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【怪異】BAR物語ーバーモノガタリー①/HN:こげ

BAR物語ーバーモノガタリー/HN:こげ


私は心霊スポットと呼ばれる
各地で幽霊が出ると言われている場所を
休日などを利用して訪ねて廻ることを趣味としています。
ネットで知り合った天之津君から、
心霊スポット探検を数人の仲間とやってるから一緒にどう?
と誘われたのがきっかけです。
それから現在まで探検に同行して
数々の怪異と遭遇、恐怖に心臓を鷲掴みされ、
すくみ上がって満足に身体が動かない状態で
闇の中を半泣きになって逃げ回り
這々の体で車に辿り着いたこと数度…
遊園地などのアトラクションでは味わうことができない
保障も保険も安全装置もまるでない
全ては自己責任でギリギリのスリルを楽しむ
心霊スポット探検…
私は完全にはまっていましたが…
今回はスポット以外でのお話です。



重い扉を開けると、程好く明るさを抑えた店内…
カウンターの向こうから初老のバーテンダーさんが出迎えてくれます。
この隠れ家的な独特の雰囲気…大好きなんですよね。
若いバーテンダーさんにコートを預けてカウンターチェアへ腰を下ろします。
白いものが混じる総髪を後ろへ撫でつけ、
バーコートを華麗に着こなすバーテンダーさんの後ろ、
ウイスキーやリキュール類のボトルがずらりと並んだバックバーは埃ひとつなく清潔…
時間的に早いのでしょうか、店内にお客さんの姿はありません。
いつも、会社の上司や同僚と一緒に来るのですが、
今夜は私一人…
駅前からわずかに入った路地…雑居ビルの掘り下げになった階段を下りた突き当りに、
出入り口となるドアを見つけることができます。
目立たぬよう、ひっそりと佇むこのお店…
私のお気に入り。
金曜日の夜、実は友人から紹介された男性と食事をしてきての帰り道…
ちょっとだけ、お酒が飲みたいなと、
立ち寄った訳なのです。

「ブルームーンをお願いします」

本日、お会いした男性…
学歴も勤務先もルックスも服のセンスも申し分無し、
女性のあしらい方も慣れて様になっているし、クラっと来たのは確かです。
迎えに現れた車もアルファスパイダーと来てはケチの付け様もございません。
姫君を迎えるようにドアを開けられたナビ側の席…
乗り込むとき、ちょっと短すぎたと後悔したスカートの裾…
人と車で溢れた街中から郊外へ向けてバイパスを滑らかな加速をみせて走るGTV…
静かに流れるビル・エヴァンス…数を減らしていく街明かり…
闇が濃くなり、フロントガラスの向こうで無数に煌く冬の星達…
飽きさせない豊富な話題…巧みな話術…
深くシートに身を沈める…安心感…
鬱蒼とした林の中を道なりに進むと石造りの落ち着いた雰囲気の建物…
外灯に照らし出される石畳の駐車場…
ここが以前から来てみたいと思っていたリストランテ…
店内は白が基調とされ…きらびやかで豪華…
所作の洗練されたギャルソン達…
テーブルへ並べられるオーナーシェフが腕を奮った料理…
豊富なワインリスト…
イタリアのメディチ家からフランス王家へ嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスから始まる
フランス料理の隆盛、フランス料理にまつわる逸話が彼の口から次々と語られ…
耳に心地良く、口下手な私は微笑と相槌で返すのが精一杯…
でも、本当に楽しい晩餐でした。
食事の後、別室でプティフールとエスプレッソを頂いている時、
夜のドライブへ誘われたのですが…
初対面の男性と長時間過すのはやはり怖いもので…
丁重にお断りすると…彼は嫌な顔ひとつ見せず
次こそはあなたから信頼を勝ち取れるよう努力しますと一言、
往路と変らぬ態度で…駅前まで送っていただき、
次に逢う約束と連絡先の交換をしてお別れしました。
去っていくアルファスパイダーを見送り、
彼を紹介してくれた友人に報告の電話を入れ…
それからこのお店に入ったのでした。
彼が車だったから…私だけ飲むなんて出来ないので…
せっかくソムリエのいるリストランテだったのに…
お酒、飲みたかったぁ♪

バーテンダーさんの振る腕がゆっくりとなり…
優雅に胸の前で蓋を外し…グラスの直上で傾けられた霜付きのシェイカー。
私の前に置かれたグラスへ美しい液体がなみなみと注がれました。
ドライジン30ml、クレーム・ド・バイオレット15ml、レモンジュース15ml…
味もさることながら、すみれ色の見事な色彩…この色、大好きなのです♪
カクテル言葉は出来ない相談、奇跡の予感…かなわぬ恋…完全なる愛なんてものもありますね。
とってもよく冷えています。
シェイクで氷を割り過ぎた為の加水…なんてことがないから味もしっかりしてます。
さすが、魔術師と呼ばれるだけの腕前…
喉をごくっと鳴らせて一気に飲み干してしまいました。

「ぷはーって言いたい気分!」

「枡酒に手塩の方が良かったかもしれませんね」

「お見事な飲みっぷりです」

バーテンダーさん二人に笑われてしまいました。
冬は日本酒ですよね♪日本酒バーって言うお店もあるんですよね♪
バックバー?酒棚に一升瓶がずらりと並んで…壮観…日本酒に合う料理…
次は和食が良いですねと彼が…どうしましょう、懐石も良いですけど、お鮨…
この時期、暖かいものがいいかも♪
お鍋やおでん…そこまで親しい関係でもないし…なってないし…
牡蠣をベーコンで巻いて炙って…しいたけにエビのすり身を…串焼き料理か…
だめ、ブルームーンを飲んで気持ちを冷静にしようと思ったのに…
あんな素敵な男性と私なんかがお付き合いできるわけないですよ絶対…
我に返るとカウンターの向こうでバーテンダーさんがにこにこ…
あ、ええと…次は何を頂こうかな…バーにメニューなんかありませんから、
視線を逸らすの大変です。
日本酒のカクテルですかぁ…春の雪…サムライ・ロック…サケティーニ…
ちょっと今の気分とは合いません…
スコッチ、バーボン…という気分でもありません。
無理とか言いながら…なんか幸せ感じちゃってますよ私…

「次はアイオープナーをお願いします」

ラム30ml、オレンジキュラソー2dash、ペルノ2dash、
クレーム・ド・ノワヨー2dash、砂糖1tsp、卵黄1個をシェイク…
カクテル言葉は…運命の出会い…なんてものを頼んじゃったの私!?
すっごく恥かしいデス…
全然、冷静になってないし…バーテンダーさんには丸分かりですよ、きっと…
次はウイスキーミスト、その次はエンジェルズ・ティップ…
ちょっとだけのつもりが…グラスをどんどん重ねていってます。
アイスブレイカーをいただいていると入り口の重いドアが開く音…
冷たい外気が店内に入り込んできました。
私に次ぐ、二人目のお客さん登場です。
若いバーテンダーさんが上着を預かる為に入り口へと向かいます。
どんなお客さんがいらしたのかなと入り口を横目で見れば、
レザーのハーフコートを着た五十代くらいの男性…
その後ろに白いブラウスにチェック柄のベスト、セミタイトスカートという
事務服姿をした二十代半ばほどの女性が一人…

「お!あんたは」

カウンターまでやってきた男性が私を見て驚きの声をあげました。
ごめんなさい、どなたですか?
じぃ~っと男性のお顔を遠慮なく見つめさせていただいたのですが…記憶に全然…

「タクシーの運ちゃんだよ!昼間助けて貰った」

思い出しました!ランチを食べに外出した時、確かに遇いました。
で…いいのかな…
タクシーの運転手と事務服の女性を確かに!
運転手さんは私の隣へ座ってジャックダニエルを注文、
女性は運転手さんのその隣…

「バーテンさんよ、この娘さんの払いは俺に付けてくんな、命の恩人なんだ」

「かしこまりました」

「いえ、そんな…気にしないで下さい…」

「で、何があったんです?」

「俺はちょうど客を乗っけてるところだったと思ってくれ。
 そこへ通りかかった娘さんがあぶないって声をかけてくれなかったら
 後ろから来たダンプに踏み潰されて今頃、病院のベッドの上か…
 坊さんの世話になってるところだった。
 酒代くらいは俺に奢らせてくれや」

それで、おじさんと初老のバーテンダーさん二人の四人で会話が弾んだのですが…
若いバーテンダーさんが昼間の事で気になったことがあると言いだし、
場の雰囲気が一変しました。

「どうしてダンプがおかしいと気が付いたんですか?」

「え?ええと、私がおかしいと思ったのは…タクシーのお客さんでした」

「どういうことでしょう?」

「ああ、あの客か…確かに不思議な事もあるもんだよな。
 交差点を右折してすぐ、手を上げている人がいるのを見つけて…
 車を停める間に、客の身なりでだいたい乗せる距離とか分かるもんだ…
 あ、近場だなとか…会社の事務服着た女だから買い物かとか…
 それで、その人の前で停まった。後ろのドアを開けてお客が乗り込むのを確認して…
 行き先を訊ねようと振り返ると座席に客の姿はない…まだ外にいた」

「はあ?」

若いバーテンダーさん、遠慮なしです。
その言動に初老のバーテンダーさん…表情を曇らせていますよ?
お昼休み、私は牡蠣フライ定食860円を食べに同僚と通りまで出ますと、
交差点を右折してきたタクシーが、私達の二、三十メートル先の誰もいない所へ停車して
何度も何度も後部座席のドアを開閉している奇妙な光景を目撃したのでした。
近づいていくと、後部座席にお客さんの後頭部が見えます。
もう、乗っているのに出発しないでドアの開閉を繰り返ししてるし…おかしいなって。
タクシーの真横へ来たときに分かったんです。
後ろの座席へ乗せたお客さん…顔が血まみれ…と言うか…目鼻が…
耳から前が切断されたみたいになくなっていました。
生きてないことは確実…

「おかしいなとドアを開けると、客は乗り込んでくる…
 ルームミラーで確認すると座席には誰もいない…振り返ってみると確かにいない。
 外を見ると、同じ客が乗せてもらうのを待っている。 
 何度もその繰り返し…気味が悪くてもお客なんだと思うと、
 乗せないといけない気持ちが働いて…また後部座席のドアを開ける」

そこで運転手さんはグラスを口に運んでふぅとため息をつきました。
確か、以前…この辺で女性が意識を亡くした運転手の乗るトラックに轢かれて亡くなる
交通事故があったことを思い出したんです。
それが事実であったことを裏付ける、信号機の根元にその名残がありました。
タクシーの客席に座っているのは幽霊…
かなり性質の良くない部類であるということは決定ですが…
その場にタクシーを釘付け状態にしている理由は?何がしたいのか…
背筋がゾクっときました。
背後…恐る恐る振り返りますと…妙な雰囲気を纏いふらふらと車体を揺らしながら
こちらへ向かってくる一台のダンプカーが…
あの事故…確か、タクシーへ乗り込む途中だった女性が…タクシーの運転手さんは軽傷で…

「今度は助手席の窓が激しく叩かれて…それで我に返ったんだ。
 窓を叩きながら逃げて!って必死に叫んでるこの娘さんがいた。
 なんだ?って…娘さん、今度は後ろを指しているんで振り返ると
 でっかいダンプがこっちへやって来るのが見えた。
 あれがどうしたんだ?でも、娘さんが必死で逃げろと言ってるから
 分かったから離れろって手で合図してな、車を出したんだ。
 本当に危なかった。ダンプは車を停めていたところから路肩へ乗り上げてな…
 木とかにぶつかりながら歩道を走って横倒しになって停まった」

身体が勝手に動いていました。
運転手さん…誘われていたんだ!
同僚達を置いてタクシーへと駆け寄り、
助手席側の窓を叩いて運転手さんに逃げろって…叫んで…
車が出て間もなく…タクシーが停まっていた場所へダンプカーが突っ込んできて…
路肩を乗り上げ街路樹を薙ぎ倒して、最後に車体は横転…
タクシーの運転手さんが戻ってきて…やじ馬が集まりだし…
ダンプカーの運転手さんはどうなったのか…
同僚に休み時間がなくなるって、余計な事に首を突っ込むなって
引っ張られてランチへ向かったので、その後のことは分かりませんでした。

「呆然となった。でも、これは大事故だと…警察と消防には俺が連絡を入れた。
 会社にも事故を目撃したことを言ってな。
 娘さんとお客はあれからどうなったのか…周りを探したが見つからず終いで…
 ダンプの運転手は意識が無いらしくて救急車で運ばれていった。
 幸い、事故に巻き込まれた人間は誰もいないと聞いて、娘さんもお客も無事だったんだろうって。
 それが、一人で祝杯をあげようと立ち寄った店で偶然、命の恩人と再会できたなんてな」

「そのお客さんの顔を覚えていらっしゃいますか?」

「お、おう当たり前よ!と…言いたいところだが…どういうことだ?
 こんなの初めてだ、まったく思い出せない」

運転手さんの隣に立つ事務服の女性…終始無言で寄り添っています…
ずっと一緒だったのですね。
椅子から下りて女性の許へ向かいます。
昼間…同僚に引っ張られて事故現場を去るとき…
道に佇むその姿と変わりなく…顔は削り取られたように無くなって…
千切れかけた左手はくるぶしにまで届きそうなくらいに垂れ…
良く見てみますと…身体は左側の破損が酷いです。
膝も大腿骨も砕けているみたいで、足首も90度以上曲がっているし…
でも、事務服には汚れも破れも…傷ひとつ無く…
いえ、肩にかかるナチュラルな内巻きの黒髪も…
あれほどひどいダメージを受けている左手のネイルも…綺麗なまま…
どんなに身体は酷い傷を負っても守りたかったのでしょうか…
身体の破損も酷いですが…心の崩壊もすさまじかったようですね…
即死ではなかった…五感も聴覚だけ生きていたみたいです。
自分はこれほどの傷を負い…死ぬ運命…それなのにタクシーの運転手は無事…
なぜ、自分がこんな目に遭うのか…
なぜ、タクシーの運転手は生きることを許されたのか…
妬み…羨望…憎悪…怨み…
タクシーの運転手は絶対に逃がさない…
死の間際で芽生えた呪詛…
私の頭の中へ無数の呪いの言葉が重なり線となり、螺旋を描いて入ってきます。
もぞもぞと多足蠢くムカデみたいになって…頭蓋骨の中へ…
しかし、呪詛の対象となる条件を私は満たしていないので、その攻撃は通じません。
頭蓋骨内部に響く声が気持ち悪いと思う程度です。
逆に運転手さんは…今は聞こえていませんが、だんだんと呪詛を聞き取れるようになっていく筈…
それが破滅の始まりになる…


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面白かったです。ただ、こげさんの丁寧すぎる言葉使いが苦手。

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