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【不思議】イレカワリ/HN:いくゆみ

イレカワリ/HN:いくゆみ


「あの噂、知ってるか?」

そう話をかけてきたのは佐藤という男だった。

学校内では情報屋と呼ばれるくらいに噂などに詳しい。

明るくてお調子者だが、その性格故か彼の元には情報が集まる。

バカそうに見えるがしっかりした男である。

「あの噂とは?」

私は当然の質問をする。

噂などには興味はないが、心当たりが何個かあった。

「学校に出る幽霊の話だよ。知ってるだろ?」

その話か。

最近、この学校に幽霊が出ると騒がれている。

テレビや漫画の影響か、幽霊くらいでは最近の子は騒いだりしないのだが…。

この幽霊は何とも厄介だとされている。

「知ってるが、情報は本当なのか?」

彼の情報を疑う訳ではないが、信じられないような事だった。

「ああ、イレカワリの情報は本当だと思う…」


『イレカワリ』とは私たちの学校に現れた幽霊だ。

名前が示す通り、幽霊と人間を入れ替えるとされている。

入れ替わった人間は数日、行方不明になって戻ってきた。

その間の事は覚えていない。

詳しい事は幽霊に聞く事も出来ないので分からなかった。

最初は誘拐事件かとも騒がれたのだが数日で戻ってくるし、身代金の要求もない。

単なる家出として扱われた。

しかし被害にあった子の中には、家出をするとは思えない真面目な子も何人もいた。

だから、こんな噂が出たのである。

「情報屋としては確かめずにはいられねぇよな」

こういう言い方をする奴だ。

言い直せば、放っておけない…そう言いたいのである。

「情報が本当なら危ないと思うぞ」

情報が少な過ぎる。

対処方法も分からない。

そして…本当に幽霊の仕業なのかも分からないのだ。

「危ないのは分かってるが、このままにはしておけねぇよ」

彼がこんなに必死なのは、もうひとつ訳がある。

今、行方不明になっているのが彼の思い人なのだ。

片思いというやつだ。

小野寺さんは成績優秀で容姿端麗。

部活ではバスケ部のキャプテンをしている。

社交性も高く笑顔が素敵で、少し肩にかかるくらいの髪もさらさらだ。

欠点という欠点が見つからないような女性である。

残念ながら佐藤には釣り合わない女性としか言い様がない。

「一度は忠告したから、もう止めない。自分で決めた事を曲げるようなやつじゃないしな」

戻ってきた人間に記憶がない以上、イレカワリに対する情報はほとんどない。

イレカワリなどというのも理解出来ない事柄に対して便宜的に使っているだけだ。

そんなもの存在しない可能性が高い。

数日後、小野寺さんは無事に発見。

その替わり、佐藤が行方不明になった。

面倒な事だが佐藤を助けるには私が入れ替わる必要があるのだろう。

ちゃんと止めなかった負い目もある。

こうなる事は想像出来た。

イレカワリは放課後に現れるらしい。

朝は現れず、夕方に出るというのも幽霊の仕業なのかも…という噂を強めた。

「さてと…」

どこに現れるか分からないイレカワリを探す。

教室を出て廊下。

理科室、図書室、美術室と見て回ったが見つからなかった。

ゾクッ

背筋が凍るような嫌な感じ。

「体育館か…」

私の通う学校は体育館が別れていない。

変な造りである。

学校の一部としてくっついている為、あまり大きくはない。

学校内にある為か基本的には開放されていて、いつでも入れる。

本来なら放課後は部活動の時間なのだが、変な事件が起きている為、暫くは自粛という事になっている。

つまり時間はあまりないということだ。

遅くなれば見回りの先生に見つかってしまう。

扉を開き中に入る。

誰もいない体育館は寒かった。

それは本当に寒かったのか、あれのせいなのかは分からない。

真ん中くらいに浮遊する謎の存在。

黒い人型の何かが、そこにいた。

見るからにヤバそうな何か。

『ゲームをしよう』

頭に響くような声。

『俺が誰かを当てるゲームだ。当たれば俺が開放されて、君が囚われる』

なんという理不尽なゲームだ。

引き受ける方には得がない。

それでも何人もが入れ替わってきたのだ。

人間という生き物も捨てたもんじゃない。

そう思えた。

「いいよ。受けよう」

我ながら馬鹿だとは思う。

『YESかNOで答えられる質問を3度までだ』

質問の必要はないのだが一応しておく。

今、行方不明になっている生徒は佐藤しかいない。

このゲームは必ず当てられるゲームだ。

受ける=入れ替わる覚悟を試されたに過ぎない。

「あんたは男?」

『YES』

「あんたの身長は170cm以上?」

『YES』

「あんたの名字は佐藤?」

『YES』

人の事は言えないけど馬鹿な奴。

誰かを助ける為に自分を犠牲にするなど馬鹿のする事だ。

自分を救えない奴に他人など救えるはずもない。

これは永遠に続く呪いのようなものだ。

誰かが、あの状態にならなくてはいけない。

他人に押し付けるくらいならば…。

結局は私も馬鹿なのだ。

「あんたは佐藤。佐藤健太だ」

私も誰かに入れ替わってもらわないと一生このままか。

なるべくなら早く開放されたいものである。

『残念ながらハズレです』

うんうん。

「えっ…え?」

あれ…下の名前、確か健太であってるよな。

「あんたは佐藤健太だ」

間違いないはずだ。

『回答権は一人一回です。あなたはハズレました』

ど、どういう事だ。

全く理解出来ない。

ガタンッ

体育館の扉が開く音がした。

「こらぁ、下校時間はとっくに過ぎてるぞ!」

見回りの先生だった。

「すみません。忘れ物探してました」

適当に嘘をつく。

ちらっと体育館を見渡したがイレカワリはすでにいなくなっていた。

どこかに行ってしまったのだろう。

教室に鞄を取りに行ってから下校した。

小野寺さんは無事に戻ってきている。

イレカワリは佐藤健太ではない。

じゃあ佐藤はどこに…。

「よ!」

聞き覚えのある声がする。

馬鹿面して鼻水を垂らしつつ、おでこに冷えピタを貼っている男だ。

そう佐藤である。

「ここで何してるんだ。風邪なら寝てろよ」

だいたいの話の流れは想像出来た。

「今さっき起きてな。母ちゃんが出張でいなくて…学校に連絡してなかったから行方不明になったとお前が心配してるんじゃないかって」

心配なんかしていない。

ちゃんと止めなかった負い目を感じていただけだ。

「お前が行った時にはイレカワリは小野寺さんじゃなかったんだろ?」

ぽりぽりと頭を掻きながら佐藤は答える。

「そうなんだよ。あれは誰なんだ?訳がわからん」

まぁ、そういう訳である。

佐藤は小野寺さんを助けようとイレカワリを見つけ回答するもハズレ。

放課後の寒さの中、探し回り見事に風邪をひいた。

学校に連絡もせずに寝込んでいたという訳だ。

つまりは私たちは完全に空回りしただけだった。

「あれは佐藤先生だよ」

小野寺さんがいなくなって困るのは佐藤健太だけではない。

そんでもって生徒だけとも限らない。

「バスケ部顧問の佐藤先生…なのか」

もうじき大切な試合が近い。

小野寺さんを欠いては勝てる見込みはないだろう。

噂になっているイレカワリについて生徒から聞いたと思われる。

「まぁ、まず間違いない」

分かっていても私たちには回答権がない。

どうする事も出来ないのだ。

いつか誰かが真相に辿り着き、入れ替わってくれる…かもしれない。

佐藤先生には悪いが…。

本人もある程度は覚悟して入れ替わったのだろう。

気長に待ってもらうしかない。

誰かが呪いを引き受けなくてはならず根本的な解決は私たちには不可能である。

それは私たちがただの中学生に過ぎないからだ。

「なぁ佐藤」

「なんだ?」

「馬鹿は風邪ひかない…」

言いかけた途中。

「残念だったな。俺は馬鹿じゃないと証明された訳だ」

ハハハと笑っている。

「馬鹿は風邪ひかない…けど」

私は嫌味っぽく言う。

「大馬鹿は風邪ひくらしい」

佐藤は不満そうな顔して言った。

「へいへい。そうですか」

私が体験した不思議な話。

そして佐藤が小野寺さんに告白するのは…

また別の話である。

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コメント

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面白かった。佐藤姓を使ったどんでん返しで話に奥行きが出来たし。

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