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【怪談】川の上のアパートと困った人達/HN:こげ

川の上のアパートと困った人達/HN:こげ


ある土曜日の夜、
心霊スポット探検チームのメインメンバーが足繁く通うおもちゃ屋さんの閉店後、
私を入れた心霊スポット探検チームのメンバー5人と常連のお客さん5名、
それに店長さんと奥さんが混じって怖い話をしてました。
午前0時を過ぎた頃、この近辺で一番怖い心霊スポットはどこか?という話題に移りまして…
『××川の首吊りの木』『××産婦人科の廃墟』『××の切り通し』『廃ユースホステルの13号室』
私でも聞いたことがある地元で有名なスポットが登場して、
だいたいその辺が最恐だよねーとか、皆さん実際に行った時の体験談で盛り上がってました。
店長さんも常連のお客さんも行ったことあるんですね…
私は心霊スポットなんてチームに入るまで行ったことないから話に加われなくて…
作りかけだったHGUCシリーズ『MS-07B』通称『グフ』を
つまりはガンプラ(ガ●ダムのプラモデル)を組み立てながら聞き専に徹します。
なぜ『グフ』を作るのかといいますと、
先々週、お店を訪れた時にガンプラを作ってみたいと店長さんに相談したところ、
店内にいる皆さんが口を揃えてHGUCシリーズ『MS-07B』を作るべきだと
仰るものですから…
まぁ、ラル様格好良いおじ様ですし、彼の乗機である『グフ』好きですし♪
ノリス大佐の『B3』も格好良いのですが…グフの基本はやっぱり『B』タイプですよ♪
そういうことで『グフ』に決めたのです。
それからですけど、
常連のお客さんが私の事を『大野さん』って呼ぶようになっちゃったんです。
私の姓って『大野』じゃないんですけど…

あ、なんか皆さん静かになってきました。
ネタが尽きてきた模様です。
そこで私のグフの左脚を組んでくださってた店長さんが
「うちのすぐ裏手にあるアパート、結構凄いことになってるの知ってるか?」
なんて言い出したんです。
チームのメンバー誰も知らなかったみたいで、常連のお客さんも聞いた事が無い…
もちろん、私も初耳です。近所の有名どころを知らないくらいですもん
街中なら噂くらいは伝わってきて良さそうなんですけど…
ということで、
店長さん、ドヤ顔で件のアパートについて語りだしました。



店長さんは夜に町内の見まわりをする自警組織の長を務めてまして、
ある夜、店長さんは同じ見回り当番になった男性二人と件のアパートの前を通りかかると
照明ひとつ点灯していない二階の一室…ベランダに面した窓が全開になって
カーテンが外に向かってバサバサと大きく翻っているのを見つけたそうです。
全ての部屋に照明が灯っておらず…階段や通路にある常夜灯も消えていて
まるで廃墟のような様相…
背中に薄ら寒いものを感じつつも…これは異常だと…
店長達は強盗にでも押し入られた可能性だってあると考え
もう少し近づいて様子を見てみることにしました。
アパートの駐車場を抜けて建物へと向かう三人…
一階にある部屋は四つで、
内二つは雨戸がきっちり閉まっていて、残り二つはカーテンもなく
懐中電灯で照らすと中は…屋外よりも濃い闇で満ちて
とても、人が住んでいるとは思えなかった…そうです。
二階も人がいる気配がまるでない…
以前、夜警で通りかかった時には煌々と明かりが灯り
生活感が感じられたというのに…意識を過去へ向けた店長…そこに
「お、おい!」
仲間の一人がいきなり店長の肩を掴んで、ここから早く立ち去ろうと促すのだそうです。
とても緊迫した声音…語尾が震えているし…
「どうした?」
「いいから行くぞ!」
なにやら不吉なものを感じ、店長は仲間と急いで敷地から出たのだとか。
それで、店長にアパートから離れるように言ったお仲間さん…
彼が何を見たのか…なのですが
一切、その件に関して語らないんだそうです。
あそこはヤバいから、もう絶対に近寄るなと言うばかりで…
それで店長さんが気になって調べてみたら…
築三年で現在は入居者無し、出来た当時は入居者で全室が埋まったのですが
あっという間に引き払う人続出して、
二三日したらここには住めませんと出て行く人なんてざらで、
家財道具そのままに失踪する人間まで出てくる始末…
建物自体も築三年とは思えない程の傷み様で、誰が見ても築二十年くらいの年季を感じるとか
入居者が頻繁に入れ替わるだけでなく管理者も変わり、
身元の怪しい外国人に貸すようになりましたが、居つく人はまるで無し
さらに土地の所有者がどーにかなったとか、アパートを建てた業者が悲惨な事になったとか…
簡単に言っちゃいますと、よく怖い話にありが…
『居』にまつわる怖い話状態だったようです。

「お前等、心霊スポット探検とか夜な夜なやってるけど
 あそこだけは止めておけよ、何か違う気がするからな」

店長さんは私達、心霊スポット探検チームのメンバーに向かって
「絶対行くなよ」と念を押しました。
でも…
店長さんのお言葉…どうやらチームの男子達に燃料を投入してしまったみたいですよ。
ニトロ級の…
他県の有名スポットを数件まとめて遠征と称し出掛けていったら
『幽霊』の『ゆ』の字も出てこないガセネタばかりで本物に飢えていたところでした。
皆のやる気スイッチが入っちゃったみたい…
某古典的スポ魂アニメのキャラみたいに瞳の中で炎がめらめらしてますよ。
全員の都合の良い日見つけて是非とも挑戦しよう!
情報を集めて作戦練らないとな…うんうん!と
私以外のメンバー、行く気満々なアイコンタクトを送り合ってました。


そんな期待でドキドキわくわくしちゃっているメンバーの背後から
「店長、俺が今からそこへ行ってきてやるよ!」
と、強気な発言が飛び出しました。
何を言ってるの!?店長さんが行くなと注意したばかりじゃん!!
どなたが?と思えばラジコンを趣味とする常連さん、建設会社に勤めるおじさんでした。
筋骨逞しくちょっと腹が出ていて日焼けで真っ黒な五十がらみの…
可愛い男子高校生を飯場に引き摺りこんで陵辱して無理矢理ペットにしちゃうのが似合いそうな…
あ、これは私の主観ですから…
たまにこのお店の工作室でおじさんと高校生が親しく会話してるのを見かけると…
ファンタジーな妄想が次から次へと湧き出て
美味しくいただいております。ご馳走様です♪
いつも、お世話になっておりますです♪
「××さん、いや本当にあそこはヤヴァいって!」
店長さん、おじさんが席を立ち件のアパートへ向かおうとするのを真顔で止めます。
しかし、危ないから行くなというのは
やる気満々な方に『行け!行け!』と唆しているようなものですよ
だって、チームの男子達がそうなんですから…
おじさんだって同じに違いないです。
言い出したのだから引っ込みつかないだろうですし…
自分達より先を越されてたまるものかが本音のチーム男子に常連のお客さん達も
苦笑いしながら諌めたのですが…
余計、火に油だったみたいで…頑として主張を曲げず…
最後は全員が『風の谷のナ●シカ』に登場したオオババ様のセリフで
諦めるしかありませんでした。
「こうなっては…もう誰にも止められないんじゃよ」


たった一人、お店から出て行っただけなのに…
おじさんを止めることが出来なかった罪悪感からでしょうか…
店内が妙に広く、肌寒く感じました。
心霊スポット探検という趣味を持つ私たちがなぜ、おじさんと一緒しなかったかと申しますと
店長さんからの情報だけでは足りないから…いくら近所のアパートだからと言っても
未知の敵地へ突入するのです。
ある程度、何が出るのかくらいは掴んでなければ怖くて入れません。
探検には下調べが必要です。
歴史的因縁、土地の因縁等…幽霊以上の存在が棲んでいると言うなら
図書館で郷土史や風土記など読んでおきたいですし、郷土博物館にも足を運んで調べておきたいです。
資料が無いというのなら、過去の地図を調べてどんな変遷があったのかが分かります。
店長さんの話がオーバーで、単なる枯れ尾花だったら良いのですが…
なんと言いますか…心霊スポット探検の経験からくる直感と申しますか…
チームの誰一人…おじさんを助けようと口に出さず…
店長さんからもっと詳細な情報を得ようといろいろ質問してます。
こんな男子達…見るの初めてです。
心霊などに興味が無い常連のお客さん達…
緊迫した雰囲気に飲まれて口出しできないみたい…
ただ、全員が共通して…アパートに行ったおじさん…無事では済まない…
そういう予感がありました。
店長さんが持っている情報では結局、何がいるのか分かりませんでした。
それで今度は地図から何か分かるかもと
店長さんに頼んで上階にある自宅から持ってきてもらうことになりました。
アウトドアが趣味で毎年、最新年度版の地図を買っている店長さんならではです。
何年分なのでしょう?地元の地図を山積みにして戻ってきました。
奥さんはコーヒーを人数分、トレイに乗せて階段を下りてきます。
「ここへ引っ越してくる以前の地図もあったぞ」
「おおお!それは助かります!」
店長が持ってきた埃臭い地図…私はいちばん古いのを手に取り、
この辺のページを探しめくっていきます…が、
なんか全然、変わっちゃってて、現在地がどこなのかすらさっぱり…
「役立たず!」
「ぐきゅぅぅぅぅぅ…」
仕方ないので最新版から時間を遡って見ていけば!
「見える!私にもこの地区の変遷が見える!!」
「煩い黙れ」
「はぁい…」
怒られちゃいました。
しばらく、全員が黙って地図とにらめっこが続きます。
飲みかけのコーヒーが完全に冷めちゃった頃
「ヤバい!マジでマズいぞ、あのアパート!!」
心霊スポット探検チームのリーダーが立ち上がって叫びました。
なんでしょ?
「旧河道の真上にアパートが建ってる!!」
絶句しました。
あのアパートが…どれだけ危険なものなのか…
リーダーが持つ地図に皆が群がりました。
店長の奥さんまで…
昭和の昔、商店街の外れに河が流れていたのでした。
蛇行する河道がしっかりと残されてます。
全員が見守る中
リーダーが地図を新しいものに変えて土地の変遷を追っていきます。
埋め立てられてのち、開発されずにずっと…
アシやらヨシやらが生えるに任せて放置されていたようです。
それが近年になって道が出来…開発が進んで建物が作られ
絶妙に旧河道を避けながら街は次第に大きくなっていきました。
河道だった場所の大半は現在、道路か大きな店舗の駐車場へ変わっています。
住居となったのは…あのアパートだけ…
まるで人の記憶からあの土地の事が消えるのを待って建てられた…
店内は水を打ったかのように静まり返りました。
心霊に詳しくなくとも…地方に住む人間には事の重大さが理解できます。
都会はともかく
田舎で川を閉じて埋め立てるような真似はしません。
井戸を埋めるのと同じくタブーとされているのです。
埋めずとも川に蓋をすることすら忌避されているのです。


道教呪術儀礼が大和朝廷に伝来して日本各地へ広まり、
在地の川神信仰と習合して畏れ敬われてきました。
日本だけではありません、世界中で川は人や土地に恵みをもたらすと共に、
時として牙を剥き命を奪う荒神…竜や蛇、蛟に見立て…
古代から人は川に生贄や供物を捧げてきたと言います。
川に橋を架ける時に、流されたり壊れたりしないよう人柱を立てた…と、いうのは
それほど古い話ではありません。
二千年以上かけて地域に棲む人間の思いが作り上げた神性
その存続を小なるものによって覆滅された怒りが
旧河道上に建てられたアパートへ向けられたとしたら…
「おじさん…虎じゃなくて竜の尾を踏むことになるぞ!!」
小さな川とは言っても川の神は存在します…
道教的解釈で言うなら、水神である四海竜王に連なる眷族…
「助けにいくか?」
「行ける訳ないだろ!?怨み骨髄激おこぷんぷん丸になってる河伯なんぞ相手できるか?」
「おっさんが危ないからと言っておいそれと行ける訳ないから!」
「無理無理!時間見てみろよ、川の神の口ん中へ進んで入るようなものだ」
今は夜…水気と木気が実力発揮してる時間帯です。
この手に詳しい人は二の足を踏むどころか門前に免戦牌を掲げますよ。
恨みを持って人が死んでなる幽霊なんかと格も実力もまるで別次元の存在です。
川神信仰や河伯の存在を語り継がれ聞かせられてきた土地の産です。
助けに行く気ひとつも無し!
今の私達に出来る最善の策はひたすら夜明けを待つこと
朝日が室内の闇を払拭してくれなければ…中に入ることは不可能です。
誰も出て行ったきりのおじさんが無事だなんて思っていません。
安否の確認…いるかいないか…生きてるか否か…
その確認作業…
おじさんが見つかった場合、生きていたら病院へ運び…
そうでなければ専門機関へ一報を入れる…と…

だから、心霊スポットは下調べが一番重要なんです。
こういうケースが稀にあるのです。
自分が危機的状況に陥らないためにも、準備は丹念に行わなくちゃいけないのです。
全員、一睡もせず
お腹がコーヒーでガボガボ状態…
ついに朝を迎えました。

朝日が東の空に顔を出したのを確認し
店内にいた男子全員がアパートへ向かいました。
私と奥さんはお留守番です。
私がいくら心霊スポット探検の経験者だから行きますと言っても
奥さんが絶対ダメの一点張りで…さらに羽交い絞めにされちゃって…
仕方なく、皆が帰ってくるのを店内で奥さんと待つことにしました。

後から聞いた話になりますが
アパートは本当にお店のすぐ裏手…
歩いて五分とかからないところにそれはあったそうです。
築三年とは思えない見事な廃れぶりで
心霊スポット探検チームのリーダーが指揮を執って
手分けして部屋の中を探していくことになりました。
結局、一階部分は全て施錠がしてあり中に入るのは無理で
全員で二階の部屋を順番に見て行き
二階の一番北側の部屋でおじさんが倒れているのを発見したそうです。
敷かれたまま放置されていた布団の上にうつぶせで…意識がまったくない状態…
顔が酸で焼かれたみたいに爛れて倍くらいに膨らみ
特に両目のまぶたが、あんぱんでも乗せてるみたいに腫れあがっていたとか
四肢にも骨折がみられ
あと…悲しいことに大と小がズボンを穿いたまま垂れ流しになってたそうです。
置き去りにされた家財道具から使えそうなものを探して、毛布と組み合わせ担架を作り
意識の無いおじさんを乗せて外へ運びだし、
救急車を呼んで病院へ搬送して貰った…のだとか。


おじさんはかなりの間
意識不明で入院してました。
意識が戻ってからも
顔の腫れが引かず、熟した柘榴みたいに変わり果て、
左腕は骨折が直ってもほとんど動かない状態…で
お医者様の見立てではどちらも原因不明…治療方法すら見当もつかないとか…
それで結局、祈祷師や霊能者の力を頼ることになったと聞きました。
十年…祈祷師の見立てでは
おじさんの顔から腫れが引くのにそれくらい掛かるのだそうです。
左腕はまた別、さらに十年二十年必要とするとか。
アパートで受けた怨念がかなり強く性質(たち)の悪いものだそうで…
自分の手に余るとか…かなり偉い方にお願いしたらしいのですが
全ての怨念を落し終えるのは
一生涯掛けても難しいらしいそうです。


(おしまい)


2013年10月26日(土) 22:41
こげ ◆.s16F9bY
※天通の投稿広場より掲載
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