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【怪談】二鬼語り-ニモノガタリ-①/HN:こげ

二鬼語り-ニモノガタリ-/HN:こげ


私は心霊スポットと呼ばれる、各地で幽霊が出ると言われている場所を
休日などを利用して訪ねて廻ることを趣味としています。
ネットで知り合ったA君に
心霊スポット探検を数人の仲間とチームを組んでやっているから一緒にどう?
と誘われたのがきっかけでした。
深夜の山、海、湖、河川、廃墟、廃坑等…
怪異を求めて訪ね歩く…
遊園地などのアトラクションでは味わうことができない
保障も保険も安全装置もまるでない
全ては自己責任でギリギリのスリルを楽しむ
心霊スポット探検…
私は完全にはまってしまいました。



関東某県某市郊外に、その廃自動車教習所があります。
今回、私たちの探索する心霊スポットです。
突入メンバーはリーダーA君とB君、C君、D君、私で五人…

心霊スポット探検で、いつも集合場所にしている本屋さんの駐車場から
A君の車に乗り込み出発しました。
深夜の通りが少なくなった道路を走ること1時間…ありました。
下調べした通りの場所…車から下りた私達の眼前…
青銀色した月の下…鬱蒼とした林の中…金網フェンスに囲まれたその向こう…
総毛立つほど不気味な威容を浮かび上がらせています。
固く閉じられた鉄の門扉、開けられないように板が打ちつけられた上、
頑丈な太い鎖が巻きつけられてます。

よく見れば、敷地をぐるりと囲む緑の金網フェンスの上には
有刺鉄線がさらに二段、取り付けられ…

「そこまでしなくてもいいだろうに…」

廃墟になってから
後を絶たない侵入者に業を煮やした土地の管理者がやったのでしょう。
霊とは関係無しに…偏執的なハードウェア信仰的不気味さが…
戦慄となって私達の肌へビシビシと伝わってきました。

「要塞にでもする気だったのか…管理者…」

この自動車教習所は開校して間もなく資金繰りに困って潰れてしまったとか…
跡を継いで営業する者も無く、土地の買い手もつかず廃墟となり
そこからは何処も同じ運命…
暴走族の集会に使われたり、肝試しが忍び込んだり、サバイバルゲームに使われたり…
悪質でバックがアレな産廃業者によって最終処分場にされたりして…
一人前の立派な不気味な噂を纏う廃墟の完成となりました。

ただ、ここは他の廃墟と違いまして
捏造された殺人事件を持つ過去などなく…
ちゃんと凄惨な殺人事件が起ったのです。
若い女性が元交際相手だった男性によって二階の一室でめった刺し…
特に腹部を念入りに…切り裂かれて殺された…とか…

「容疑者の元交際相手は逮捕時に錯乱してたとか、極度の興奮状態にあったとか…
 その後、報道がぱったりされなくなったんだよな、なんでか知らんけど」

「次から次へと凄惨な事件が起きるから、最後までそれを追うなんてまずないよな」

覚えていたのは物好きなオカルトマニア…
忘れられないのは惨劇が起きた土地と付近の人々…

事件の後、夜な夜な廃墟を訪れる人間が血まみれの若い女性の幽霊を
目撃したという噂がまことしやかに囁かれ…
こんな民家から離れた寂しい場所に…それも夜に…来て見ちゃう人って…

見た人の中に…いますよね絶対…
私達みたいに心霊スポット探検をしている同好の方が押しかけて…
見ちゃったんですよ!その幽霊を!!
見た人がいるのに、私達は見ていない事実…
く、悔しいじゃないですか!羨ましいじゃないですか!
見たいです!見たいのです!血まみれの女性の幽霊が!!
死者を悼むとかそんな殊勝な気持ちはまったく無しの
幽霊を見たいだけ!
己の好奇心を満足させたいだけ!
住居侵入でしょうが、器物損壊でしょうが…そんなの厭いません。
今からやります!
そして、見るのです!
血にまみれた女性の幽霊!!
本当に…どうしようもない人間ですよね。
私たちって…



軍放出品のワイヤーカッターで金網フェンスを切断し、
入り口を作って敷地内へ侵入…
受付フロアの出入り口に打ち付けられていたベニア板を剥がして
建物の中へ潜り込みました。
それから、一階部分を隈無く見て廻りましたが…
何者とも遭遇すること無く、異変に見舞われることもありませんでした。

「やはり二階…だな」

期待と不安と恐怖に胸をドキドキさせながら、
私達は殺人事件が起きたという上階へと向かいました。
見上げると、階段の踊り場にある窓もベニヤ板によって塞がれてます。
一階部分は窓という窓のガラスが割られて、代わりにベニア板が張られて真っ暗闇でした。
A君B君の先頭二人が懐中電灯で進行方向を照らし、
最後尾のD君が後ろを警戒しながら階段を上っていきます。
私達が持つ懐中電灯は軍隊や警察が御用達という強力な輝度を誇るもので、
眩い光が闇という闇を払拭していきます。
なんて言いますか…明るすぎて暗闇を怖れる根源的なものが消えちゃうくらい。

階段を上り終え…ついに二階へ到着…
角を曲がりますと…真っ直ぐ奥へ伸びる廊下…
左手には座学で使われた教室が並んでいるのが見えました。
逸る気持ちを抑え…まずは一番手前の部屋から見ていくことにします。
出入り口の引き戸は内側へ向かって倒れ、
割れたガラスが床に散乱してました。
椅子と机は二段に積まれ、部屋の片隅へ寄せられてます。
窓はガラスが全て割られてましたが…
ここは例外らしく、板は張られず青白い月光が射し込んでいます。
懐中電灯がいらないくらい明るいです。
床に散らばったガラスの破片が光を反射してキラキラ光ってます。
室内へ足を踏み入れ、
五分ほど異変が起きないものかと待ってみましたが…何事も起こらず
隣の部屋へ移動することにしました。

次の部屋も違うのは窓が板で塞がれているだけで…異常は見られませんでした。
実はここが…殺人事件の起こった部屋なんですけど…
仕方ないので二階の部屋を全て探索してみて…
それで、何も起こらなかったら
またここ…殺人事件が起きた部屋へ戻ってこようとなりまして…
廊下へ出た…その時でした。
私達の耳にガラスを踏み割りながら歩く…足音が聞こえてきたのです。

「どこから…だ?」

「ここじゃないな…最初に入った部屋からだ…たぶん」

「階段上がってすぐのところだな」

私達以外に誰か人が入ってきたのか…もしくは…ついに…

「足音は一人分だな…靴は履いてるな…
 しかし、こんな時間に…こんな場所へ一人で来る勇者いるか?」

メンバー五人は、ここに全員揃っています…
私達から僅かに遅れて入ってきた人が絶対にいない…とは限りません。
まだ、足音が聞こえてきます。
あの部屋から…立ち止まることなく…

「行って確かめてみる…しかないよな?」

「ああ」

「本当にらしくなってきやがった♪」

男性四人が顔を見合わせて頷き…次に、私の意思を問おうと無言で見つめてきました。
幽霊を見に来て退くなんて考えられません。

「行きますよ、もちろん!」

あのガラスを踏み割る規則的な足音…
聞いてるだけで恐怖と期待で背筋がゾクゾクしてきます。
A君、C君、D君、私、最後にB君の順番で息を潜めて足音を殺し、
廊下を殺人事件が起きた部屋の前を通過、階段脇の部屋の入り口手前まで戻ります。
A君達の後姿に緊張が漲るのがはっきり分かりました。
ここから先…
踏み砕かれるガラス片…
足音はまだ、中から聞こえてます。
壁際からそぉっと、懐中電灯は使わず…A君が部屋の中を覗きこみました。
途端、足音がピタリと止んだじゃないですか!?

「気が付かれたか!?」

「中は真っ暗で様子が分からん。
 さっきまであんなに明るかったのにな…雲でも出てきたか?」

A君は懐中電灯を点灯させて室内を照らし…中の様子を探ります。

「マジで中には誰もいないな…」

「確かに部屋の中を歩く足音が、ついの今まで聞こえてたのに…」

全員、我慢できなくなってA君の肩越しに部屋を覗き込みました。
あ、本当です。誰もいないし…窓は…窓の外は黒い板を張ってあるみたいに真っ黒…

「あれ?本当に板が張られてるじゃん、窓」

月光が差し込んでいた筈の…
懐中電灯に照らされ、床に散らばるガラス片がきらりと反射して眩い光を放ってます。
私達は言葉をなくして立ち尽くしてしまいました。
あんなに盛大にガラスを踏み割る足音がしていて…
部屋を覗き込んだ瞬間に…
消えた…

「と言うことは…確実に誘い出されたな、俺達」

A君が乾いた声で呟きました。

「殺人現場はこの部屋じゃないだろ?」

「ああ、二番目の…俺達が今までいた部屋だ」

ネット検索して出た…ここの突レポをいくつか読みましたが
階段を上って二番目の部屋だとありました、二番目の部屋だったと…
それがなぜ、最初の部屋…

「おい、殺人事件現場の部屋へ行くぞ!」

「どういうことA君!?」

慌しく私達は殺人現場となった二番目の部屋へと戻ります。
床に散らばるガラス片…部屋の隅へ片付けられた机と椅子…
窓からは青白い月光が差し込んでます…今度はこっちの部屋の窓が…開いてます…

「やっぱりだ!これで俺達は完全に嵌った!」

「え!?ええとそれはどう言う…」

「脳に正確な視覚情報が伝えられなくなっている。
 たぶん、俺達は霊に憑かれた…」

憑かれた…憑依現象…私が?
急に部屋の温度が下がったような寒気を覚え…全身の毛が逆立ちました。

「風?」

部屋の入り口から冷たく湿り気を帯びた風が…吹き込んで…く…
いえ、風じゃないです…部屋の外にいる何者かが放つ緊張感…
押し殺したような息遣いのような…
見られてる…感覚…
冷たく…凍てつくような視線…悪意を持った…
部屋の外…廊下を見ることができません。

「ヤバイ…エラいもんがすぐそこに立ってるぞ!」

「すげえプレッシャーだ、霊の域を軽く超えてる…おっかなくて小便ちびりそうだ」

さすが…全員、気がついてます。

「で、どうする?」

A君とB君が私達にも聞き取れるくらいの言葉を交わし合ってます。

「振り返らず、前の出入り口から速やかに逃げることにしよう」

「見たら確実に固められる…半分くらい鬼になってるぞアレ、逃げる方に一票だ」

「まさしく鬼だな…恐怖に飲まれたらアウトだ、今すぐ脱出するぞ!」

「ヤバい!入ってくる!!」

「C!先頭を頼んだ!無事に逃がしてやってくれ!!」

鬼気というのでしょうか…ものすごい嫌な感じが一気に膨らみました!

「行け!俺達が時間稼ぎするから!!」

C君が私の手を掴んで引っ張るように走り出しました。

「はわわわわわわわわわわわわ!」

目指すはもうひとつの出入り口…けたたましく床を蹴る足音!
他の三人も私達の後を追って逃走を開始した模様です。

「すげえ、なんて怨念だ!」

「直視するなよ!手持ちの塩はこれで打ち止めだ!!」

A君とB君が叫んでいるのが聞こえました。
清めの塩を撒いたみたいですね。
私のすぐ後を走ってるのはD君?

私は腕が抜けるくらい強い力でC君にひっぱられて…もうすぐ戸口へ辿り着きます!

「見繕ってる暇無いから適当に御札撒くぞ!?」

「やれ!!」

廊下へ出ました!懐中電灯を進行方向に向ける余裕なんてありません!
真っ暗な廊下を脇目も振らずに一目散!
この奥にあるもうひとつの階段を目指して走ります。

「C!階段下りたら受付に戻らず、教習コースへ出るドアから外に出ろ!」

お願いだから!皆無事で帰ろうね!!
廊下の突き当たりに着きました!
左折!か、階段の下りです!!

「C君!ゆっくり!ゆっくり!私転んじゃうよ!?」

「老眼の婆さんかお前は!?姫抱っこで運んでやるから止まれ!!」

「それは絶対に嫌!!」

「体重、気にしてる場合じゃねぇぞ!?」

「体重とか言うな!!」

真っ暗な階段をC君に腕を引っ張られて何段も飛ばして駆け下りたときなんて
絶対、転んじゃうと思いました!
こ、転んだ方が姫抱っこされるより数億倍マシです!!

「一階着いた!」

「早く外出ろ!外!!」

三人が追いついてきて団子状態…せ、背中押さないでください!
近くにあったドアを力いっぱい押し開き、教習コースへ出ました!

「止まれって言うまで走れ!」

『Sir,Yes,Sir!!』

き、筋肉が悲鳴をあげてます!走るとか、運動なんて普段からしないもん私!!
建物から十メートルくらい離れるまで走って、やっとA君が止まれと言ってくれました。
へたり込みそうになるのを堪え、息を整えようと努めます。
また走ることになるかもしれませんし…それに敵地ですもの…
く、苦しい…息が上がって、身体が熱くて…全身から汗が噴き出てきました。
喉がカラカラに渇いてざらざらとヤスリをかけるよう…身体を深く折って喘ぎます。
明日は絶対に筋肉痛だよ…

「ふ、ふ…二人いた…な…女…」

「ゼェ…ハァ…一人は胸から腹から…ハァ…下半身まで服が黒く染まってた…」

すぐ横でA君とB君も疲れきって、今にもしゃがみ込みそうな様子です。
あの悪意の正体…見たみたいですね。

「部屋に遅れて入ってきたヤツ…アレは更にやばかった!
 顔から服から返り血を浴びたみたいで…どす黒く染まった手に…包丁…持ってた…」

息を荒くつきながら、
A君とB君があの時、何をみたのか私達に教えてくれました。

「包丁女の…あの形相…凄かったな」

「血まみれの方も負けず劣らずだったぞ」

え…どういうこと?

「だけど…なんで二人…なん…だ!?」

「分からん…ここで死んだのは女性一人の筈…だよな…」

青白い月が高空より煌々と私達のいる地上を照らしてました。
教習コースは茫々とした草原になっていて、所々に信号や標識が顔を出してるのが見えます。

「包丁…女性を殺害したのは男…だよな?」

「ああ、そうだ」

「でも、あれは…女二人で殺し合いをしましたって感じだったな…」

「こ、殺し合い!?」

「階段からすぐの部屋…たぶん、あそこで女二人は出会って…待ち合わせか?
 そして、諍いが激化して…お互いが忍ばせていた獲物を持ち出して殺し合いに発展…
 隣の部屋へ片方が逃げたが追いつかれ殺された…という流れか…」

「ここで腹割かれて死んだのが元交際相手の女性だったよな…もう一人の女は…誰だ?」

彼らが目撃したものと…事件報道の内容にかなりの差異があるみたいです。

「新聞記事やテレビの報道と違った真実っていう代物が…
 隠されてるのかも知れないな…ここに…」

「反復報道されずに消えた理由…」



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