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【SS】霊ならいりません/HN:いくゆみ

霊ならいりません/HN:いくゆみ


「あなた霊が取り憑いていますよ」

見知らぬ怪しげな女性が私に声を掛ける。

あまりに唐突だった為、私は「はぃ?」と声を出した。

「あなたに取り憑いている霊は悪い霊です、除霊した方がいい」

女性は続けて私にそう言った。

「あぁ、そうですか」

私がその場を立ち去ろうとすると女性は

「除霊代金は安くしておきますから…100万ポッキリです、除霊しないと悪い事が続きますよ?」と言う。

正直言えば、私は幽霊など視えない。

だから信じない…という程には安直ではないが基本的には無いものとしている。それは私自身が視えないからに他ならない。

「結構です」

そうキッパリと告げる。

「では…今回だけ特別ですよ、半額…半額の50万でいいです、悪霊を除霊して差し上げます」

女性は引き下がらない。

「除霊云々はさておき、私がそんなお金持ってると思いますか?」

まるで何の個性もない、見るからに平々凡々、それが私である。そんなモブキャラのような私に声を掛けるのだから、余程困っているのだろう。

善良な市民としては助けてあげたいのだが、無い袖は振れないのである。


「わかった、わかりました…大特価!特別price…10万だ!もってけ泥棒!」

何故だかプライスの発音が良かった。

「結構です」

再度キッパリと告げる。

「なら…いくらなら、いいのよぉ…」

女性は弱々しく言う。

私はポケットから財布を出すと全財産を女性の前に突き出した。女性は呆れているようだった。

「じゅ…10円って…」

半ば諦めたように言う。

「わかった…もう、それでいいです、やらせて戴きます」

除霊はよく分からない呪文を唱えてすぐに終わった。本当に効き目があるのかは私には分からない。

幽霊がいるか?いないか?

それは議論の種にはなるが意見が割れ平行線を辿るのみで答えなどでない。論ずるだけ無駄な時間ともいえる。

ただ確かなものがあるとすれば、幽霊は『ある』のである。これには議論の余地もない。

いるか?いないか?ではなく『ある』のである。

立ち去ろうとする女性に私は言った。

「あ…どうやら悪霊の除霊失敗したみたいですね、あなたに取り憑いたようですよ」

「え、えぇ…え」

女性は狼狽えたように変な声を出した。

「うん…正確には悪霊という訳ではなくて…今回の除霊モドキをした事にお怒りみたいですね…」

私は適当な事を言った。

「この霊は悪い事もしてませんし…しかも霊というよりも神格化されているようですし…神様に近いですね」

続けて言う。

「かなり怒ってます、今後…良い事をして生きないと祟るそうです」

「い…いや…その…そ、そんな…つもりでは…」

女性は慌てている様子だ。

「私はどうすればいいんでしょうか?」

「そうですね、ボランティアとか募金とか人を助ける事をして生きて下さい」

「わ、わかりました」

女性は言った。

「とりあえずは…手始めに良い事を!」

私は、すっと手を出してニッコリ微笑んだ。

「さっきの10円返して下さい」

女性は急いで10円を返した。

「今後は世の為、人の為に頑張って下さいね」

私はそう言い残し立ち去ろうとした。

私はこの女性の人生を良い方向に変えられただろうか?

それは誰にも分からない。

「あ、ありがとうございました!あの…お礼…は…」

私はキッパリ告げた。

「礼ならいりません」

きっと彼女は今後、人の為にちゃんとした人生を生きるだろう。

私は地獄に落ちるかも知れない。


家への帰り道。

「あ、100円みっけ!」

ちょっとした幸せを手にした。
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