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【怪談】加奈/HN:ロビンM

加奈/HN:ロビンM


やあロビンミッシェルだ。季節外れだがこんな話を用意した。

人の大勢集まる場所には色々な『物』も集まるようだ。俺たちがただ気づいてないだけで、今君の後ろにも立っているかも知れないな。…ひひ…



「加奈ちゃん!ほらっ花火! 花火! 」

「うわーすごーい!!」

妻と娘の喜ぶ顔を見ていると、会社でのストレスなどアットいう間に何処かへと消えてしまうようだ…

ここの所、かなり仕事が多忙だった事もありこの夏祭り、花火大会へも正直あまり乗り気では無かったのだが、娘の愛くるしく無邪気な笑顔を見ているとやはり来て良かったなと思う。

先程、妻に頼まれていた焼きそばとイカ焼きを両手に持ちながら、夜空を指差しハシャいでいる2人の後ろ姿を眺めている俺。微笑ましく、永遠にこのまま、いっそ時なんて止まってしまえばいいのにという気持ちになってくる。

年に一度の花火大会という事もあってか、今この場に街中の人間が集まっているんじゃないか?と思わせる程の賑わいをみせている。沢山の出店が軒を連ね、この広いグラウンド一周をグルッと取り巻いていた。

ふと 先程立ち寄った店に視線を移すと、沢山の人々が行き交う向こう…店と店との僅かな隙間に幼い少女が立っているのが見えた。

その子は身動きもせずにジッとこちらを見つめている。すると急に周りの雑踏が一瞬にして消えうせ、何故か俺はその子から目が離せなくなってしまっていた。

息をのんだ。

目の前を行き交う周囲の人間に対しその子は全く動いていないのだ。勿論ただジッとしているのでは無くまるで写真のように…彼女だけが完全に『静止』してしまっている。

俺はすぐに気づいた。

『この子は生きていない…』


腰の辺りまで伸びた髪の毛はボサボサで 、着ている物も時代遅れな物だ。靴も履いていないようで足は酷く汚れている。あまりにも不自然で、そこだけがまるで別次元のように思えた…

だが不思議と恐怖心は湧いてこず、なぜか俺は彼女の傍に行ってあげたいと思った。彼女を助けたい…彼女の話を聞いてあげたいと云う感情が押し寄せてきて、気付けば目から涙が溢れていた。

俺は少女の方へと歩を進めていく。しかしこのまま彼女の元へ行っても良いのだろうか?

なぜか後ろにいる最愛の家族、目に入れても痛くない程に愛している娘にもう二度と会えないんじゃないかと云う不安が襲ってくる…しかし足は俺の思いを余所に、一歩、また一歩と彼女の元へと進む。

相変わらず周りの雑踏などは一切聞こえず、俺は完全な『無音』の世界にいた。とても悲しい目でこちらを見つめている少女…人混みをかき分けながら進む俺の中で、少しずつ迷いが薄れていくのを感じた。

まるでビデオの一時停止のようにピタリと止まってしまった女の子の前に立ち、

「‥お嬢ちゃん‥ どうしたの? 」

と訊ねた。

すると体は静止したまま目だけがグルン! と上を向き、

『… … れる‥』

『… … てくれ‥?‥』

無音だった頭の中に突然かすれた少女の声が響いてきた。俺は腰を屈め彼女の顔を覗きこんだ。

悲しみを浮かべたその真っ白な顔…鼻頭と右頬には可哀想に大きな切り傷がある。上唇はめくれ上がり、鼻の下の皮膚に引っ付いてしまっている。両手にはケロイド状の酷い火傷の後が痛々しい。本当に血が流れていないのが不思議なぐらいの深い傷だ…

彼女の切れ長の目だけがギョロギョロと動いているが、それ以外はやはり止まったままで未だピクリとも動かない。

「どうしたの?オジサンで良かったら何でも話してごらん?」

『‥あた‥パ‥にな‥く…る‥』

少女は全く口を動かしていないにも関わらず、頭の中に響いて来るその声…

すると少女の目が急につりあがり、座り込んだ俺の肩越し、俺の後ろ辺りを睨みだした。振り返るとそこには娘の加奈が立っていた。見ると加奈もこちらを睨みつけている…

「加奈‥どうしたの?」

「ダメー!!加奈のパパー!!」

凄い剣幕で叫ぶ娘。その瞬間、今まで消えてしまっていた雑踏が嘘のように再び聞こえ始めた…すると加奈は俺の背中に抱きつきその少女に向かって、

「加奈のパパとらないでーー!」

と号泣し始めた。

頭の整理がつかないまま再び少女を見ると、先程までとは比べ物にならない程の怒りに満ちた目で、めくれ上がった上唇から歯茎をむき出し、歯をギチギチさせながら娘を睨みつけていた。

「‥‥‥!」

しかしその姿は先程までとは違いゆっくりと左右へフラフラと揺れているようで、心なしか少し全体が透けているようにも見えた。

パパ‥ パパ‥

と俺の背中にしがみつきながら泣きじゃくる娘…

その時

『きゃはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!』

先程までの表情を一変させた少女は口を切り避けんばかりに大きく広げ、体を大きく震わせながら笑い続けた。

そして‥少しずつ‥ 少しずつ‥‥ その姿は‥‥ ‥‥光に溶けるかのよう‥に ‥‥ ‥消えていっ‥‥ た ‥‥‥ ‥





夜空ではまだ打ち上げ花火の音が響いている。

「加奈ありがとう…」

大勢の野次馬が見守る中、俺は溢れる涙を抑える事が出来ず、強く我が子を抱きしめた。

すると加奈は一言こう言った。



『…ねえ…あたしのパパになってくれる? 』


【了】



2013年12月24日(火) 02:39
ロビンM ◆eBcs6aYE
※天通の投稿広場より掲載
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コメント

[2581] サンクス
やあロビンミッシェルだ。
丁寧な感想有難う。
因みに作中の人物は仲間の直也の体験談だ。
俺はこの話を聞いた時、夢でも見てたんだろ馬鹿!って冷やかしたんだがアイツの目はマジだったよ…ひ…
加奈はもう中学生になったが、俺の妹達同様見える派のようだ。
家に遊びにくる度に妹達と怪談話をして盛り上がっている。
俺は混ぜて貰えないんでドア越しに盗み聞きしている事はここだけの内緒だ。…ひひ…
[2576] すみません
最優先について。ロビンさんはいつもそうしているのだろうけど。でも例えば、変な夢みた時に、頬っぺたつねるみたいな。巻き込まれない練習は日常生活でも役にたちます。
[2575] 取り敢えず
御無事でなによりです。ラストの加奈お嬢さんの言葉は、その幽霊が言わせた威しかもしれません。生死関わらず、手管を持っている存在はいますから。ハニートラップなホストにホステス、詐欺な商社マン、そして憐れみを誘う風体の子供。その子はパパが欲しくて、気付いてくれたロビンさんに狙いをつけたのかも知れないけど…連れていってますよ、以前にも多分、数人。で、誰もパパになんてなってくれない、当然。ロビンさんはワル振っても優しい人なのだと思うけど、今一番守りたい奥様と加奈お嬢さんを、そういうヘンな事態の時に最優先するべきですね。ナマイキごめんなさい。次回作楽しみです。

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