるようになった。
[2789]
今までの( ̄ー ̄)兄の弟さんの作品の中で一番好きだな。
[2784] 蛇の目堂の悪魔
面白かった。家紋の話やへびの話が話に厚みを増した。しかし、その他のところがおざなりだったな。
菩提寺、武将や武家のしきたり、当時の風俗、仏教や神道、寺社、結界等にたいしてはあまり詳しく調べてなかったらしく情報の偏りが物語に軽薄な感じをださせてしまった。
それから、会話の箇所だが…私「」兄「」叔父「」というスタイルは文章をやる人間からするとさぼり以外の何物でもない。
脚本やTRPGリプレイなど一部で使われて定着は見られるも、誰がどう言ったのかを書くように直した方がいい。
せっかく書いた作品なのに読者へ馬鹿っぽい印象を与えてしまう。
まおゆうがあれで成功したのは作品に見合うスタイルであり物語や構成の上手さ、作者のセンスだ。並みの人間ではあれには迫れない。
あと、今回の作品は今までで一番長かったからか推敲が行き届いてなかった。
兄のキャラクターもいまいち生かしきれてなかった気がした。
それらを差し引いてもここでは遥か水準以上で面白かった。
次も楽しみにしている。
[2781] 蛇の目堂の悪魔
確かに緊張した場面でのwはイタダケナイ!!
でも( ̄ー ̄)さんの構成力には目をみはるものがある。あと、真偽はおいといて実話として読める魅力がある。読まないとか言って追い出そうとするのはマジで止めて欲しいな(泣)。
[2779] 蛇の目堂
読み入りました!!

お兄さんシリーズ最高の出来ですね。

他の方もおっしゃってますが、変に人情に拘ると焦点がボヤけてしまいます。

お気持ちは解りますよ。ただ、お兄さんシリーズ読んでる読者なら、この兄弟が冷たい人間じゃない事くらいは理解している筈で、( ̄ー ̄)さんが一番、薄情発言に驚いていると思いますよ。

逆に枝葉を付ければ一冊の本にでもなりそうな内容。率直に凄いと思いました。
[2778]
まあ、人それぞれでもファンからネチネチやられると思うと、おいそれとアンチなコメは書きにくいやな。

俺も、セリフにやたらwwが入るのはあまり好きじゃない。

言われる前に言っとく。もう読まない。
[2774]
↓だからさ、自分で言ってンじゃん…感想は人それぞれだって。あなたは兄貴が嫌い、それでいいじゃん。もっと自信持てよ(笑)。
[2773]
固定ファンのいる書き手さんの作品に感想書くのって、大変なんだなあ…揶揄とか、しょうもないとか反発されちゃうんだから。
まあ、確かに出て来たのは書き手と兄とおじさんだけで、一族が情の薄いとされるのは遺憾でしょう。
ご兄弟方のリラックスした喋り方も、普通の人よりも多くの怪異に遭遇されていてこその、余裕ですよね。

だけど、色々な人が目を通す訳だから、お兄さんの性格を受け入れられない人がいて当然じゃないですかね?
[2769] 蛇の目堂
面白かった(と言えば誤解を招きそうだが)。力作ですよ。キャラ云々とか…しょーもない感想などスルーすればよろし。霊感がある人間ってのは、例えそれが身内であろうとも死そのものには余り頓着しないもんさ。
[2767] 情の薄い一族
と、いうより各々が、事情を持っていて、でもその中で、最大限に動いた感じが。あと、過去投稿拝見しても、お兄さんが、センスはともかく軽口するのは、いくらでも重く怖く禍々しくなりそうな現場を少しでも、ましにするため、と思いました。いい人です。お寺さんはよくわからないのですが…神主の、資格お取りになれば良いかと。
[2762]
↓さん、「いたむ」の方だったんですね。「かなしむ」の方だとばかり思っていたので、嫌味なコメントして失礼しました。

確かに、感想は人それぞれですが、「情の薄い一族」とまで揶揄する必要はないのではないでしょうか?一族全員が登場しているわけでもないんだし。
[2761]
↓の方、ご丁寧にありがとうございます。
悼んでは『いたんで』と読み、間違った表記ではありません。

お兄さんのファンの方には不愉快な感想を書きました。
でも、やはり感想は人それぞれで…私はあまり、好きなキャラでは無いですね。
[2758]
↓↓さん、悼しんで(しが入るのですよ)いないのではなく、悼しむ余裕さえない緊迫した事態だったのではないか?とは読み取れませんか?

僕は、兄の弟さんは、この作中に祖父への哀悼の意を記述することは本来の作品の意図から外れてしまうから、会えて表現しなかったのだと、理解しましたよ。

しかし、そこに食い付くとは……スゴいですね(笑)
[2756] 蛇の目堂
とても、読み応えのあるお話でした。
ちょっと長いけど…

ただ、お兄さんのやたら「ww」の多い口調は苛々します。
一見不真面目で人の話を茶化してばかりいるけど、いざとなったら頼りになる…みたいな、怖い話シリーズのステレオタイプをなぞっているのでしょうが、
なんか、好感が持てません。

っていうか、祖父の惨死もあまり悼んでいない、情の薄い一族なのですね。
[2755] 蛇の目堂の悪魔
これは私の家系に纏わる話で…
私が体験した中では一番やばかったお話です…


これは5年位前の事です…

私は前にも書きましたが機動警備の仕事をしてました…
いつも仕事が終わるのは朝の9時です。
仕事を終え…
家に帰ると兄から電話がかかってきました…
電話にでてみると…

兄「何か変わった事なかった?」

私「え?変わった事って?」

兄「いやね、亡くなった曾祖父さんが枕元に立って。
気をつけろ、皆気をつけろ、助けてあげてやってくれ、助けてあげてやってくれって言ってきたんだよ」

曾祖父さんというのは母方の曾祖父さんの事で私が小学生の頃に亡くなっていました。

私「んで何を気をつけなきゃならんの?」

兄「それが分からんしさ、亡くなった人が枕元に立つってちょっと気になるだろ?
だから皆に電話してたんだよね」

私「そっか…俺は別に何ともないよ…
曾祖父さんが助けてあげてって言ったなら、まず祖父さんに聞いてみたら?何か知ってるかもよ」

兄「俺も何か分かるかなと思ってさ、祖父さんに電話したんだよ…
そしたら別に何ともないし…
何の事か分からないって…」

私「そっか…」

兄「いちょう気になる人には手当たり次第電話したんだけど…
別に皆元気だし、問題無いんだよね…」

私「じゃあ兄貴の考え過ぎじゃないの?
只の夢とかじゃないの?」

兄貴「いや、夢とかじゃあないんだよなぁ…
ちゃんと起きてたし…
ちょっと普通じゃなかったんだよな…」

私「どんな風に普通じゃなかったの?」

兄「曾祖父さんが助けてあげてって言った後に。
皆の何を助けるの?って聞いたらさ…
突然鳥の羽音が聞こえて、そして子供の声が聞こえてさ…
子供の声で笑いながら…
うぬはどうだろうなぁ?って聞こえたんだよ…
そしたら曾祖父さんの首が落ちて地面に転がった」

私「何それ?めっちゃ怖いんだけど…」

兄「そうなんだよ、そして子供の声で…
うぬが一番かもなって聞こえてきて、そのまま曾祖父さんと子供の声が消えたんだよ」

私「そっか…なんか怖いけど全然分からんね」

兄「そうだよなぁ…でも祖父さんに曾祖父さんの首が地面に落ちて転がったって言ったらしばらく無言になったんだよな」

私「祖父ちゃんも怖かったんじゃないの?」

兄「う〜ん…そうかもな…でも祖父さんが一応皆に電話して大丈夫か聞いてくれって言ったんだよね…」

私「そうなんだ…何か心当たりあるのかな?」

兄「どうだろうね?」

私は電話をきり、そのまま風呂に入り直ぐに眠ってしまいました…
またその日の夕方6時から仕事の為…
少しでも寝たかったからです。

そしていつものように6時に上番して…
いつものように報告書を作り巡回警備の準備をしていました。

機動警備というのはセ〇ムやア〇ソックで有名なホームセキュリティの事ですが。
ユーザーの巡回警備等もあります。

巡回警備っていうと格好良く聞こえますが…
仕事の内容は人が居なくなったユーザーの建物の外周を見回り、機械警備を解除して内周を回って、ガスの元栓や窓や扉の施錠の確認をする事。
簡単に言えば戸締りの確認です(笑)

その日も普通に巡回警備をしていました。
場所はある専門学校。
昼間は有人警備なんですが…
夜になると機械警備になります。

私はいつものように外周を周り、鍵を使い玄関から中に…
機械警備を解除して、キーボックスからマスターキーを取り出し、巡回警備を始めました。

その日は何故かいつもと違う感じがしました。
上手く言えないのですが…
空気が張り詰めてると言うか、妙に緊張感がありました。

その専門学校は出来たばかりで、怪奇現象的なものは一切起きていないし、他のビート隊員(機動警備士)からも怪奇現象の報告はない所でした。

何故こんなに緊張感があるんだろ?と思いながら…
1つ1つチェック箇所をチェックしながら巡回していきました。

そして1階を全て巡回し階段から2階に上がった時です。
突然後ろから鳥の羽音が聞こえてきました…
一瞬何?っと思い固まりました…

なんぼ夜で静まり返っているとはいえ、それなりに広い学校…
外からの音はほとんど聞こえてきません。
一瞬何処か窓でも開いてるのかな?と思ったのですが…
羽音は直ぐ後ろから聞こえてきました…
何処か窓が開いていて鳥が迷い込んだのかな?とも思いましたが…
辺りを懐中電灯で照らしても鳥の姿は見えません。

しかし辺りは妙な雰囲気に包まれていました…
周りが霞んで見えるというか、歪んで見えるというか…

そして次の瞬間…
壁の中にポッカリと真っ黒い空間が出来て…
その中から着物を着た男の子が出てきました…

私は何コイツ?と思い、直ぐ警戒棒(警棒の警備版)を取り出し身構えました。

懐中電灯でその男の子を照らすと、何処から入った!?って声を荒らげて叫びました。
ハッキリ言って怖くて足がガクガク震えていたと思います。

すると、その男の子は…
「うぬの顔を見に来ただけだ、しかし震えておるのか? M家の人間にしては情けない、うぬでは持たんわ、ククク、もっとおらぬのか?」
と言って出て来た壁の黒い空間に戻って消えてしまいました…

私はしばらく放心状態でしたが。
なんとか巡回を再開して、学校の巡回を終わらせビート車に戻りました。

直ぐに近くのコンビニに車を走らせました。
とにかく落ち着ける場所に行きたかったからです。
コンビニに着いてコーヒーを買い、報告書を整理していました。

すると電話がかかってきました…
時間は深夜0時を過ぎてます、会社から何かあって会社の携帯にかかってきたのかな?と思ったのですが…

見ると自分の携帯に電話がかかってきてました。

電話にでてみると祖父ちゃんでした。
祖父ちゃんは興奮した声で…

祖父「ヤバイ事になったかもしれない、T(兄)に連絡がとれないけど、Tは寝てるのか? とにかくTがヤバイかもしれない、お前は夜の仕事だからお前になら連絡つくと思って、電話したんだよ…」

私「祖父さんどういう事?」

祖父「お前は知らなくて良い事なんだ、とにかく至急Tにお祖父ちゃんの家に来るように伝えてくれないか?」

私「別にいいけど、兄貴だって仕事があるし、祖父さん家遠いから、直ぐには行けないと思うよ」

祖父「悠長な事を言ってられない状態かもしれないんだ、直ぐにTをこっちに向かわせてくれ」

私「謎だけど解ったよ、兄貴が起きると思う時間に電話してみるよ」

祖父「頼んだぞ、お前は変わった事ないか?」

私「さっきあったばかりだよ、変な着物着た男の子が、黒い空間から出てきて、お前はM家の人間なのに情けないとか、お前じゃないとか」

祖父「何?本当か?」

私「冗談って言いたいけど本当だよ」

祖父「何故だ?お前ら兄弟はK子(私の母)の子なんだぞ」

私「そうだよ…それが?」

祖父「先にE蔵(母の兄で長男、私からみて叔父にあたる人)やE蔵の子供達なら話は解るが」

私「祖父さん、全然意味分かんないよ」

祖父「お前の前にも出たって事はお前もマズイ、お前もTと一緒にお祖父ちゃんの所に来い」

私「ちょっ!俺だっていきなり仕事休めないし、無理だよ」

祖父「いいから来い!大変な事になる、へたしたら死ぬぞ!」

私「どういう事?」

祖父「あれはM家の者、そしてワシらO(母の旧姓)家も元々はM家の人間、そしてあれはM家の汚辱なんだ、その汚辱を消す為にO家はM家を離れM家を名乗れなくなった」

私「サッパリ解らん…」

祖父「詳しい話はこっちで話す、とにかく2人で早く来い、旅費は全部お祖父ちゃんが払ってあげるから。
あとE蔵も呼ぶ、普通ならワシかE蔵が先になるはずだから」

私「解ったよ、なんとか休みとって向かう事にするよ」

普通なら断るのですが、普段祖父さんは私達孫を一度も怒った事はないし、孫の前では一度も声を荒らげた事等ありませんでした。
そんな祖父さんが声を荒らげて、真剣に言ってきてたので普通じゃないと思い、行く事に決めたのです…
そしてこれが最後に聞く祖父の声でした。

しかし、いきなり休み等とれる訳もないと思い…
会社に戻り、シフト表とにらめっこ(笑)
その日は仕事が終われば非番でしたが…
その後は普通に出番でした。

とりあえず朝6時まで待ち、兄に電話をしました。
最初兄もいきなり仕事は休めないし突然来いと言われても困ると言ったのですが…
少し考えて、なんとかしてみると言って電話をきりました。
私も8時位まで待ち、他のビート隊員やセンター員、元ビート隊員の現送(現金輸送)隊員の人に無理を言ってシフトを調整してもらいました…
理由は祖父さんがもうヤバイ、長い事ないかもしれないって事にして…

とりあえず4〜5日位は休める感じにしてもらいました。
用事が済次第直ぐに帰るつもりでしたが。
一応の事を考えて多めに休みを作ってもらいました。

兄もなんとか休みをもらったみたいで…
仕事を終わらせて直ぐに準備をして兄と一緒に兄の車で祖父の元へ向かいました。

私の祖父はA県に住んでいて、なかなか立派な日本家屋に住んでいました…
祖父の話では先祖は武将だったようで…
結構上の立場の人だったようです。

ですが先祖がA県に移り住んでしばらくして武士を辞め百姓になったようです。
それから何代目になるか分かりませんが、祖父も農家を営んでいました。
ですが祖父ももう農家を引退していて、誰も後を継ぐ人もいなく、婆さんにも先立たれ、祖父は広い家に一人で住んでいました。

私達は北海道に住んでいた為、
フェリーでA県に向かいました。
向かう途中、何回か祖父に電話をしたのですが繋がりません。

昨日あれだけ騒いでた祖父だったので、一度位兄に連絡してると思ったのですが…
兄の元には昨日の夜中に着信があったきり1度も連絡がなく、
兄からも何回か電話をしたのですが、一向に連絡がとれませんでした。

私達兄弟は祖父の詳しい場所は分かりません…
もう何年も前にお婆ちゃんの葬式以来、祖父の家には行ってませんでした。

手掛かりは母ちゃんから聞いた祖父の住所とE蔵叔父さんの電話番号だけ…
その住所をカーナビに入れて、それだけを頼りに祖父の家に向かいました。

途中E蔵叔父さんに連絡をすると、叔父さんも仕事を終わらせたら祖父の家に向かうという事でした。
叔父さんの家から、祖父の家まで車で1時間半位だと言っていました。

そして叔父さんとは祖父の家の近くのスーパーマーケットで落ち合う事になりました。

そのスーパーが国道に面しており、そこのスーパーが一番分かり易いという事でした。

スーパーに着いたのはすっかり夜になっていて、少し待つと叔父さんがやってきました…

スーパーから祖父の家まで車で10分位の所にあります。
元農家なので田舎のイメージがありますが。
周りにはそれなりに民家がありました。

祖父の家に着くと…
なんか凄い違和感がありました。
時間は夜の7時を過ぎています。
ですが…家の中真っ暗なのです…
なんぼ祖父でも寝るには早すぎます…

私「奥の部屋にでもいるのかな?」

兄「どうだろ?兎に角中に入ろ、疲れたよ」

私達は叔父さんと一緒に玄関の呼び鈴を押しました…
しかし祖父は出てきません…
玄関も施錠されていました。

兄「いないのかな?」

私「何処かに出かけてるのかもよ」

叔父「祖父さん携帯持ってないからなぁ…」

兄「とりあえず家電に電話してみるか」

私「呼び鈴鳴らしても出て来ないなら、電話しても一緒じゃない?」

兄が家電に電話しましたが…
家の中からは微かに電話の音は聞こえてくるのですが、人の気配はありません…

叔父「なんだよ、人を呼んどいて留守とは」

兄「叔父さんはいつ祖父さんから電話で呼ばれたの?」

叔父「夜中だよ、しかも一方的に来いって言って、その後何回か電話したけど繋がらなかったんだ」

とりあえず私達は玄関以外から入れる所がないか、探してみる事にしました。

私「こんな事なら懐中電灯持ってくれば良かったよ」

兄「まさか祖父さんが留守とは思わんからな、叔父さん合鍵とか持ってないの?」

叔父「もう古い家なんで、俺が家を出てから何回か鍵を替えてるはずなんだ、だから昔の合鍵はあるけど、今の合鍵は持ってないよ」

私達は手分けして入れる場所を探しました。
ハッキリ言って空き巣の気分です(笑)

すると裏口のドアを引っ張ると簡単に開きました。
私は兄と叔父を呼び、三人で家の中に入って行きました。

裏口から入って直ぐに、妙な臭いがするのに気が付きました…
なんか生ゴミと腐った油?を合わせたような凄まじい臭いが家の中に充満してたのです…

とにかく鼻を手で押さえ電気を点けながら家に上がり、祖父を呼びました、しかし祖父の返事はありません…

仕方ないので電気を点けながら茶の間に向かいました。

私「何だろこの臭い?」

叔父「分からん、嗅いだ事ない臭いだな」

兄「芳香剤だったりして、ジジィフェロモンシャワーみたいなw」

私「車の芳香剤みたいな名前付けるなよ…
誰も嗅ぎたくないし、誰も作らんだろ、しかもなんか服に臭い付きそう(泣)」

とりあえず臭いので窓を開け、祖父を待ったのですが、一向に帰ってくる気配もありません…

兄「祖父さん何処かでぶっ倒れてんでない?
この臭いでぶっ倒れてたりしてw」

叔父「本当臭いな…ちょっと待つのが辛いな、ちょっと家の中捜してみようか?」

私「そうだね、この臭いに耐えられそうもないし、ハエもやたら多いし、なんか嫌になってきた」

兄「ハエもジジィフェロモンシャワーに引き寄せられたか?」

私「芳香剤になってないぢゃん…」

私達は手分けして家の中を探索し始めました。

するとなんぼもしないうちに…

叔父「なんじゃこりゃ〜?」

という叔父さんの叫び声が聞こえたのです…

兄「何だ?撃たれたか?」

私「松田優作じゃないんだから…」

叔父は仏間にいました…

叔父「これ、これ、これ」

叔父はこれを連呼しながら部屋の角の方を指指してました…

見てみると…
そこには、どす黒い液体に包まれた、肉塊が転がっていました…

どうやら臭いの元はそれのようで…
何かの死骸というのは一発で解りました。
最初家畜か、何かの死骸だと思いましたが…

とにかく腐乱していて、血なのか体液なのか解らないけど、黒い液体が周りの畳に染み込んでいました…

そして頭らしいのは見えるのですが、なんか丸まった肉塊にしか見えない状態で、とにかく臭いが凄まじく、白や黒い虫がウネウネ動いていて、一気に気持ち悪くなり、直ぐに三人で家から飛び出しました。

そして直ぐに警察に通報したのです…
直ぐに警察が来てくれて、家の中に入って行きました…

肉塊はやはり人の死骸でした。
死後何日も経過してるらしく、死因は不明…
直ぐに肉塊は搬送され一応行政解剖をされたみたいでした。

私達は直ぐにその場で三人別々に事情聴取され、しかも警察署にまで連れて行かれました…

そして三人別々にまた事情聴取みたいな形で、何故祖父の家にいたのか聞かれたのです。

そして祖父が行方不明で連絡が取れない事。
夜中祖父から連絡あった事。
祖父からの着信履歴等も調べられました。

他にも色々大変でしたが三人はなんとか解放されました…
そしてあの肉塊が祖父の死骸だろうという事も言われました…

肉塊には祖父のメガネと入れ歯があり、昔膝を悪くして手術して膝に金具を入れた為、膝から金具が出てきた事等が、祖父と決定づけたみたいでした。
相変わらず死因は不明でした…

昨日の夜中まで生きていたハズなので…
そんなに腐乱したのは謎、
何かの原因で急激に腐敗したのではないかとの事でした…

私は死んで余り時間が経ってない、祖父の死骸に虫がわいていたのが気になり、聞いてみたのですが…

蛆虫は孵化するのに時間は余り関係ないそうで、幼虫の状態で生まれてくる蛆虫もいるとの事でした…
何点か納得のいかない事があったのですが…
祖父の死骸であろう証拠も何点かあったので納得するしかありませんでした…

そして直ぐに叔父は親戚一同に連絡をしていました。
そして菩提寺にも連絡をしたのです…

菩提寺にはお婆ちゃんが亡くなって以来行っていません。

叔父の話では菩提寺は建て替えられており。
もう前の所には寺は建っていないそうで…
住所も代わっているそうです。
そしてその新しい場所は元々祖父が所有してた土地だったそうです。

何で祖父の土地に寺を?。
と叔父に聞くと。
前の寺はもうかなりボロボロで、寺側から建て替える為に檀家の人に寄付を迫ったみたいでした。
そして祖父はかなりの額の寄付金と土地まで寄付したそうです。

そしてそこに新しい立派な寺が建てられたそうです。
何故祖父が土地まで寄付したかは分からないと言っていました…

とりあえず菩提寺に向かいました。
本当に立派な寺になっており。
お寺なのに怖い感じが一切しない小奇麗な建物でした。

親戚が続々と集まってきます。
もう何年も会ってない人もかなりいて、みんな思い思いの話をしています。

しかし祖父の死因や祖父の棺の中の死体の話になると、やはり言葉が詰まります。

ちなみに棺桶の中の死体は納体袋という袋に入れられ、なるべく腐らないように保冷剤等が入っているとの事でした。
そして棺桶の中は誰も見なかったように思います…

そして通夜の時、葬儀の時、何故か寺の住職はソワソワと落ち着かなくて…
ちょっとした物音にもビクビクしていていました…
しかも大した暑くもないのに常に凄い汗をかいていました。

叔母の一人が、体調が優れないと思い、「大丈夫ですか?」と
声をかけると、「大丈夫です」と言って手で汗を拭き取り、凄いぎこちない動きで、葬儀を進めていました。
誰が見ても普通ではなく、ハッキリ言って挙動不審でした。

それでも何事も無く、葬儀も一段落して皆で祖父の家に集まりました。

そして祖父の財産や祖父の家をどうするか等の話を皆でしていたと思います。
私と兄は興味が無く(どうせ私達まで財産なんて回ってこないからね)私はほとんど寝ていましたが、兄は祖父の家を探索して暇を潰していました。

そして財産の話が一段落した頃、通夜や葬儀の時は余り触れなかったのですが…
何故私達が祖父の家に呼ばれたかという話になりました…

ですが…
丁度そんな話をしようとした頃、菩提寺の住職さんが、訪ねて来たのです…
住職さんは神妙な顔で、大事な話があると言ってE蔵叔父さんと2人で皆とは別の部屋に入って行きました。

するとしばらくして叔父に兄と私が呼ばれたのです。
そして私達2人と叔父と住職で車に乗り、菩提寺に向かったのです。

住職は祖父の死に心当たりがあったのです。
住職の話では兄が曾祖父さんの夢を見た日、私達が祖父の家に来る前の日なんですが、その日に祖父が菩提寺を訪ねて来たらしいです…

そして一目散にあるお堂に向かったそうです。

元々菩提寺が建てられたのは祖父の土地でした。
そしてボロボロになった寺を立て直すのに、住職は私のお婆ちゃんが亡くなった時に祖父に寄付をしてもらえないか相談したらしいです。

するとある条件を呑んでくれたら多額のお金を寄付しても良いと言ってきたらしいです。

その条件というのはあるお堂を引き取って、管理していってほしいというものでした。

そのお堂というのは、新しい菩提寺の敷地内にあり、やはりそこも元々は祖父の土地でした…

だから新しい菩提寺は祖父の土地に建てたらしいのです…
そして祖父の死因ももしかするとそのお堂が原因でないかと言ってきたのです。

そのお堂については叔父も知っていました。
祖父から話だけは聞いた事があると、ですが本当にあるとは思ってはいなかったらしく。
叔父は一回も見た事がないと言っていました。
叔父が祖父の家から出ていく時にそのお堂の話をされたそうです。
祖父は叔父に農家を継いで欲しかったらしかったのですが…
叔父は農家を継ぐのが嫌で家を出たらしいのです。

その時に祖父はO家はお堂を管理していかないといけないと言って、叔父を引き留めたといいます。
ですが叔父はそんなの農家を継がせる為の作り話だと思ったそうです。

そして祖父には8人の子供がいたのですが…
男はE蔵叔父さんただ1人、あとは皆女でした…

そして七人の姉妹達も次々に嫁いでいってしまったようです。
気が付いたら祖父と祖母の2人しか残っていなかったみたいです…

住職は菩提寺のずっと奥まで車で走りました。
そこはもう森の中でした。

森の中に立派なお堂が建っています。
入口には巨大な丸のマークが書かれています。

兄「もしかして弦巻紋?」

住職「よくご存じですね…別名蛇の目紋です」

兄「歴史とか好きなんで」

私「何そのなんちゃら紋って?」

兄「家紋だよ」

兄は歴史が好きで戦国時代や三国志等結構詳しく…
よくそういう系のシミュレーションゲーム等を好んでやっていました。


兄「でもこのお堂は元々は祖父の物なんでしょ?」

住職「そうですよ」

兄「じゃあ何で蛇の目紋なの?うちの家紋、O家の家紋は向かい蝶のはずだよ」

私「そうなんだ…全然わからんかった」

兄「俺も母ちゃんの喪服についてた家紋見て初めて分かったw、母ちゃんに聞いたらO家の家紋だって教えてくれたんだよw」

住職「そうですね、確かにO家の家紋は蝶の紋みたいです」

兄「じゃあ蛇の目紋は誰の家紋なの?もしかして加藤清正?w」

私「加藤清正って蛇の目紋なの?」

兄「結構有名だぞ」

住職「説明するので、とりあえずお堂の中に入ってください」

そう言って住職はお堂の鍵を開け中に入って行きました…

中に入ってみて…
異様な雰囲気に絶句してしまいました…

お堂はそれなりに広く至る所に風車や人形等が飾ってあります…
そして中央に台があり、その上に1つの箱が置かれてるようでした…

そしてその四方には武者鎧が飾ってあります、4体共中央の箱の方を向いていて。
4体の鎧飾りの首周りには縄が巻かれていて、縄で4体が繋がっていました。
そして中央の箱にも縄が巻かれていて、その縄も4体の鎧飾りの首周りに巻かれていました…

兄「何ですかこれ?」

住職「あなたのお祖父さんの話では封印と言っていました」

兄「何を封印してるの?」

住職「O家の血筋の方だと聞きましたが」

兄「何故O家がO家の血筋の者を封印しなきゃならないの?、鎧飾りも全部違う蛇の目紋なんだね」

兄の話では鎧飾りに付いてる家紋は全て蛇の目紋なんですが、種類が違うようでした…
蛇の目九曜紋、蛇の目紋、三つ盛り蛇の目紋、すいませんあと1つ忘れました…
とにかく全て蛇の目紋だったらしいです。

そして住職は祖父から聞いた話を聞かせてくれました。

私の母方の名字はOです。
もちろん祖父の名字もOです…
ですがOの先祖の名字はMだったそうです。
何故名字を変えなきゃいけなかったのかというと…

昔M家は地位の高い武将だったそうです…
そしてM家の当主には三人の息子がいました。
長男、次男共立派な武士で戦でも功を立てていたといいます。

ですが問題が三男でした…
三男はまだ幼かったようで歳は10歳位だったそうです。
見た目は普通の子供だったらしいのですが…
これが魔の者に魅入られていたといいます。

というのは当時、町では夜になると魔の者に襲われて食われてしまうという噂があったそうです…

そしてこの三男の着物に度々血がべっとりと付いてる事があり…
三男も何故付いてるか解らないと言って首を傾げるばかりだとか。

そして遂に魔の者に襲われてる所を見た町人が、魔の者は綺麗な着物を着た子供で、刀で人を切っては切った人の生肉を喰らってたという噂を流してしまったといいます。

噂はあっという間に広がったそうで、それを聞いたM家の家臣達がM家の三男を疑って、三男を見張ったそうです。
すると夜になると刀を持ち出し屋敷を抜け出し、町人に刀で斬りかかったといいます。
直ぐに家臣達は三男を止めたのですが、子供の力とは思えない程の力で暴れたといいます。
ですがなんとか押さえ込んで、屋敷に連れ戻し、M家の当主に報告したそうです。

事の甚大さに気付いた当主は三男を屋敷に幽閉したそうです…
ですが、どうやって出たのか分からないのですが…
いつの間にか屋敷から出ていき、また町人を襲い生肉を喰らってたそうです…

流石の当主も恐ろしくなり家臣に三男はもう人間ではなく化け物だと言い、首をはねろと命令したそうです。

そして三男を斬首の刑にしたそうです。
ですが切られた首はしばらく暴れたらしく、「M家の人間を呪ってやる、M家を根絶やしにしてやるわ」と言って笑いながら転がり続けたと言います。

恐ろしくなった当主はその首を封印し、町を離れさせたといいます。
その時その首を持って町を離れたのがM家の次男だったそうです。
そして次男1人だと心細いので四人の家臣をつけたといいます。

その時に次男は何かあった時M家の名を汚さぬように、M家の名を捨てOと名乗るようになったそうです。
そしてこの四人の家臣が4体の飾り鎧の人だったといいます。
ちなみに四人のうち1人が三男の首をはねた人で蛇の目九曜紋の人だったそうです…

そしてA県まで渡った次男がお堂を建て、4体の鎧、正確には4体の蛇の目紋鎧で封印したそうです。

蛇の目紋には護符や御札の意味があるらしく、邪悪な者から身を守るという意味で蛇の目紋を家紋にする武士が多かったといいます。
あと当時は蛇信仰が盛んでそういう意味でも蛇の目紋は人気があったようです。

これがお堂が作られた理由で、O家の生い立ちでした。

私「首を切っても暴れるって、なんか平将門みたいだね」

兄「平将門ねぇ…首を切ったのは蛇の目九曜紋のやつだったんだろ?、偶然かねぇ」

私「何が?」

兄「平将門には繋ぎ馬紋って有名な紋があるんだよ」

私「関係ないぢゃん」

兄「繋ぎ馬は将門の時代にはまだなかったという説があって、死後将門の子孫、相馬家が好んで使ったのが繋ぎ馬紋なんだ…そして将門には色々馬と関わる逸話があって、それが家紋になったと、それでいつの間にか将門の家紋は繋ぎ馬紋になったらしい…
そして元からの将門の紋は九曜紋なんだよ、九曜紋と蛇の目九曜紋って似てるよね…」

私「でも違うんでしょ?」

兄「うん違うw、九曜紋は星紋、星の紋だよ、九曜紋の意味は九曜曼荼羅だったかなぁ…
そして蛇の目にはもう1つ意味があるんだよ」

私「どんな意味?」

兄「蛇は古代の言葉でカカと言ったらしい、んで蛇の目は蛇目、古代の言葉でカカメ。
カガミの語源とされてるんだよ。
鏡は色々な儀式に使用され、
蛇の目は全てを見通す力があるとされ、鏡と同一に見られたカカメは邪気を跳ね返す力や封印する力があるとされた」

私「なんとなく解った」

兄「九曜紋だった平将門、そのモドキの力を封印するのに蛇の目九曜紋を使用した、偶然かもしれないけどさ、なんか因縁がありそうだよね?
そして他の3人も全員蛇の目紋ってありえないと思うよ。
元々は他の家紋で、その将門モドキを封印するのに蛇の目紋に代えたんでないの?」

私「そんな家紋って簡単に代えれるの?」

兄「以外と家紋がコロコロ代わってる武将はいっぱいいるよ。
理由は様々だけど、有名武将を討ち取って、討ち取った証拠に相手の家紋をそのまま使用した武将もいるし。
家臣が功を立てて、褒美に自分の家紋を使用して良いと言った武将もいるし。
他にも個紋や私紋といった自分で自分だけの紋を勝手に作った人もいるからねw」

私「そうなんだ、なるほどねぇ」

兄「そして全然関係ないと思うけど、平家の人間は家紋に蝶の紋を好んで使った、O家も蝶の紋、これは本当に偶然だと思うけどねw」

私「偶然かもしれないけど何か因縁じみたものを感じるかも」

兄「ところで住職さん、何で我々をこんな所に連れてきたの?」

住職は少し考え込んで、語り始めました。
住職の話では…
兄の枕元に曾祖父さんが立った朝、住職はこのお堂の掃除をしていたらしいです。

すると突然お堂の中に大きな鳥の羽音が聞こえ、ビックリした住職は鎧飾りに巻かれた縄に寄りかかってしまい…
縄を外してしまったらしいのです。

するとお堂の中から勢いよく外に出ていくような鳥の羽音が聞こえたらしいのです。
住職は不思議に思いましたが、とりあえず縄を元通りにしたらしいのです…
そしてこれが全ての元凶かもしれないと語っていました。

というのは…
その日の昼近くに祖父がお堂に来たらしいのです。
祖父はお堂の鍵を持っているので自由にお堂には出入り出来たそうです…

そしてその後、祖父は住職の所にきて、凄い剣幕で…
「何故やつを出した?こんな事になるなら貴方には頼まなかった」
と言ったそうです…
住職にはイマイチ何の事か分かりませんでした。
というのも住職はお堂の封印はあんまり信じてなかったらしいのです。
昔からの言い伝え程度の考えだったみたいで。
だから住職はあの鳥の羽音とかも余り気にしてなかったようです。

そして祖父は家に帰り、再び封印する方法を考えると言って帰って行ったと言います。

そして祖父は色々調べたのでしょう。
その日の夜遅く私の兄に電話したけど繋がらなく、仕方ないので私に電話した。

そしてその後、祖父はあのような姿になってしまった…

そして住職の話ではそれだけでは済まなかったようです。

祖父が亡くなった後…
住職の身の周りでは怪異が続いたと言います。
住職の周りで常に鳥の羽音が聞こえたり。
誰も居ないのに凄い何かの気配を感じる事が多くなったそうです。

そして最悪の事態が起こったそうです。
住職には当時15歳になる娘さんがいました。
その子の様子が日に日におかしくなっていったそうです。

今まで明るかった子が無口になり、冷蔵庫に入れておいた、生肉をそのまま食べたりしてたそうです。

極めつけが野良犬を木の棒で殴り、生きてる野良犬にかぶりついたと言います。

流石の住職も怖くなり。
E蔵叔父さんに相談しに来たのです…

兄「でもさ、おかしいよね?
呪われるのはM家の血筋なんだろ?住職さんの家は関係なくね?」

私もそう思いました。
すると住職から凄い事を言ってきたのです。

住職の名字も同じOなのです。
住職の話だと、寺はもうかなりの歴史があるらしく、寺が出来てからの事は分かるけど、その前は分からないと。
繋がりがあるか分からないけど、近場に同じ名字というのは繋がりがあってもおかしくないのではと…
多分住職の家柄はO家の分家で遠い親戚に当たるのではないかとの事でした。
祖父もそのような事を言っていたそうです…
その事も有りお堂の管理を任せたのかもしれないとの事でした。
ちなみに住職の家の家紋は陰対し蝶、同じ蝶の紋で向かい蝶とは凄い似てました。

兄「マジかぁ、本家が農家で分家がお寺って凄いね、しかも分家の寺の檀家に本家が入るって…
世間は狭いねw」

そして今住職の娘さんは家の中に閉じ込めてるとの事でした。

私「んでどうするの?俺をこんな所に連れて来ても役に立たんぞ、何故連れて来られたかもイマイチ分からんし」

叔父「お前らは何か知ってるから祖父さんに呼ばれて来たんだろ?」

兄「何も知らんよ、こんな所に連れて来られて、住職さんの娘さんの話されても何も出来んよ」

叔父「じゃあ何故お前ら兄弟は祖父さんに呼ばれたんだ?」

兄「んなもん死んだ祖父さんに聞いてくれ、ただ危ないとか何とか騒いでたらしいよ。
大体このお堂や封印されてた化物については叔父さんの方が詳しいだろ!」

叔父「俺は若い時に家を出てるし、このお堂については、こういうお堂があるって話位しか聞かされてない!」

兄「じゃあ住職さんは?」

住職「私は亡くなったお祖父さんからお金の寄付の代わりにお堂の管理してくれって言われましたけど…
そんな本物の化け物がいるとは思わなかったし、寄付金につられて軽い気持ちでお受けしてしまったんですよ」

兄「祖父さんからは何か聞いてないんですか?」

住職「化け物の話はしてましたが…
只の言い伝えだと思い、この立派なお堂と鎧飾りを管理していけば良いと思ったんですよ。
そして封印の仕方や憑かれた人間の対処の仕方も言ってましたが…
憑かれた人はこのお堂で憑かれた人間を縄でどうにかするとかなんとか…
封印の仕方も聞いたのですが…
只の言い伝えだと思い、話半分にしか聞いてませんでした…
すいません…
だから本家の方達なら詳しいと思って訪ねたのです」

叔父「祖父さんは住職さんに全て任せたんだろ!
調べたら祖父さんは財産のほとんどを住職に寄付してたぞ…
あんな大金寄付するんだから何かあるって普通思うだろ?」

私「やめろよ!元を正せば本当は叔父さんがお堂を管理していかないとダメだったんだから、住職さんに当たるなよ」

叔父「……」

住職「私が悪いんですよ…」

兄「言い合いしてても解決しないんだから、どうすれば良いか考えようか」

そしてしばらく四人で無言で考えていました…
すると突然叔父が…

叔父「住職さん実は娘さん何かの病気じゃないんですか?
そしてお前らの見た者も目の錯覚だったんだよ」

兄「このごに及んでそんな事言うか…
M家の血筋全て呪うんだろ?
じゃあ皆祖父さんみたいにグチャグチャの死体になるか、良くて生肉喰らう化け物になるかもしれないんだぞ…
もっと酷い状態かも知れないし…」

叔父「……」

兄「住職さん、娘さんって霊感強い?」

住職「娘は昔から霊感は凄い強かったです…それが何か?」

兄「もしかしたらだけど、ちょっと解ったかも」

兄の考えはこうでした…
元々M家の三男に憑いた化け物は何故三男を狙ったのか?
当主や長男、次男の方が色々な意味で力があったはずなのに三男に憑依した。
それは多分人一倍三男は霊感があったんじゃないだろうかと…

そしてこのお堂の封印を余り信じてなかった住職を脅かし封印を解かした。
多分その位の事は出来たんだろうと…
そして新しく憑く人を探した…
多分曾祖父さんは兄が一番霊感が強いから兄の元に現れたんじゃないかと…

そして私も霊感があるので…
化け物はどの位霊感が強いか私の元にも現れた…

だけど、もっと強い人がいた…
それは分家の住職さんの娘さんだった…
霊感が強ければ化け物にとって何かプラスの事があるのではないかと考えたらしい…

私「じゃあ母さんは?母さんも霊感強いのに、母さんの元には化け物出てないぞ」

兄「ババアは嫌いなんだろw」

私「祖父さんが死んだのは?」

兄「封印とか対処の仕方を知ってるからでないの?」

私「じゃあ祖父さんがうちら2人を呼んだ理由は?」

兄「だから霊感があるし化け物を見てるし狙われると思ったんだろ、そして憑依されても祓う方法知ってたんでないの?
だから近くに置いておこうと思ったんだろ」

私「じゃあE蔵叔父さんを呼んだのは?」

兄「Oの本家だから、祖父さんは憑くのは本家の人間だけと勘違いしたんでないか?
あとは解らんw化け物に直接聞いてくれw」

とにかく私達は住職さんの娘さんを助ける方法を捜しました。
最初4つの鎧の人の子孫なら何か知ってると思ったのですが…
鎧の人については叔父も住職さんも何も知らないとの事でした。

次に考えたのが祖父の家にお堂や鎧の人について何か残っていないかと考えたのですが…
兄が祖父の家を大体探索済で、別に面白い物は何も出てこなかったと言っていました…
だからお堂の事等は口伝で伝えていったんでないかと…

ハッキリ言ってお手上げでした…
もう霊能者的な人に頼もうという事になったのですが…
住職さんが1度知り合いの霊能者の方に見せたら、私には手に負えないと言われて、顔が引き攣っていたらしいです…

兄「もうさ、住職さんのうろ覚えの記憶でなんとかするしかないんでない?」

叔父「失敗したらどうすんだよ」

兄「このままほっといても呪われる確率が高いんだから、失敗を恐れてはダメッスよw」

そう言って皆で住職さんの娘さんをお堂に連れて行く事にしました。
住職の奥さんにも協力してもらい、娘さんの部屋へ…

娘さんは寝間着姿でベッドに腰掛け、下を向いていました…
住職さんが声をかけると、顔を上げて不気味にニヤっと笑いました…
抵抗する感じも無く、無言で住職さんに連れられて車に乗りました。
住職の車はワンボックスタイプの車で、娘さんは叔父と奥さんに挟まれるように座らせました。
そして3列目に私と兄が座り、お堂に向かいました。

私「兄ちゃんさ、降霊術みたいの出来ないの?」

兄「何で?」

私「使えたらさ、先祖の霊を降ろして色々聞く事出来たかなって…」

兄「そうだなぁ…ユーキ〇ンで降霊術の資格取っておくべきだったなぁ」

私「そんな資格ねーし」

兄「ピッキングはユーキ〇ンで取ったんだけどなw」

私「ピッキングもねーだろ!」

お堂に近づくにつれ、娘さんが暴れ始めました…
叔父と奥さんで押さえるのですか、力が強いらしく私達も後ろから肩を押さえました…

そしてお堂に着きました。
娘さんは凄い暴れ続けてます。
そしてアーチ〇ネミーのアンジェ〇・ゴソウ並のグロウルヴォイスで叫び始めました…

まるで映画エクソ〇ストの世界です。
こんなの見たら本当に悪魔に取り憑かれたと思うでしょう…
いや本当に悪魔に取り憑かれていたのかもしれません。

無理矢理お堂に入れ、住職さんのうろ覚えの記憶通り、台の上の箱に巻かれてる縄を取り、箱をどかして娘さんを寝かせ、手足を押さえました。
そして蛇の目九曜紋の鎧と箱が繋がっていた縄を娘さんの首に巻きます。

その後のやり方は余り覚えていないそうで。
住職は一生懸命思い出そうとしていました。
奥さんはひたすらお経を唱えています…

私「この後どうするんだよ?」

娘さんは相変わらず暴れながらグロウルヴォイスで…
「苦しい、もう少しでこの娘は俺のものになるんだ、邪魔するなぁ」
みたいな事を言っていました…

私達も必死で押さえ付けるのですが…
体力が持ちません…
限界が近づいていました…

叔父「早くなんとかしてくれ、もう力が持たないぞ」

すると兄が突然…

兄「その娘を台に座らせて、他の三つの鎧の縄もその娘の首に巻け」

叔父「どうして?」

兄「いいから早く、そしてY(私)お前は箱を開けて準備してろ」

私「何の準備?」

兄「箱の中に封印するんだよ」

私は兄に言われた通り箱を開けました…
一瞬何か入ってるのかな?って思ったのですが…
中は空でした…
箱の底と箱の蓋の裏側には蛇の目紋が書いてありました。

叔父達は兄に言われた通り娘さんを台の上に座らせて、3体の縄を娘さんの首に巻いていきました。

すると娘さんはピクピクと体を震わせながら凄い苦しそうな表情をしています。

叔父「あんまり巻いたら殺しちまうんでないのか?」

兄「いいから、多分もう少しだ


すると娘さんは上を向き口を開けました…
その口から茶色い泡の様なものが出てきました…

兄「今だY、箱をその茶色い泡に向けろ」

私は兄に言われるまま娘さんの正面に立ち、その茶色い泡に箱を向けました。
するとその泡は箱に吸い込まれていき、箱の中に入ると泡は想像以上の重量があり、入った瞬間ズシンと重みが身体に伝わってきました。

兄「よし、蓋閉めろ」

私は言われるがまま蓋を閉めました。

兄「よしYそのまま箱押さえてろ。
あとは娘さんの首から縄を早く取って、縄を箱に巻き付けろ」

皆兄の言われるまま娘さんから縄を取って、私の持ってる箱にグルグルに巻き付けました。
すると箱の中で暴れてるのでしょうか?
お堂の中に鳥の羽音が五月蝿い位聞こえてました。

縄を箱に巻き付け終え、箱を台の上に置きました…
すると羽音は止んでいきました。

兄「これで終わったな」

すると娘さんの意識が戻りました。
娘さんはいつもの娘さんに戻ったらしく…
何故こんな所にいるのか解らない様で住職や奥さんの顔を交互に見て、何?何?何?と何を連呼してました。

私「兄ちゃん、よく封印のやり方分かったね?」

兄「俺もよく分からんけど、誰かが耳元で教えてくれたんだ」

私「ご先祖様かな?」

兄「いつの間にか降霊術でも覚えたかなw。
今ならユー〇ャンじゃなくても降霊術2級は確実に取れるなw」

私「だからそんな資格無いって…」

その後娘さんは普通に戻ったそうです。
住職さんはお堂はしっかり管理してるみたいです…

兄の聞いた声は結局分かりませんでした…
そしてあの化け物の正体も分かりません…
鳥の羽音が聞こえたので鳥の化け物なのでしょうか?
今でもお堂に封印されてる事でしょう。

これが私が体験した中で一番やばかったお話です…

終わり……


[2681] おぶさるおばあさん
朝のラッシュ時、駅のホームで電車を待っていると階段から降りてくる年老いた男性の背中にぴったりとくっついたおばあさんがいた。

その男性がR氏と同じようにホームの黄色い線の内側に立つと、いきなりレールが敷いてある凹みの部分からたくさんの黒い人の形をしたものがあらわれてその男性に近づこうとした。

瞬間、男性の背中にいたおばあさんが険しい顔をしたかと思うと強い光を放った。あまりの眩しさに目を閉じてしまいR氏が目を開けたときにはもう黒い人たちはすべて消えてしまっていた。

あの男性の背中にはまるで何事もなかったかのように何食わぬ顔をしたおばあさんがおぶさっていた。

あのおばあさんは多分あの男性の亡くなった身内か、守り神だったんじゃないかとR氏は言っていた。
[2665] 小人

江島氏のお子さんN実ちゃんは昔こんなものを見たという。

散歩の途中のこと、草村でN実ちゃんがしゃがんで何かと会話しているのを見た。

「誰とお話してるのかな?」

母親がN実ちゃんに近づきながらそう言うと、

N実ちゃんは、
「あーあ、小人サン行っちゃった。ママが大きな声出すから」

そう言った。

見ると草をカサカサッと音を立てながらかき分け、何かが去ってゆくのが見えた。

N実ちゃんが言うには体が透けたようになっていて帽子をかぶっていたという。
[2663] 後ろ向きの女性

何度も会っていたのに顔だけがどんなに思いだそうとしても思いだせない人が一人だけいるんです。女性だってことはなぜかわかるんだけれどそれ以外はわからない。

和田氏は昔家族で団地に住んでいた。

三階と四階の間にある階段の小さな踊場に女性が立っていた。
そんな光景をよく見かけていた。

いつも女性はこちらに背中を向ける形で角の部分に立っていた。
その立っている時刻っていうのは残業で遅くなる九時から十時の間なんだが、ある時に声をかけてみた。

「どうしたんですか?そんなとこで。具合でも悪いんですか?」

すると女性は、小さな声で少し間をおいて

「大丈夫です」

そう言った。

なんだか気持ち悪い人だなあと思ったが必ずそこを通るしかない。

また九時前後に帰ってきた。
三階の階段をのぼってゆくとやはりあの女性が立っている。
やはり後ろ向きでこちらに背を向けている

小走りで行っちゃおうと急いで四階への階段をのぼろうと階段に一歩踏み出した瞬間、

「ねえわたしの顔見たい?」

そう言われた。

とっさに「いえ」と返すと

「嘘。見たいんでしょ?」

そう言った。

「コイツ頭おかしい」

気にせず行こうとすると服をつかまれた。

三段目くらいをのぼったところだった。

振り返ると異様に長い手が自分の服をつかんでいた。

頭の中パニックになって、どうすればいいかわからない。
振りほどこうとしても尋常じゃない力でつかんでいて全然振りほどけない。

手をつかんで引き離そうとするんだが、手をつかんだらものすごく冷たかった。
まるで氷に触れているような感じ。

それで女性は、少しずつ少しずつ(ズッズッ)と近づいてきて、

ぐるんと顔をこちらに向けた。

瞬間、気を失ってしまった。

気づいたら、自分は踊場に立っていた。
時計を見たら団地に着いた時刻から一時間程過ぎていた。

服を見るとものすごい力で引っ張られたからかその部分が破けていた。

慌てて階段を駆け上り部屋に戻った。

不思議なことに団地の人たち(知り合いなど)はそんな女性は一度も見たことがないという。

確かに顔を見た筈なのに全然思いだせないし、考えてみれば服装も見ていたはずなのに全然思いだせない。

ただ女性ということだけが頭に強くインプットされている。
[2578] 振り向く女

やあロビンミッシェルだ。
皆、去年亡くなった昭和の猛者を覚えているだろうか?
そう、桑名◯博だな。
桑名と言えば引きこもりに始まり、矢沢と喧嘩したり、シャブ食ったり、未成年猥褻事件等々、何かと世間を騒がせてきた男だ。
前にも述べたが、俺には五つ年の離れた双子の妹がいる。

俺がまだ二十歳の頃、妹二人を連れて親戚が営む居酒屋に晩飯を食いに行った刹那、店の奥にある小上がり席から聞き覚えのある大きなダミ声が聞こえてきた。
柄の悪い、関西弁丸出しのその声の主はお気づきの通りセクシャルヴァイオレットだった。

ロ「お、芸能人!」

俺は素直にテンションが上がったが、妹達はなぜか桑名を見た瞬間、嫌な顔をして帰ろうと言い出した。
その理由を何度聞いても教えようとせず、しきりに上着の裾をグイグイ引っ張ってくる…
終いには夏美の方が泣き出す始末だった。
もう二人共ボコボコにしてやろうかと思ったんだが、最強の親父に見つかると倍返しにされてしまうので、そこはグッと堪えて店を出た。

ロ「なんだよ!サインぐらい貰わせろよ!」

密かに彼の生き方をリスペクトしていた俺は、滅多にないチャンスをみすみす逃してしまった事にかなりイラついていた。

夏美「もう、兄貴はやっぱ鈍感ね…
あの人の周りの空気ヤバかったでしょ!気付かなかったの?」

美菜「そうそう、桑名さんの前に座ってた女の人が特にヤバかったよね…?黒い霧?モヤ…?
なんか怨みって言うか、もっと邪悪な物感じたよね…」

夏美「同意同意!てか美菜気付いてた?
私達がお店出る時さ、あの女の人振り返ってずっと私達の方見てたでしょ!?」

美菜「嘘、キモ!」

夏美「なんかね、スッゴい笑ってたの…オェェッ…!」

突然えづき出した夏美を、同じ顔をした美菜が介抱している姿を見ていると何か薄ら寒いものを感じて冷や汗が止まらなくなってきた。
そう、俺には見えなかったんだ。
桑名を含め男性四人の姿しか…
チッ!
しかも振り返った女の体は向こうを向いていたにも関わらず、首がグニャリとあり得ない程に回っていたという。

俺はその後、用事を思い出したと嘘をついて逃げるようにパチンコ屋へと向かった事は言うまでもないだろう… 【了】

p.s (一卵性双生児の妹は兄の俺でも殆ど見分けがつかない。姉の夏美の口元にあるホクロが唯一の目印だ。
そして彼女達はガキの頃から完全に俺をナメている…)
[2554] ( ̄ー ̄)さん
また来てごめん、

僕がROMるって言ったのは、元々、ROM専で、ちょっと来たとき、りんごあめさんと喧嘩して(笑)、飽きたから(^_^)/~~ってした訳です。でまた今回顔出して、また飽きたから元に戻るだけです。

だから、( ̄ー ̄)さんまで、来ないとか言わないでください。僕が困りますよー。あなたのファン結構いるし。僕が恨まれちまいます。
わかりましたか!?残って、いい作品を載せてくださいよ!!

じゃーねー(^_^)/~~

[2553] ( ̄ー ̄)さん
覚えてるよ。面白かっただけで悪意は感じなかったから、のーぷろぶれむ♪

来なくなる必要も作品削除の必要もまったくないよ~ん!
[2550]
謝る必要もここを出ていく必要もない。
罵り合い叩き合うのが日常的なんだ、変に正義感振りかざす気などない。
俺が知ってる作者が根拠のないことで叩かれてるのを見かねて擁護した途端に( ̄ー ̄)でひやかしのコメントが入ったから覚えていただけだ。
重ねて言うが気にする必要はまったく無い。
[2544]
スマン最後に言わせてくれ…

確かに叩かれた人のコメント欄に( ̄ー ̄)で書き込んだ事は何回かある。
もうほとんど消えてるから確認出来ないと思うけど
でもその人を叩いてた訳じゃない…

ちょっとふざけた事やって、話をそらしてやろうと思っただけ…
俺は人を叩いたり批判をした事はない。
ただ( ̄ー ̄)のコメントがそう見えたのなら謝る…
そういう意味を含めて申し訳ありませんと言ったんだよ。

前から批判され続けられる人を見てられなかっただけだよ。

誤解を招いたなら謝る…
スマンかった…

これが本当に最後。
俺は別のサイトで頑張るよ。
[2523] 加奈
最後の2行でゾクッときました。ロビン・ミッシェルさんの作品は裏切られず、常に感じさせてくれるものがあるので大好きです。

亡くなった亜希子さんの話(タイトルが出てこなくてすみません)の作品コメント欄では、馬鹿な連中が糞コメントを書き散らかしてしまい、ごめんなさい。馬鹿たちに成り代わり謝ります。此処って、恥ずかしいけどこういうとこなんですよ。馬鹿でしょ?

これに懲りずにまた投稿してください。楽しみにお待ちしています!

ひひひ…ひ…。
[2522] 加奈
やあロビンミッシェルだ。
季節外れだがこんな話を用意した。
人の大勢集まる場所には色々な『物』も集まるようだ。
俺たちがただ気づいてないだけで、今君の後ろにも立っているかも知れないな。…ひひ…



「加奈ちゃん!ほらっ花火! 花火! 」

「うわーすごーい!!」

妻と娘の喜ぶ顔を見ていると、会社でのストレスなどアットいう間に何処かへと消えてしまうようだ…
ここの所、かなり仕事が多忙だった事もありこの夏祭り、花火大会へも正直あまり乗り気では無かったのだが、娘の愛くるしく無邪気な笑顔を見ているとやはり来て良かったなと思う。

先程、妻に頼まれていた焼きそばとイカ焼きを両手に持ちながら、夜空を指差しハシャいでいる2人の後ろ姿を眺めている俺。
微笑ましく、永遠にこのまま、いっそ時なんて止まってしまえばいいのにという気持ちになってくる。
年に一度の花火大会という事もあってか、今この場に街中の人間が集まっているんじゃないか?と思わせる程の賑わいをみせている。
沢山の出店が軒を連ね、この広いグラウンド一周をグルッと取り巻いていた。

ふと 先程立ち寄った店に視線を移すと、沢山の人々が行き交う向こう…
店と店との僅かな隙間に幼い少女が立っているのが見えた。
その子は身動きもせずにジッとこちらを見つめている。
すると急に周りの雑踏が一瞬にして消えうせ、何故か俺はその子から目が離せなくなってしまっていた。

息をのんだ

目の前を行き交う周囲の人間に対しその子は全く動いていないのだ 。
勿論ただジッとしているのでは無くまるで写真のように…
彼女だけが完全に『静止』してしまっている。
俺はすぐに気づいた。

『この子は生きていない…』

腰の辺りまで伸びた髪の毛はボサボサで 、着ている物も時代遅れな物だ。
靴も履いていないようで足は酷く汚れている。
あまりにも不自然で、そこだけがまるで別次元のように思えた…
だが不思議と恐怖心は湧いてこず、なぜか俺は彼女の傍に行ってあげたいと思った。
彼女を助けたい…
彼女の話を聞いてあげたいと云う感情が押し寄せてきて、気付けば目から涙が溢れていた。

俺は少女の方へと歩を進めていく。

しかしこのまま彼女の元へ行っても良いのだろうか?
なぜか後ろにいる最愛の家族、目に入れても痛くない程に愛している娘にもう二度と会えないんじゃないかと云う不安が襲ってくる…
しかし足は俺の思いを余所に、
一歩、また一歩と彼女の元へと進む。
相変わらず周りの雑踏などは一切聞こえず、俺は完全な『無音』の世界にいた。

とても悲しい目でこちらを見つめている少女…
人混みをかき分けながら進む俺の中で、少しずつ迷いが薄れていくのを感じた。
まるでビデオの一時停止のようにピタリと止まってしまった女の子の前に立ち、

「‥お嬢ちゃん‥ どうしたの? 」
と訊ねた。
すると体は静止したまま目だけがグルン! と上を向き、

『… … れる‥』

『… … てくれ‥?‥』

無音だった頭の中に突然かすれた少女の声が響いてきた。
俺は腰を屈め彼女の顔を覗きこんだ。
悲しみを浮かべたその真っ白な顔…
鼻頭と右頬には可哀想に大きな切り傷がある。
上唇はめくれ上がり、鼻の下の皮膚に引っ付いてしまっている。
両手にはケロイド状の酷い火傷の後が痛々しい。
本当に血が流れていないのが不思議なぐらいの深い傷だ…
彼女の切れ長の目だけがギョロギョロと動いているが、それ以外はやはり止まったままで未だピクリとも動かない。

「どうしたの?オジサンで良かったら何でも話してごらん?」

『‥あた‥パ‥にな‥く…る‥』

少女は全く口を動かしていないにも関わらず、頭の中に響いて来るその声…
すると少女の目が急につりあがり、座り込んだ俺の肩越し、俺の後ろ辺りを睨みだした。
振り返るとそこには娘の加奈が立っていた。
見ると加奈もこちらを睨みつけている…

「加奈‥どうしたの?」

「ダメー!!加奈のパパー!!」

凄い剣幕で叫ぶ娘。
その瞬間、今まで消えてしまっていた雑踏が嘘のように再び聞こえ始めた…
すると加奈は俺の背中に抱きつきその少女に向かって、

「加奈のパパとらないでーー!」

と号泣し始めた。
頭の整理がつかないまま再び少女を見ると、先程までとは比べ物にならない程の怒りに満ちた目で、めくれ上がった上唇から歯茎をむき出し、歯をギチギチさせながら娘を睨みつけていた。

「‥‥‥!」
しかしその姿は先程までとは違いゆっくりと左右へフラフラと揺れているようで、心なしか少し全体が透けているようにも見えた。

パパ‥ パパ‥
と俺の背中にしがみつきながら泣きじゃくる娘…

その時

『きゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!』

先程までの表情を一変させた少女は口を切り避けんばかりに大きく広げ、体を大きく震わせながら笑い続けた。

そして‥少しずつ‥ 少しずつ‥‥ その姿は‥‥ ‥‥光に溶けるかのよう‥に ‥‥ ‥消えていっ‥‥ た ‥‥‥ ‥






夜空ではまだ打ち上げ花火の音が響いている。

「加奈ありがとう…」

大勢の野次馬が見守る中、
俺は溢れる涙を抑える事が出来ず、強く我が子を抱きしめた。

すると加奈は一言こう言った。




『…ねえ…あたしのパパになってくれる? 』


【了】
[2392] ★毒論★
コメントありがとう。
今は買い手がついていない状態という意味です。
[2387] アトリエの窓
買い手が付かず困っている?
買っては売られを繰り返しているということは売れているのでは?
[2359] アトリエの窓
岡部さんという方に聞いた話をします。
岡部さんが以前、一軒家を買った。
その一軒家はとても変わったつくりで、二階へとのぼる階段が外に据え付けられている。
それも変わっているが、なんといっても一階の部屋は以前アトリエとしてつかわれていたらしいが、その部屋の窓は天井に届きそうなほど大きい。
最初はデザインが奇抜でとても気に入っていましたがある日からなんだかその窓に影が横切ったり誰かに見られている。そんな気がしてきたんです。
なんとなくその視線が悪意のあるというか、好意的な目ではなく邪悪なとでもいいますか、そんな視線。
ある時、その部屋で書き物をしているといつの間にか椅子に座ったまま寝てしまったらしく気づけばもう夜中の十一時を回ってました。
ちょっとトイレに行こうとして立ち上がった瞬間、あの窓から凄まじい視線を感じ、恐る恐る窓を見ると、夜の闇の中にぼうっと浮かんだ3つか4つくらいの光る丸い何かがふわふわと宙を漂っていた。
なんだと思ってちょっとずつちょっとずつ、近づいてみると緑色の光を放っているサッカーボールくらいの大きさの玉がふわふわと浮いている。
しばらく不思議そうに見ていたら、くるっと方向転換して丸い玉のひとつが回転した。
その瞬間、恐怖で体が動けなくなった。
なんと玉には顔があり、鷲鼻のような高くて、大きな鼻がついた男の顔があった。
そしてその男の顔をした玉は言葉を発した。
「入れろ」
そのとたん、全神経が反応したかのようにアトリエから逃げるみたいにして出ました。
そしてその後、その家は売りに出した。
だが、いまだに買い手がつかずに困っている。
聞くところによれば買っては売られてを繰り返しているらしい。
あの丸い玉がなんなのかそれは知らない。
[2357] 愛を求めた末に

やあロビンミッシェルだ。
これは五年前に実際に起こった実話だ。
正直、投稿するかかなり迷ったが、こういう悲しい生き方をした女性もいたという事を知ってもらいたくて投稿する事にした。
長い割に怖くないかも知れんが、付き合ってくれれば有難い。
(場所と名前は変えている)

その日俺はキャバ嬢や風俗嬢達が大半を占める、レディースマンションの302号室の前にいた。
チャイムを鳴らしノックをしたが応答がない。
仕方なく合い鍵を使ってドアを開けた。
足元を見るとハイヒールやブーツが所狭しと無造作に脱ぎ捨てられている。
廊下にもゴミやら服などが脱ぎ捨てられていて、ゴミ屋敷とまではいかないがとても女の一人暮らしとは思えない有り様だった。

ロ「おーい!亜希子!おるんか?あがるぞ?!」

昼間にもかかわらず向かいのリビングには電気が点いており、微かにだがテレビの音も聞こえてくる。
リビングを見渡すと廊下同様物で溢れている。
越して来てから一度も掃除してないのが見てとれた。